Fランド25周年 警備アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/20〜09/24

●本文

 ファンタジーランド。その名を知らぬ者はいないと言ってもよいほどの、大規模遊園地である。魅力溢れる世界観とそれに基づいた数多くのアトラクションは老若男女の心を捉えて放さず、たとえ平日であっても多くの来園者で賑わっている。
 一年の間には数多くのイベントがあるわけだが、ファンタジーランドではそれらを活用し、その時だけの限定で色々やるものだから、人々はつい引き寄せられてしまうのだ。「限定」――ああ、なんと甘美な響きである事か。
 今回の限定はどんな限定かというと、「ファンタジーランドの開園25周年限定」である。キリのいい年数での誕生日イベントとくれば、元からお祭好きのファンタジーランドの事、天井知らずの盛り上がり方となる。その盛り上がり方についていけるか否か。それがファンタジーランド通と評されるかどうかの分かれ目となるのである。

 楽しいイベントの裏では、それを支える裏方がいる。今回の「ファンタジーランドの開園25周年」では、今まで以上の大掛かりなアトラクションや、派手なパレードが行われることとなり、多くのスタッフが関わることとなる。
 今回の依頼は、ファンタジーランドの警備である。イベント開催中は、多くの芸能人(獣人)が御忍びで遊びに来ているため、NWの出現が危ぶまれている。おそらく一般客に紛れたNWが、獣人達を狙っていることだろう。そういったNWが現れないよう、もしくは現れても即座に駆除できるように、ファンタジーランド内を警備してもらう。そう、着ぐるみで!!
 今回の対NW警備では、警備担当者は着ぐるみ着用が義務付けられている。一般客の多いファンタジーランドでは、もし万が一NWが現れた場合、獣人化が一般人の目に付く可能性がある。そのため、警備担当者は着ぐるみを着て、獣人の姿を隠す必要があるのだ。これらは、通常の警備の間も、常時着ぐるみでいてもらう。
 もちろん、着ぐるみを着ている以上、一般客には通常のマスコット着ぐるみと映るため、お客に対しては相応の対応を行ってもらう。しっかりと愛想を振りまき、ファンタジーランドの雰囲気を壊さないよう努力してもらいたい。場合によっては、アトラクション、パレードにも参加してもらうため、マスコットの演技にも気をつけてもらいたい。
 着ぐるみでの戦闘は、普段の戦闘とは勝手が違うだろう。ある程度、動きが制限されることになる。もし、NWとの戦闘を行うことになったら注意してほしい。ちなみに、着用している着ぐるみが損傷した場合、度合いによっては弁償ということもありうるので、くれぐれも気をつけて欲しい。
 それでは、無事に今回のイベントが成功するように、がんばってほしい。

使用着ぐるみ
・妖精(フェアリー)の男女→友達以上恋人未満
 陽気でええかっこしだけど、友達思いの男の子と、おしゃまでちょっと背伸びをしている、妖精の男の子が好きな女の子。
 ファンタジーランドのメインマスコット。大変人気があるため、歩いているだけでお客の注目の的。警備には向かないが、彼らを目的としてやってくる芸能人もいるため、そういった者達を惹き付け危険から遠ざけることができるかもしれない。
 人型の体型のため、比較的動きやすいので、戦闘には便利。ただし人気キャラクターのため、客に対しての演技は特に注意してもらいたい。

・小人の男女→双子の兄妹
 妖精の男の子と女の子の仲をユニゾンでからかう小人のペア。
 フェアリーと人気を二分する、人気キャラクターの着ぐるみ。やはり目立つ存在であり、警備には向いていない。ただし、キャラクターの性格上(悪戯好き)、おかしな場所(屋根の上、裏道など)にいてもあまり気にされない。
 同じく体型的に動きやすい。ただし、双子のため絶えず二人一緒に行動することを義務付けられている。

