神霊装甲 開かれる門アジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
緑野まりも
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
12人
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サポート |
0人
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期間 |
07/21〜07/25
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●本文
・声優募集
ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。
●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。
物語は、ラグナロク戦争を軸に、毎回違う主人公の物語が展開されるオムニバス形式。戦いに巻き込まれた現代人や、ヴァルハラ人たちがそれぞれの視点で物語を紡いでいく。
・世界設定
神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。
魂の騎士 ヴァルハラに召喚された現代人のこと。彼らは、過去に起きた光と闇の戦いの英霊の魂を内に秘めた人間たちである。魂が力になるヴァルハラでは、絶大な力を持ち。神霊装甲の適正がヴァルハラ人よりも数倍上である。
覚醒 魂の騎士が、英霊の魂に目覚めること。過去に起きた戦いの記憶と共に、真の力(本来のSAの力)を発揮できるようになる。元々の人格が変わることはないが、過去の記憶に引っ張られて行動してしまう者も‥‥。
SA本来の力 SAとは現在ではロボットのような存在だが、元々は精神を具現化させた鎧である。そのため、覚醒し本来の力を取り戻した者は、SAの上に自分の精神を具現化させた姿を投影し、一時的に武装を変化させることができる。このようなSAは、従来機より数倍の能力を有する。イメージは変身といった感じ。
アース神族 神の国アスガルドを首都に持つ、好戦的な種族。力(精神的に)が強く、謀略にも長ける。侵略、支配を繰り返し、巨大な国を作り上げた。我々の世界でいう騎馬民族のようなイメージ。 君主制を敷いており、王の下に内政、外政、軍部の各担当者がそれぞれを指揮している。軍の様子は、規律統制のとれた現代軍隊に近いイメージ。
反アース勢力 アースに占領された様々な種族、巨人族やヴァン神族、ドヴェルグなど。またオーディンの侵略行為に批判的なアース神族などが集まって出来上がった反アース勢力。一応はお互いに協力関係を築いているが、その中には種族間など派閥ができており、微妙な温度差がある。
ヴァルキュリアーズ アース神族の王オーディンが、治安維持を名目に結成した、王直属のエリート軍隊。通常の軍とは管轄が別だが、様々な権限を与えられ、普通のアース軍よりも上位に扱われる。主な任務は、反アース勢力の駆除。何故か上官に多くの女性を起用しており、ハーレム軍隊などと揶揄されることも。
それ以外の種族 ノッカーやピクシー、またドラゴンなど様々なモンスターが存在している。
・主な登場SA
SAヴァルキュリア�U アース神族の量産SAを基に、魂の騎士用に新しく作られた高性能SA。従来機より基本性能が3倍弱アップし、飛行能力も向上された。基本形態以外に、ゲイレルル(遠距離射撃)、スルーズ(高火力)、フリスト(近接)、ヘルヴォル(特殊遠隔)の四種類の兵装が用意されており、局面にあわせて変更する。
SAウルオレルス アース神族の次期主力量産SA。SAヘーニルの後継機で、装甲、運動性能共に向上している。ヴァルキュリアーズの一般兵士用に先行配備されている。
SAフレイ改 アース神族との決戦で大破したSAフレイを改修した機体。従来の二人乗りのコックピットをそれぞれ二つに分け、高速飛行可能な戦闘機形態とSA形態を取れるフレイF。戦闘機時は重火力攻撃機、合体後はバックパックとなる、ソード・オブ・ヴィクトリー(S・O・V)、ソード・オブ・ブリーシンガメン(S・O・B)が使用可能なフレイBとした。
