神霊装甲 終わりの世界アジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 10/26〜10/30

●本文

・声優募集
 ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
 審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。

●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
 戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
 召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。
 物語は、ラグナロク戦争を軸に、毎回違う主人公の物語が展開されるオムニバス形式。戦いに巻き込まれた現代人や、ヴァルハラ人たちがそれぞれの視点で物語を紡いでいく。

・世界設定
神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。

魂の騎士 ヴァルハラに召喚された現代人のこと。彼らは、過去に起きた光と闇の戦いの英霊の魂を内に秘めた人間たちである。魂が力になるヴァルハラでは、絶大な力を持ち。神霊装甲の適正がヴァルハラ人よりも数倍上である。

覚醒 魂の騎士が、英霊の魂に目覚めること。過去に起きた戦いの記憶と共に、真の力(本来のSAの力)を発揮できるようになる。元々の人格が変わることはないが、過去の記憶に引っ張られて行動してしまう者も‥‥。

SA本来の力 SAとは現在ではロボットのような存在だが、元々は精神を具現化させた鎧である。そのため、覚醒し本来の力を取り戻した者は、SAの上に自分の精神を具現化させた姿を投影し、一時的に武装を変化させることができる。このようなSAは、従来機より数倍の能力を有する。イメージは変身といった感じ。

アース神族 神の国アスガルドを首都に持つ、好戦的な種族。力(精神的に)が強く、謀略にも長ける。侵略、支配を繰り返し、巨大な国を作り上げた。我々の世界でいう騎馬民族のようなイメージ。 君主制を敷いており、王の下に内政、外政、軍部の各担当者がそれぞれを指揮している。軍の様子は、規律統制のとれた現代軍隊に近いイメージ。

反アース勢力 アースに占領された様々な種族、巨人族やヴァン神族、ドヴェルグなど。またオーディンの侵略行為に批判的なアース神族などが集まって出来上がった反アース勢力。一応はお互いに協力関係を築いているが、その中には種族間など派閥ができており、微妙な温度差がある。

アウドムラ ヴァルハラ世界と現実世界を一つにする鍵と言われる存在。伝承では北極に眠っていると言われていた。それは北極の大地を形成していた物体で、世界創造を成すための神の肉体である。これに、無限のエネルギーであるユミル(魂)を組み込むことによって、その存在は創造神と呼ばれるものになる。

邪神ロキ 古の戦いで、世界を無に返そうとした存在。その魂は、トリックスター(シンドリ)に宿り、復活の時を待っていた。そして、ついにアウドムラの肉体を得て、復活を遂げ、再び世界を無に返そうとする。

・主な登場SA
SAヴァルキュリア�U アース神族の量産SAを基に、魂の騎士用に新しく作られた高性能SA。従来機より基本性能が3倍弱アップし、飛行能力も向上された。基本形態以外に、ゲイレルル(遠距離射撃)、スルーズ(高火力)、フリスト(近接)、ヘルヴォル(特殊遠隔)の四種類の兵装が用意されており、局面にあわせて変更する。

SAフレイア SAフレイを元に、SAヴァルキュリアの飛行技術を起用した、ヴァン神族の次期主力SA。量産のためにS・O・Vを無くし、代わりに意志力で飛ばした球体でバリアを発生させるアクセサリ・オブ・ブリーシンガメン(A・O・B)を搭載。現代人の意見を参考にし、形態を人型から飛行形態に変形することによって、空中での高速飛行が可能。現在は、反アースの主力として使用されている。

SAブーリ アウドムラの守護のために生み出されたSA。この機体には搭乗者は居らず、アウドムラの意志(またはその意志の元になっている者)によって自動操作される。SAというよりは、機械人形。強力な火器は装備していないが(オーラライフル程度)、数が多く集団で攻撃してくる。また運動性も高く、その能力は侮れない。ロキ復活後は、黒い姿となり能力も数倍に向上している。

SAヘイムダル トリックスター(シンドリ)がロキを滅ぼすために開発した究極のSA。SAオーディンの瞬間移動装置「スレイプニール」、SAトールの超長出力オーラ砲「ミョルニール」、超巨大オーラソード「ブルドガング」、要塞バルドルに匹敵するバリア、その他さまざまなロストテクノロジーを搭載している。そして、ロキを滅ぼす切り札として、反物質砲「ラグナロク」が搭載されている。ちなみに、シンドリと過去の英雄ヘイムダルとは関連はない。

