Breath of music 2006春アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
緑野まりも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/28〜03/04
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●本文
●参加ロックバンド募集!
今年もインディーズバンドのロックライブイベント『Breath of music 2006春』を開催いたします。つきましては、参加ロックバンドを募集しております。実力のあるバンドが集まるこのイベントに、貴方も参加するチャンスです。我こそはと思うロックンローラーたちよ、集まれ!
●イベント概要
イベント名 Breath of music 2006春
会場 ライブハウス『TOKYOロックスター』 収容人数500人
毎年それぞれの季節に行われる、ライブハウス主催のインディーズロックバンドのライブイベント。毎回実力のあるバンドを呼び、また無名のバンドにも広く門戸を開いているため、お客にも参加バンドにも人気のあるイベントである。
●招待バンド
バンド名 『Venus(金星)』
巷で人気のインディーズバンド。男性4人組のロックバンドで、激しいソロ弾きと高く力強いボイスのボーカルが人気になっている。そろそろメジャーへ、という話も持ち上がっているとか。リーダーはIWAN(イワン)、ボーカルはNASU(ナス)。
●イベント参加条件
・音楽経験があること(場合によっては審査有り)
・ロックンローラーであること
●リプレイ本文
「都合で参加できないやつもいるが、俺達『アーウェルンクス』にとって大事なライブだ。全力でやる、それだけだ!」
「ええ、気を引き締めていきましょう。絶対に‥‥成功させます!」
「よし、頑張るか‥‥」
バンドグループ『アーウェルンクス』のリーダー陸 琢磨(fa0760)の掛け声に応じるように、メンバーの陸 和磨(fa0453)、シャルト・フォルネウス(fa1050)が頷き返す。
メンバーが足りないとはいえ、バンドの看板を背負って参加するイベントに失敗は許されない。抜けているメンバーの分も補えるように、タクマたちはライブに向けて綿密な打ち合わせを行うのだった。
その頃、『flicker〜R2〜』のラシア・エルミナール(fa1376)と嶺雅(fa1514)は肩を組んで街を歩いていた。
「なぁ、イベントまで日が無いのに、あたしたちこんなことしてていいの?」
「大丈夫、俺ら日々の練習欠かさないし心が通じあってるしな。それより、今は俺との時間を楽しんでよ」
「バ、バカ! そりゃ、レイと遊ぶのは楽しいけどさ‥‥」
「それに、本番前に喉壊してライブは枯れた声‥‥なんて観客も聞きたくないでしょ? ラシアは調整のつもりが全力で、なんてことよくあるし」
「う、まぁ‥‥ついね‥‥」
レイの言葉に、照れたように頬を掻くラシア。そんなラシアを、楽しそうに笑みを浮かべながら、頬にキスをするレイ。
「ったく‥‥歌ってるときなら負けないのに」
「どう、できそう?」
「ま、なんとか‥‥な」
今回のイベントに合わせて新しく組んだユニット『VITALIZE』の亜真音ひろみ(fa1339)と、実夏(fa0856)。二人は、イベントで歌う曲を作っていた。作詞ひろみ、作曲実夏で行われる新曲作りであるが、時間はあまりない。
「‥‥ふぅ、できたで。これでどうや?」
しばらくして、大きく息を吐き手に持っていた黒石の万年筆を置いた実夏は、出来上がった楽譜をひろみに見せる。
「ふんふふ〜ん♪ 汗にまみれ、埃にまみれ‥‥もう一度スタートを切った! うん、いいんじゃないか!」
楽譜を見て一通り曲を口ずさんだひろみは、満足そうな笑みで実夏を見た。実夏も、相手の反応に嬉しそうに笑うが‥‥。
「そうか、そらよかったわ‥‥あかん、さすがに‥‥少し眠らせて‥‥ふぁ〜あ‥‥」
「お、おい、こんなところで!? あ〜あ、丸くなっちゃって‥‥ふふふ‥‥」
徹夜で曲作りをしていた実夏は、完成で気が緩むと、休憩用のソファにネズミの様に丸まって眠ってしまった。その様子に、ひろみはクスリと笑みを浮かべ。
「人混みを離れ〜、風に吹かれ〜、大切なものに‥‥気付いたとき‥‥」
ロックとはまた別の、ゆっくりとしたスローテンポ、優しく柔らかく、まるで子守り歌のような静かな歌声が響き渡るのだった。
イベント当日。ライブハウスには、何組ものバンドが集まっていた。それぞれが、短い持ち時間で立ち位置や調整、リハーサルなどを行っている。
「ふむ、広さ、強度、ともに申し分ないな」
「はは、タクマは歌いだすと激しいからな。これだけのステージなら好きなだけ弾けられる」
「ああ、今日は全力でいくぞ」
『アーウェルンクス』の一同も、ステージの様子を確かめつつ今日のライブにあわせた調整を行っていた。タクマとカズマが、立ち位置や動きについて打ち合わせをしていると、フードを被ったシャルトが周囲を気にしだした。
「どうしたシャルト? なにか気になるものでも?」
「いや‥‥『Venus』が来ていないな」
「そういえば、まだ見てませんね」
「そうか‥‥」
リハーサルが終わった後にでも、『Venus』にサインでも貰いに行こうと考えていたシャルトであったが、まだ来ていないようだ。フードで隠れた顔はちょっと残念そうだった。
