雑誌モデル募集(企画)アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 みそか
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/20〜12/24

●本文

<某雑誌編集局>
「突然だが、君たちにはモデルをやってもらう」
『!!!!』
 集められた芸能界関係者らに戦慄がはしる。モデルと言えば(少なくとも耳に入れば)芸能界の花形ともいえる職業である。泥のプールに飛び込む必要もなければ、死体の役をするためだけに十数時間も待たされる必要もない。
 CM、ゲスト、ドキュメンタリー!! どれをとってもモデルは『一般的には』お客様として扱われ、丁重にもてなされる。
 少ない待ち時間、専属のメイク、大部屋ではなく個室の控え室、美味いロケ弁!! 「モデルにならないか?」と街中で声をかけられればそれは大半が下劣な表現を含む嘘であるが、ここは紛いなりにも雑誌社である。まさか下手には扱うまい。
「で、その内容だがな‥‥」
 ゴクリと唾を飲む芸能関係者たち。CMということはないだろうが、雑誌のファッションモデルを飾るだけでも、仕事としては上々である。
「スポンサーのダイエット食品企画をしてほしいんだ。本当はモデルに理想のプロポーションを手に入れようっていう企画でやるつもりだったんだが、モデルを呼ぶと高いし、わがままだし、わかりにくいし。‥‥そこで体形に少しは難のある君たちに『モデル』として企画に挑んで欲しいんだよ。よかったら今すぐ体形の写真取るから、また連絡があったら用意したマンションに来てくれ」

 ‥‥つまり、企画を要約すると以下の通りである。
 企画は『一週間、スポンサーである健康食品(商品名:痩せる君Z)を食べて理想のプロポーションを手に入れる』ということ。都内の3LDKマンションを『四日間』借り切るので、そこで全員が一週間分の撮影(カメラは貸し出すので各自撮影)をしてほしい。
 スポンサーの関係上、過度な運動をしているスナップは不可。あくまで適度のエクササイズで痩せているようなスナップが望ましい。

●今回の参加者

 fa0261 紅・燐香(25歳・♀・兎)
 fa0402 横田新子(26歳・♀・狸)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0675 恵・ミルク(18歳・♀・兎)
 fa1136 竜之介(26歳・♂・一角獣)
 fa1453 御堂 陣(24歳・♂・鷹)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)

●リプレイ本文

<出だし>
Q:本当!? たった一週間ではっきりとした効果が得られるの?
A:はい、本当です! この『痩せる君Z』はアルプスの奥地から最近発見された新種のオーラを大量に含んでいます。そのため、これを飲むと体が自然にポカポカしてきて、基礎代謝量が上昇します。そのため、激しい運動をしなくても痩せることが可能なのです。

『私も推薦します』(日本マテリアル肥満リトマス学研究発表協会理事長・林長雄市)
「痩せる君Zを今回当協会で研究してみましたが、その効果はすばらしいの一言に尽きますね。そもそも生理学上で‥‥(略)」

 今回はこの『痩せる君Z』の効果を皆様により分かりやすく理解していただくために、八人のモニターの方々に一週間ダイエット実験をしていただくことにしました。すると‥‥‥‥(略)‥‥

●序幕
「さて、一通り住環境は整ったわけだが、具体的にこれからどうしようか?」
 最初の撮影を終えた後、小一時間ほどトイレにこもっていたチェダー千田(fa0427)がぐるりと他の参加者を見渡して問い掛ける。見れば撮影用に詰め込みすぎたものを出して、見るに耐えなかった彼の腹回りも一応はすっきりとしている。
「とりあえずこれを食べることからじゃない? この本を読む限りだと食べれば食べるほど痩せるみたいだし」
 包装のビニールをピリピリと破り、中からダイエット食品を取り出す横田新子(fa0402)。意気込みからか、健康食品を掴むその手はプルプルと震えている。
「僕はこれから太ってみようと思うよ。最初に僕の美しい体型をとっておけば、その効果も劇的に見えるってことさ」
「そういえばそうね。私もこれ以上痩せたらガリガリになっちゃいそうだし、そうしようかしら」
 ダイエットするまでもなく、服の上からでもはっきりと確認できるくびれに手を置く竜之介(fa1136)とトール・エル(fa0406)。同時に意気込みから震えていた横田の腕が別の感情から震え始める、部屋には不穏な空気が流れ始めるが、それは御堂 陣(fa1453)の大声によって払拭された。
「ダッシャー! とりあえずこんなところでウダウダしていてもはじまらねぇし、食べようぜ、これ!」
 どこかで聞いたことがあるような気合の入れ方で自らを奮い立たせ、ダイエット食品の蓋を開ける陣。見開いた彼の目に映ったものは‥‥どこかで見たことのある、細く白い物体であった。
「これは‥‥糸こんにゃくなのでは?」
 独特のにおいが届き、タラリと汗を流す紅・燐香(fa0261)。実際に食品を手にとった陣も『新発売』であるはずのこの商品を見て動揺を拭い取りきれない。
「い、いや。見た目はアレだがきっと何か別のものが混入しているんだろう。そうに違いない!」
「そう‥‥ですね。よしんば糸こんにゃくだったとしても、私達は売ることじゃなくて痩せることが仕事なわけですし‥‥」
 切り替える陣と苦笑いを続ける紅。
 ‥‥とりあえず彼らは、痩せるために外でロードワークを始めることにした。

