Breath of music 2007冬アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
緑野まりも
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
6万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
03/05〜03/09
|
●本文
「おい、聞いたか? 今年も『Breath of music』が開催されるんだってよ」
「知ってる知ってる、ロックライブのあれだろ。毎年各季節にやってんだぜ?」
「今回は、どんなバンドが参加するんだろうな。結構実力のあるやつらが参加するから、楽しみなんだよな!」
「そうそう、しかもすっげえ新人が出てきたりして、びっくりさせられたりな!」
「芸能プロダクションの人間も結構聴きにきてるらしいぜ。このライブをきっかけに、メジャーにデビューなんてことも良く聞くしな。ほらなんてったっけ、いま人気の女性ボーカル」
「ばっか! 『Wheel of Fortune』のNASUKAだろ! 俺は、前のバンドの頃から知ってたぜ。突然そのバンドを抜けることになってびっくりしたけど、このライブをきっかけにプロダクション入りして、いまじゃ人気バンドのボーカルだもんな。NASUKAならきっとやるって俺は信じてたね」
「調子いいこと言ってんなよ。去年の中頃までは、『Venus』に新しく入ったボーカルがいいって言ってたじゃねえか」
「う‥‥、そりゃたしかにはじめ聴いたときはイイって思ったけどよ‥‥。なんか違うんだよね、歌は確かに上手いんだけど、こうNASUKAみたいに響くものがないっていうか‥‥」
「実は女だったって聞いて、急に好きになったんじゃねぇ?」
「ばっ! 違うって! 俺は本気でNASUKAの歌がだなぁ‥‥」
「あはははは!」
「あ〜、俺もそのライブに出て、メジャーデビューできねえかなぁ」
「無理無理」
「そういえばさ、今回の招待バンドって、その『Wheel of Fortune』じゃなかったっけ?」
「マジ!? うぁ、絶対聴きにいく! チケット取れるかなぁ?」
「だったら、いまのうちに買いに行こうぜ!」
学校帰りの学生達が、ワイワイと一つの話題で盛り上がっている。そんな若者達に人気のライブイベント『Breath of music』が今期も開催されることとなった。
●参加ロックバンド募集!
今年もロックライブイベント『Breath of music 2007冬』を開催いたします。つきましては、参加ロックバンドを募集しております。実力のあるバンドが集まるこのイベントに、貴方も参加するチャンスです。我こそはと思うロックンローラーたちよ、集まれ!
●イベント概要
イベント名 Breath of music 2007冬
会場 ライブハウス『TOKYOロックスター』 収容人数500人
毎年それぞれの季節に行われる、ライブハウス主催のロックバンドのライブイベント。毎回実力のあるバンドを呼び、また無名のバンドにも広く門戸を開いているため、お客にも参加バンドにも人気のあるイベントである。
●イベント参加条件
・音楽経験があること
・ロックンローラーであること
●バックバンド費用
当ライブハウスでは、バックバンドの斡旋も行います。メンバーが揃わず、バックバンドが必要な方はご利用ください。
一人当たり1万円 ライブ前日のリハーサル含む
●招待バンド‥‥『Wheel of Fortune』
現在メジャーで活躍中の人気ロックバンド。ボーカルのNASUKAを中心に、実力のある若者で構成された実力派バンド。
●リプレイ本文
「『Breath of music』、秋に参加したことが思い出されますね」
練習スタジオで、ミッシェル(fa4658)はギターを軽く鳴らしながら、思い出すように呟いた。
「へぇ、そのときはどうだったの? やっぱり緊張とかした?」
「そうですね、プライスレスな貴重な体験も多くありました」
それに、一緒にユニット『プリームラ』を組むことになった朱里 臣(fa5307)が興味深そうに聞き返すと、ミッシェルはニッコリと笑みを浮かべて頷く。
