豚子をメタモ! リアルアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 2.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/13〜02/26

●本文

「ヒロイン『皆町詩子』役は伊藤ミリさんに決定しました、おめでとうございます」
「え‥‥あ、はい! ありがとうございます!」
 『豚子をメタモ! ヒロインオーディション』にダメもとで応募した伊藤ミリは、その日オーディションの結果報告を受け、ヒロイン役に決定したことを知る。
 伊藤ミリ16歳、豚の獣人で、身長約150cmほどの小柄なぽっちゃり系、俳優志望の少女。今回のオーディション参加者の中で、『豚子をメタモ!』のヒロイン役にイメージが一番近いという理由で、抜擢された新人俳優である。
 『豚子をメタモ!』は、漫画を原作にしたドラマで、豚子と呼ばれイジメられている皆町詩子が、あることをきっかけにクラスの協力を得て可愛く素敵な女性に変身し、学園のアイドルになるというサクセスストーリーだ。
 いままで、これといった役がなかった新人俳優のミリにとって、ドラマのヒロインという大役を演じるということは大きなチャンスであったのだが‥‥
「どどどど、どうしよう‥‥」
 オーディション合格の余韻が醒めた頃、彼女に初めての大役という大きなプレッシャーが圧し掛かるのだった。そして、それは彼女にとって激しいストレスとなっていく。

「体重が増えたですって!?」
「ご、ごめんなさい‥‥」
 今回の仕事で、新しく伊藤ミリのマネージャーについた春原美香子が、驚きというより叱責に近い声を出す。豚の獣人であるミリは、元々太りやすい体質なのだが、それが今回の大役のプレッシャーによるストレスで過食症になり、体型を維持できぬほど太ってしまったのだ。
「貴女! 今回の役がどういったものかちゃんと理解してるの! イジメられっ娘が、可愛く綺麗になって、学園のアイドルになるサクセスストーリーなのよ! 痩せるならともかく、太ってどうするの!」
「ご、ごめんなさい〜‥‥」
 美香子に叱責されて、身体を縮こませてプルプルと震えるミリ。その姿は、たしかにイジメられっ娘のヒロインをイメージさせるものなのだが‥‥。ちなみに、美香子もストレスの一つの要因になっていることは間違いない。
「もうすぐ撮影が始まるのに‥‥しかたないわ」
「‥‥?」
 携帯電話を取り出して、なにやら相談する美香子。心配そうにその様子を見つめるミリに、電話を終えた美香子がギロリと睨みつける。
「貴女には、撮影にあわせて痩せていただきます」
「え‥‥」
「ですから、ドラマのヒロイン詩子が痩せて綺麗になっていくのと同じように、貴女も痩せてもらうの! 食事制限、運動、エステ! あらゆる手段をもって痩せてもらうわよ! スケジュールは実際のヒロインより厳しいものになるから覚悟しなさい!」
「ええ!!」
 美香子が厳しい顔で言いつける内容に、ミリは驚きと恐怖の声をあげた。それはまさに『豚子をメタモ!』を再現するかのようであった。

 撮影現場では、撮影の順序を変更し、ストーリーの通りの順序で撮影していくことになった。そして、ミリにもストーリーにあわせて体重を減らさせることになる。スタッフ達の協力体制のもと、はたしてミリは短期間で痩せることができるのだろうか‥‥。

●今回の参加者

 fa0491 ハディアック・ノウル(23歳・♂・鴉)
 fa0856 実夏(24歳・♂・ハムスター)
 fa1050 シャルト・フォルネウス(17歳・♂・蝙蝠)
 fa1465 椎葉・千万里(14歳・♀・リス)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa2706 サレナ=ブリュンヒルド(20歳・♀・一角獣)
 fa2722 如鳳(49歳・♂・亀)
 fa2844 黒曜石(17歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

「それではお願いしますね?」
「ええ、わかったわ。よろしくね、ミリちゃん」
「は、はい、よろしくおねがいします!」
 撮影開始前、伊藤ミリのマネージャー春原美香子は、スタイリストの中松百合子(fa2361)にミリを預けることになった。百合子はミリに付き添い、彼女の体重管理をすることになったのだ。緊張した様子で、頭を下げるミリ。
「さて、サレナさん。服の方お願いするわ。最初は地味な露出の少ないものにして、下着で体型を矯正しましょう」
「そうですね、ストーリーにあわせて痩せて見える服も用意しないと。でも、ミリちゃんは小さくて可愛いから色々着せたいですね、ふふふ‥‥」
 さっそく百合子は、同じスタイリストのサレナ=ブリュンヒルド(fa2706)と相談し、撮影にあった服を用意し始めた。サレナもミリをじっくりと見定めて、まるで着せ替え人形を楽しむかのように、楽しそうな笑みを浮かべた。