SAフレイア SAフレイを元に、SAヴァルキュリアの飛行技術を起用した、ヴァン神族の次期主力SA。量産のためにS・O・Vを無くし、代わりに意志力で飛ばした球体でバリアを発生させるアクセサリ・オブ・ブリーシンガメン(A・O・B)を搭載。現代人の意見を参考にし、形態を人型から飛行形態に変形することによって、空中での高速飛行が可能。
その他 トール、ヘル、ベルセルクなど
・次話あらすじ
バルドル要塞を利用し、アースの首都アスガルドへの攻略作戦を準備していたヴァンの騎士達。しかし、オーディンの演説により世論は一気にアース神族へと傾く。そして、反アース勢力の暴走に、騎士達も少なからずショックを受ける。
そんな状況の時でさえ、シンドリは計画を進め。そして計画は実行され、空中要塞はアスガルドへと向かって侵攻する。
一方、アース神族もヴァルキュリアーズを中心にして、反アース勢力の侵攻作戦を迎撃する準備を整えていた。しかし、オーディンにはこの戦いに別の思惑があった。空中要塞バルドルと軌道衛星ミーミル、二つの古代兵器には秘密が隠されていたのだ。
シンドリとオーディンの思惑が交差し、アース神族とヴァン神族そして反アース勢力の最後になるであろう戦いがここに始まろうとしていた。
・登場人物
アース神族側現代人 アース神族に収容され、魂の騎士として戦うことになった現代人。
ヴァン神族側現代人 ヴァン神族に協力し魂の騎士として戦うことになった現代人
オーディン アース神族の王。王は代々この名を継いでおり、現在の王は見た目20台の若い男性。実際は王位についてからすでに20年以上で、40歳を越えている。今代になってからSAの量産、積極的な侵略戦争を行い。アース神族を、世界の半分以上を統治する種族にのし上げた張本人。
シンドリ(池内秀忠) SA開発の第一人者と呼ばれる男性。容姿端麗だが、顔の左側に大きな火傷を負っている。しかしその顔立ちは、ある人物にとても酷似している。現在はヴァン神族に協力することになり、空中戦艦に搭乗している。
その他 一般兵士、反アース勢力など
・備考
ヴァルハラの戦争は、いまだに地上戦が主体であり、SAのほとんどが地上用である。そのため、飛行能力を持ったSAは戦闘において高いイニシアチブを取ることができる。しかしそういった機体は高価であり量産には向かず、その数は限られている。
●リプレイ本文
空中要塞バルドル。先の戦いで、ヴァンの騎士達が占領したこの基地では、いまアース神族への反抗作戦の準備を行っていた。ヴァンの騎士だけでなく、反アース派のレジスタンスや巨人族が各地から集まり、アースとの決着をつけようと戦力を揃えていた。
「お姉さん、お茶でもご一緒に‥‥」
そんな中で、黒木丈はレジスタンスの女性などに声をかけていた。そのほとんどは、断られていたが。
「丈〜! またナンパしてたのね! リアに見つかったら怒られるよ」
「うわ、頼む、リアには内緒にしてくれ」
そんな丈のもとへ、ピューっと飛んでくるピクシーのリリィ・フォウ。腰に手を当て、ぷんぷんと怒るリリィに、丈は手を合わせてお願いする。
「もぅ、もっと真面目にやらないとダメだよ」
「はは、ごめんごめん」
「‥‥それでなくたって、この間からみんなピリピリしてるのに」
「‥‥そうだな」
リリィの不安そうな言葉。少し前に行われたオーディンの演説に、反アース派の人間は少なからずショックを受けていた。表面上は大きく変わりはないが、精神に敏感なピクシーのリリィには、不安や疑心暗鬼など負の感情を周囲から感じ取っていた。
「それより! どう? カッコイイでしょ?」
「?」
「服よ! 服! 丈に合わせてパイロットスーツを作ったの」
「あぁ〜」
突然元気な声をあげ、リリィが丈の目の前でクルリと回ってポーズを取る。丈は、何のことかわからず首を傾げると、リリィは怒ったように自分の身体を指差した。よく見れば、確かにリリィはいつもと違う、身体にフィットしたスーツを纏っている。丈は、納得したように頷いた。