・サブマスコットとして二足歩行の動物達
 ペットの犬や、森の(動物の)仲間達などの着ぐるみ。
 種類が多く、個別にファンはいるが、比較的目立たない存在。警備には向いているので、こちらを推奨している。ファンタジーランド内では、様々な場所にこれらのサブマスコットが居るので、警備巡回中もとくに怪しまれることはない。
 問題は、動物をモチーフにしてるため、動きづらいこと。基本的に二足歩行だが、寸胴短足だったり、手が羽だったり、頭が極端に大きかったりするため、激しい動きをするにはそれなりのコツがいる。

注意事項
・原則的に、気ぐるみを着用して警備を行う。休憩時などは脱いでもかまわないが、その場合も所定の場所で待機し、くれぐれも中身を一般客に姿を見られないようにする。
・着ぐるみ着用時は、一般客に対して喋らない。対応はすべてジェスチャーで行う。定時、緊急時の連絡は、支給される無線を使用。
・NWを発見した場合は、すみやかに駆除を行う。ただし、一般客の目がある場所では、アトラクションを装う。
・武器使用の禁止。マスコットキャラクターの雰囲気を壊すため、武器の使用を禁止する。また、爪、牙などの獣人能力の使用も禁止。その他の能力については、キャラクターの雰囲気を壊さない程度の使用を許可。
・着ぐるみを損傷した場合、度合いによっては給与からの差し引きという形で弁償となる。
・着ぐるみの改造は原則的に禁止。もし無断で行った場合、弁償(数十万相当)となる。
・囮行為などの禁止。自らが囮となってNWを誘き寄せる行為は禁止とする。目的はあくまで警備であり、NWの捜索ではないため。
・その他、一般道徳に反する行動は注意すること。ファンタジーランドは、お客様に夢を与える場所である。

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa2859 ダンディ・レオン(37歳・♂・獅子)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa5054 伏竜(25歳・♂・竜)

●リプレイ本文

「メグミとの約束どおりファンタジーランドでのデートになったぞ。そのかわり少々WEAの手違いによりお客ではなく警備担当となったが‥‥って痛いぞ、メグミ」
「‥‥確か約束したわよね? ファンタジーランドでデートするって。けど何? 裏方で警備って‥‥」
 額に青筋を立てながら引き攣った笑いを浮かべて、緑川安則(fa1206)の手の甲をつねる緑川メグミ(fa1718)。どうやら、メグミはこの依頼が御気に召さないようで、兄の安則を睨みつけては大きくため息をついた。
「まあ、こうなったのは仕方あるまい。完璧に守り通してやろう。ここは夢の王国、悪夢という存在は否定されなければならんからな」
「はぁ‥‥。依頼だからしかたないけれど、この埋め合わせはしてもらいますからね!」
「わかった‥‥」
 メグミと安則は、男の子と女の子の双子の小人の着ぐるみを着ると、渋々といった様子で園内に出て行くのだった。

「わぁ〜、ユニコーンだ〜♪」
 魔法使いの格好をした白い馬ユニコーンが、子供達に囲まれている。ユニコーンは、華麗なダンスステップを踏んで、子供達の人気の的になっていた。
「怪しいのはいないな」
 ユニコーンの着ぐるみを着た甲斐・大地(fa3635)は、陽気な様子でお客の相手をしながら、周囲を警戒していたが、特にこれといって怪しい影などは見かけなかった。
「すごいな‥‥拙者にはあんなのは無理でござる」
 一緒に園内を回っている七枷・伏姫(fa2830)は、大地の人気の様子に感心しつつ、同じように周囲に集まっている客への対応に四苦八苦していた。彼女は、狼の着ぐるみをきていたが、キャライメージが『優しくて気弱な』狼のため、なかなか上手く演じるのが難しいようであった。
「適度に愛想は振りまかないとな」
 同じく一緒に回っている伏竜(fa5054)は、大地とお揃いの、魔法使いの格好をしたドラゴンの着ぐるみを着て、客に握手や、杖で魔法を使うフリなどをして愛想を振りまいていた。魔法使いの格好は、だぼだぼのローブを羽織っているため、獣人化した際の翼を隠すのにちょうど良いようである。

