宝探しに行くわよ!ヨーロッパ

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 1Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 1人
期間 11/21〜11/27

●本文

 それはいつものように突然やってきた。
「イギリスにドラマロケに行くわよ!」
 と、鈴美が言い出したのだ。ちなみに鈴美というのは、俺の上司でドラマディレクターの春日鈴美のことで、台風、というよりも竜巻のような女で、突然気まぐれのような思いつきで様々なところに迷惑をかける。特に、専属ADの俺に迷惑をかける。
 それで、今回も突然の海外ロケを宣言。俺は、必要性の有無や、費用の問題などなど、様々な方法で説得を試みたが、いつものようにいつものごとく聞きやしない。しかも、行くにあたっての面倒な仕事はすべて俺に押し付けるわけだ‥‥。

「とりあえず、これでロケは終了だな。珍しく予定より早く終わって良かったぞ」
「そうね!」
 まぁ、そんなこんなで、海外ロケも無事終了。あとは帰って、編集やらなんやらを負わすだけとなったわけだが。なにやら、鈴美の様子がおかしい。いつもなら、撮影が終われば自分は興味がなくなったようにふいっとどこかへ行ってしまうのに、今日はやけに上機嫌だ。まるでこれから楽しいことが待っているかのような表情に一抹の不安を感じる。
「せっかくイギリスまで来たんだ、観光とか買い物とかしていくか?」
「はぁ? なんでそんなことしなくちゃならないのよ!」
 違うらしい、できれば俺も家族に土産の一つも買って行きたいところなのだが。とにかく、さっさと帰る準備をすませて、下手なことを言い出す前に日本へ戻ったほうがいいようだ。
「準備は終わった?」
「いちおうな」
「じゃあ行くわよ! 宝探しに!」
 ‥‥ちょっとまて、こいつはいま何と言った? ホワイ? ホエア? こっちにきて、少しは覚えた英語の中から、俺が良く使う単語を引き出す。
「だから、これから宝探しに行くって言ってるのよ! ちゃんと遺跡の地図はあるんだからね♪」
 なにやら古臭そうな地図を取り出して、鈴美が満面の笑みを浮かべる。準備のいいこって。‥‥そこでひとつ、俺は頭に浮かんだ考えを口にした。
「なぁ、ロケ中にそんな地図を探す暇なんてなかったよな?」
「もちろんよ?」
「じゃあ、それはロケ前に用意しておいたってことだよな?」
「当然じゃない」
「あ〜‥‥もしかして、このロケの目的って、本当はそっちにあったのか?」
「そうよ、ロケという名目で来れば、費用は浮くし!」
 頭が痛い‥‥こいつは最初から、宝探しがしたいがために海外ロケをすることに決めたのだ。俺がさんざん費用を経理に掛け合ったり、宿泊地を手配したり、ロケにあう場所を探したりしたのは、すべてこのためだったのかと思うと悲しくなる。
「それはともかくだ、さっき遺跡の地図だといったな。で、そこに宝探しに行くと」
「そうよ、さっきからそう言ってるじゃない」
 あのなぁ鈴美? 遺跡っていうのは、たいてい国が管理しているものなんだ。そこに、勝手に入って、勝手に中の物を持ち出したら、それは窃盗だぞ。こんな外国で、泥棒として捕まるのはゴメンこうむりたい。と俺が諌めようしたところ。
「大丈夫よ、WEAのお墨付きだから。いちおう獣人に関しての遺跡調査ってことになってるから」
 ちっ、心配させやがって。いや、そうじゃない、なんで俺がそんなことをしなけりゃならんのだ。宝探しだか遺跡調査だか知らんが、こいつが一人ですればいいんだ。
「責任者はあんたの名前にしといたから」
「なにぃ!」
「もちろん、これはWEAの正式な依頼だからすっぽかしちゃダメよ?」
 く、くそ、なんて用意周到な奴なんだ! だいたい、その地図とやらは本物なんだろうな? 行ってみて何もありませんでしたじゃ、名前を使われた俺が責任に問われかねん。
「だ〜いじょうぶよ! WEAだって、ちゃんと根拠があって許可してるんだし。うだうだ言ってないで、さっさと行くわよ!」
「ちょ、ちょっとまて! まだ心の準備が!」
 そういうわけで、俺は無理やり鈴美に引きずられるように遺跡調査をすることになってしまった。まだそのときは、あんな危険が待ち受けていようとは思いもせずに‥‥。