・次話あらすじ
 シンドリの真の目的は、ロキを復活させ、自らの手でそれを滅ぼすことであった。そして、ついにロキがアウドムラの肉体を得て復活を遂げる。世界を無に返そうとするロキ、ロキを倒すため戦乱を巻き起こしたシンドリ、そして世界を元に戻そうとする魂の騎士達の、三つ巴の最終決戦がここに幕を開ける。
 ロキは大量に複製した機械人形達で身を守り、アウドムラの力によって世界を崩壊しようとする。シンドリは、自らの手でロキを倒すために、邪魔な魂の騎士達を排除しようとする。戦いは混乱を極め、激戦の中でいくつもの命の炎が燃え尽きる。
 果たして、勝つのは誰か、世界はどうなってしまうのだろうか‥‥。

・登場人物
 アース神族側現代人 アース神族に収容され、魂の騎士として戦うことになった現代人。
 ヴァン神族側現代人 ヴァン神族に協力し魂の騎士として戦うことになった現代人
 トリックスター(CV池内秀忠) 古に世界を無に還そうとした『ロキ』の魂を持つ男。自分が自分であることに異常に固着し、目的のためならば手段を選ばない。その真の目的は、自分を利用しようとしたロキを、自らの手で完全に滅すること。
 その他 一般兵士、反アース勢力など

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1435 稲森・梢(30歳・♀・狐)
 fa2401 レティス・ニーグ(23歳・♀・鷹)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)
 fa3610 ユキイ・アバンサール(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

「無事か緑川、急いで戦線復帰してもらうぞ」
 仲間達を庇い、攻撃を受けて海へと墜落したSAフェンリルとそのパイロット緑川安則。その機体を引き上げながら、安則に声をかけるのはSAトールのパイロット富嶽源。共に、前の戦いで大きな損傷を受けており、すぐに戦えるような状態ではないのだが、それでも時は待ってくれない。
「くそ、生きてるのか! 返事をしろ! 緑川!」
 フェンリルは特に損傷が激しく、安則の安否もわからない。源は焦る気持ちで、安則の名を呼んだ。
「やかましい! そんなにでかい声を出さなくても聞こえている!」
「緑川! って、お前なんか様子が変だぞ?」
 何度かの掛け声に、ようやく安則からの応答があり、ホッと胸を撫で下ろす源。しかし、いつもはクールな緑川の今の様子に、おかしさを感じる。
「富嶽源だったな。はじめましてと言っておく! 俺はフェンリル! この安則という男の心に眠っている者! ヴァナルガンド、破壊の杖である!」
「み、緑川!? どうしたんだ、やっぱりおかしいぞ!」
「だから、俺はフェンリルだと言っているだろうが! 貴様にも過去の魂があるだろう、その意志がおもてにでたのだ!」
「まさか、意志を乗っ取られた!? お前! 緑川はどうした!」
 自らをフェンリルと名乗る安則。その言葉に、驚きと本来の安則の安否を気遣い、怒鳴り声をあげる源。
「案ずるな、安則はさきほどの攻撃でショックを受け、寝ているだけだ。それよりも、大事なことがあるだろう? 戦いは終わっていないのだぞ」
「そ、そうだ! 突然アウドムラから、あの黒いのが現れて! SAも集まってきている、俺達もすぐに戦線に戻らないと! おい、動けるか。外から見れば、かなりの損傷に見えるが‥‥」
「ふん、この程度、傷のうちにも入らないぜ!」
 安則はそう言うと、莫大な量のオーラを放出、SAフェンリルは見る間にその傷を治していく。
「いくぞ富嶽! 全てを破壊する、このフェンリル様の力を見せてやる!」
「おぅ! って、本気で大丈夫なのかこいつ‥‥」
 爆音と共に空へと飛び立つフェンリルとトール。しかし、富嶽は安則の様子に、一抹の不安を感じるのだった。

「姉上‥‥魂の騎士、シンドリ派、共に動き出した模様。どうされる?」
「父上はまだ覚醒されてはいない。まずは我々で邪魔者を排除する」
「所詮は烏合の衆、我らの手に掛かればなんのことはない。あの者達はどうされますか」
「シギュンと、父上のヨリシロであったシンドリか。どのみち全ては無に返るのだから、我々にはむかうのであれば消えてもらう」
「承知‥‥」
 闇の中に蠢く二つの影、ヨルムンガンドに目覚めたロッソ・ヴォルフと、ヘルに目覚めたヘルガ・ベル。二人は、ロキ復活の波動により神代の魔物と人の融合した姿となり、ロキの忠実な眷属として動き出す。
「お前は、魂の騎士達を父上に近づけるな。あの人形も利用しろ。私は兄上を‥‥」
「兄上‥‥わかりました」