<間>
Q:糸こんにゃくみたいだけどどう違うの?
A:全く違います。確かに外見、においは糸こんにゃく独特のものかもしれませんが、あくまで糸こんにゃくはベースとして、その他にもさまざまな『痩せる』物質を混入させています。この効果に関しては写真の○△研究発表機関委員長の千田さんも実証済みでして‥‥(略)

●幕間
「なあ、ところでどうして俺だけ白衣を着ての撮影があったんだろう?」
「‥‥えっと、たぶん身体のラインを隠すためじゃないでしょうか」
 ロードワークをしながら、走るたびに揺れるヒカル・マーブル(fa1660)の『局所』に目を向ける千田。マーブルはその視線に気づいているのかいないのか、時折揺れて邪魔になるその『局所』を手で調節しながら走りつづける。
「白衣で隠さないですむようなラインが手に入れられるといいですわね。二人とも、帰ったらエアロビを教えてさしあげますわ」
「ええ、そのとおりですね。もう少し痩せられるといいんですけど‥‥」
 軽快な足取りで追い抜いていくトールを追いかけるヒカル。頼みの綱であった健康食品にもはや頼り切るわけにもいかなくなった以上、仕事を完遂するためには自分達で何とかするほかない!
「よっし、やる気出てきたわよ〜〜! バリバリ運動してガツガツ痩せてやるーー!!」
 両手足を激しく動かしながら、気合を入れなおす恵・ミルク(fa0675)。痩せるという企画はまだ始まったばかりであったが、一つの目標へと向かっていく彼女達の視線は、決して俯くことはなかった。