「で、どう?」
「うん、似合ってるよ」
「やった〜♪」
もう一度、クルリと回るリリィに、丈は頷いて褒める。その言葉に、リリィは嬉しそうに丈の周囲を回るのだった。
「ヴィオ、見せてくれ覚醒した者の力を!」
空中戦を繰り広げる二機のSA。赤き炎フレイと、純銀の戦乙女ヴァルキュリア。高速で飛ぶ二つの機影は、幾度と無くぶつかり合い剣を交える。
「実力を見たい?」
数刻前、ヴァンの双子騎士の一人レイはヴィオ・ローザに、覚醒した魂の騎士の力を見たいと模擬戦を申し出た。
「ああ、実際に戦ってみて、その実力を知りたい」
レイは、自分達の戦力の見極めと共に、いずれ戦うであろうアースの魂の騎士のことも想定にいれていた。覚醒の力がどれほどのものか、自分達は通用するのか、それを知りたかったのだ。
「どうした! あの時の力はまぐれだったのか! 本気を出せ、ヴィオ!」
「でも‥‥」
こうして、ヴィオとレイはお互いの愛機に乗り、本気の模擬戦を行うことになった。しかし、模擬戦を開始してからしばらく、ヴィオは覚醒の力を出さずに戦っていた。覚醒の力が強力な物だという自覚のあったヴィオは、間違えてレイを傷つけないかと遠慮していたのだ。
「ヴィオさん。私もついていますから、遠慮なさらずに」
フレイの同乗者、エリス・リヴァイアが落ち着いた声でヴィオに声をかける。
「そちらが本気を出さないのなら、こちらからいくぞ! ソード・オブ・ヴィクトリー!」
レイの気合と共に、複数の剣がフレイから射出され、レイの意志力によってヴァルキュリアに襲い掛かる。
「条件が同じなら、フレイがヴァルキュリアに負けることはないぞ!」
「っ! しょうがないわね‥‥行くわよ、ヴァルキュリア!」
複数の剣に襲われる直前、ヴィオのヴァルキュリアが一瞬光に包まれる。そして、その光の中から、いままでとは明らかにフォルムの変化したヴァルキュリアが現れた。
「速い!」
覚醒したヴァルキュリア、一瞬で間合いを詰めるヴィオに、レイは驚愕の声を出す。そのまま、鮮やかな蹴り技を繰り出すヴァルキュリアに、フレイはかろうじて剣でそれを受けるが。
「フレイが押されるなんて‥‥すごいパワーです‥‥これが覚醒した者の力‥‥」
機体の操縦を任されているエリスは、必死で攻撃を止めるが、力負けしている状況に苦しそうに呟く。
「覚醒とは、戦うための力だ‥‥そこに平和などない‥‥」
「またこの声‥‥」
突然、エリスの頭の中に、以前聞いた声が響く。声は、エリスの理想を否定するように語り掛けてくる。
「それでも‥‥私は‥‥」
「エリス?」
「おい! その辺にしとけ! 模擬戦で機体を壊したら承知しねーぞ!」
呟くエリスの様子に、レイは不思議そうに声をかける。そこにちょうど、整備主任のフォー・ハーンから声が掛かる。
「ヴィオ! わかった、もういい、ありがとう!」
「あ‥‥うん‥‥」
レイの声に、ようやく気づいたようにヴィオは模擬戦を止め、機体を元の姿に戻す。
「はぁ‥‥」
「疲れたのか?」
「え、いや‥‥違う‥‥」
ため息をつくヴィオ。レイの言葉に首を振る彼女だが、その頬は高揚したように赤くなっていた。
「なんだろうあの高揚感‥‥私の魂は戦うことを求めている? ううん、そんなことない‥‥」
「ったく、無茶しやがって。整備する側にもなれってんだ」
フレイとヴァルキュリアの戦いを見ていたフォーは、苦笑を浮かべながらそう言って、無線から離れた。
「にしても、こいつもかなり手間がかかりそうだな」
フォーが見上げる先には、いくつものパーツに分かれたムスッペル。それらは、かつてスルトとクラウゼビッツの纏っていたムスッペルから使えるパーツを切り離した物だった。
「すまない無理を言って」
いまや、反アース派に参加した巨人族の実質的なリーダーとなったドミンゴスが、フォーに頭を下げる。彼の頼みで、フォーはこのムスッペルの組み立てを任されることになった。
「いいって、気にするな。本当は嬉しいんだ、巨人族のあんたまで俺を信頼してくれるなんてな。任せとけ、俺の二番目の最高傑作にしてやるぜ」
