神霊装甲 決断の時アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/12〜05/16

●本文

●冒頭
「ミーミルとは遙か天空に浮かぶ、人工の星です。その主な役目は、微小の端末装置によって送られる世界各地の映像を集め、アスガルドにある知恵の泉に送信することです」
 巨人族を焼き払った天空の光を見た直後、ヴァンの騎士達はシンドリによって軌道衛星ミーミルの存在を知らされることになった。
「しかし、ミーミルにはもう一つの機能があり。それが、あの『神の怒り』と呼ばれる、光の柱、言うなればとてつもなく強力なオーラ砲なのです。伝承では、世界創生時代にオーディンがあの力を使い、いくつもの種族を滅ぼして神になったと言われています」
 シンドリの話は、元々この世界に住む者達にも初めて聞く話だった。
「かつて、現在の我々の文明よりも発達した文明が存在していたことはご存知かな。世界にはその時代の遺跡なども残っていますが、あのミーミルはその遺物なのです。一般には知られてませんが、SAの技術も元々古代文明の遺跡で発見され、フレイなどプロトタイプと呼ばれる物は、遺跡で発掘された物がほとんどなのです」
 何故、シンドリがそのようなことを知っているのか疑問に思う者もいるが、現在の問題はもっと重要だった。
「話はミーミルに戻りますが。あれは見ての通り、危険な『兵器』です。街一つ滅ぼすことなど容易く、現に巨人族の主力は一度の攻撃で壊滅しました。その衝撃はあまりに強く、世界でいまだ中立を守っている者達も、その力に従わずにおれないでしょう。つまり、アース神族、いやオーディンの野望を止めるのに一刻の猶予も残されていないということです」
 シンドリの言葉に、一同はシンと静まり返り、苦渋の選択を迫られていることを実感している。
「味方を募る時間的余裕はもうありません、今戦うか、それとも諦めて身を隠すか二つに一つ」
 うなだれる一同、レジスタンスの協力を得たといえ、現戦力ではアース神族に対し勝ち目がないことは明白。それに加え、ミーミルの破壊力を知ってしまった今、士気は極端に下がっている。
「今後の方針をどうするか、あとは貴方達が決めることです‥‥」

・声優募集
 ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
 審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。

●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
 戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
 召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。

・世界設定
ヴァルハラ 我々の世界と対になる魂や精神が具現化した世界で、精神力(心の強さ)が力となる世界。絶えず争いが起きていることから、戦いの世界とも言われている。この世界には、それぞれアース神族、ヴァン神族、巨人族という三種族が国を作っており、それぞれがそれぞれの国と争っている。

神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。

ヴァン神族 新緑の森ヴァナヘイムを首都に持つ、平和的な種族。魔術が得意で、身のこなしも素早い。農耕を行い、大地に根付くことで豊かな国を作り上げた。農耕民族のイメージ。共和制を敷いており、国民に選出された長老会によって国の全ての政治を動かしている。軍の様子は、個々の力を重んじる中世騎士団と近いイメージ。現在はアース神族に首都を占領され、ごく一部の騎士が反抗勢力として戦っている。

それ以外の種族 ノッカーやピクシー、またドラゴンなど様々なモンスターが存在している。

・主な登場SA
SAフレイ改 アース神族との決戦で大破したSAフレイを改修した機体。従来の二人乗りのコックピットをそれぞれ二つに分け、高速飛行可能な戦闘機形態とSA形態を取れるフレイF。戦闘機時は重火力攻撃機、合体後はバックパックとなる、ソード・オブ・ヴィクトリー(S・O・V)、ソード・オブ・ブリーシンガメン(S・O・B)が使用可能なフレイBとした。

SAフレイア SAフレイを元に、SAヴァルキュリアの飛行技術を起用した、ヴァン神族の次期主力SA。量産のためにS・O・Vを無くし、代わりに意志力で飛ばした球体でバリアを発生させるアクセサリ・オブ・ブリーシンガメン(A・O・B)を搭載。現代人の意見を参考にし、形態を人型から飛行形態に変形することによって、空中での高速飛行が可能。