「でか!」
 のっしのっしと歩いている、全長2.2メートルほどの大きな熊の着ぐるみ。中身は、身長2メートルのミゲール・イグレシアス(fa2671)だった。その巨体はやはり注目の的で、周囲の客を驚かせていた。
「‥‥‥」
 一緒に園内を回っているダンディ・レオン(fa2859)は、『獅子』の着ぐるみを希望していたが、用意されたのは、女性や子供が好みそうな、非常にファンシーで可愛らしい、『獅子』というより『らいおん』といった着ぐるみであった。
「我が輩のイメージが‥‥ええい、やってみせようではないか!」
 がんばって子供達に手を振り返すが、動きが微妙にぎこちないのもまた愛嬌かもしれない。
 そして、その後ろをちょこちょことついて回るコウモリの着ぐるみ。けして小さなものではないが、ミゲールの熊と比べると小さく見えた。そんな、なんとなく微笑ましいコウモリの中身は湯ノ花 ゆくる(fa0640)。彼女は、ちょっとした悩みを抱えていた。
「‥‥手が翼だから‥‥メロンパンが‥‥もてない‥‥」
 自分の翼を隠すのにちょうどいいと思って選んだコウモリだったが、手が翼の形をしていたため、予想外に動きづらかったようだ。
 そのような感じで、着ぐるみ警備隊は、ファンタジーランドの平和を守るために、客に愛想を振りまきながら、警備を行うのだった。

 その後、ファンタジーランドの大規模なイベントのせいなのか、それとも別の理由があるのか。NWは予想を上回ってこの地に現れ、警備隊は連日大忙しであった。
「食らうのである! ブラストナックル!」
 ダンディの一撃で、NWが崩れ落ちる。しかし、拳の爆発により着ぐるみの腕も吹き飛んでしまうのだった。
「しまったのである‥‥」

「はいはい、危ないからどいててやー。ちょい動作不良っぽいです」
 NWを無理やり抱え込んで人気の無い場所へ移すミゲール。しかし、もちろん着ぐるみへの損傷は激しく、弁償となってしまう。
 同じくゆくるや伏姫も、接近戦を挑もうとして、多少の損傷を受けてしまうのだった。

「あーあ、これが裏方じゃないのなら最高なんだけどね」
 警備最終日、今日も安則とメグミは一緒に園内を回っていた。二人一緒に腕を組んで楽しそうに歩いているのだが、必要以上にいちゃいちゃしており、双子というより恋人同士のようである。
「む、あれは‥‥」
「どうしたの兄さん?」
 ふと、安則は客の中の聞き覚えのある声に気づき、声の主を探した。しばらくして、客の中にイケメン声優の南方雄治を発見する、そしてその隣には同じく声優の牧村ユミ。多少の変装をしているが、二人の声は聞き間違えなかった。二人は腕を組んで楽しそうに園内を回っているようで。
「なるほど、そういう関係か」
「う、羨ましい‥‥メグミもこんな着ぐるみなんて着ないで兄さんと‥‥」
 雄治とユミは、同じアニメで競演しており、どうやらその関係で親しくなっていたようだ。その様子に、納得したように頷く安則と、少し悔しがるメグミ。
「とりあえず、それとなく二人を追うぞ」
「ええ、もちろん警備のために‥‥ね♪」
 もちろん獣人である雄治とユミは、NWに狙われる可能性がある。安則とメグミは、無線で確認しあうと、小さく頷いて二人を追うのだった。