精力的な笑みを浮かべるフォーは、自信ありげにそう答えると再びムスッペルのパーツを見上げる。そして、スルト用に赤く染められたそのパーツに、ある者の姿を思い浮かべた。
「赤い機体か‥‥マリアは今頃どこにいるんだ? 元気でやってればいいが」
「世話になったわねフリッカ。そろそろ行くわ」
「いえ、こちらこそ。我々も準備が出来次第追いつきますので。御武運を‥‥って戦う訳じゃないですよね。成功するように祈ってます」
地方の街。フリッカと呼ばれた女性は、フレイアに搭乗した女性に敬礼をする。その敬礼に軽く手を振って返すと、フレイアは大空へと舞い上がっていく。そして、機体が光に包まれ、鷹のようなフォルムを持った姿へと変化させると、あっという間に空へと消えていった。
「ヴィズルフォルニル‥‥風を打ち消すもの‥‥。この戦乱を止めるのは貴女なのかもしれない」
フリッカは、消えていくその機体をいつまでも見送りながら小さく呟いた。
「バルドルの修繕が完了しました。これより、我々はアースの首都アスガルドへと進軍します」
シンドリの言葉。いまやシンドリは、ヴァンの騎士のみならず、反アース派の首脳陣とも太いパイプを持ち、空中要塞バルドルの実質司令官となっていた。
「さぁオーディンを倒し、力で統治されたこの世界を開放しましょう」
シンドリの言葉に、歓声があがる。シンドリは、その歓声の中、掻き消える小さな声で呟いた。
「それに、あのオーディンがこの機会を逃すとは考えられないからな」
「トリックスター‥‥いや、シンドリの望みはおそらく根源的な破滅‥‥卿らは愚かな事だと思わないかね?」
アースの首都アスガルド。オーディンは国の重鎮を集め、各地で決起し首都へと向かってくる反アース派の部隊に対する作戦会議を開いていた。オーディンは敵の首謀者をシンドリとし、かつてアース軍に所属していたトリックスターと同一人物だと明かす。それに、少なからず動揺する重鎮達。
「ただ焦る事は無い。卿らある限り我らの未来は常に革新へと続くのだから」
しかし、オーディンは動揺を打ち消すように力強い言葉で、家臣達を安心させる。その姿は、王としての威厳に満ちていた。そして、反アースへの迎撃指示を的確に出していった。
「なるほど、王はそこまで見通しておられる訳か‥‥」
会議に参加していた、ヴァルキュリアーズの指揮官シェリー・ローズは、オーディンの様子を感心したように見ていた。
「シェリー上級特佐」
「はっ!」
「ヴァルキュリアーズには、バルドルの迎撃に出てもらう。頼んだぞ」
「お任せを! ふっ、なんならば、我々だけで全ての敵を蹴散らしてみせましょうか?」
「‥‥‥」
「よい、他の賊軍など基本の軍で十分であろう」
シェリーに下される命令。最も重要と思われる戦いを任されたことに優越感を感じ笑みを浮かべる。居並ぶオーディンの家臣達は、苦々しげにシェリーを見つめるが、不満を口にすることは出来ないようであった。
ほどなくして会議は終わり、退室していく家臣達の中、オーディンとシェリーは残り、二人きりとなる。
「今度の相手は、君が信頼していたトリックスターだ。やりにくくないかい?」
「私が手を抜くとでも? あの男の事はもう仰るな‥‥私はシェリー・ローズ、アースの夜叉姫ですから」
シェリーの肩を抱き瞳を合わせながら、オーディンはそう問いかける。それに対し、シェリーは何も未練は無いとばかりに、冷徹な表情で答えた。その答えに、満足そうに笑みを浮かべるオーディン。
「余計なことを言ってすまない。ふふ、でもアースではなく、『私』の夜叉姫だと言って欲しかったな」
「では‥‥私はオーディンの夜叉姫ですから‥‥んん‥‥」
オーディンが甘く囁くと、シェリーは表情を緩め求めに応える。そしてそのまま、二人は唇を重ねるのだった。
「緑川特佐、これが今後のお前の立場だ」
場所はヴァルキュリアーズ作戦室。シェリーは、ぞんざいな態度で緑川安則にある物を投げ渡した。安則はそれを受け取って、軽く一瞥する。それは、ヴァルキュリアーズの小隊長記章だった。
「俺がハーレム部隊の二番隊隊長か。まあ、好きにやらせてもらえるなら、引き受けるとしよう」
「お前の腕だけは買っている‥‥男としては二流だがな」