SSスキーズヴラズニル ヴァン神族が秘密裏に開発した空中戦艦、通称スピリチュアルシップ(SS)。多くのSAを運用することができ、また高い機動力と防御力を持つバランスの取れた戦艦。

・次話あらすじ
 シンドリの話に動揺するヴァンの騎士達。シンドリの話が真実ならば、いまや一刻の猶予もない。戦うか退くか、騎士のリーダーとなったレイに判断が委ねられた。
 方針が決定するまでの数日、スキーズヴラズニルに搭乗している面々は、それぞれの時間を過ごしていた。次の戦いに向けて準備する者、戦う意味を模索する者、穏やかに過ごす者‥‥。
 果たして彼らはどこへ向かうのか。レイの決断は。そして、シンドリの真意とは‥‥。

・登場人物
 ヴァン神族側現代人 ヴァン神族に協力し魂の騎士として戦うことになった現代人。
 レイ ヴァン神族の女性騎士。フレイ改の搭乗者で、現在はSSスキーズヴラズニルの騎士達のリーダー的な役割となっている。双子の姉リアがいるが現在行方不明。
 シンドリ(池内秀忠) SA開発の第一人者と呼ばれる男性。容姿端麗だが、顔の左側に大きな火傷を負っている。しかしその顔立ちは、ある人物にとても酷似している。現在はヴァン神族に協力することになり、空中戦艦に搭乗している。
 その他 ヴァン神族の騎士、整備兵など

・備考
 物語はミーミルの『神の怒り』発動から数日後。巨人族スルトのアスガルド襲撃より以前となる。
 最終的に『戦う』ことを決定し、物語はアース神族との決戦へと進んでいく予定。

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa1435 稲森・梢(30歳・♀・狐)
 fa2401 レティス・ニーグ(23歳・♀・鷹)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa3610 ユキイ・アバンサール(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

「武力で他の民族を制圧する事が正しい事とは思えない。それに我々みたいに国を追われた者をこれ以上作る訳にはいかない。とはいえ、おそらく勝ち目の薄い戦いだ。それでも私と戦ってくれるものは艦に残ってくれ」
 シンドリの話が終わった後、ヴァン神族の双子の女性騎士の一人レイは、そう言って仲間達を見つめた。ヴァンの騎士達は、シンドリの話を聞き少なからず動揺したような表情を浮かべ、室内はシーンと静まり返った。
「ここまで来て、後戻りできないよ」
 そんな中、竹内虎雄が立ち上がり、はっきりとした声で答えた。その表情は真剣で、決意を胸に秘めた強さが現れている。
「俺の腹は決まっている‥‥奴を倒すそれだけだ」
 黒木丈も戦いを続ける決意をあらわにする。しかし、彼にはもう一つの戦う目的、倒すべき目標があるようだった。
「今でも戦いで物事を解決することには抵抗があります。しかし、戦わねばならないときに、戦わずに背を向けることはしたくありません‥‥悲劇を止める戦いならなおさらに」
 いつも穏やかな笑みを浮かべているエリス・リヴァイアも、その表情を厳しく真剣なものにして頷く。
 彼らの言葉に、動揺していた他の騎士達も、戦いに参加する気持ちを明らかにするように立ち上がった。しかしその中で。
「軍治用人工衛生に無数の監視カメラ。‥‥そして、大出力のオーラ砲。‥‥少し考えさせて頂戴」
 緑マリアは動揺したままの青ざめた表情で、言い辛そうに伝える。盛り上がりを見せていた騎士達も、一瞬静かになる。
「マリア‥‥ああ、気にしないで。他の者も、もう少し考えてから決断してもらっていい。‥‥では解散!」
 レイは一瞬寂しげな表情を浮かべたが、すぐに微笑を浮かべ。全員に考える時間を与えるようにその場を解散し、部屋を出て行った。