「マリア、ちょっといいか?」
「なに?」
 魂の騎士達がロキとの戦いに赴く直前、マリアはフォーから通信を受ける。フォーは、なにやら緊張した面持ちで、マリアを見つめるが。マリアはどこかそっけなく返事を返す。
「あ〜、いや‥‥、その言っておきたいことがあって‥‥な」
「‥‥手短にね」
「ああ‥‥。あ〜、やっぱりいい! これから大事な戦いが始まるんだもんな、余計なことは言わない方がいいな!」
「‥‥そう」
「その‥‥、この戦いが終わったらさ、改めて言わせてもらう。そんときに、またな‥‥」
「はぁ‥‥ええ、この戦いが終わったら、是非聞かせてもらうわ」
「あ、ああ!」
 結局何もいえないままのフォーに、マリアは小さなため息をつくと、最後に微笑を浮かべた。その笑みに、フォーは表情を綻ばせて頷くのだった。
「それじゃ切るわね」
「ああ、絶対生き残れよ」
「貴方もね、多くの人の命を預かってるんだから、くれぐれも無茶しなように」
「お、おぅ‥‥まったく、艦長代理なんて性にあわねえぜ‥‥」
「ふふ‥‥まったく‥‥変わらないんだから」
 少し困ったような苦笑を浮かべてフォーの通信は切れた。マリアは、すでに消えたモニターを見つめ、柔らかい優しい笑みを浮かべるのだった。

「ふ‥‥あははははは!! ただの機械人形が! 我が前に立ちはだかるには無力! あまりにも無力!」
 高速でロキの前に立ちふさがる漆黒のSAブーリに突っ込むフェンリル。今まで以上の重火力で敵を殲滅する姿は、まさに全てを喰らい尽くす銀白の狼。
「すげえ火力だ。あの性格はちょっと不安だが、このままロキの所までいけるかもしれない。ヴィオ達もこっちへ向かってきてるだろうし、合流して一気に‥‥」
「!! 富嶽、避けろ!」
「うぉっ!!」
 フェンリルのパワーに感心していた富嶽。そこへ突然、幾筋ものビームが降り注ぐ。フェンリルとトールは辛うじてそれを避けるが、ビームが放たれた先には黒く巨大なSA。
「ヘルか‥‥やっと思い出したよ。馬鹿妹が。兄に全力攻撃とはいい度胸だ。きっちりとお尻ぺんぺんしてやるぜ」
「‥‥馬鹿は兄譲りだ」
 漆黒の淑女SAヘルの姿に、安則はニヤリと笑みを浮かべる。安則の言葉に、ヘルガは無表情で答えるが、その言葉にはどこか安則と同じ感情の含みがある。
「富嶽、先に行け。こいつは俺が相手をする」
「しかし、やつは一度お前を破った相手だぞ」
「馬鹿を言うな。あの時は安則だったからな、だが俺はフェンリル、兄が妹に負けるわけにはいかないだろうが」
「‥‥わかった。だが、お前の力はロキを倒すために必要だ。絶対に、追いつけよ」
 安則に促され、先へと進む富嶽。ヘルガは安則と対峙したまま、富嶽を見逃す。
「いいのか、簡単にいかせちまって」
「真に覚醒しておらぬ者、ヨルムンガンドに任せて置けばよい」
「くっ、でかいだけの弟になにができる! まぁいい、それじゃお仕置きの開始だ!」
 ヘルガの言葉に、可笑しそうに笑みを零し、安則はヘルガへと突っ込むのであった。