そう気楽な口調で返す安則。ハーレムという言葉が癇に障ったのか、シェリーは顔を顰めるも、つまらなそうに言葉を吐き捨てる。その様子に、安則は軽く肩をすくめた。
その後、シェリーは作戦を伝えると、作戦室を後にした。残された隊長格や現代人達は、作戦の内容を吟味したり、今後の展開を話し合ったりとざわめきあう。
「よぅ、安則。隊長就任おめでとう」
その様子を少し離れてみていた安則に、声をかけてくる富嶽源。彼は気さくに笑みを浮かべた。
「別に、何も変わりは無いさ。源は?」
「俺は‥‥一番隊の副官だ。ミユキがあれ以来、不安定でな。ついて居てやら無いと不安だ」
「戦争で部下や同僚を無くすなど当たり前だ、いちいち落ち込んでいたら自分だけでなく周りも危険に晒す‥‥」
「そういうな‥‥俺達はお前と違って、元々一般人なんだ‥‥。っ、すまん、そういうつもりじゃないんだ」
「どういうつもりかわからんが、気にするな。‥‥守ってやれ」
「ああ‥‥」
淡々と言う安則に、源は思わず口走った言葉に気まずそうに謝罪する。安則は小さく苦笑を浮かべるが、軽く気遣うように呟く。源はその言葉に、大きく頷いた。
「それであの件だが‥‥」
「それはここで口にすることではない。以前に決めた通りだ」
「そ、そうか‥‥」
源が何かを言おうとするのを、安則が視線で止める。二人は、なにか秘密を共有するように、視線を交わし頷きあう。
「チャンスは必ず訪れる‥‥」
そして、安則は小さく呟くのだった。
研究所のような、様々な機器がひしめき合う薄暗い室内。オーディンは、白衣の研究員を連れ、円筒状の巨大な入れ物のような物の前に立つ。入れ物には溶液が満ちており、薄明るい光を発して中身を浮き上がらせている。それは、人の形をしていた。
「どうやら、研究は順調のようだね」
円筒の中身を見上げ、オーディンは満足そうに呟く。溶液に包まれた全裸の女性、人間と同じ大きさのそれは、眠っているように目を瞑っている。しかし、その容姿は、かつて巨人の英雄スルトに従っていた女性巨人クー・フェイルに瓜二つであった。
「この世界では、人も巨人も魂のみで形作られている。ならば巨人の魂を、人の形に作り直すことも可能‥‥」
「‥‥‥」
「そろそろ実践での性能も見て見たいところだな。切り札は多い方がいい‥‥」
オーディンはニヤリと笑みを浮かべ、研究員に指示を出す。そして、再び円筒を見つめて微笑んだ。
「さぁ、目覚めたまえ。私のハイブリッド‥‥」
反アースは、空中要塞バルドルを主力とし地上部隊と共にアスガルドへと進軍を開始する。対するアース軍もヴァルキュリアーズを迎撃に向かわせる。ほどなくして、アスガルドから少し離れた平原で、二つの軍はついに激突することとなった。
「いいか、作戦は事前に説明した通り。指揮官機が突撃した後、混乱した敵を各個撃破!」
ヴァルキュリア�Uに、あらゆる武装を搭載した超弩級SAフェンリルを駆る安則は、自ら敵陣へ突撃すると、多数の遠隔兵器エンフェリアを射出し、一気に陣を切り崩す。そして、混乱する敵部隊を部下のSAウルオレルスが後方からの援護射撃で撃破していった。
「悪いが、まだ負けるわけにはいかないんでね‥‥。っ!!」
部隊を殲滅しようと、上空から高出力オーラ砲を発射しようとする安則。しかし、より上空からの複数のビーム攻撃を受け、その衝撃に機体が揺れる。
「なに、あの巨大なSA! こっちのオーラライフルを受けて無傷なんて」
「ヴィオ! あれは危険だ、一緒に戦おう!」
「わかってるわ!」
「ヴァンの魂の騎士か! その実力、確かめさせてもらう!」
現れたのはヴィオのヴァルキュリアと、竹内虎雄のSAヴィザール。二人は、オーラライフルの直撃を受けたにもかかわらず、無傷のフェンリルに驚愕し、同時に攻撃をしかける。安則もヴィオ達を睨みつけると、スラスターを全開に、二機へと突っ込んでいく。
「一気に接近戦に持ち込む!」
「望むところ!」
エンフェリアの激しい攻撃を避けながら、ヴァルキュリアとヴィザールは、フェンリルへと肉薄する。フェンリルもそれを迎え撃つように、高出力オーラソード『ブルトガング』を構えた。ぶつかり合う三機、同時に繰り出されるヴァルキュリアの蹴り、ヴィザールの拳を、フェンリルのブルトガングが受け止める。激しいオーラ光が、火花のように周囲に飛び散った。
