神霊装甲 謎の世捨て人アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/17〜03/21

●本文

●冒頭
 巨大な橋ビフレストを越えた先、大きな湖に囲まれた島、自由都市ミッドガルド。そこはどこの国にも属さないあらゆる種族が集まった中立都市だった。そして街から少し離れた森の中、古いながらも大きな屋敷に住まうある人物がいた。
「シンドリさま、お食事の用意ができました。こちらへお持ちいたしましょうか?」
「いや、いま食堂まで行くよ」
 メイドの少女に呼ばれ、パタンと本を閉じ、座っていた椅子から立ち上がる男。美しく端整な顔立ちだが、左瞼から頬にかけて大きな火傷の跡が残っている。酷く痛々しい姿だが、その口元には優しげな笑みが浮かんでいた。シンドリと呼ばれたこの者こそ、SA開発の第一人者と呼ばれる者であった。彼は、今は世捨て人同然に、誰とも会わず暮らしていた。
「リヨース、君がいてくれて助かるよ」
「そ、そんな、もったいないお言葉です‥‥」
 シンドリに声をかけられ、メイドの少女は恥ずかしそうに嬉しそうに頬を染めて俯く。この屋敷には、シンドリと彼女しか住んでおらず、家の管理はほとんど全てこのメイドが行っていた。
「そういえば、アース神族とヴァン神族の戦争が終わったそうですね。これでようやく平和になるといいのですけれど」
「‥‥それはどうだろう。まだ巨人族との争いが残っているしね。それにこのミッドガルドも巻き込まれないとも限らない。アールヴヘイムの例があるからね」
「そう‥‥なんですか」
「すまない脅かしてしまったか。大丈夫、アースの王は聡明な者と聞く。よほどのことが無い限り、この地を武力で制圧しようとはしないさ」
「は、はい!」
 シンドリの言葉に肩を落とすリヨース。そんな彼女に、シンドリは優しく声をかけた。その言葉に、安心したように笑顔を浮かべるリヨース。
「よほどのことがないかぎり‥‥ね」
 元気を取り戻し、料理を食堂に並べるため調理場へと向かっていったリヨースを見送りながら、シンドリは含みのある笑みを浮かべるのだった。

・声優募集
 ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
 審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。

●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
 戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
 召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。

・世界設定
ヴァルハラ 我々の世界と対になる魂や精神が具現化した世界で、精神力(心の強さ)が力となる世界。絶えず争いが起きていることから、戦いの世界とも言われている。この世界には、それぞれアース神族、ヴァン神族、巨人族という三種族が国を作っており、それぞれがそれぞれの国と争っている。

神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。

ヴァン神族 新緑の森ヴァナヘイムを首都に持つ、平和的な種族。魔術が得意で、身のこなしも素早い。農耕を行い、大地に根付くことで豊かな国を作り上げた。農耕民族のイメージ。共和制を敷いており、国民に選出された長老会によって国の全ての政治を動かしている。軍の様子は、個々の力を重んじる中世騎士団と近いイメージ。現在はアース神族に首都を占領され、ごく一部の騎士が反抗勢力として戦っている。

ミッドガルド 大きな湖に囲まれた島にある都市。様々な種族が暮らし、統治するものがおらず、市民から選ばれた議員によって管理されているため自由都市と呼ばれている。基本的に中立を掲げており、どの国家にも属さない。商業が盛んで、どんなものでも揃うと言われている。

それ以外の種族 ノッカーやピクシー、またドラゴンなど様々なモンスターが存在している。

・主な登場SA
SAフレイ改 アース神族との決戦で大破したSAフレイを改修した機体。従来の二人乗りのコックピットをそれぞれ二つに分け、高速飛行とSA形態を取れるフレイF。戦闘機時は重火力攻撃機、合体後はバックパックとなる、ソード・オブ・ヴィクトリー(S・O・V)、ソード・オブ・ブリーシンガメン(S・O・B)が使用可能なフレイBとした。

フレイのリミッター ロストテクノロジーによって作れているフレイには、本来の力が出ないようにリミッターが施されている。稀に巨大な意志力によってリミッターが外れる場合があるが、その際は数十倍のパワーを発揮するという。しかし、それはほとんど暴走状態のため、機体にも搭乗者にも大きな負担がかかる。