「おつかれさまでした〜」
「おつかれはん、演技上手やったで」
 ミリが初日の撮影を何とかこなしたころ、音楽担当の実夏(fa0856)が笑みを浮かべながら声をかけた。実夏は、ミリの緊張をほぐすように気さくな感じで話しかける。
「体質で太りやすいそうやけど、これから痩せなあかんなんて大変やな」
「う、はい‥‥。でも、私もプロですから美香子さんが言うようにちゃんと体重管理できないとと‥‥」
「うん、立派な心意気や! そこで、ミリさんに俺からプレゼント!」
「‥‥CD?」
 実夏は、ニッコリ笑って持っていたCDをミリに手渡す。ケースのラベルには『ダイエットポップミュージック』と書いてあった。
「身体が動かしやすいように、明るい可愛い感じの曲を作ってみた。これにあわせて、身体を動かせば楽しみながらダイエットができるっちゅう寸法や」
 CDの説明をしながら、なにやらダンスのようなものを踊る実夏だが、どこかぎこちない。
「へ、下手でもええんやで。曲にあわせて自分の動きたいように動けばええんや、はは‥‥」
「ありがとうございます!」
 どうやら、曲にあわせた振り付けを考えようとした実夏だが、ダンスは専門外のようであった。ともかく、ミリが楽しんで身体を動かせるように作ったCDは感謝されたようだ。
「どうも〜」
「‥‥!」
 CDを渡し立ち去った実夏を見送ったミリの前に、黒いグラサンをつけた黒服の男性が声をかける。一見、どこかのマフィアかと思わせるその姿に驚き絶句するミリ。
「おや、おどろかせてしまいましたか。わたくし、ハディアック・ノウル(fa0491)と申します」
「あ、はい、伊藤ミリです‥‥」
 ミリの様子に苦笑した黒服の男性ハディは、丁寧な言葉で挨拶をすると笑みを浮かべた。ミリも、その物腰の柔らかさに少し警戒を解いた様子で。
「突然ですがミリさん、トランペットをやってみませんか?」
「え?」
「楽器が演奏できると楽しいですよ。リラックスにもなりますしね。もちろん、マネージャーさんには許可を取ってありますよ」
「あ、あの、お願いします」
 ニッコリと微笑むハディ。ミリはちらりと美香子が頷くのをみて、恐る恐るハディの差し出したトランペットを取った。そして、ハディの指導の下トランペットの練習をする。
「ん〜〜〜〜! ぷはぁ!」
「そんなに気張らなくても音はでますよ」
 初めての経験で、顔を真っ赤にしながらトランペットを吹こうとするミリ。慣れないために、まともに音はでないが、ハディはやさしく指導する。
「‥‥プフゥ〜♪ でた!」
「いいですね、その調子ですよ」
「はぁはぁ‥‥はい!」
 なんだかんだと、しばらくの指導の末にようやく音がだせるようになったミリ。まだまだ、曲をひけるといったレベルではないが、成功したということはミリに少し自信をつけたようだ。
「最初、怖い人かと思いました」
「はは、よく言われますが、わたくしは子供好きなんですよ」
 ミリの言葉に穏やかに笑うハディ。どうやら、二人はかなり打ち解けたようである。

「黒曜石だ、よろしく」
「お、おぷし?」
「クロでいい」
「え、あ、はい、よろしくおねがいしま‥‥ひゃ!?」
「いい肌だ。しっとりして吸い付くようだ。現役高校生は違う」
 黒曜石(fa2844)は、挨拶もそこそこに、ミリの頬を触っては感想を漏らす。そして、突然のことで驚くミリを無視して、全身を見回し。
「抜擢されただけの事はある、素材はいい。もっと自分に自信を持て。そして、それを維持することを努力しろ。俺が男の身でこの姿を維持するのにどれ程苦労しているか」
「は、はい‥‥男の人だったんだ」
 矢継ぎ早に発せられる黒曜石の言葉に、緊張した様子のミリだが、ぽつりと黒曜石を女性と勘違いしていたと呟いた。
 その後、黒曜石は食事について百合子と相談し、低カロリーながらボリュームのある食事といった案でまとまったようであった。
「自分がこうなりたい、こうあるべきだ、という姿を強く思い描くんだ。そうすれば頑張れる」