依頼内容 イギリスにある、獣人に関係すると思われる遺跡の調査
報酬 遺跡内で発見された遺物の所有権
遺跡情報 イギリス北部の、人里離れた森にあると思われる。詳しくはわからないが、文献によると、キリスト教が広がった後に迫害され、僻地に追いやられた獣人の隠れ里的なものであると推測される。

家屋跡1 かつて獣人が住んでいたと思われる家屋跡です。ほとんど風化していますが、かろうじて原型をとどめているものもあります。
家屋跡2 同じくかろうじて残った家屋跡です。
家屋跡3 同じくかろうじて残った家屋跡です。
教会跡 遺跡のすみにある教会跡です。石でできた建物で、風化して天井は崩れ落ちていますが、かろうじて外壁のみ原型をとどめています。
舞台跡 遺跡中央にある大きな舞台です。草木に包まれていますが、とても頑丈に作られているのか、長い時間が経っても、そのままの形を保っています。
墓地 教会跡の裏側にある墓地です。墓などはほとんど残っていませんが、かろうじてその痕跡を見ることはできます。
地下への穴 舞台裏に作られた用途不明の地下への階段です。石造りの頑丈な通路につながっており、出口がどこにつながっているかはわかりません。

●今回の参加者

 fa0431 ヘヴィ・ヴァレン(29歳・♂・竜)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1412 シャノー・アヴェリン(26歳・♀・鷹)
 fa1641 上月 真琴(20歳・♀・狼)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3309 水葉・優樹(22歳・♂・兎)
 fa3963 ガルフォード・ハワード(18歳・♂・犬)
 fa4832 那由他(37歳・♀・猫)

●リプレイ本文

「あれよ、あれ! 地図の遺跡に間違いないわ!」
「ああ‥‥そのようだな」
「なによ、もっと大きな声で感動するとかできないわけ?」
 遺跡探索に向かった俺達は、ようやく遺跡にたどり着くことができた。鈴美は嬉しそうに目を輝かせるが、俺はくたびれたように大きくため息をつく。そのことが不満なのか、鈴美は振り向いて俺をにらみつけた。
「あんたね、優樹を見習いなさいよ!」
「うわぁ、凄いところだな! 良い写真がいっぱい撮れそうだ!」
 水葉・優樹(fa3309)は、感激したように歓声をあげている。随分と元気があるものだと思うところだが、俺だって石榴さんみたいな綺麗な彼女に見送られればハリキリもするだろうさ。
「パピーよくやったNe!」
 そうそう、今回の功労者。俺達が森でさ迷っていたときに出会った野犬のパピー(ガルフォード・ハワード(fa3963)命名)である。正直、俺達が道に迷っていたところに、この犬が現れ。自称忍者で犬獣人のハワードが遺跡のことを聞いたところ、俺達をここまで案内してくれたのだ。
「それじゃ、今日はここで休んで、明日探索を開始するわよ!」
 なにはともあれ、すでに日も暮れ始めている。探検は明日からになるだろう。