「今回も多分色々な経験が得られるのでしょうね。時は金なりと申します。あれから少しは上達していれば良いのですが」
「時は金なりって‥‥あれ? なんか使い方おかしくない? まぁいっか」
ミッシェルは時々おかしなことわざの使い方をしたりする。臣は少し首を傾げるが、あまり気にしないことにしていた。
「遅くなってゴメン」
「いえいえ大丈夫ですよ〜」
二人がそんな話をしていると、同じく一緒に組むことになった亜真音ひろみ(fa1339)が入ってくる。軽く謝罪をするひろみに、臣が小さく首を横に振って笑った。
「お疲れ様、お腹が空いたら力出ないだろ? これ、作ってきたよ」
「わ、ちょうどお腹が空いてきたところだったんですよ〜」
「おにぎりと豚汁、こっちは特製のブレンドコーヒーだ」
「おお、日本の伝統『トンジル』ですね! 1トンのお肉を芋や野菜と一緒に煮込んだスープ!」
「いや、1トンはないだろ普通‥‥」
ひろみはおにぎりの入った弁当箱と、豚汁とコーヒーがそれぞれ入った魔法瓶を持ってきていた。夜遅くまで練習している二人に、夜食の差し入れである。二人とも嬉しそうな表情を浮かべるが、ミッシェルのどこか間違った日本知識にひろみは苦笑した。
「美味しい! 歌も歌えて、料理もできる。素敵なお姉さまだねぇ」
「いや、ただのおにぎりと豚汁だし‥‥。よし、食べたら練習をするよ! 演出も作曲も最高の仕上がりだから、あたしもそれに答えなきゃな」
しばらく夜食を楽しんだ後、三人は歌の練習を再開するのだった。
「さっきからずっと叩いてますけど、大丈夫ですか?」
「いや〜、久しぶりに叩いたら、なんか楽しくなってきちゃってさ〜。そういう陽織君もずいぶんと楽しそうだぜ」
「あはは、よく弦楽器弾いているときが一番光ってると言われます‥‥実際楽しいですし。でもそんなに顔に出ているのでしょうか」
「いいだろ、やっぱ楽しそうに演奏してたほうが、聞くほうだって楽しいだろうしさ」
陽織(fa4443)、藤間 煉(fa5423)、スモーキー巻(fa3211)が組んだバンド『クロム』。煉は久しぶりにドラムをすることになり、朝から晩までスティックを叩いては身体に馴染ませていた。陽織のかける言葉にも、疲れた様子もなく楽しそうにドラムを叩いている。陽織は陽織で、ギターを演奏している様子は楽しくてしかたないといった感じだ。
「僕もアーティストとして活動するのは久しぶりだし、がんばって練習しないといけないな」
そんな二人を見て、巻も感心したように頷き、ベースとボーカルの練習に励むのだった。
「よーし、今日のリハはこんなもので」
イベント前日、佐武 真人(fa4028)とラシア・エルミナール(fa1376)のユニット『Bi−dah』はステージでリハーサルを行っていた。バックバンドとの調整も一段落ついたところで、真人がOKを出す。
「俺はもう少し彼らと打ち合わせしていくけど、ラシアはどうする?」
「ん、じゃあ少し会場を見学してみるよ」
ラシアはそう言って、ステージから無人の客席へと降りると興味深そうに周囲を見渡しつつ廊下へと出て行く。この会場へは以前にも来たことがあるが、そのときはじっくりと見て周ることはできなかったようで、色々と気になるところを見て回った。
「へぇ、こういうデカイトコってこうなってんだ」
「わ!」
「ん?」
しばらく会場を見て回った後、楽屋へと戻ろうと思ったラシアに、どこからか驚きの声があがった。なんだろうと周囲を見渡すと、同い年ぐらいの女性と目が合う。
「うわぁ、ラシアさんだ。ども朱里といいます!」
「こんちは、なんかよう?」
「あ、うん、ちょっと会場を見学していたら有名なラシアさんを見かけたので、同じステージに立つから挨拶しとこうかなっと」
「ああ、よろしくな。でも有名ってそんなんじゃないぜ?」
「やや、同じ業界にいれば知っていて当然ってぐらいだし」
話しかけてきた臣に、気軽に返事を返すラシア。軽い立ち話をする二人は、お互いアーティストということもあって、色々と話が盛り上がった。
「よ、ナスカ」
ライブ当日、ひろみは招待バンド『Wheel of Fortune』の控え室に来ていた。
「あ、ども‥‥あれ? さっきまであいついたのに」