SAフレイア SAフレイを元に、SAヴァルキュリアの飛行技術を起用した、ヴァン神族の次期主力SA。量産のためにS・O・Vを無くし、代わりに意志力で飛ばした球体でバリアを発生させるアクセサリ・オブ・ブリーシンガメン(A・O・B)を搭載。現代人の意見を参考にし、形態を人型から飛行形態に変形することによって、空中での高速飛行が可能。

SSスキーズヴラズニル ヴァン神族が秘密裏に開発した空中戦艦、通称スピリチュアルシップ(SS)。多くのSAを運用することができ、また高い機動力と防御力を持つバランスの取れた戦艦。

・次話あらすじ
 空中戦艦スキーズヴラズニルによって、アース神族の追撃を逃れたヴァン神族側現代人は、物資の補給とSAの修理のため自由都市ミッドガルドへと向かう。
 しかし、彼らにはもう一つの目的があった。それは、SA開発の第一人者と呼ばれるシンドリにあうことだった。大破したフレイを修理するためには、どうしてもシンドリの協力が必要だった。
 世捨て人となっていたシンドリに協力を求めるヴァン神族。そんな彼らに、シンドリはそのことを見越していたかのように協力を了承する。
 シンドリの協力により、修理改修されたSAを得て、現代人達はアース神族に対抗する力を蓄えていくのだった。

・登場人物
 ヴァン神族側現代人 ヴァン神族に協力し魂の騎士として戦うことになった現代人
 シンドリ(池内秀忠) SA開発の第一人者と呼ばれる男性。容姿端麗だが、顔の左側に大きな火傷を負っている。しかしその顔立ちは、ある人物にとても酷似している。現在は、ミッドガルドの郊外にある森で、ほとんど人付き合いもなく世捨て人のような生活を送っている。
 その他 ヴァン神族の騎士、ミッドガルドの住人など

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa1435 稲森・梢(30歳・♀・狐)
 fa2401 レティス・ニーグ(23歳・♀・鷹)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa3610 ユキイ・アバンサール(36歳・♂・獅子)
 fa5559 黒羽ほのか(20歳・♀・鴉)

●リプレイ本文

「‥‥まだだ、まだ僕は‥‥殴り返せるっ!!」
 渾身のパンチが、SAの頭部を撃ち抜く。SAスキールニルボクサーのパイロット竹内虎雄は、諦めまいと必死の表情でSAを操っていた。周囲には数機のSA、アース神族のヴァン神族残党狩り部隊で、抵抗する虎雄を取り囲んでいた。虎雄の顔にはすでに疲れが出ており、精神的にもまいっているようだ。しかし、その瞳には諦めの色は映っていなかった。
「かならずみんなと合流して‥‥うわっ!」
 背後からの攻撃に機体が激しく揺れる。何とか態勢を整えようとする虎雄であったが、機体のダメージはこれ以上の戦闘が許されぬほど蓄積していた。力尽きるように動きを止めるスキールニル。
「くそ、動け! 動けよ!」
 虎雄の必死の叫びにも、SAは反応しない。止めを刺さんと敵の銃口が向けられ、絶望が襲い掛かろうとするその時であった。
「え‥‥いったい、なにが」
 突然、向けられていた銃が爆発する。続いていくつもの攻撃が、取り囲んだSA達に降り注いだ。動揺する敵SA達。上空を見上げてみれば、一機のSAがこちらへと急降下しているのが見えるのだった。