「ここは通さん」
「ロッソ・ヴォルフ!?」
 魂の騎士達の前に立ちはだかったのは、赤いSAフレイアに乗ったロッソ。すでに、ロッソのSAは原形の面影がないほど変化し、まるで赤く蠢く大蛇、SAヨルムンガンドである。
「貴様達に私の剣が見えるかな?」
「うぁぁ!」
「駈!」
 ロッソは両の腕を縦横無尽に伸ばし、魂の騎士達を襲う。それに駈が被弾し、悲鳴をあげた。
「こんのぉ! 捕らえろ、グレイプニール!」
「そのような鎖、当たりはしない! 私は、馬鹿な兄とは違うのだからな」
 駈の放つ、SAを拘束する鎖『グレイプニール』を瞬速の動きで避けるロッソ。今の台詞をフェンリルが聞いたら、たぶん激怒するだろう。といっても、お互い様なのだが。
「こんなところで手間取っている場合ではないというのに‥‥」
「大丈夫、新しい風が来る!」
 ロッソの足止めに、顔を顰めるヴィオ。しかし、マリアは何かを感じ取ったように、確信を持った声をあげる。
「どきやがれ! 蛇野郎!!」
「なに!!」
 突然の高出力のオーラビームに、ヨルムンガンドの延びた腕が破壊される。そして現れたのは、トールの姿。
「富嶽! 緑川は!?」
「あっちでヘルとやりあっている! ここは、俺に任せて、お前達は先へ行け!」
「わかった‥‥頼んだよ!」
「通さんと言ったはずだ、行かせん!」
「てめぇの相手は俺だぁぁ!!」
「おのれ、邪魔をするな!」
 ヴィオの問いに簡潔に答え、富嶽は仲間を先へと促す。ロッソは、破壊された腕を即再生させ、先へと進もうとするヴィオ達へと伸ばそうとするが、トールの巨大な槌に攻撃され阻まれる。激昂するロッソと富嶽が激しくぶつかり合うのだった。

「なぁ、兄貴達大丈夫かな?」
 駈が、自分達を先に進ませるために残った安則と源を心配し、不安そうな声をあげる。
「大丈夫、あの二人は強いから。だって、ヴァルハラの戦いを生き抜いてきたんだもの。私達も、絶対生き残らなくちゃだめよ。ね、駈、皆で生きてこの戦いを終わりに導くわよ」
「でも、終わった後、どこに行くんだろう‥‥? ヒーローは事を為し終えたら、その時には死んでいるか、どこへともなく去って行くのが王道だよね」
「馬鹿! 縁起でもないこと言わないの! ただ、元の平和な世界で、平和に生きていくだけよ」
「ご、ごめん、そうだよね! だから、俺達は絶対に勝たないといけないんだよね」
 ヴィオの叱咤に、駈は大きく頷いた。
「本当に、私達は平和な時代に戻れるのでしょうか‥‥。戦いを知り、守るためとはいえ、相手を打ち倒してきた私達に‥‥」
「エリス‥‥」
 しかし、ヴィオと共にSAフレイに搭乗した、エリス・リヴァイアは苦悶の表情を浮かべ、自問するように不安を口にする。人一倍優しく、戦いを嫌っていたエリスには、今までの戦いはそれほどに苦痛であったのか。
「大丈夫、倒した相手のことを思って、苦しんでるあんたなら、きっと戻れるさ」
「黒木君‥‥」
 エリスの呟きに答えたのは、丈であった。親指を立ててニコリと笑う黒木に、エリスは少しホッとしたように頷いた。しかし、それもつかの間、魂の騎士達はロキの直前で、SAブーリとシンドリ派の兵士の激しい戦いが行われていた。ヴィオ達も、すぐにブーリに囲まれる。
「まだ、これほどの兵力が!?」
 いやおう無く戦いに巻き込まれる魂の騎士達。シンドリ派も、関係なく襲い掛かってきて、乱戦となってしまう。
「どうしたのエリス!?」
「くっ‥‥」
 戦いが始まってしばらくして、エリスの動きが鈍いことに気づくヴィオ。彼はいまだ覚醒することに躊躇を感じていた。
「覚醒は戦う為だけの力に過ぎないと言ったはずだ」
「わかって‥‥います!」
 エリスに語りかける魂の声。戦う力を求めてしまう恐怖を、エリスは振り払えずにいた。
「覚醒した時、私は私でいられるのでしょうか‥‥人を守ることを忘れ、ただ破壊だけを楽しむ殺人鬼になってしまうかも‥‥」
「恐れるなエリス、力はそれを使う者次第で変化する、力は守る為の力にだって出来る。おまえ達が教えてくれた事じゃないか」
「この声は‥‥レイさん!?」
 そんなエリスに、語りかけるもう一つの声。それは、かつてエリスと共に戦い、ヴァルハラの民を守るため、戦場に消えていったヴァンの双子騎士の一人レイの声。
「どうしたエリス、この世界を平和にするんでしょ?」
「レイさん‥‥。っ!? ヴィオさん‥‥? そうでしたね。私達は世界を平和に導くために戦いを続けてきた。それは今も同じ」
 エリスには、レイとヴィオの姿がダブって見えた。エリスにはヴィオを通して、レイの魂が語りかけてくれたと感じる。
「ありがとうございます、レイさん。私はもう迷いません。世界に争いがなくなるその日まで‥‥私は戦います! そのためにも、今は力を貸してください‥‥フレイ!」
「証明してみせよ。お前の進んだ道が本当に正しいものだったのか‥‥」
 エリスの想いに、魂の声が応える。そして、エリスは覚醒し、SAフレイがその姿を変えていく。まるで燃えるような、炎赤のオーラを纏った機体。
「いきますよ、ヴィオさん!」
「了解! ファルケ・フェーダ・クライドゥング!」
 エリスの掛け声に、ヴィオが応え、フレイは赤い残像を残して周囲の敵を高速で破壊していく。しかも、この乱戦でシンドリ派の有人機のコックピットには傷をつけず武装を破壊し戦闘力を奪うだけという神業をやってのける。
「あれは!! あの光る機体‥‥これは、あの時見た悪夢と同じ、ならばあの機体にシンドリが!?」
 その戦いの中、マリアは一機の光る機体に気づく。それは、自らの手でロキを倒すために、ロキを復活させたというシンドリのSAヘイムダルであった。
「待ちなさい、シンドリ!」
「緑マリア君、そして魂の騎士の諸君か。残念だが、君達の相手をしている暇はないのだよ」
「シンドリ! ロキを倒すのなら手を‥‥きゃあっ!」
 マリアの制止に、シンドリは一言返し、マリア達を相手にせずロキへと向かっていってしまう。そのあまりに強い意志の力に、マリアは見えない壁を感じ機体を弾かれる。
「私は風を、嵐を止めることは出来なかったというの‥‥」
「おい、マリア! いま、あの機体を分析したんだが、シンドリの奴、とんでもないもんを作りやがった!」
 ガクリと肩を落とすマリア、そこにフォーからの通信。彼は、ヘイムダルの隠された武装に気づき、それを伝えようとする。
「あの機体には、反物質砲っていうやばいもんが積まれている。前にちらりとシンドリから聞いたんだが‥‥その一撃は、この世界の半分を焼き払うらしい」
「そんな! それじゃ、もしロキを倒しても世界が滅んでしまうのと一緒‥‥」
「早く、奴を止めないと! シンドリなら、ロキを倒すため躊躇無くそれをぶっ放すぞ!」
 フォーの報告に、滅びた世界を想像して顔を歪めるマリア。
「わかったわ! フォー、貴方はもう退きなさい!」
「へっ、どうやらすでにそうもいかないようだぜ‥‥」
「フォー‥‥?」