「なぁ、ラシア。参加バンドの『NASU with STARDUST』のNASUって、『Venus』のボーカルじゃないか?」
「さあね、あたしらには関係ないじゃん。本命も他のバンドも関係ない。あたしらはあたしらで、真剣に歌ってお客を盛り上げればいいだけさ!」
レイはスケジュール表に載っていた参加者の名前に、見覚えのある名前を見つけ首を傾げる。しかし、ラシアはそんなものには興味がないとばかりに言い放つ。
「それはそうだけどな。なんでわざわざ別バンドで参加してるのか‥‥」
「知らないよそんなこと! それよりあたしは、早く歌いたくってウズウズしてるんだ!」
「はは、スケジュールじゃ、俺らは二番手だから。爆発するのはもう少しまってくれ」
苦笑しつつも疑問を口にするレイだが、日ごろの軽い練習でフラストレーションのたまったラシアは、もう爆発寸前だ。ライブまで後数時間、レイはラシアのテンションを維持することに努めるのだった。
「ちょっとまって、あんたNASUじゃない?」
「え、ああ‥‥そうだけど」
「そう、あんたが‥‥。あたしは亜真音ひろみだ、よろしく。そっちで知り合いが世話になってると思う」
「ああ‥‥」
ひろみは、知り合いから元『Venus』のボーカルNASUの事情を聞いていた。NASUの方も、ひろみのことを聞いているのか、名を聞いて思い出したように頷いた。
「そっちも大変だろうけどがんばりな。夢、あきらめず走りなよ」
「ああ! わかってる」
その後、しばらくNASUと話をしたひろみ。お互いが自分の夢を確かめ合う、そんな感じの会話であったが、立ち去るNASUにひろみが最後に言葉をかけた。
「NASU! ‥‥あんた、自分に正直になりなよ!」
「!! ‥‥俺はいつだって、自分に正直だ‥‥」
最後の言葉に少し驚きを見せたNASUは、動揺したような足取りでその場を立ち去るのだった。
「おそかったな、どないした?」
「いや、ちょっと知ってるやつと話をしてた」
「そうか。ほな、最後の調整いくで!」
控え室に戻ったひろみ。NASUの様子は気になったが、彼にも頑張って欲しいという想いも籠めて歌を歌おうと思うのだった。
「いくぞみんな! 最高のロックを響かせてやる!」
「おぅ!」
「ああ‥‥」
イベントが始まった。タクマの掛け声に、メンバー達は頷き、ステージに立つ。その姿は、半獣化しており、獣の荒々しさが現れていた。
「‥‥『SHOUT』いくぜ!」
観客のざわめきと視線を打ち消すように、タクマが曲名を叫ぶ。チュイーン! ジャンジャジャン! それと同時に、シャルトのギターが激しく音を奏で出すと、タクマのベースが重低音でそれを追いかける。激しくアップテンポの前奏に観客が引き込まれ始めたころ、タクマがマイクを持ってステージぎりぎりに立ち歌いだした!
「打ち捨てられる 価値すらない そう思っていた そんなボクが居る」
「夜明けにキミは ボクに囁く 囁いたキミは ボクに微笑むんだ」
普段のクールさが嘘のように荒々しく激しいタクマと、やはり普段の姿とはかけ離れた力強い歌声のシャルト。
「ボクは此処に居る! SHOUT! ボクの可能性を! SHOUT! 名乗りを上げろ!」
ステージ中を走り、飛び、叫ぶタクマに、合わせる様に歌うシャルト。二人の歌声を、しっかりとカズマのベースがカバーし、曲はどんどん激しくアップテンポになっていく!
「ボクだけに出来る 勝ち名乗り 世界に知らしめろ ボクは此処に居るんだと‥‥SHOUT!」
歌詞通りの激しい叫び。観客達もノリにノッて、最後は全員での大絶叫になるのだった。
「あたしらの歌を聞いて! 『Dreams』いくよ!」
『flicker〜R2〜』、二人のボーカルが息のあった歌声で歌う曲は、聞く者を魅了するプロとして通用するものだった。
「願うだけで叶うのなら 誰もがむしゃらにならないさ」
「だから目の前を見つめて 歩き出さなきゃ駄目だね」
ラシアとレイのストレートな歌詞、抑え気味の重低音が、重く重く心を打ち‥‥。
「夢を叶えられる人は 決して多く無いけれど そこで諦めたら道は 二度と開きはしないよ!」
サビで一気に爆発した! ラシアの全力の叫びが、それをサポートしつつ主張しあうレイの声が、観客達のテンションを一気にあげる!
「ずっと願ったこの夢を いつかこの手に収めたなら 胸を張って笑いたいね 遠い過去の自分へと!!」
大きく響き渡る歌声が、演奏が終わった後もしばらく余韻を残すのだった。
「『RUN』‥‥」
ひろみの静かな声と共に、実夏がキーボードで軽快なテンポの前奏を奏で出す。ギターほどの力強さはないが、それは逆に曲の良さがよくわかるものだった。
「汗にまみれ 埃にまみれ 夢さえも遠くなった日 熱い日差しの中 揺らめく陽炎の向うに 昔の自分がいた‥‥」
ひろみの歌声が、キーボードの音に乗って響き渡る。強く激しい想い、そんなものが感じ取れるような歌声。
「青い月明かりの中 きらめくアスファルトの上で! もう一度、スタートをきった!」
地に立つすべてのものに贈る応援歌。そんな気持ちが篭った歌に、観客達は大きく歓声をあげるのだった。
その後、『Venus』がボーカルを変更し、メジャーデビューすることを発表する。『Venus』目当てできた客達は動揺しつつも、そのことを祝うことになる。しかし、今回のライブを成功させたのは彼らだけではないということを、観客達はよくわかっていた。