「ねぇ、丈〜、丈ったら! どこ行くのよぉ!」
 格納庫へと向かう丈の周囲を、蝶の羽が生えた小妖精ピクシーのリリィ・フォウが、忙しなく飛び回る。艦のマスコット的存在のリリィは、何故か丈と共に行動することを好んでいた。
「哨戒‥‥じっとなんてしてられないぜ」
 丈はリリィにそう答え、自分の愛機SAベオウルフへと搭乗する。
「待ってよ丈、アタシも行くんだからぁ」
 ハッチが閉まる前に、リリィがコックピットに飛び込む。最近では、リリィはよく丈と一緒に搭乗することが多くなっていた。それは単純にリリィが好きで一緒にいるわけだが、ベオウルフの暴走を抑えることにも一役買っているのだった。
「ベオウルフ行きまーす!」
 丈も、いまではリリィが一緒でも文句を言わなくなり。気にした様子もなく、ベオウルフを発進させる。
「丈は何で戦うの? こっちの世界の人間でもないのに」
「決着を付けたい奴がいるからな‥‥それに‥‥」
「それに?」
「いやなんでもない‥‥お前こそ、どうなんだよ」
「アタシは丈についてくだけよ、どーせ難しい話は分かんないし」
「なんだそりゃ‥‥」
 適当に辺りを歩き回る丈に、リリィが不思議そうに聞く。丈はそれに答えながら、もう一つの目的を思い出していた。
「リア‥‥」
 丈の回想シーン。ヴァンの女性騎士であり、レイの双子の姉リア。丈は、彼女と初めて会った時から惹かれていた。そして、彼女の方もやはり丈に惹かれていたのだった。
「丈って面白い人ね。女の子なら誰でもそんな風に誘うの?」
「騎士として育てられたから、いままで女の子らしいこと、ほとんどしたことないの」
「ふふふ、じゃあ、私の恋人になってくれる?」
「きゃあああ!!」
 丈とリアの一時のロマンス。しかしそれは、リアがSAロキとの戦闘で大怪我を負ったことで終わってしまった。そして、記憶を失った彼女は、宿敵であるあの女にさらわれてしまう。
「ぜったい、助けてみせる‥‥」
 彼女への愛しさと共に、守れなかった悔しさを思い出し、唇を噛む丈。そんな彼に、リリィが急に騒ぎ出した。
「丈、アレって何かしら? ほら、あの崖の向こうの黒いの。ねぇねぇ丈! 女の人が倒れてるよ!!」
「女の人‥‥? あれは‥‥!」
 リリィの指差す方へと視線を向けた丈は、驚きの声をあげるのだった。

「ハッ、ここは?!」
 リアが目を覚ましたとき、そこは見覚えの無い部屋だった。ふと寝ている自分の横に人がいることに気づくリア。
「気が着いたか?」
「丈‥‥うそ‥‥なんで貴方が‥‥」
 信じられないように呟くリアに、丈は少しおどけるように微笑む。そんな丈を、リアはギュッと抱きしめた。
「怖い助けて丈」
 何かに怯えるようなリアを、丈は優しく抱き返す。
「俺は世界の為に戦う聖人じゃない。でも、大切な女を護る為になら命を賭けてもいいぜ」
「丈‥‥好きよ‥‥んん‥‥」
「お、おい、リア‥‥」
 丈の言葉に、涙を浮かべて唇を近づけるリア。そのまま、二人は口付けを交わした。
「命を賭けるのは勝手だけど、絶対に死んじゃヤダからね」
「安心しな、例え世界を敵にまわそうと俺はお前を護り続ける」
「あちゃぁ、もお見てられないよぉ‥‥アタシだって女の子なんだからね」
 甘い口付けと言葉を交わし二人の世界に入ってしまった二人に、丈と一緒にいたリリィが顔を真っ赤にして部屋から飛び出していく。
「ねえさんが見つかったってほんと!? って、二人とも何してるの!!」
「レイさん、そんな大きな声を出しては怪我人に迷惑に‥‥ん、どうされま‥‥っ!! す、すいません! 決して覗こうなどとは!!」
 それとは入れ違いに、レイとエリスが部屋へと入ってくるが、二人の様子に驚きと怒りの声をあげるのだった。