「もう少しお前達を援護してやりたかったんだけどよ。さすがにそろそろ無理なようだ」
「フォー!」
 スキーズヴラズニルの艦長席に座ったフォーは、モニターに映るマリアに苦笑を浮かべた。スキーズヴラズニルは、すでに多大なダメージを受け、船体のあちこちが炎上している状態で、これ以上の航行は不可能であった。
「俺以外の乗員は全て脱出させた。俺は、お前達にこの情報を伝えるために残ったんだ」
 そう言いながら、フォーは額から大きな汗を流していた。その腹部には、何かの拍子に受けたのか大きな傷から血がにじみ出ている。
「この艦は俺の設計だ。非常時に備えて一人でも操艦出来るように設計してあるぜ」
「フォー! いいから早く脱出して!」
「これが最後だ、俺が道をあけるから、お前らはロキの所へいって、ヤツラの戦いを止めるんだ‥‥。操縦は自動に切り替え目標は敵の密集する場所だな、全砲門開くぞ、敵をロックオンしたら自動追尾だ。味方は当たるなよ」
 マリアの声にも耳を貸さず、フォーは操舵装置を操作し、ロキとの間に密集するブーリへと船体を向ける。そして、そのまま敵へと突っ込んでいく。
「じゃあな、マリア、少しの間でもおまえと一緒に風を感じる事が出来て楽しかったぜ、死んでも愛してる」
 敵を巻き込みながら、船体が崩壊する最後の瞬間、フォーはマリアへと安らかな笑みを返し、炎に包まれていくのだった。