「AD! ちゃんと良い物見つけてきなさいよ! じゃあ、あんた達行くわよ!」
 鈴美は、B班を連れていってしまった。こんな廃墟に、本当にあいつが期待するようなものがあるか、半信半疑なのだが。どうやら鈴美は本気のようであった。
「それじゃ行きましょうか」
「はい〜、私、昔の教会が見たかったので、楽しみです」
 俺は貴女の笑顔を見れて楽しいですよ上月 真琴(fa1641)さん。そんなわけで、俺達は石造りの教会へと向かう。長い年月がたっているため、外壁は風化してボロボロ、ツタやらなにやらがびっしりと巻きついて、それがかろうじて原形をとどめているようであった。何かの拍子に崩れてきたりしないよな‥‥?
「キリスト教での聖なる遺物といえば聖杯や聖剣、聖釘、聖骸布などが有名だがな。ここでは何が見つかるかな‥‥?」
「教会には何か奉られているのが相場だからきっとお宝が出ると思うZe〜。忍者の勘だけどNa」
 ぽっかりと開いた教会の入り口に入った俺達。緑川安則(fa1206)とハワードは、期待した様子で中を覗き込むが、天井はすでに崩れ落ちて室内に散乱しており酷い状態だ。たぶん、当時はそれなりに見ごたえのあるものであったのだろうが、いまはただ単に荒れた廃墟でしかなかった。それでも、俺達は落ちている石をどかしたり、壁を丹念に調べたりして捜索を開始する。
「出来れば石榴さんと一緒に来たかったけどな‥‥。彼女もこの教会見たがってたし。代わりに、約束したとおりたくさん写真を撮って帰って見せてあげるか」
 水葉はそんな俺達をそっちのけで、随分と熱心にデジカメを撮っていた。彼女持ちはいいよな、楽しそうで‥‥。
「ん? いま、なにか光ったぞ? ロザリオか、石榴さんにお土産にしようかな」
 そんな水葉が、デジカメの画面越しに何かを見つける。どうやら、手のひらに収まるくらいの小さな十字架のようだ。あとで調べたところ、それはオリハルコンという未知の金属で作られた物だったらしい。
 その後も、しばらく教会を探索していたが、ほかにめぼしい物は見つからなかった。俺達は次に、教会裏にある墓地へと向かってみる。石造りの墓が立ち並ぶ‥‥というものを想像しそうだが、ほとんどが風化して崩れ落ち、草木に覆われてかろうじて墓地と見て取れるといった程度の場所だ。
「幽霊さ〜ん、ごめんなさいちょっと失礼しますね〜」
 上月さんは、可愛らしい表現(?)で死者に断りながら墓地の跡地を探索する。
「きゃあ! 骸骨さん!?」
 しばらく墓地を探索していると、上月さんが悲鳴をあげた。何事かと駆けつけた俺達に、上月さんは何かを指差す。その先には、確かに骸骨が地面から顔を見せていた。
「‥‥ああ、これは骸骨を模したお面だよ。私達の獣性を高めるとかなんとか‥‥」
 緑川が手を伸ばしそれを拾い上げる。彼に生理的抵抗感はないのか? それはともかく、どうやらそれは作り物のお面だったらしい。オーパーツに詳しいらしい緑川が簡単に説明してくれた。それは最初に見つけた上月さんが持つことになったのだが、本人はあまり嬉しそうではなかったようだ。

 一方その頃、鈴美達は遺跡内でかろうじて形が残っているいくつかの家屋を探索していた。
「さすがに家具なんて残ってないな。なにか文献でもあればと思ったんだが‥‥これは首輪か?」
「あたしが隠すとしたら‥‥このあたりかしら」
 家の中は、数百年雨風にさらされて、家具などはほとんど残っていなかった。しかし、ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)が部屋の隅を調べていると首輪のようなものが見つかる。たぶん、なにか曰く付きのものだと思うが、もしかすると当時飼っていたペットの物かもしれない。那由他(fa4832)さんは、石造りの調理場などを丹念に調べている。どうやら主婦の勘らしい。
「これは‥‥まだ使えそうね?」
 その勘が当たったのか、那由他さんは瓶にはいった薬のようなものを見つけ出してきた、たぶんヒーリングポーションだと思う。
「ロクなものが見つからないわね、もっと遺跡っぽいものないかしら。ミカエル、ちょっとこのあたり掘り返してくれない!」
「んー、斧とかゴツイ得物ないんかな? オーノー」
 探索状況に業を煮やした鈴美は、ついに崩れた家屋まで掘り起こさせ始めやがった。それに従って、ミゲール・イグレシアス(fa2671)が怪力を発揮して石などを動かしていく。
「ん? なんや、ただのナイフか。つまらんなぁ」
 途中、なにかナイフのような物を見つけるのだが、重い得物以外興味がないのか、ポイとそこらへんに投げ捨ててしまう。
「‥‥いらないなら貰っておく」
 その様子をぼ〜っと眺めていたシャノー・アヴェリン(fa1412)さんが、そのナイフを拾い上げる。あとで緑川に聞いたら、この地域の古代の人が使用したダークという短剣で、かなり骨董価値も高いものだったそうだ。