「はぁ! マッハストレート!」
「せぃ! 三段回し蹴り!」
「なかなかのコンビネーションだ! だが、まだまだ!」
ヴィオと虎雄は、巧みなコンビネーションで上下左右あらゆる方向から必殺の一撃を放つ。しかし、安則もブルトガングだけでなくエンフェリアも使い、攻撃を避け、受け、時には切り返していく。しかも、威力はフェンリルのほうが上であり、2対1の戦いでさえ優位に立つ。
「なんてパワーなんだ‥‥しかも、それを使いこなしているなんて、凄い精神力だ」
「虎雄‥‥あの力を使うわよ」
「わかった‥‥」
一度フェンリルから離れた二人は、規格外の強さに驚愕し、拳に力を込める。そして、二人は覚醒の力、自らの機体に精神力で編んだ武装を施していく。光に包まれた二機は、SA本来の姿へと変身する。
「これは‥‥ミユキと同じ力‥‥面白い!!」
安則はいうやいなや、ヴィオ達へと突っ込んでいくのだった。
一方その頃、フレイ改を駆るエリスとレイは、フレイア隊を率いて、敵のヴァルキュリア隊と激しい戦いを繰り広げていた。そんな中で、エリスは再び自分に語りかける声を聞いていた。
「魂の騎士よ‥‥」
「また貴方ですか」
「お前がいくら平和を願い戦おうとも、結局は無駄なのだ。争いが終わることは無い」
「なぜです? なぜそこまで平和を‥‥人間を信じられないのですか」
頭の中での問答、平和を否定し、人間を否定するその声に、エリスは苛立ちと激しい疑問を返す。その間も、フレイは素早い動きで敵を切り裂き、V・O・Sを叩きつける。そんな、平和を望む心と、戦闘で敵を倒すことの矛盾と、謎の声の言葉に、エリスは焦りと苛立ちが募っていく。
「どうしたエリス! 動きが鈍いぞ、こんなところで考え事なんてするな!」
「くっ!」
レイの叱咤に、奥歯を噛んで機体の操縦に専念するエリス。しかし、その動きにはどこか迷いがあるようだった。
「急激にこちらに向かってくる機体有り! っ!!」
「なんですかアレは!」
部下の報告と同時に、撃破されていくフレイア隊。そして現れたのは、飛行ユニットを装備したウルオレルスの改造機。しかもそれはただの改造機ではなく、周囲に複数の遠隔兵器を浮遊させていた。
「私は‥‥オーディン様の‥‥忠実な人形‥‥ハイブリッド」
感情の無い声で、自分をハイブリッドと名乗る黒髪の少女。それは、オーディンの切り札の一つとされた、戦闘人形ともいえる存在であった。ハイブリッドは、鏡面のようなエンフェリアを用い、オーラライフルを反射させて様々な角度から攻撃を繰り出してくる。
「見ろ、人間は魂さえも弄び、あのような歪で不自然な存在を生み出す」
「魂を弄ぶ‥‥」
「人間など、信じるに値しない生き物だ。かつて俺は平和を信じて戦い、そして命を落とした。だがしかし、人間は争いをいまだに続いている」
「かつて戦った? 貴方は‥‥一体‥‥」
謎の声の言葉に、苦しそうに顔を険しくするエリス。ハイブリッドの攻撃をかわしつつも、その動きには精彩が欠けている。
「お前‥‥達は‥‥巨人の里を‥‥意味も無く‥‥破壊した‥‥」
「それは!?」
ハイブリッドの言葉。先に反応したのはレイだった。一部の反アース派が行った凶行、それに一番心を痛めていたのはレイだったからだ。
「私は‥‥巨人族を元に‥‥作られた‥‥。反アースは敵だ‥‥」
「言い訳など出来ないのは分かってる、でも信じてくれ、あれは、我々の本意じゃないんだ!」
「レイさん! 一人ではいけない!」
機体を分離し、エリスの制止も聞かず、一人でハイブリッドの機体に取り付き説得しようとするレイ。しかし、無情にもハイブリッドの攻撃が、取り付いたレイの死角から放たれる。そして、その攻撃を受け、爆発と共に地上へと落ちていくフレイB。
「こ、こんなところで‥‥ヴィオ、エリス、ヴァンを頼んだぞ」
「オーディン様に‥‥仇なす者は‥‥全て‥‥排除する‥‥痛っ」
無機質な声で、落ちていくフレイBを見つめるハイブリッドだが、急に頭の痛みを覚え撤退していく。