「フォー!! 私は、彼の想いに応えるのが恐かった。種族の違い、世界の違い、そして戦士として捨てた女を意識することで戦えなくなるのが恐かった。それなのに!!」
 敵の真っ只中で、炎上し爆砕していくスキーズヴラズニルの姿に、マリアは涙を流しながら悲痛な叫びをあげる。彼の死に、伝えられなかった想いがあふれ出してくる。他の騎士達も、掛ける言葉が見つからず、ただ俯くのみ。
「マリア‥‥行こう。フォーも、貴女が立ち止まるのを望んだわけじゃないと思うよ」
「ヴィオ‥‥ええ‥‥フォーの想いのためにも、シンドリとロキを止めましょう」
 それでも辛そうに声をかけるヴィオに、マリアはゆっくりと涙を拭い、頷いた。
「感動的なシーンの所悪いけど、ここは行かすわけにはいかないよ」
「シェリー、てめぇ!」
 気を取り直し、シンドリを追おうとしたヴィオ達の前に現れたのは、オーディンを裏切りシンドリについたシェリー・ローズ。その機体は、SAオーディンを取り込み、力を増したベオウルフ二号機。彼女の登場に、丈はキッとその姿を睨みつけた。
「皆は先に行け、此処は俺が何とかする」
「どうやら、そうもいかないようだね。ロキ側にもまだ人形が残ってたようだよ」
「なに!?」
 シェリーと対峙し、仲間を先に進ませようとする丈。しかし、行く手を阻むのはシェリーだけではなかった。
「あれはヘル!? でもこの感じ、ハイブリッド、あなた‥‥」
 現れたのはヘルに搭乗したハイブリッド。しかし、そのオーラは深い悲しみと絶望に包まれ、ヴィオにはまるで泣いている子供のように感じられた。
「エリス、お願い、レイの為にも彼女を放ってはおけない」
「わかりました、私達で彼女を救いましょう」
 ハイブリッドを止めることを決めたヴィオとエリス。そしてフレイはヘルへと向かっていくのだった。
「さあ、こちらも始めようか! ロキが勝ってもシンドリが勝っても、世界は滅びる、そのまえに決着をつけてあげるよ!」
「お前を倒して、ロキもシンドリも止める!」
 そして、シェリーと丈も、お互いの戦いの決着をつけるため、ぶつかり合うのだった。

「ブリーキング・ベル!」
 ヘルから放たれる一斉射撃。無数のオーラビームが、フェンリルの巨体を襲う。
「そうそう、何度も同じ手は食わないぜ!」
 しかし、機体を回転させながら、見た目によらず俊敏な動きでその攻撃を避けるフェンリル。お返しとばかりに、こちらも強力な武装で攻撃を行う。しかし、ヘルはその攻撃をものともせず、受けた損傷は瞬く間に修復されていく。
「さすがに冥府の姫、この程度では効かないか」
「無駄だ兄上、死を統べるこの私を滅ぼすことはできない」
「それはどうかな、俺は全てを破壊する者だぜ」
 激しい攻撃の撃ち合い、周囲ではそれに巻き込まれたSAが次々と爆砕していく。それはまさに、戦った周囲に様々な傷跡を残してきた神代の戦いのようであった。
「っ!! ‥‥シンドリか‥‥厄介な‥‥。兄上、遊びは此所まで‥‥御武運を‥‥」
「おい、待ちやがれ! ちっ、いきなりなんだ。だいたい敵の武運を祈るとか、あいかわらず考えの読めない妹だ」
 しかし突然、ヘルガは攻撃を止めると、言葉を残しロキの所へと戻ってしまう。安則は、それに顔をしかめながらも、無理に追うことはせずに見送るのだった。

「お前が、ヨルムンガンドかっ!!」
「いかにも、貴様はトールの魂を持つ者だな。だがしかし、真の覚醒を果たせぬ貴様に、私は倒せん! 貴様に私の剣が見えるかな?」
 ヨルムンガンドと対峙したトール。しかし、ヨルムンガンドの瞬速の動きに、トールはついていけず、その縦横無尽に延びる両腕によって切り刻まれていく。
「くそ、蛇のくせに早すぎる、うぉぉ!」
「どうしたその程度か? 我が剣の妙技、まだ全ては見せていないぞ!」
「くそ、こうなったら! てぃやぁ!」
「血迷ったか? そんなもの当たりはしない!」
 絶体絶命の富嶽は、何を思ったか手に持ったハンマーを渾身の力で投げつけた。しかし、それはあまりにも簡単に避けられてしまう。
「これで終わりだ! っ!? ぐはっ、後ろから!? 卑怯な貴様それでも戦士かぁぁ!!」
「このハンマーは、投げても手元に戻ってくるんだ!」
 避けられたと思ったハンマーだが、なんとそれは途中でUターンし、ヨルムンガンドの背中へと命中する。そして、そのままトールの手元へと。
「よし、いまだ! 装甲パージ!」
 攻撃を受け怯んだヨルムンガンドに、トールはその重装甲を排出し、高速移動で突っ込む。
「うぉぉ、ミョルニールハンマー! 光になれぇ!!」
「ぐぁぁぁぁ!」
 そして、覚醒し光り輝くハンマーを、ヨルムンガンドに振り下ろす。それは、ガードする腕を消滅し、そのまま本体まで破壊する。断末魔の悲鳴をあげるロッソ。しかし‥‥。
「勝ったと思うな‥‥貴様も連れて行く」
「なっ、まずい!!」
 ロッソは最後の力を振り絞り、機体の隠し腕がトールのコックピットに襲い掛かる。富嶽の目の前に、ロッソの凶刃が迫り‥‥。
「かつての伝説なんぞ知るか! 弟ごときに負けるようなやつが戦友だと言うのは俺さまの名が廃る!」
 間一髪のところで、安則のフェンリルがトールを弾き飛ばし、その攻撃を回避させた。
「兄‥‥上‥‥」
 その様子を、無念そうに睨みつけ、ロッソは息絶えた。