「あれは、スキールニルボクサー‥‥ということは、虎雄さん!?」
「エリス、揺れるけど我慢してね。助けるわよ!」
 エリスとマリアがSSスキーズヴラズニルを追っている最中に見つけたのは、仲間である虎雄のSAだった。敵に囲まれた虎雄を助けるため、マリアはフレイアを急降下させる。予想外の敵の増援に、浮き足立つ残党狩り部隊を、マリアは上空からビームの雨を降らした。そして他の増援の危機を感じたのか、敵の部隊はその場を離脱していった。
「大丈夫!? 虎雄!!」
「酷い怪我です‥‥早く治療しなくては」
「‥‥マリア、エリス? 生きてたんだ」
 マリア達は、大破したスキールニルを見て、慌ててコックピットを開ける。そこには、攻撃を受けたときの衝撃でぶつけたのか、額から血を流し衰弱する虎雄の姿。心配するマリアとエリスに、虎雄は朦朧とした様子で呟いた。
「急いでミッドガルドへ向かいましょう」
「ええ、そうね。虎雄の怪我も心配だし。狭いけど我慢してね」
 虎雄をフレイアに乗せた二人は、すぐにミッドガルドへと向かって出発した。

「ミッドガルドにいるという、シンドリに会いに行こう」
 最初に言い出したのはフォー・ハーンだった。
「あのSAフレイを修理出来るのはおそらくシンドリしかいねぇんだ」
「たしかにこのままではジリ貧となってしまう。補給もしなくてはならないし、その点に関してはミッドガルドは最適かもしれないな」
 意識を取り戻したレイも、フォーの意見に賛成した。そこで、彼らはミッドガルドへと向かうことになる。
「ヴァン神族の者達だな。一応規則なので、武装その他を確認させてもらうぞ」
 ミッドガルドへとたどり着いたレイ達は、すぐに街の自衛軍の兵士の指示で、市長官邸へと向かわされた。政治のほとんどを議会で決めるミッドガルドであったが、話し合うほどもない小さな事柄を処理する者として、便宜的に市長と呼ばれる者がいた。コゼットというその市長は、レイ達に毅然とした態度で言い放つ。
「あなた達ですか、反乱軍というのは」
「いえ、私達は‥‥」
「水と食料の補給は許可しますが、用事が済み次第、早々に立ち去っていただくことを望みます」
 反乱軍と称され、否定をしようとするレイだったが、どうみても歓迎されていない雰囲気に、驚きと少しの落胆を覚えた。
「監視役として、この者をつけます。くれぐれも行動には気をつけるように」
「ミッドガルド防衛軍、隊長の小林舷文だ」
 コゼットに紹介されたのは、厳つく精悍な顔つきをした男性。レイ達を市長官邸に案内した者だった。舷文と名乗ったその男は、名前からして現代人のようであったが、何故ミッドガルドにいるのか。
「すまないな。現在、中立といっても、アールヴヘイムの例があるからな。何時、何があるか分からない状況では備えねばならないのだ」
 市長室を出た後、舷文はそう答えて理解を求めた。ヴァンの残党を匿い、アースの侵攻の理由にされては困るのだという。
「シンドリがこの街にいるって聞いたんだが、会えないか?」
「シンドリ? たしかに街の外の森に住んでいるのは確かだが‥‥」
 フォーの質問に、舷文は渋い顔を浮かべた。
「当代随一のSA開発者なのは認める。だがどこか嫌な感じを感じてしまうのだ。ほかの奴はいい人だというが、どーも気に食わん。自衛官としての勘だと言われればそのとおりで根拠はないがな」
 そう言いつつ、シンドリの住居へと案内する舷文。シンドリは、街から少し離れた森の奥に居を構えていた。
「お待ちしていましたよ皆さん。話は市長から聞いています」
 そう言って、出迎えるシンドリ。左半分の火傷は痛々しいが、端整な顔つきに人の良い笑みを浮かべるシンドリは、レイ達を歓迎しているようであった。
「ささやかですが食事の用意がしてあります。よろしければお話はその後にでも」
 シンドリは、屋敷の主人としてレイ達をもてなす。それはとても自然な様子に見えた。しかし‥‥。
(「シンドリ‥‥どこかで会った気がするのは気のせい?」)
 ヴィオはシンドリの雰囲気に、以前に会ったことがあるような気がして不信感を抱き、警戒心を強める。
「‥‥というわけで、我々にはあんたのような素晴らしい技術者の協力が必要なんだ」
「事情はわかりました。私もアース神族には思うところがあります、及ばずながら力をお貸ししましょう」
 フォーの説得に、あっさりと応じるシンドリ。その様子に、ヴィオはより一層の不信感を高める。
「フォー、本当に彼は信用できるの?」
「何を言っているんだ。シンドリってのはな俺なんて足元にも及ばないぐらいすごい人なんだぜ」
「でも、何の見返りもなく協力してくれるなんて怪しいでしょ?」
「心配し過ぎだろ、そんな物言いシンドリに失礼だぜ?」
 不信感を口にするヴィオだが、フォーは完全にシンドリを信頼しているようであった。結局その日から、シンドリはSAの修理と改修を手伝うことになる。