 一通り探索を終えた俺達は、合流して遺跡の中央にある舞台跡を探索した。ずいぶんと頑丈に作られているのか、崩れた様子もなくその形を保っている。その造りからも、そこがかなり重要視されていたことがわかる。たぶん、昔の獣人達もこの舞台で歌や演劇を行っていたのだろう。
「どうしたんDa、パピー?」
 そんな中、まだ一緒にくっついていた野犬のパピーが、突然吼えて走り出した。ハワードがそれを追いかけると、舞台の裏に謎の階段を発見する。
「面白そうね、入ってみましょ」
 まて、こんなどこに通じてるかもわからないような、怪しげな階段に入ろうというのか?
「あたりまえでしょ、それを調べるのが探索なんだから!」
 ごもっとも‥‥。俺達は、鈴美の指示でその階段へと入ることにした。暗く狭い階段を、懐中電灯をつけながら降りていく。
「む、天井にひっかかるな‥‥」
「横幅もこれを振るにはちょっと足りないか‥‥」
「わいなんて、頭ぶつかりそうや」
 長い得物を持ったヴァレンや緑川は、武器が壁や天井にぶつかりそうになって顔を顰める。イグレシアスにいたっては、少し身をかがめていた。
 階段を降りると、石畳の通路が続いている。そこを抜けると、小さな小部屋に出た。小部屋には、風化を免れた書物のようなものがいくつか散乱している。
「獣人の歴史書‥‥かしら?」
「パピー! だいじょうぶKa?」
 散乱した書物の一つを拾い上げた那由他さんだが、暗くて内容はよく読み取れない。そんな中、ハワードが部屋の隅でうずくまっているパピーを見つける。しかし、パピーは近づくハワードに唸り声をあげ、その身体をNWへと変えていった。どうやら、ここの書物に潜んでいたNWが感染したようだぜ。
「ぐぉ!? しまった、俺の得物が!」
「ちっ、こう狭いと武器を上手く扱えん!」
 襲い掛かるNW。その鋭い牙が前に出たヴァレンと緑川を切り裂く。ヴァレンの鉄棒は折られ、緑川も狭い室内に苦戦する。しかもこう暗いと、素早いNWを捉えるのも至難で、銃など使えるはずも無く‥‥。
 ガン! ガン!
「当たらない‥‥」
 って、アヴェリンさん銃撃ってるし! 鳥目なんだから気をつけてください、いや関係ないか。などと、言っている場合ではなかった。
「どきなさい! あたしが仕留めるわ!」
「うぉ、あぶねえ!」
 鈴美まで銃を取り出して撃ち始めた。だからそれじゃ当たらねえって、と思ったとき、天井からなにかパラパラと降ってきた。ん? 天井からパラパラ?
「やばい、崩れるぞ!」
 弾が天井を打ち抜いたせいだろう。その衝撃で、天井が崩れ始めやがった。俺達は慌てて逃げ出す。そして、外にでるとちょうどに階段ごと崩れ落ちてしまった。NWになってしまったパピーは、そのまま地下と共に埋まってしまう‥‥。
「まぁ、結果的にNW倒せてよかったじゃない! なによ文句ある?」
 おまえなぁ‥‥いや、あまり言わないことにしておこう。とりあえず、貴重な遺跡の資料は埋まってしまい、俺達はこれ以上の探索を断念した。怪我を負ったヴァレンと緑川は、自分のと那由他さんが見つけたヒーリングポーションで回復して事なきを得る。こうして、俺達の宝探しはようやく終わるのだった。