「ハイブリッド、いえ、クー・フェイル! あなたは一人じゃない一人になんかしないから、帰る場所がないならここで暮らしたっていいじゃない! 一緒にいきましょう」
「いまさらなにをいう‥‥そんなことできるはずがないだろう!」
 ハイブリッドを説得しようとするヴィオ。鏡のような遠隔兵器エンフェリアによって反射される予測不能のビームをかいくぐり、何度も説得の言葉を語りかける。
「何故? 貴女はなにも失ってなんかいない、ただ忘れているだけ! さぁ、一緒に取り戻しましょう!」
「うう‥‥私を惑わすな‥‥消えて無くなれぇ!」
「っ!!」
「危ないヴィオ!」
「虎雄!!」
 激昂するハイブリッドの攻撃を受けそうになるヴィオ、しかしそれを竹内虎雄が巨人より託された剣で弾き返す。
「その剣は‥‥」
「さぁヴィオ、もう少しだよ。彼女を救おう!」
「ええ‥‥エリスお願い!」
「わかりました、いきます!」
 虎雄の剣に一瞬動きを鈍らせるハイブリッド、そこへヴィオのフレイが飛び込み、ヘルを押さえつける。そして、コックピットを開き、生身の姿でハイブリッドに語りかける。
「さぁ、一緒に行きましょう。貴女は人形じゃない、貴女の意志で、この手を掴んで!」
「なぜそこまで‥‥うっ」
「クー・フェイル‥‥お前は『あるべき場所』に帰りたくはないか‥‥」
 手を差し出すヴィオ。しかし、コックピットを開き、その手を掴もうとするハイブリッドの頭の中に、彼女を惑わすヘルガの声が。
「もう‥‥誰の人形にもならない!」
「クー!」
 だが、ハイブリッドはそれを振り払い、ヴィオの手を掴み取る。
「私‥‥貴女のところにいて‥‥いいの?仲間としてそばにいて‥‥いいの? ありがとう‥‥何て呼んでいいかわからないから‥‥姉さんって‥‥呼んでいい?」
「ええ、行きましょう。ね、姉さんはちょっと恥ずかしいけどね」
 ハイブリッドの言葉に、ヴィオは少し照れながらも、ニッコリと微笑んで頷いた。

「お前の力は認めてやる、しかし何度やっても同じなのさ!」
「同じじゃない! なぜなら、俺は一人じゃないからだ! リア、俺に力を貸してくれ!」
 圧倒的力で丈を苦しめるシェリー。しかし、丈は諦めず、自分の愛する者から力を受け取る。
「ベオウルフ・ブレイド推参!」
 力を受け取ったベオウルフは、新しい形態に進化する。その手には、美しく輝く聖剣が握られている。
「愛の力だとでも言うのか!?」
「そうだ! 全てを恨み呪うのがアンタの力の源、ならば俺は全てを愛する」
 丈の剣は、シェリーの攻撃をことごとく切り裂いていく。シェリーは、驚愕と忌々しいといった表情で、丈を睨みつける。そして、聖剣が一際大きな光を発し。
「ファァイナル・ブレイカァァ!」
「な、何ぃ!!」
 丈の渾身の一撃が、ついにシェリーの機体を切り裂く。そして、シェリーのどす黒いオーラは徐々に消えていく。だが、丈の剣はシェリーを倒さなかった。
「ううう、止めを刺さないのかい?」
「殺したりはしない、アンタにはまだやる事があるだろ」
「甘いねアンタは昔から‥‥でも‥‥その甘さが羨ましかったよ‥‥ずっと‥‥」
 シェリーは、丈を守るように見える美しい少女に語りかけた。だが、そんなシェリーもまるで美しい少女のように微笑みを浮かべているのだった。

