神霊装甲 消えた道化師アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/17〜02/21

●本文

●冒頭
 アース神族首都アスガルド。『仮面の道化師』トリックスターは、自室で本を開きくつろいでいた。しかし、彼の意識は開いている本には向けられておらず。
「ふむ、さすがに彼もそろそろ動き出す‥‥か」
 そう呟いたトリックスターは、パタンと本を閉じ、椅子から立ち上がる。その言葉に焦りはなく、まるで予定済みだったことを確認するかのような響きがある。
 それからしばらくして、廊下が騒がしくなる。大勢の足音が響き渡り、やがてトリックスターの自室前で止まった。
「トリックスター大佐。王の命令により、貴方を国家反逆罪の容疑で連行します」
 足音の主は、ノックもせず部屋に入ると、まずそう述べる。彼らは、軍に所属する軍士ではなく、王直属の近衛兵団であった。
「トリックスター大佐? くっ、逃げたか! 探せ、まだ遠くには行っていないはずだ!」
 しかし、部屋にはすでにトリックスターの姿は無く。近衛兵の隊長は、慌てて部下に指示を出した。再び廊下が騒がしくなり、近衛兵達が散っていく。
「不可侵であるミーミルへのスパイ行為。重罪は免れぬ、なんとしても捕まえねば‥‥」
 結局、近衛兵はトリックスターを取り逃がし。この日から、彼と彼の愛機SAロキは姿を消すこととなる。この事実は、少なからず軍と、そして現代人達に衝撃をもたらすのだった。

・声優募集
 ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
 審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。

●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
 戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
 召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。
 物語は、ラグナロク戦争を軸に、毎回違う主人公の物語が展開されるオムニバス形式。戦いに巻き込まれた現代人や、ヴァルハラ人たちがそれぞれの視点で物語を紡いでいく。

・世界設定
ヴァルハラ 我々の世界と対になる魂や精神が具現化した世界で、精神力(心の強さ)が力となる世界。絶えず争いが起きていることから、戦いの世界とも言われている。この世界には、それぞれアース神族、ヴァン神族、巨人族という三種族が国を作っており、それぞれがそれぞれの国と争っている。

神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。

アース神族 神の国アスガルドを首都に持つ、好戦的な種族。力(精神的に)が強く、謀略にも長ける。侵略、支配を繰り返し、巨大な国を作り上げた。我々の世界でいう騎馬民族のようなイメージ。 君主制を敷いており、王の下に内政、外政、軍部の各担当者がそれぞれを指揮している。軍の様子は、規律統制のとれた現代軍隊に近いイメージ。

バルドル要塞 アスガルドへの道の要所にあるアース軍の要塞。如何なる物も傷つけることができないと称されるほど強力なバリアを持ち、難攻不落の要塞と言われている。戦闘用の建造物であるにもかかわらず、素晴らしい装飾が施されていることからも、そのバリアへの自信を伺わせる。

巨人族 険しい山々に囲まれるヨーツンヘイムを首都にもつ、暴力的な種族とされている。全長十数メートルと大変体格に恵まれており、力が強く身のこなしも早い。内向的な種族で、自分達の暮らす山々から出ることはほとんどなかった。暴力的とされているが、実際は理知的で歌や詩にも秀でる文化的な種族。本来争いは好まないが、怒ると怖い。

それ以外の種族 ノッカーやピクシー、またドラゴンなど様々なモンスターが存在している。

・主な登場SA
SAヴァルキュリア�U アース神族の量産SAを基に、魂の騎士用に新しく作られた高性能SA。従来機より基本性能が3倍弱アップし、飛行能力も向上された。基本形態以外に、三種類の兵装が用意されており、局面にあわせて変更する。
ヘルヴォル ヴァルキュリア�Uの4つめの兵装として開発された、遠隔兵器エンフェリア搭載型。エンフェリアとは、機体から分離した複数の小型射撃兵器を、意志力によって遠隔操作し、自由に敵を攻撃する兵器である。以前の試作型よりも扱いやすくなっており、搭乗者の負担も少ない。