 その夜‥‥。
「それで私に話があると」
「実は‥‥」
 黒木丈はシンドリに会っていた。軽口を挟みつつ、シンドリに話を促されると、真剣な表情で以前の戦いのことを話す。
「アンタを見込んで聞くが、俺はどうすればヤツに勝てる?」
「それは、技量でも性能の差でもなく、単純に操者の力の差、力の要となる精神力の差と言えるだろう」
「言ってくれるねぇ‥‥でも確かにその通りだ」
 シンドリの率直な言葉に苦笑する丈。しかし、シンドリは話を進める。
「だが、その者と君にそれほど大きな力の差があるとは思えない。君は、とても大きな潜在的な力を有しているように思えるよ。だが、それを引き出せるかどうかが分かれ目だろう」
「俺自身も変らないと‥‥そういう事か」
「私の研究の一つに本能を引き出す装置がある‥‥しかしそれはとても危険だ。場合によっては暴走の危険もある」
「‥‥それでも、俺はヤツに勝ちたい」
 丈の返事に、シンドリは無言で頷くのだった。

 それからしばらくが経った。シンドリの地下工房では、SAの修理と改修が行われ。フォーも泊り込みで作業を行う。フォーは、シンドリの造詣の深さにますます感心し、信頼を深めていった。
 また、その間にマリア達もレイ達と合流し、その無事を喜び合った。やがて、修理が完了する。
「できたぜ! 変形合体とV・O・T・Sを搭載したフレイ改だ」
 合体機能と新武装を装備したフレイ改。その他にも、格闘戦特化のSAヴィザール、武装にもなる追加飛行ユニットを装着したヴィオ機。そして‥‥。
「ビーストシステムを搭載したベオウルフだ」
 人間の本能を引き出し、精神力を極限まで引き上げるシステムを搭載した、四足獣形態へと変形可能な黒いSAベオウルフ。丈の機体だった。

「反乱軍の者が、市民に暴力をはたらいたという報告を受けました。彼らに即刻退去するよう通達しなさい」
「はっ、しかし、私はそのような報告は‥‥それに、彼らがそのようなことを‥‥」
「これは命令です」
「はっ‥‥了解しました」
 コゼットの命令に、舷文は疑問に思いつつも従う。
「何処に行っても彼らは厄介者‥‥悲しいかな理想と暴走は紙一重と云う事ね‥‥。これでよろしかったですか?」
「ご苦労だったねコゼット。彼らには早々に動いてもらわないとならないからな」
 舷文が部屋を出て行ったあと、コゼットは隣室で話を聞いていた誰かに話しかけた。そしてその誰かは、満足そうに呟くのだった。

「戦争が終わったならば、この街に来るといい。そのときは旨い酒と食事で迎えよう。戦いを求めてくるならば銃口と銃弾で迎える。それだけは覚えておいてくれ」
 改修後すぐに発たねばならなくなったレイ達に、舷文はそう言葉を残し敬礼をした。シンドリは引き続き協力を申し出て、船に同乗する事になった。新しい力を手に入れ、彼らの向かう先は。

●キャスト
 緑マリア
  稲森・梢(fa1435)
 エリス・リヴァイア
  水鏡・シメイ(fa0509)
 竹内虎雄
  伊達正和(fa0463)
 ヴィオ・ローザ、レイ
  レティス・ニーグ(fa2401)
 黒木丈
  相麻 了(fa0352)
 コゼット
  黒羽ほのか(fa5559)
 小林舷文
  名無しの演技者(fa2582)
 フォー・ハーン
  ユキイ・アバンサール(fa3610)
 シンドリ
  池内秀忠
 リヨース
  牧村ユミ