●本幕(二日後)
「‥‥ねぇ、恵さん。何キロ痩せました?」
「‥‥‥‥二キロ‥‥‥‥と、ちょっと」
「私は一キロ‥‥ですわ」
 恵とトールの声はどこまでも暗い。
 そう、二日間である。短いようでも長く、そして苦しい特訓を彼女達は重ねてきた。痩せる君Zのみを服用し、時にはそれすらも絶ってきた。空腹は胃袋をけたたましく鳴らし、流れ出る汗は彼女達の頑張りを称えるかのごとく次から次へと溢れていく。しかし、なぜ、それなのに、どうして!!
「へへ〜〜。私は五キロも痩せたよ」
「それは‥‥‥‥いえ、なんでもないデスヨ」
 横田と他の二名とでは元来の体型に差があることを言おうとして止める陣。だが、少し遅かったのか、数秒後には部屋に鈍い音が響き渡った。
「俺は百グラム単位の変動だな。こうして考えると、このダイエット食品はそれなりに効果があるのかもしれないな」
「はい、そうですね。あたしも少しだけ痩せられました」
 糸こんにゃくを食べたヒカル達と、普通に食事をとった千田との違いであって、ダイエット食品それ自体の効果には未だに不確定要素も残るが、とにもかくにも現状報告を始める参加者達。その効果は個人差こそあれ一定のものを挙げていつつも、とてもスポンサー側から指定された『一週間分』には届きそうにない。
「フッ、僕はもう四キロも太ったよ。やっぱり太るほうが正解だったみたいだね」
「そうですわね。‥‥でも、食べるのは外でしてきてくださる?」
 膨らんだおなかをさすりながら得意げに呟く竜之介へ、トールは冷たい一言を浴びせる。ここ数日ろくな食事をとることができずにいらついていたのだ。一人だけ部屋の中でバクバクと食べられていたのではたまらない。
「それで、どうするのよ。あと二日で三キロとか四キロとかとてもじゃないけど無理よ!」
 そもそも設定に無理があったと、ブンブン腕を振るわせる恵。一応の目標として五キロ減量を掲げていたものの、現状では厳しいと言わざるを得ない。例えどんな仕事であろうとも、達成してみせるのがプロの心意気である。
「こうなったら気は進みませんけど水分を削るしかなさそうですわね。サウナにこもればあっという間に体重は減りますわ」
 トールは美容によくないと肌を触りながら言葉を紡ぐ。水分で体重の帳尻を合わせるという方法は減量中のボクサーがよく行う方法であり、人間の体内において七割を水分が構成している以上、痩せようと思ったのならばそれを削ぎとることが一番である。そう、『数値』として痩せようと思ったのならば!!
 (竜之介を除く)全員が覚悟を決め、重苦しい空気が周囲を支配する。死地に赴くような焦燥たる決意を持つ中‥‥一人の男が重い口を開いた。
「少し考え方を改めるべきじゃないか? 重要なのは数値じゃなくて見てくれのはずだ。しっかりとシェイプすれば、実際の数字より大きく書いても気づかないはずだ」
『!!!!!』
 陣の言葉に全員が手を打ち、賛同の意を表す。なるほど、確かに自分達はこの数日運動につぐ運動を行ってきたのだ。劇的に筋肉量が変化したとも思えないが、運動に慣れていない身体に負荷がかかれば筋肉が表面に浮き上がり、自然と脂肪が引き締められることになるのだ。
「つまりだ、いっそのこと痩せることと平行して、トレーニングをこれまで以上にやればいいんだよ。そうすれば痩せることもできるだろうし、なにより見た目に分かりやすい」
「そうですね。それじゃあ私も、筋肉がつきやすい料理をつくりますよ」
 今回調理を担当していた紅も立ち上がり、挫けかけていた参加者達の心が(竜之介を除き)一つに纏まる。玄関の扉は彼らの閉ざされた心の扉と同時に開き、彼らは地平線に沈みかけた太陽へ向けて走り出した。
 そう、どんな仕事であれ受けた以上は完遂するのがプロの精神! 身体に筋肉をつけて、引き締まった身体を読者に届けるのだ!!

 ‥‥そして彼らは、見事な肢体を雑誌へ載せることに成功したのであった。

<終盤>
 それではこれより身体が仕事のモデルの皆さんに、実際にこの『痩せる君Z』を体験してもらいました。是非写真に目を通していただき、その驚きの成果をご覧ください!
 体験者は八人、体験期間はたったの一週間!! それだけで、なんと、平均で6.2センチ、ウエストサイズで10センチもの変化があったのです(あくまでこれは個人の体験談です。実際の効果には個人差があります)! この劇的な変化、目を疑われますよね?
 ですが、これは真実なのです。さあ、皆さんも理想の体型を手に入れたければ、今すぐこの痩せる君Zを手に入れるのです!! お電話は‥‥‥‥


<ホテル・ケーキバイキング会場>
「みんな〜〜、雑誌ができたみたいだよ」
「おっ、もうですかっ。ずいぶんと早いですね」
 企画が終わった後、ケーキバイキングに集まっていた一同のもとへ雑誌の草稿が届けられた。竜之介は恵からそれを受け取ると、ふむふむと自分達の雄姿を‥‥引き締まった‥‥‥‥引き締まりすぎているその肢体を眺める。
「いくらなんでもこれは‥‥引き締まりすぎじゃありませんかね?」
「私とか‥‥胸が大きくなってるし」
 草稿を手に、怪訝な表情を浮かべる紅とトール。確かに自分達は頑張ったが、いかんせんたったの四日間である。出なければならないところが引っ込んでいることもあるし、その逆もままある。だが、これは‥‥‥‥まるで自分達が本当に理想のプロポーションを手に入れたのかのように描かれている。
 彼女達が‥‥‥‥‥‥画像はパソコンで加工されたものであったということを知るのは、そう遠い日のことではないであろう。