「あ、今日は別に弟に会いに来たわけじゃないんだ。体調崩したって弟から聞いた、これ良かったら喉に良いんだ」
「俺に? あ、ありがとうございます」
「自家製のゆず茶なんだ。喉や風邪にいいし、あたしも愛用の一品さ」
ひろみは『Wheel of Fortune』のメインボーカルNASUKAに話しかける。このバンドには弟も参加しているので、NASUKAとも顔見知りだった。ひろみはゆず茶を手渡すと、NASUKAの額に手を当てて熱がないか確かめる。
「ん、大丈夫そうだね。今日は最高のライブにしよう。それじゃあたしはそろそろ出番だから」
「‥‥姉御肌ってああいうのを言うんだろうな、カッケー!」
用事を済ませると颯爽と去っていくひろみに、NASUKAは憧れるように目を輝かせるのだった。
多くの観客のざわめきの中、薄暗いステージの上でミッシェルと臣が楽器の最終調整を行う。やがて、ひろみがステージの中央のスタンドマイクの前に立ち、軽く深呼吸をした。暗い中、ひろみは二人に小さく頷きかけ、再び正面の観客達へと視線を向ける。
「グループ名はポルトガル語で雪割草という意味で『プリームラ』。聞いてもらう曲は『そして春風へ』だ」
ミッシェルのエレキギターを爪弾く音色、どこか寂しげなメロディの前奏が流れ出し、三人のメンバーにスポットライトが当たる。黒いシルエットだったのが、少しずつ明るさを増していく。ボーカルのひろみはタンクトップの上にGジャンを羽織り、下はジーパンというラフな服装。ギターのミッシェルもやはりシャツにジーンズ、そして七分丈のジャケットを羽織っている。ベースの臣はオフホワイトのニットに、デニムのフレアミニスカート、足元はブーツとやや可愛らしく。アクセントに首にピンクのショートマフラーで春らしさを演出していて。冬から春へと移り変わるような淡い華やかさがある。ミッシェルと臣は背中合わせになって演奏し、ギターの張り詰めるような高い音を、ベースの低い音が柔らかく支えるように響く。
「寒さに傷付いた翼隠し 寒風の中さ迷い歩いていた」
バラード調の歌声、静かに寂しさを訴えるように語り掛ける。
「自分だけの温もりを捜し求め誰かを傷付け傷つけられ
そんな無駄に繰り返す日々に何の意味があるのかと
問うても答えは掴めずもがくばかり」
マイクを握り締め、ひろみは悲しげな表情を浮かべる。しかし、その瞳は希望を諦めていないような光があって。
「頬を差す風の匂いの変化に気付いた時 降り注ぐ陽の温もりにも気付いた」
いつのまにか、ライトは薄緑になっており、ステージは優しげな雰囲気に包まれている。一瞬演奏が止まり静寂が生まれ‥‥。
「ずっと忘れていたもの ずっと求めていたもの それは意外なほどすぐ側にある!」
パァッとライトが一気に明るくなると同時に、ミッシェルのギターがスピードのある明るいメロディを奏で始め、臣のベースも温もりを感じるような深い低音で補う。
「行こうぜ! 閉じこもっていた殻から飛び出し弾けよう!」
ひろみの歌声が力強いものに変わり、それにあわせ観客達も大きく盛り上がっていく。
「積もった雪が溶けだし小川が出来る頃 翼の傷も癒えるさ!!」
曲が最高潮に達し、飛び立つように音が広がっていき。
「心の奥で求めていたもの それは意外なほどすぐ側にある‥‥」
ラストは、余韻を残しながらもスッと消えていくのだった。
やや明るめのステージで、中央奥に設置されたドラムに煉が腰を下ろす。そして煉を挟んで左前にギターの陽織、右前にベースの巻が立つ。服装はそれぞれ、派手な原色系の赤色に髑髏プリントされたTシャツ、濃灰色の派手に裂けたダメージジーンズの煉。黒のワイシャツをボタン二つほど開けてラフに着崩し、下は暗めのジーンズの陽織。薄い水色のジャケットをカジュアルに着こなし、濃紺のスラックスを穿いた巻。そして各々、ピンクのネクタイを緩く巻き統一性をもたせている。
「『クロム』の巻です。僕達の曲、『Next Season』聞いてください」
巻が軽く挨拶をすると、煉が軽快にドラムを叩き始めた。そのリズムに乗って、ギターとベースがメロディを奏で始める。
「広げた手の上 ひとひらの雪」
歌い始めは煉。男性的なワイルドな歌声。
「「「旅立つ季節の 訪れ告げる!」」」
三人が同じパートで歌う。力強さが増し、歌を盛り上げる。