「自分のスタイルで戦るんだ、自分のスタイルを取り戻さなきゃ」
 星が輝く夜、スキーズヴラズニルのデッキで、虎雄がトレーニングを行っていた。
「こんばんは、がんばってるね」
「ヴィオ‥‥うん、これぐらいしかできることがないから‥‥」
 自分の得意とする戦闘スタイル、ボクシングの練習をしている虎雄に、ヴィオ・ローザが話しかける。
「あ、虎雄、そのこの間はありがとう、目が覚めたよ」
「あ、うん‥‥偉そうなこと言ってごめん」
 ヴィオの礼に、少し照れたように頷く虎雄。しかし、すぐに真剣な表情を浮かべヴィオに問いかける。
「今度の戦い‥‥アース神族の方の人達と、殺し合いになるんだよね怖くない?」
「‥‥‥」
「僕は怖いよ、あの人達の顔と名前と人柄を少し知ってしまったから。でも逃げない、あの人達も逃げないだろうし」
「それを言うなら、あたしは元々あいつらと仲間だったんだ。やり難くないって言ったら嘘になる。でも、それでもあたしが選んだ道だからさ‥‥」
「そう‥‥だよね」
「虎雄は‥‥随分成長したよね‥‥大人になった」
「そ、そんなことないよ」
「いやいや、だって初めて会った頃は、随分頼りない子だなって思ったもの」
「う‥‥」
「でもいまは、辛くても自分の道を選べる男になった‥‥」
「‥‥‥」
 ヴィオの言葉に、照れながらも少し嬉しそうに笑う虎雄。そして戦いは、刻一刻と近づいている‥‥。
「マリアはどうするのかな? 元々彼女、戦いを嫌っていたし‥‥」

「虎雄機、無茶してるぜ、でもこの傷の付き方は嫌いじゃねぇな」
 格納庫では、フォー・ハーンがSAの整備を行っていた。
「ヴィオ機、げっ乙女の柔肌がボロボロじゃねぇか! もう少し強化しねぇと。レイとエリスのフレイ改、癖がやっぱり違うようだな、それぞれ用のカスタマイズそしてその二機の調和、と」
 部下に指示を出しながら、自分でも一機一機、機体の様子を見るフォー。額に汗を浮かべながらも、その表情は真剣そのもので、実に頼りになる様子である。
「俺はシンドリのような技術者にはなれねぇよ、俺は俺だ。だからシンドリのやり方じゃなく俺のやり方で整備していく」
 その言葉には、しっかりとプライドが刻まれている。彼の整備があるからこそ、この艦を運用できるのであった。
「ん、マリアじゃねえか。どうしたんだこんな夜更けに‥‥って、顔色悪いぞ、大丈夫か?」
「うん‥‥ちょっと嫌な夢見ちゃって‥‥」
 そんなフォーが、深夜の格納庫に何故かやってきたマリアを見つける。マリアは、青白い顔をしており、フォーは心配するように声をかけた。
「あの夢は‥‥」
 禍々しい黒いSAと、シンドリが重なる夢‥‥マリアは酷く嫌な予感を感じていた。
「少し風にあたって来る」
「そうか、じゃあ格納庫を開けて待ってるからな」
「‥‥‥」
 そう言って愛機SAフレイアに搭乗するマリア。フォーの明るい声に、マリアは視線をそらした。
「待ってるからな! なるべく早く戻ってこいよ!」
「フォー、ごめんなさい。あなたの想い嬉しかったわ。ヴィオ、エリス、丈。そしてレイ。‥‥ごめんなさい。必ず戻って来るから」
「マリア‥‥ちゃんと戻ってこいよ。しっかりと整備しなくちゃならないんだからな‥‥」
 飛び立っていくフレイア。結局その夜、マリアが戻ってくることは無かった。フォーは、去っていくマリアを見送りながら、そっと呟くのだった。

●キャスト
 竹内虎雄
  伊達正和(fa0463)
 黒木丈
  相麻 了(fa0352)
 エリス・リヴァイア
  水鏡・シメイ(fa0509)
 緑マリア
  稲森・梢(fa1435)
 ヴィオ・ローザ レイ
  レティス・ニーグ(fa2401)
 リア
  結城ハニー(fa2573)
 フォー・ハーン
  ユキイ・アバンサール(fa3610)
 リリィ・フォウ
  十六夜 勇加理(fa3426)