SAムスッペル 巨人族の開発したSA。搭乗し操縦するロボットというよりも、身に纏い身体を強化するといったパワードスーツのような存在。オーラ射撃兵器を弾くことができるオーラコーティングが施されており。後部スラスターにより短時間ながら空中を飛ぶこともできる。巨人族の戦闘スタイルに合わせ、装備は近接武器が主になっている。

・次話あらすじ
 長く戦争状態にあったアース神族とヴァン神族の戦いが、アース神族の勝利に終わったのも束の間。しばらく沈黙していた巨人族が、突然アース軍の基地に奇襲を行う。巨人軍の新型SAに壊滅的打撃を受け、後退を余儀なくされたアース軍。
 そんな時、突然姿を消したトリックスター。それはアース軍と現代人達に少なからず影響を与える。しかし、その動揺を打ち消すように現れたのは、アース神族の王オーディンだった。オーディンは、類稀なる手腕で軍を立て直すと、巨人軍への反撃の準備を進める。
 それに対し、奇襲に成功した巨人軍は、勢いを増して一気にアース神族の首都アスガルドへと進軍する。だが、首都へ向かうには、難攻不落と呼ばれるバルドル要塞を攻略しなければならなかった‥‥。

・登場人物
 アース神族側現代人 アース神族に収容され、魂の騎士として戦うことになった現代人
 巨人族 SAを用いアース神族に攻勢を開始する巨人族の指揮官やその部下。
 オーディン アース神族の王。王は代々この名を継いでおり、現在の王は見た目20台の若い男性。実際は王位についてからすでに20年以上で、40歳を越えている。最近は姿を見ることが少なくなっていたが‥‥。
 トリックスター(池内秀忠) アース神族側の上級仕官で、「仮面の道化師」と呼ばれている。その名の通り、素顔は仮面で隠されており、元々の素性も出生も本名さえもわからない謎の男
 その他 各種族一般兵士など

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa2401 レティス・ニーグ(23歳・♀・鷹)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa2772 仙道 愛歌(16歳・♀・狐)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「わざわざ呼びたててすまなかったね、楽にしてくれたまえ」
「‥‥いったい、どのような御用でしょうか」
 まるで数年来の付き合いの部下に対するような気楽さで声をかけるオーディン。その様子に、さすがのシェリーも動揺を隠せず、硬い表情でオーディンを見つめる。
「一つ頼みがあってね。キミには独立部隊としてトリックスターを追ってもらいたいんだ」
「な‥‥王は私にトリックスターを討伐‥‥いや、拘束せよと仰るか?」
「そうだ、できれば生きたまま捕らえてほしい」
「勅命、身に余る光栄ですが‥‥」
「キミが彼にとって右腕的‥‥いや、隠し腕的とでもいうべきかな。とにかく、彼に信頼されていたことは知っているよ」
「‥‥‥」
 オーディンの言葉に、押し黙るシェリー。その言葉は、暗にトリックスターが行ってきた裏の行為、アース神族に不利益になることさえ、シェリーが手伝ってきたことを知っていることを示していた。
「私が、彼を見つけても嘘の報告をしないとは言い切れません」
 シェリーは、必死にオーディンの真意を探ろうとする。しかし、シェリーの意志力をさらりと受け流しオーディンは薄く笑みを浮かべている。
「正直だね。私は裏切り裏切られる美しい黒い薔薇のようなキミに好感を持っている」
「裏切り‥‥裏切られる? う‥‥なにを‥‥」
 オーディンは、シェリーにゆっくりと近づき、彼女の唇に自らの唇で触れようとする。一瞬、抵抗しようとするシェリーであったが。
「彼は何故、キミに何も言わず消えたのかな」
「!!」
 次の言葉に不意をつかれ、シェリーは唇を奪われる。
「キミには、今製造中の新造戦艦と新型SAを渡そう。出来るね将軍‥‥いや、まだ中佐だったかな‥‥」
「わ、わかりました、このシェリー・ローズ微力ですが最善を尽くしましょう‥‥」
 唇が離れ、言い含めるように囁くオーディン。シェリーは、触れ合った一瞬、自分を包み込み支配するような強大な意志力を感じ、恐怖を覚えるのだった。