「レイさん!!」
「見たか。人間とは、他人の命を平気で奪う生き物なのだ。そんな生き物を守って何になる」
「私は‥‥無力だ‥‥」
討たれるレイの姿と、謎の声に打ちひしがれた様に顔を歪めるエリス。そして、ガックリと肩を落とすのだった。
「ハイブリッドは撤退、まだ調整不足か」
そう呟いた現代人の女性、ヘルガ・ベル。彼女が駆る巨大SAヘルは、アース軍が誇る『死の淑女』と呼ばれ恐怖される機体。本来二人以上での運用を想定されているヘルだが、彼女はたった一人で動かしていた。
「邪魔だ、消え去れ」
冷静に冷徹に冷酷に、全てに死を与えるがごとく。ヘルはその圧倒的な火力で、周囲をなぎ払う。あまりに無差別な攻撃に、味方さえ彼女の近くには居られない。
「シェリー‥‥いつまで遊ぶつもりだ? 終焉は直に訪れる‥‥」
ヘルガは旗艦から飛び立つ一機のSAを視認し、感情の無い声で呟くのだった。
「俺はジョーカーだ」
漆黒の獣となった丈のSAベオウルフが、SAベルセルク部隊を突っ切り、次々と撃破していく。
「イリアを返せ!」
「させるか!」
「いっけー! 悪者なんてやっつけちゃえ」
ベルセルクの隊長機が、怒りのオーラでスキーズヴラズニルを叩き切らんと、天に届くほどの巨大なオーラソード振り上げる。それを止めようと、ベオウルフが閃光のごとくベルセルクへと突っ込み、胴を切り裂き真っ二つにする。そして、爆発する機体を背にして駆け抜けていった。
「またお前かヴァンの黒い奴」
そこへ現れたのは、ピンク色に塗られた丈の機体と同系機と思しき機体。シェリーの駆る、ベオウルフ二号機だった。
「お前は‥‥! バカな、俺のベオウルフと同じ!?」
「機体が同じなら、あとはパイロットの力量さ。お前に勝ち目はないよ!」
「ぬかせ!」
一瞬のうちにお互いを認め、ぶつかり合うシェリーと丈。常人には目で追うのも大変な高速で、何度も切り結ぶ二人。そのたびに、大きなオーラ光が火花のように迸る。
「アンタとは戦う運命のようだね」
「少しはやるようになったか‥‥ビーストモード!」
「まだまだぁ! ビーストモード!」
戦いは拮抗し、お互い野生を引き出すビーストモードでもぶつかり合う。猛禽類と四足獣の姿になった二機。鋭い鍵爪を避け、牙と嘴をぶつけ合い、幾度と無く激しい戦いを繰り広げる二人。
「愛しき全てを護る為、俺は負けられないんだ!」
そんな戦いで、先に動いたのは丈であった。覚醒の力により、機体は黄金の光に包まれ、その背に翼が生える。
「これは覚醒!? こんな奴が‥‥」
「俺の魂が、お前を倒せと輝き叫ぶ! 轟天! 神威ぃ幻狼拳!」
「ただし‥‥それではアタシに勝てないねぇ」
「何ぃぃ!」
丈の必殺の一撃、誰もが決まったと思ったその時‥‥、まるで幻のように残像を残してシェリーがそれをかわす。
「なら、もう一度!」
「ダメ‥‥丈‥‥。以前より、余りに強大過ぎる」
「残念だが人にはね、越えられない壁というものがあるんだよ」
再び、拳へと力を込める丈。しかし、一緒に搭乗していたリリィは、何かを感じ取ったように怯えるような声で丈を止めようとする。しかし、気づいた時にはすでに遅く、シェリーの機体からは黒く禍々しいオーラが昇り、その拳には漆黒の光が‥‥。
「神威ぃ‥‥!」
「必殺! 暗黒鳳凰掌!」
丈の技が炸裂するよりも早く、シェリーの機体の拳から放たれる漆黒の炎。そして、丈のベオウルフがその炎に包まれる。
「うぁぁ! 何だこの感覚‥‥まるで意志力が吸い取られていくような」
「ダメェェェ!」
炎に包まれ、力を失いそうになる丈。その時、叫んだリリィから眩い光が放たれ、ベオウルフを包み込むのだった。
「全員、無益な戦いは止めなさい! 全ての魂の騎士に問います! あなた達の戦いは自らの意志で行ったものですか?」
そんな戦いの中で、突然現れた鷹のフォルムを持ったSA。SAは、戦場に舞い降りると、全方位に向けて戦いを止めるよう通信を行った。
「チェスの駒の様に人を操り、己の目的の為争いを仕組む者達がいます。誰もが感じた事がある筈です。蜘蛛の巣の様に張り巡らされた陰謀の糸を」
「あの声、あの機体‥‥まさか‥‥」