「もうすぐ君は 冬のコートを脱いで」
巻の少し優しい声が、テンポ良く流れる。
「「「新たな一歩を 春に向かい踏み出す!」」」
明るいアップテンポのメロディが、春への希望を予感させる。続いて、ギターとベースのみの間奏が入り。照明は弱い光に、曲調はスローなバラード風に。
「過ぎ去っていく時に 置き去りにしてきた‥‥」
巻の落ち着いたどこか寂しげな声。
「持ちきれないものに 後ろ髪引かれても‥‥」
煉のしっとりと懐かしむような声。再び間奏が入り、またドラムの軽快なリズムが戻ってくる。照明は淡いピンクに変わり、春の雰囲気を醸し出す。
「「「春告げの雪はすぐに 儚く消えてしまうけど
積み重ねた思い出は 消えることはないから
春告げの花咲く道 顔上げて歩いていこう!!」」」
春の訪れを思わせる明るい曲調。三人は本当に楽しそうに演奏をし、聞くだけでなく見ることでも楽しさを味わうことができる。
『新しい仲間が待つ 次の夢が咲くところへ』
ラストは、それぞれのパートを上手にハモらせ。陽織のギターが締めた。
薄暗いステージ、バックバンドの準備が整うと、最後にラシアと真人が出てくる。真人は、やや隅に置かれたピアノに腰を下ろし、ラシアは中央のマイクに立つ。準備ができたのか、ラシアは何も言わずただ真人に視線を送り。真人は応えの代わりにポロンと鍵盤を軽く鳴らす。
「『Dancing snow』」
ラシアがそう一言呟くように言うと、天井のスポットライトが真人に当たる。ラフな白いシャツと黒いパンツを着た真人は、涼しげな高音を鳴らし、前奏を奏で始める。テンポ良い綺麗な音色は、ガラスか氷の上でステップを踏んでいるようで。照明が徐々に青みを帯びてくる。そしてギター、ベース、ドラムがメロディに加わり、繊細さに強さが加わる。
「冷たい風に巻き上げられて 粉雪が光映す
輝くドレスを身に纏って 微笑み手を差し伸べた」
ラシアの歌い出し、凛とした声が響き渡る。スポットライトが当たったラシア、黒のベアトップに黒のジーンズを纏い、露出された白い肌が映える。
「Dancing snow 手を取り合い二人踊り続ける
冷たく輝く氷のステージの上で」
ミラーボールに反射する白い光が、一瞬キラキラと粉雪が待っているように見え。サビへと向かって曲のテンポは一気にあがる。
「I will continue dancing snow
Till there is not immortality!」
「Under the sky of ice blue
I will continue playing a endless waltz!」
ラシアの声が力強く心を震わせるように歌い上げる。その確かな歌唱力は強さだけでなく、繊細な響きで何かを訴えかける。
「dance all the time 氷のステージの上で‥‥」
ラストは静かに締めて、真人の涼やかな音色が響き渡る中、ゆっくりと照明が落ちていった。
何組もの実力のあるバンドが、ステージを盛り上げて。そのボルテージが最高潮に達した頃、招待バンド『Wheel of Fortune』がステージに上がった。
「ふぅ、なんとか間に合ったかな」
「ラシア、あんたもこっちで聞くの? ほら、ここはいんな」
「ひろみ、悪いね!」
自分の演奏が終わり、急いで客席へと回ったラシア。そこで同じように『Wheel of Fortune』を聞きにきていたひろみが、席に入れてやる。周囲の観客は、まさか自分の隣にさっきまでステージにいた有名アーティストがいるなどとは思わず、ステージに視線は釘付けのようだ。
「ステージでナスカの歌を聞くのは去年の春以来だしさ。あん時はナスだったけど」
「そうだね、あたしも懐かしいな。あん時はどこか危なっかしかったけれど、いまは仲間がいるからね」
「お、始まるみたいだぜ」
二人は懐かしむように以前にNASUKAの歌を聞いたときを思い出す。やがて、ステージ中央にそのNASUKAが立つ。穏やかな表情で観客を見渡すと、ゆっくりとマイクを握り真剣な表情になるNASUKA。
「まずは一曲目、新しく出したシングルから『SNOW CRYSTAL』」
そして、ライブハウス『TOKYOロックスター』は大きな熱気に包まれるのだった。