「選ばれし崇高な巨人族によってヴァルハラは管理されるべきなのだよ。さぁ、愚かで小さき者達に、我が部族の恐ろしさを思い知らせてやるのだ!」
 巨人族の先方を任された女部族長ギレーンは、バルドル要塞を前に部下達に檄を飛ばす。彼女の部族は、巨人族の中でも特に戦闘に特化した部族で、死神一族と恐れられていた。ギレーンの指揮により、縦に並んだSAムスッペル隊が要塞へ向かって進軍していく。それに対し、アース軍はオーラガンでの牽制を行うが、ムスッペルのオーラコーティングに阻まれ効果が無かった。
「近接格闘型か、きっちり行くぜ富嶽源っ出るっ!!」
 しかたなく近接武器での応戦に出るアース軍、源も巨大なオーラソード『ブルドガング』を装備したSAヴァルキュリア�Uフリストに騎乗し、敵陣へと突っ込んでいく。
「うぉぉ、ブルドガング電光石火! 雷光切り!!」
 加速ブースターを装着したウィングスラスターは眩い光を放ち、フリストを一気に加速させていく。そのまま高速で敵へと突っ込んだ源は、ブルドガングを縦横無尽に振るい、獅子奮迅の活躍を見せる。そしてその活躍に、一般兵達も士気を高め前へと出る。しかし‥‥。
「我らが巨人族のために!」
「巨人族万歳!」
 死神一族の恐怖は、よく鍛えられた戦技だけではなかった、傷を負い動けなくなった巨人兵達は、最後に敵兵を巻き込み爆発したのだ。
「自爆だと!?」
 敵のあまりの行動に驚愕する源。そして、その死をも恐れぬ行動に、アース軍は恐怖し士気が一気に衰えていく。
「攻撃が効かない? きりが無いわ‥‥」
 長距離用オーラライフル『グングニール』を装備したヴァルキュリア�Uゲイレルルで、後方から支援射撃を行っていたリア。しかし、高出力のライフルとはいえ、敵のオーラコーティングによって少ないダメージしか与えられないことに苛立ちを覚える。しかも、敵の自爆という方法に対しては、特に効果が薄かった。
「それなら、敵の指揮官に格闘戦に持ち込むまで」
 そう呟くとリアは、空中から白銀の豪華な装飾の施されたムスッペル、敵を指揮する部隊長へと向かって疾走する。
「此処から先には通さないよ」
「我が名はベルゲルミル、部族の長となるべき男だ! 何人たりとも私の道をふさがせん」
 目の前に立ちはだかるリアに、かつての部族の英雄の息子ベルゲルミルは気迫と共に巨大なランスを構え突進する。
「くぅ!」
「さっきまでの威勢はどうした! ははは、私を捉えてみよ」
 ベルゲルミルの猛烈な突進を、かろうじて防ぐリア。しかし、遠距離用に換装されたゲイレルルでは、ムスッペルの運動性についていくのがやっとだった。劣勢へと立たされていくリア、そのとき‥‥。
「う‥‥この光景‥‥なに‥‥どこかで?」
 突然リアの頭の中によぎる光景、かつて自分が大きな傷を受け、記憶を失った時。
「頭が‥‥うう‥‥」
「動きが止まっているぞ! ふん、私に出会った不幸を呪うがいい」
「しまった! きゃあああああ!!」
 激しい頭痛に襲われ動きが止まってしまったリア。その隙を見逃さず、ベルゲルミルのランスがゲイレルルを貫く。強化された装甲のおかげで爆砕は免れたが、激しい衝撃と共に吹き飛ばされるリア。
「止めだ!」
「させるか!」
 止めを刺そうとするベルゲルミルの前に現れたのは、安則の駆るヴァルキュリア�Uヘルヴォル。
「ふん、次の相手は貴様か! 少しは手ごたえがあるのだろうな?」
 ゲイレルルの動きが止まったことを確認したベルゲルミルは、ヘルヴォルと対峙する。安則は、相手の挑発に冷静に対処し、空中でエンフェリアを展開した。
「ははは、そんなものが効くと思っているのか!」
「さぁ、それはどうだろうな」
 巧みに操作されたエンフェリアがベルゲルミルを襲う。しかし、エンフェリアの攻撃はコーティングに阻まれ効果が無い。嘲る様に笑うベルゲルミルだったが、安則は余裕の表情を浮かべた。
「ムスッペンと呼称される巨人族の武装はオーラの攻撃を無効にするみたいだからな。こういう技も必要なんだよ」
「ぐぉ! 機雷か!?」
 突然、軌道を変えたエンフェリアが、ベルゲルミルへと突進した。そしてそれは、ベルゲルミルにぶつかると同時に大きな爆発を起こす。
「オーラ射撃は防げても物理攻撃で壊れないわけじゃないだろう」
「おのれ! キサマも武人ならば正々堂々と‥‥」
「戦争に正々堂々も卑怯もないんだよ。それに、自爆なんていう方法をとったお前らに言われたくはないな」
「ぐわぁぁ!」
 相手の予想外の攻撃に怒るベルゲルミル。ブースターでヘルヴォルへと突進しようとするも、エンフェリアに阻まれて動きを止められる。そこへ、ヘルヴォルのライフルが至近距離で放たれる。さすがのムスッペルも、その距離での攻撃を防ぐことはできなかった。苦痛の叫び声をあげながら倒されるベルゲルミル。
「ふん‥‥オーラ防御力が高くとも、人が生み出したるものである以上、どんな兵器でも必ず壊せる‥‥だろ?」

