小さい事はいい事か?アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮本圭
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/03〜01/07
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●本文
あなたは今まで、疑問に思ったことがないでしょうか?
芸能界における若い女性のプロフィールに、嫌でもついてまわるあの数値を。口では気にしないなどといいつつも、世の多くの男性たちがチラチラと横目で気にしているそのサイズを。
「ナンセンス!」
胸が大きいほうが可愛いなどというのは、多分に男性側から見た価値観です。実際には肩がこる、痴漢に狙われやすい、似合う服の選択肢が狭いなど、巨乳であることによって負わされるマイナス要因のほうが多いのではないでしょうか。
‥‥いや、当番組の女性スタッフ(公称Bカップ)の話からの想像ですが。
そもそも通販カタログの家具じゃあるまいし、女性を体型のサイズで判断するなど言語道断。乳腺および皮下脂肪による胸郭部隆起の形状やサイズがどうあれ、本人の人間性にはまったく関係がないことのはず‥‥にも関わらず、男性たちは相変わらず「俺巨乳派」「俺も俺も」などと、あたかもバストサイズが女性美の基準であるかのような振る舞い! 二十一世紀を迎えた今こそ、このような前近代的な価値観は捨て去るべきではありませんか?
トミテレビはそんな現代社会に潜む警鐘を鳴らすべく、討論番組を企画しました!
ゲストを多数をお迎えし、番組枠いっぱいまで「巨乳信仰は是か非か」について徹底的に議論を戦っていただきます。巨乳派のあなたも貧乳派のあなたも、是非この番組で己の価値観に革命を起こしてみては?
「胸が小さくて悪いか! むがー!」
なお、企画の一部に女性スタッフ(公称Bカップ)の私怨が入っているような気がしても、それは錯覚です。
‥‥番組のあおりに対して企画そのものに大いなる矛盾が感じられたとしても、それもきっと錯覚です。錯覚ということにして許してお願い。
●リプレイ本文
「‥‥」
「‥‥‥‥」
気まずい。
気まずさの原因は、各自の席に配られたお菓子にあった。
「‥‥これは」
誰からともなく洩らされた呟きに、お皿のゼリーがたぷんと魅惑的に揺れている。お椀を伏せたようなその形状といい、頂の部分の(どう考えても余分な)パーツといい‥‥言うなれば、そう、
「巨乳ゼリー!」
ゼリーを配った張本人である司会のホワイトタイガーマスクが、タキシードを翻し高らかに宣言した。
「巨乳信仰の是非について語り合うおともに、これほど相応しいお菓子はないはずよ!」
説明しよう。普段は内気で恥ずかしがり屋さんな夏姫・シュトラウス(fa0761)は、白い虎のマスクを装着することにより、大胆不敵な謎の怪人・ホワイトタイガーマスクに変身するのだ!
「この女ばかりの席で、何が悲しくてこんな地方のセクシーみやげみたいなものを‥‥」
「あ、でも意外とおいしい」
こめかみを押さえた織石フルア(fa2683)の横では、美角やよい(fa0791)がゼリーをぱくぱく口に運んでいる。形状はともかく、味はそう悪くないらしい。同じくうまうまとゼリーを食んでいた縞りす(fa0115) が、突然はっと我に返った。
「こ、これはもしや‥‥さっぱり胸が育たないしまりすへのイヤミでぃすか!?」
育たないんだ‥‥。
思わず同情的な視線が集まった胸を隠しつつ、これから(多分)育つんでぃす! とりすは訂正した。白虎の覆面の下から、司会の女性はふ、と不敵な笑みを覗かせる。
「まさか。司会だもの、私の立場は中立よ」
‥‥そう言った本人は、実にリング映えする豊満なボディの持ち主であることも言い添えておこう。
「だけど胸が小さいことに悩むなら、まずその目の前の『巨乳』を食ってかかりなさい!」
ホワイトタイガーマスクは、そこでカメラに向けてぴっとポーズを決める。
「そしてこの、論理による戦いに勝利するのよ!」
カーン。かくて、議論のゴングは鳴らされた。
●ある方とない方