「ロキよ、私を操った報いを受けてもらおう。反物質砲『ラグナロク』発射!」
 ロキの上空へと辿りついたシンドリは、ヘイムダルに搭載された反物質砲をロキに向けた。そして、次の瞬間、光よりも早く、世界の半分を破壊するほどの反物質がロキへと放たれた。
「なに!? 反物質が‥‥消滅した!」
 しかし、その反物質は、ロキに当たる寸前、消滅してしまう。それは、ロキが生み出した無によって起きた現象であった。
「ええぃ! 一歩遅かったか! 目覚めたか、ロキ!」
 シンドリは苦々しげに呟く。さきほどまでただの黒い物体であったロキは、いまでは巨大な人型の姿となり、周囲に無の空間を生み出し始めていた。そして、その無はヘイムダルさえも侵食し始める。
「やってくれる! ここまでか‥‥」
「哀れな人間よ‥‥父上は連れ帰る‥‥それでは不満か?」
「ふっ、消え逝く者に不満もなにもないだろう」
「‥‥‥」
 悔しげに呟き、無へと消えていくシンドリ。語りかけてくるヘルガに、笑みを零し答える。やがてその視線は、魂の騎士達へと向けられ最後の言葉を残す。
「魂の騎士達の諸君‥‥。あとは頼んだぞ‥‥愛するものを‥‥失った私にはできなかったが‥‥愛の力でロキを‥‥」

「ついに、ロキが覚醒した!? 無が広がっていく‥‥」
「見ろ、ヘイムダルが!」
「進鳥。貴方はもしかしたらこうなる事を望んでいたのかしら‥‥?」
 ロキの覚醒、世界は無に覆われていく。消えていくヘイムダルの姿に、マリアは悲しげに言葉を零す。
「ロキ‥‥巨人族の愛人の心臓を喰ってだか、身体を抱いてだが、俺たちを生んでくれたことには感謝してやるよ。父親孝行にもっとも素敵な事、父親を越えるって最高の孝行をしてやるぜ!」
「といっても、あの無にはこちらの攻撃は効かないよ、どうするの!?」
「分ってるよロヴン、彼に剣は必要ない‥‥そうだろ?」
 威勢良く叫ぶ安則、しかし無は全てを消滅させるため、攻撃が通ることはない。駈の不安な声に、答えたのは丈であった。丈は、持っていた聖剣を手放し、その身を愛の女神ロヴンと一体化させる。
「マリア、君の力で、全ての者に伝えてくれ」
「ええ、わかっているわ。魂有る全ての者よ。力を貸して! ヴァンもアースも無い。世界を守りたいと想うなら、この戦いを終わらせましょう!」
 丈の言葉に、マリアは頷き。全ての力を使って、あらゆる者に語りかける。
「虎雄、その、愛してるから、ね」
「僕もヴィオを愛してる、だから勝とうこの戦いに」
 ヴィオの告白、虎雄はニッコリと頷き心を一つにする。やがて、多くの者が愛によって心を一つにしていく。それにあわせて、魂の力がロキを囲み強い光を発していく。そして、一つの掛け声と共に大きな力が放たれる。
「アール・ヴァル・アルダ・スピリット!!」

「そして戦いは終わった。ロキは愛の力に敗れ去り、シギュンと共に眠りについた。世界は、まるで何事も無かったかのように、元の姿に戻り。全ての者は、この戦いの記憶を失った。だが、魂の騎士と呼ばれた者達はそれを覚えている。そして、ここにその戦いの記録を残そう‥‥っと、できた!」
 文章をパソコンに打ち込み終え、男は大きく背伸びをした。そして、妻が食事を呼ぶ声に、大きな声で答え、席を後にする。最後の箇所には、『著 富嶽源』と記されてあるのだった。

●キャスト
 シェリー・ローズ
  大道寺イザベラ(fa0330)
 黒木丈
  相麻 了(fa0352)
 富嶽源 竹内虎雄
  伊達正和(fa0463)
 エリス・リヴァイア フレイの声
  水鏡・シメイ(fa0509)
 ロッソ・ヴォルフ
  ディノ・ストラーダ(fa0588)
 クー・フェイル
  槇島色(fa0868)
 緑マリア
  稲森・梢(fa1435)
 ヴィオ・ローザ レイ
  レティス・ニーグ(fa2401)
 緑川安則
  名無しの演技者(fa2582)
 ヘルガ・ベル
  桜 美琴(fa3369)
 鹿島駈
  七瀬七海(fa3599)
 フォー・ハーン
  ユキイ・アバンサール(fa3610)
 シンドリ
  池内秀忠