通信を聞いたフォーは、聞き覚えのあるその声に、驚きと期待を込めて呟いた。
「マリア‥‥」
「アールヴヘイムを落とし、ヴァナヘイムを焼き、巨人を屈服させ尚も覇道を歩もうとする者」
通信は続き、アースへと向けられる言葉。
「あなた達を巧みに誘導しつつ、ミッドガルドを蹂躙し、巨人達を手にかけた者達を操る影」
そして、ヴァンへと向けられる言葉。
「私たちは利用されていたのです! 討つべきは目の前の同朋では無く、我々を操り、私欲の為に利用する者達! 志を同じくするなら、同朋よここに集い、共に戦いましょう!!」
そして、全てへと向けられる言葉。その言葉は、強い力を持ち、同時に超能力のように直接頭に響く。それを聞いた兵たちは、少なからず動揺する。
「間違いない、あれはマリアだ。俺はマリアの下に行く、ここで俺がやるべきことはもう終わってるしな」
フォーは、その言葉を聞き、喜び勇んでマリアの下へと向かうのだった。
「この通信、マリア!?」
「そんな、何故マリアさんが‥‥」
突然の通信に、戸惑うヴィオと虎雄。それと同時に、安則にも異変が起きていた。
「なんだ! あの声に呼応するよう‥‥この感覚、蒼い狼? フェンリル? そうか。オーディンを喰らうが我が宿命か」
マリアの声に呼応し、覚醒する安則。過去の魂の記憶に、自分の取るべきを道を見つける。
「源、いまがチャンスだ。あの者の下へ向かうぞ!」
「グッドタイミング♪ ミユキ、俺に付いてきてくれお前への愛と誓いは絶対守るっ!!」
安則は、源と共に、アースを離反するチャンスを待っていた。源も今がその時と、SAトールを駆り戦線を離脱する。
「待て、フェンリル! あっ!?」
「虎雄!!」
「ドミンゴス!?」
離脱するフェンリルを追おうとした虎雄。しかし、敵戦艦のオーラ砲が虎雄に襲い掛かる。回避が間に合わないと感じた虎雄の前に、ドミンゴスがその身を晒し、攻撃からの盾となった。さすがに大出力のオーラ砲を受け、耐え切らず吹き飛ぶ赤いムスッペル。
「虎雄、お前の優しき拳で人と巨人とその他の種族が手を取り合いっ‥‥神にも、魔にも支配されぬ、平和な未来を掴み取ってくれっ!!」
「そんな、僕のせいで‥‥わかったよ、ドミンゴス」
虎雄を庇い、散っていくドミンゴス。その残した言葉に、虎雄は涙を流し頷くのだった。
「よく考えるのだな。人間という生き物を救うべきなのか。それとも、滅ぼすべきなのか‥‥」
「人間を救うべきなのか‥‥滅ぼすべきなのか‥‥」
マリアの言葉を聞きながら、エリスは謎の声の言葉を表情を曇らせながらも呟いた。
「面白い演説だったが、時間切れだね」
一部始終を見ていたオーディンは、そう呟くとミーミルの起動スイッチを押した。
「時は満ちた、オーラフィールドを発生させよ」
「マリア! ミーミルの衛星砲が起動しました! そこは危険です!」
「フリッカ! こんなところで使うというの!?」
「狙いは、バルドル要塞です!」
マリアへと入る、フリッカの通信。それは、全てをなぎ払う神の怒り‥‥。
「皆! 逃げて!!」
マリアの叫び、と同時に遙か天空から放たれる超強力なオーラ砲。その光は、間の物を全て焼き払い、バルドル要塞へと向かい‥‥。
「これは‥‥」
ミーミルとバルドル、二つの古代兵器の力がぶつかり合う時。空間は歪み、漆黒の門が開かれる。やがて暗黒の空間は、周囲の全てを飲み込み、この世界から消し去っていくのだった‥‥。
●キャスト
シェリー・ローズ
大道寺イザベラ(fa0330)
黒木丈
相麻 了(fa0352)
富嶽源 竹内虎雄 ドミンゴス
伊達正和(fa0463)
エリス・リヴァイア 謎の声
水鏡・シメイ(fa0509)
ハイブリッド
槇島色(fa0868)
緑マリア
稲森・梢(fa1435)
ヴィオ・ローザ レイ
レティス・ニーグ(fa2401)
緑川安則
名無しの演技者(fa2582)
フリッカ ヘルガ・ベル
桜 美琴(fa3369)
リリィ・フォウ ベルセルク隊隊長
十六夜 勇加理(fa3426)
フォー・ハーン
ユキイ・アバンサール(fa3610)
オーディン
大空 小次郎(fa3928)
シンドリ
池内秀忠