「ここはあえて言おう」
ふ。大人びた笑みを浮かべ、発言したのは胡桃・羽央(fa3814)だった。
未だ幼さを残す面に、ほっそりした体つき。十四歳、それは未だ固く未成熟な果実の年頃だ。愛らしい笑みをカメラに向け、天使のようなハイトーンの声で羽央は続けた。
「巨乳も貧乳も、それぞれにイイ、と!」
‥‥天使のようなのはあくまで声だけで、発言内容ではなかった。どちらかというと、小悪魔。
「いきなりそれを言ったらみもふたもないのでは‥‥」
「あえて分類するなら、羽央は貧乳族かなあ一応。81Cって微妙なサイズだよねー」
この中では比較的常識人と思われるフルアのつっこみは華麗に聞こえないふりをして、羽央はどう? どう? と胸を張る。りすややよいやフルア、つまり羽央言うところの『貧乳族』がひそひそと言葉を交し合った。
「Cカップで貧乳扱いか‥‥」
「ひどいのでぃす。それで貧乳だったら、しまりす一体何なのでぃすか」
無乳? それとも負乳? 言いながら自分で傷ついているりすに、
「だ、だってりすちゃんまだ十代でしょ? これからじゃ‥‥」
フォローの声をかけるやよいだったが、いやむしろ二十歳で『貧乳』にカテゴライズされる自分の方が深刻なのではと、途中で気づいて愕然とした。
「どうせ‥‥どうせ私は『双子のうち胸がない方』だよ‥‥」
「うーん、でも、あったらあったで大変なんだよー?」
『胸がある方』の美角あすか(fa0155)が、妹の言葉に首をかしげてそんなことを言う。
「夏なんか、やっぱりとんでもなく暑いから憂鬱だし‥‥」
「他には?」
「‥‥ええと」
すねた目で妹に見つめられ、笑顔のままあすかは一瞬固まった。気まずい沈黙。
「‥‥夏は暑くて」
「いや胸がなくたって夏は暑いから! 人類共通だからそれは!」
「やよいったら、そんなに怒らなくてもいいのに。自分にないものに憧れる気持ちはわかるけど」
「だ‥‥黙って聞いてればさっきから言いたい放題‥‥このGカップお化けめ!」
Gカップお化け‥‥出演者も撮影スタッフも、スタジオ中の視線があすかの見事なバストに集中する。目線はそこから自然と、相似の遺伝子を持つ(はずの)やよいのそこに移動し、誰からともなく、はあ‥‥と溜息がもれた。『足して二で割れば丁度いいのに』の意であった。
こほん、と咳払いが響く。
「‥‥まあ、そのあたりの家庭争議は、後日、本人たちだけでしていただくとして」
我に返ったやよいが小さくなるのを横目に首を振り、イルゼ・クヴァンツ(fa2910)が席を立った。
「胸が大きいからといって、一概にいいことばかりでないのも確かです。そこが目立っていると、やはり不埒な輩に目をつけられることも多いですし」
「ああ‥‥それに、運動が大変と言う話はよく聞くな。伝聞だが、走ったりすると痛いとか」
大きければそれだけ重たいわけだから。あすかや夏姫がひそかに頷いていると、フルアは大真面目に続けた。
「その点、ひんぬーは揺れもしなければそういった痛みとも無縁だから、運動にはたいへん有利だ。ついでに障害物競走のたぐいにも強いぞ。どこにもひっかかりようがないから、どんな狭い所も楽々通れる」
「‥‥その通りでぃすが、微妙に傷つくのは何故でぃすか‥‥」
●恐怖の検証タイム
「確かに、世間的には、胸が大きい女性がもてはやされるのは事実ですが」
今まで沈黙を保っていた日向みちる(fa4764)が、咳払いしつつ発言した。
「胸が小さく見せる必要があったり、実際に小さいほうがいい仕事もありますよね」
当のみちる自体が、少女歌劇団で男役を演じている。舞台ではできるだけ男性らしいシルエットに見せるため、さまざまな努力を行っているそうだ。
「ベストで胸を押さえたり、布を巻いたり‥‥肩パッドを入れると、意外と目立たなくなりますね。でも何より皆、普段着に苦労するみたいです。男役は皆背が高いですから」
必然的に、プライベートでも男っぽい服を着ることが多くなる。ふつうの女物ではまず丈が合わないし、そもそも似合わないことも多い。たとえ可愛らしい洋服が好きでも、なかなか着られないというわけだ。
「そういう意味では、胸のサイズで服の選択の幅が狭くなるという悩みには共感できるかな」