 一方、着ぐるみ用に人目のつかない裏側にある休憩所。
「あはは、さすがに着ぐるみの中は暑いよね」
「心頭滅却すれば、火もまた涼しと申しますが、拙者もまだまだ修行が足らないようでござる」
「‥‥メロンパン‥‥美味しい‥‥」
 大地と伏姫、そしてゆくるが着ぐるみを脱いで休憩していた。9月に入り、少しは涼しくなってきたといっても、さすがに着ぐるみの中は大変暑い。自然と着る側は薄着になるわけだが‥‥。
「はぁ、でもダイエットにはちょうどいいかも」
「いやいや、甲斐殿はダイエットの必要はござらんでしょう」
「‥‥メロンパン‥‥甘い‥‥」
 大地と伏姫の豊満な肉体が薄着一枚というのは色々と危険で、ゆくるにいたってはビキニ水着を着ている。まさに男性にとっては、天国とも言える状況であった。ちなみに、ゆくるはさっきからメロンパンをもふもふと食べている、いったいどこに隠し持っていたのか‥‥。
 今この場に男性陣がやってくれば、目のやり場に困りつつも幸福を味わえたのだろうが、上手いことに誰もやってくることはなかった。
『こちら緑川。現在敵ナイトウォーカーと遭遇、交戦中。友軍の支援求む!』
「二人とも行こう!」
「承知!」
「‥‥メロンパン‥‥残ってるけど‥‥わかりました‥‥」
 無線から流れる安則の応援を求める声に、大地達は慌てて着ぐるみを着込むと、休憩所を後にするのだった。

「いつもならスレッジハンマーだとかトカレフとかで、金に糸目をつけずに弾幕張れるんだがな」
「やっぱり白兵戦は苦手だわ‥‥じゃあ、こうしてみましょうか」
 雄治とユミが、二人きりになろうとしたところを襲い掛かろうとしていたNWを発見した安則達。二人とNWの間に割って入り、二人を逃がすと、戦闘を開始した。
 敵のNWは、人型の昆虫のような甲殻に覆われた姿。場所は人気の薄いアトラクション近く、時刻は夕方。そろそろパレードの行われる時間で、客のほとんどはそちらへと行っていた。
「白兵戦は銃撃戦より好きではないが苦手ではないのだよ」
「ここは夢の世界なの。悪夢は存在を否定されているわ。だから消えなさい。永久に。その存在の一片すら残さず」
 安則は接近戦を挑み、メグミは遠距離からの空圧風弾での支援に回る。
「着ぐるみに損傷を与えないように戦うのは面倒だな」
 安則は、NWの攻撃を避けるが、着ぐるみという慣れない状態に、なかなか決定打を与えることができない。
「救援に来たのである! さぁ、我が輩が相手である、来るがいい!」
「待たせたな」
 そこに、ライオンの着ぐるみダンディと、魔法使いのドラゴンの着ぐるみ伏竜が救援に着き。ダンディは安則と共に、接近戦を挑む。
「付近に通行止めの看板を置いてきたで〜」
 どたどたと熊の巨体を揺らしながらやってきたミゲール。彼は、なるべく人が寄り付かないように、周囲に通行止めの看板を置いてきていた。
「お待たせ!」
「待たせたでござる!」
「‥‥NWに‥‥ヒメ姉ぇ達の‥‥デートの‥‥邪魔は‥‥絶対‥‥させません‥‥」
 ようやく女性陣も集まり、NWを取り囲む。ファンシーな着ぐるみ達に囲まれる、奇怪なNWの様子は、かなりシュールであった。
「淡光神弾!」
「空圧風弾!」
 着ぐるみという戦いづらい状況で、大地とメグミの遠距離攻撃が功を奏し、NWの動きが鈍くなる。
「いまだ、波光神息!」
 続けて伏竜のブレス。その攻撃を受け、さすがにNWも怯む。そこへ、安則とゆくるの同時攻撃が入る。
「ゼロ距離だ‥‥そのまま燃え尽きろ!!」
「虚闇撃弾‥‥です‥‥」
 二人の攻撃が決まり、NWはついに動きを止める。しかし‥‥。
「兄さん! 着ぐるみ焦げてるわ!」
「あ‥‥」
 近距離で火炎砲弾を使ったため、着ぐるみの一部が焦げてしまった安則も、報酬から弁償代を引かれる事になってしまった。結局、NWからの被害は最小限で抑えることができたが、多くの者が報酬から弁償代を払うことになってしまうのだった‥‥。