「くくく、圧倒的ではないか我が軍は」
 後方で戦況を見ていたギレーン。自爆という方法をとりながらも、確実に押している自分の軍に優越感を含んだ笑みを浮かべていた。
「ギレーン様、戦場ではSAを装着してください」
「ふん、私はあのような無粋な鎧など好かん。それに、やつらがここまで来ることはありえぬ」
「しかし‥‥」
 ギレーンは、その見にSAを纏わずにいた。元々巨人族は戦場でも鎧などは纏わず、動きやすい薄着のまま戦うことが多かった。そのため、いまでもSAを装着することに抵抗を覚える者も少なからずいた。しかし‥‥。
「くぅ!? どこから!!」
「ギレーン様!!」
「うう‥‥おのれアース神族め‥‥」
 突然の銃声、一筋の光がギレーンを撃ち抜いた。その攻撃は光学迷彩を持つSAギンナルからのものだった。傷を負い、呻き声をあげ倒れるギレーン。突然の二人の指揮官の喪失に、さすがの巨人軍も動揺は隠せず、撤退を余儀なくされるのだった‥‥。

「ん? ここは?」
 ヴァン神族の空中戦艦スキーズヴラズニルの治療室で目を覚ましたレイ。彼女は、前回の戦いから意識を失っていた。
「そうか、あの時‥‥、はっ! エリスは!? ヴァナヘイムはどうなっている!? そんな‥‥、分かった、すまなかったな、あたしの力が足りないばかりに、ああ、ありがとう、体の方はもう大丈夫だ。しばらく、一人にしてくれ」
 船医に状況を説明され、ガクリとうなだれるレイ。安静にするように言って、レイが目覚めたことを報告に船医が出て行くと、レイの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「あたしは何も守れなかったというのね。くそっ、国も、大切なものも、何一つ! 守れず何の為の騎士なの! あたしは、あたしが守りたかったものは‥‥」
 悔しさに叫ぶレイ。それは、いまこの艦にいるほとんどの者が感じていた悔しさだった。


●キャスト
 オーディン       大空 小次郎(fa3928)
 シェリー・ローズ    大道寺イザベラ(fa0330)
 緑川 安則       名無しの演技者(fa2582)
 富嶽 源        伊達正和(fa0463)
 リア          七瀬・瀬名(fa1609)
 レイ          レティス・ニーグ(fa2401)
 ギレーン        仙道 愛歌(fa2772)
 ベルゲルミル      相麻 了(fa0352)