「‥‥ちなみに、そんなみちるさんのスリーサイズは?」
司会にマイクを向けられたみちるは、ファンを魅了してやまない爽やかな笑みを見せた。
「『清く正しく美しく』。少女歌劇団のモットーに則って非公開です。標準的、とだけ言っておきます」
「‥‥私も巨乳というほどではないと思いますが」
イルゼが挙手して発言する。
「確かに、私たちは皆人前に出る仕事ですから、困ることもありますね。たとえば‥‥」
そこでめずらしくちょっと言いよどんだイルゼは、軽く咳払いをした。座席のない開けたスペースに進み出る。
え、と思う間もなく、均整のとれた肢体が高々とジャンプした。
空中でイルゼの体が弧を描き、体重を感じさせない軽々とした音で着地する。一瞬の沈黙ののち、スタジオに拍手が巻き起こった。軽く会釈して席に戻りながら、イルゼは言葉を続ける。
「こういう風に体を動かして、ええと‥‥揺れたりすると、やはり男性の視線が集まりますから。不快とまでは言いませんが、やはり少々気になりますね」
曲芸を生業とするイルゼとしては、自分の体よりも技そのものを見てもらいたいのだが、純粋に芸を見に来る客ばかりでないことも確かである。
「まあ‥‥確かに私もアクションシーンとか多いし、あんまり大きくても困るんだけどさ」
やっぱり小さい方が便利なのかな? でも女心としては、もう少し育ってもバチは当たらないっていうか‥‥仕事柄体を動かす機会の多いやよいが、ぶつぶつ言いながら口を尖らせる。
「しかし、ひんぬーはひんぬーで、独自の精神的被害を被ることがある」
牛乳(この飲み物のチョイスはもちろん夏姫だ)を飲み干して口元を拭い、重々しく言ったのはフルアである。
「‥‥痴漢に遭ったとき、『ちっ、男か』と舌打ちされるのは結構屈辱だぞ」
「うっ」
フルアの目に潜む昏い光に思わず怯んだ一同だったが、こういう話が大好きらしい羽央だけが食いついてきた。
「えー嘘ー。そんなに何もないの? 全然? ほんとはちょっとぐらいはあるでしょ?」
「‥‥そうだな。私も、下着のサイズを探すのに苦労している、とだけ言っておく」
「え? それつまり」
本来ブラで支えるべきものが全くないってことじゃ‥‥思ったことをそのまま出力しようとした羽央の口を、あすかとやよいが双子ならではの連携プレーで急いで塞ぐ。面と向かって言うには失礼すぎる。
「あ、あははは。た、大変なんですねえ」
ごまかすように笑いながら羽央の口を押さえていたあすかだったが、
「うきゃあっ!?」
いきなり胸元に走った感覚に素っ頓狂な声を上げた。口をふさいでいた関係上密着していた羽央が、どさくさまぎれにあすかのGカップを触って‥‥というか、掴んでいる。もっと言うなら、揉んでいる。
「うわー、柔らかーい、大きーい。さすがGカップ」
「きゃーっ、きゃーっ」
「見た目も大事だけど、やっぱり揉み心地も大事だよねえ」
あすかの悲鳴もどこ吹く風、触り心地を心行くまで堪能している羽央の行為は正真正銘セクハラである。いつのまにやら着衣は乱れ、あすかがパフォーマンスを見越して着けてきたビキニがあらわになっている。『見た目は子供、中身は大人』を標榜する羽央の手つきもあいまって、深夜でなければ到底放映できないお色気ぶりであった。
‥‥数分後、騒ぎ疲れてぐったりしているあすかを残し、ゆらりと羽央は立ち上がる。
「は‥‥羽央ちゃん? 何を」
「やだなあ。巨乳信仰の是非について問うんでしょ?」
小悪魔の笑みで、羽央はきゃっ、などとしなを作ってみせる。
「よりつっこんだ討論のためには、事実関係の検証が不可欠。巨乳の次は、貧乳についても検証しなくちゃ」
「‥‥‥‥!!!」
‥‥放送された番組がどうなったかは、あえて語るまい。
だが後半、深夜にあるまじき数字にいきなり跳ね上がった視聴率と、
「巨乳も貧乳も、それぞれに違った揉み心‥‥じゃない、味わいがあっていいよねえ」
「この戦い、今回は引き分け! だが戦いはまだ終わりではないわ‥‥巨乳と貧乳の第二、第三の戦いが、いずれ行われるときも来るでしょう!」
羽央と夏姫のかなり強引なまとめが、出演者たちの疲れをさらに増大させたことだけ記しておこう。