 撮影も中盤、数日間の食事制限や撮影のストレスは、ミリに徐々にたまってきているようである。
「うう‥‥甘いもの食べたいよぅ‥‥」
 撮影の合間に、ふらふら〜っと休憩室に立ち寄ったミリ。そこには、誰がおいていったのか、数個の大福が‥‥。
「大福だ! ‥‥ちょっとだけなら、誰も見てないよね‥‥」
「‥‥何やってるの?」
「ひぃえやぅあぅ!?」
 こっそり周囲を警戒しながら大福に手を伸ばすミリ。そこに、突然後ろから声がかかった。驚き、一気に休憩室の隅に逃げ込むミリ。
「あんた、今ダイエット中だろ? そんなの食べたら、元も子もないよ」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
 現れたのはシャルト・フォルネウス(fa1050)。フードを被って顔を隠しているちょっと怪しい雰囲気だが。
「間食は感心しないけど、我慢できないならこれを食べな」
「え‥‥」
 平謝りに謝るミリの頭をそっと撫で、シャルトは市販のコンニャクゼリーを手渡す。
「‥‥痩せれるかどうかはあんた次第」
「‥‥‥」
 スーッと立ち去るシャルトを、呆然としながらミリは見送るのだった。その後、テーブルにあった大福の代わりに、皆で作った『リラクゼーションミュージック』というラベルの貼られたCDが置かれていた。

 撮影も終盤、めずらしくセリフを連続で失敗したミリに美香子が叱責する。シュンと肩を落とすミリ。
「まぁ、美香子さん。最終的には監督もOKだしたんですし、そんなに怒らなくてもいいやないですか」
「しかしですね‥‥」
「美香子さん、ちょっとご相談がありますのでよろしいですか? チマちゃん、あとよろしくね」
「はい! ミリさん今日の撮影終わりやろ、気分転換に一緒に出かけよ」
 実夏が半獣化し、『和気穏笑』で空気を和らげ。百合子が美香子に相談を持ちかけてミリから離す。そして、椎葉・千万里(fa1465)がミリを遊びに誘った。
 百合子の言葉に、しかたなく美香子も頷き、ミリ達は気分転換の遊びにでかけることになった。
「ミリさん、うちも一緒にダンスしてええですか」
「ミリさん、あの服かわええね。ミリさんに似合うと思うよ」
「うちのバイオリン聞いてくれへん」
 ミリとチマは、一緒に実夏の作ったCDにあわせてダンスを踊ったり、買い物に出かけたり、バイオリンを弾いたりする。しかし二人に試練が‥‥。
「あ、あそこのお店美味しいって噂のケーキ屋や‥‥」
「う‥‥でもダイエット中だし」
「そ、そうやね‥‥」
「百合子さんから伝言だ‥‥今日はケーキの日だから食べてもいいらしいぞ」
「わひゃぁ!?」
 買い物の途中で見つけたケーキ屋に惹かれる二人に、突然現れたシャルトがケーキの許可を伝える。
「だが、ほどほどにな‥‥」
「は、はい‥‥」
「神出鬼没な人やな」
 そしてまたスーッと去っていくシャルトを、呆然と見送るミリとチマであった。その後、二人は美味しいケーキを食べて満足するのだった。

 一方その頃、百合子達は美香子とお茶をしながら相談をしていた。
「それで、あまりキツく言っても逆効果だと思うのです」
「しかしですね、私もミリのこと思って‥‥」
「それはわかってるわ、でもストレスからくる過食症というのは、自分ではどうにもならないものよ」
「私たちもプロですもの、ここは私たちを信頼して任せていただけませんか?」
「ミリさんも、プロいう自覚はあるようやで。褒めるのもマネージャーの仕事やろ? この仕事だけやなく、今後のことも考えなあかんと思うで」
「‥‥そうですね」
 サレナと百合子、実夏は、美香子にもう少し抑えるように提案する。美香子はしぶしぶながら頷くのだった。

「ん〜、ちょっと水着審査のシーンは難しいですね」
「さすがに、水着は矯正できないわね」
 撮影最終日、予定通りの減量とはいかず、しかたなく水着審査のシーンを変更することになった。サレナと百合子はもう少し絞るべきだったかと肩を竦めるが、それ以外はイメージを崩すことのない見た目を維持することができたようだ。
「よくやった、より美しくなった」
 黒曜石が満足そうにポツリと呟いたが、たしかに撮影初期と比べると短期間であったが随分と見た目はよくなったように思える。
 その後、ミリはリバウンドすることなくダイエットを続けられているようだ、これは一つの成功と言えるのだろう。