寒中耐久グラビア撮影!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮本圭
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/14〜12/19

●本文

「今回はすごいぞ」
 企画会議にて、編集者はそうのたまった。
「価格据置き、大幅増ページ! 特別企画目白押し! 何せ一周年だからな」
 ‥‥幾多の雑誌が創刊され、その多くが淡雪のようにはかなく消えていくこの出版業界の片隅で、このたび一冊の雑誌が創刊一周年を迎えることになった。
 内容はまあどこにでもある若い男の子向けの情報誌。特集で扱うのは今冬の流行のファッションからいまさら誰にも相談できない下半身のお悩みまで、そしてなんといっても健康的な色気ただようカラーグラビアが売り。お求めは最寄の本屋さんで。
 ともあれ廃刊にもならずに一年もたせることができたのは非常にめでたい。それにふさわしい企画をと行われた企画会議の席で、編集者たちは己のアイデアをぶちあげたのである。
「グラビアのページも増やそう、な! この際だからいつもより人数も増やせ。最近ちょっと地味なのが続いたから、そうだな、ここは原点に戻って、海辺で水着とかどうだ」
「いいと思いますよ。この際だから、グラビアの女の子たちには表紙にも出てもらって」
「そうそう! この際だから袋とじのページなんかもつけて」
「この際だからいつもよりちょっと過激に」
 編集者たちが各々妄想の翼をはばたかせ、えへへとだらしない笑いを浮かべる中、お茶を出していた若い女の子が軽く咳払いをした。途端に居住まいを正して会議の続きに戻る、出版界の明日を背負う男たち。
「今からスケジュールのとれるアイドルがいますかね?」
「カメラマンもだろう。ロケ先での撮影となると、けっこう大掛かりになるぞ」
「さっそく各方面に連絡しましょう。これから忙しくなりますよ」
「いやあ、われながらなんていい企画だ!」
 これはもう部数増間違いなしだと自画自賛する編集者たちの間で、お茶くみの女の子はもう一度咳払いをした。
「確かに悪くない企画だとは私も思います」
 水を打ったように静まり返る会議室の中で、彼女は男性陣が忘れているある重大な指摘をした。
「‥‥今が十二月なのをのぞけばですが」
「じゃあ撮影は沖縄にしようか」
「十二月は沖縄の海だって冷たいですよ」
 結局何を言っても無駄なまま、冬の海での撮影は決行されることになりそうだ。

●今回の参加者

 fa0368 御鏡 遥(17歳・♀・狼)
 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0565 森守可憐(20歳・♀・一角獣)
 fa0675 恵・ミルク(18歳・♀・兎)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa1084 比良坂 夏芽(25歳・♀・一角獣)
 fa2037 蓮城久鷹(28歳・♂・鷹)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)

●リプレイ本文

 タレントとスタッフと撮影機材を積んだ飛行機が無事空港へと到着し、さらにそこから移動用のマイクロバスに乗り込んだ。宿泊先のホテルに荷物を運び込み、撮影の前準備として役所関係などを回り、ついでに必要そうなものをいくつか調達する。
 撮影の予定された日、一番の懸念はやはり天候だったのだが、幸い朝からきれいに晴れていた。
「沖縄!」
 頭上の空に雲は数えるほどしか見られず、誰もいない砂浜は広々としていた。
「海!」
 肝心の海はといえば、夏でもどこか重苦しい印象のある関東の海とは色からして違っている。陽光の乱反射する洋上にも負けず劣らず顔を輝かせ、誰よりも先にサーフパンツ姿で海へと特攻をかけたのは有珠・円(fa0388)だった。
「いやっほうっ!」
「‥‥呼び戻してくるか?」
「水がどれぐらい冷たいか確かめるんだって、本人は言ってたけど」
 ざぶざぶ波と戯れるカメラマン三十五歳を遠く眺めながら、撮影助手である蓮城久鷹(fa2037)が申し出る。車から自分の分の機材やカメラを下ろしながら首を振ったのは、円と同じカメラマンの郭蘭花(fa0917) だ。
「傍目から見ると、遊んでるようにしか見えないわね‥‥」
「でも、思ったより寒くなさそうなのは助かります」
 ほっとしたように森守可憐(fa0565)が呟く。
「確かに、泳ぐにはちょっと時期外れですけど‥‥」
 気象予報士の比良坂夏芽(fa1084)の言によれば、この季節、沖縄の平均最高気温は二十度弱程度だという。今日はそれよりも幾分涼しいようだが、それでも本州で同じ撮影を行うことに比べれば天国のようなものだと、スタイリストの中松百合子(fa2361)が溜息をついた。
「真冬の江ノ島で水着撮影なんて話も、たまに聞くわよ」
「うわ」
 想像しただけで鳥肌の立ちそうな話に、水着の仕事は初めてという御鏡遥(fa0368)が小さく震え上がる。『最初聞いたときには、少々被写体への配慮が足りないのではと思いましたが‥‥』と夏芽が言った。
「こうして少しでも暖かいところで撮影させてもらえるだけでも、ましというわけですね」
「それはわかるけど‥‥でもやっぱり、できれば夏に来たかったなあ」
「同感だわ」
 遥の残念そうな呟きに、恵・ミルク(fa0675)も頷く。蘭花が苦笑いしながら、
「泳ぐのはちょっと時期外れだけど、観光ぐらいはできるんじゃない? 撮影が早く終われば少しは遊べるんじゃないかしら」
「そのためにはまず、もう一人のカメラマンを呼び戻さねぇとな」
 久鷹が言いながら見やると、水温調査と称した水遊び(本人は逆だと言い張るかもしれないが)に興じていたカメラマンが、海水で体を濡らしたままようやくこちらへ戻ってくるところだった。
「うーん、やっぱり水から出ると結構寒いよなあ‥‥」
「身体ぐらい拭きなさいよ、もう」
 いくら暖かいとはいえ、大事なカメラマンをそんな姿で放ってもおけず、百合子が急いでタオルを手に走っていく。

 シーズンオフということもあって撮影許可をとるのはそう難しくなかったのだが、下準備には少々手間がかかった。
 沖縄の冬は暖かいとはいえ、水着でうろうろして平気というほどではない。海辺での撮影は当然濡れるからなおさらだ。大切な被写体に風邪などひかせては一大事というわけで、撮影の前と後にきちんと暖をとらせよう、という点で、スタッフの意見は見事に一致していたようである。
 陽気から考えれば少なくとも冬の江ノ島ほどの完全防備は必要ないものの、万全を期すに越したことはない。百合子は衣装である水着のほか、バスローブとダウンのコートを人数分用意していた。撮影前後は水着の上にこれを羽織ってもらう手はずである。もちろん、体を拭くためのタオルや暖まるための毛布も用意済みだ。
 雑用係として雇われた久鷹の用意は万全で、まず少し風があるということで浜辺に風除けの簡易テントを張っている。それから携帯カイロ、出掛けにホテルで用意してもらった熱湯入りの魔法瓶や水筒。各種ティーバッグ類に百合子持参のレモネードなどが加わって、なかなか暖かそうだ。
「本土に比べりゃあったけえが、それでも濡れた体で風に吹かれたら寒いしな」
 お湯が足りなくなることも考え、ブロックで簡単なかまどを組んで焚き火の準備も万全、ちょっとしたキャンプの構えである。焚きつけにライターで火をつけている久鷹に、重い機材と格闘している蘭花から声が飛んだ。
「蓮城くーん? 浜辺にいくつかゴミが落ちてるから、悪いけど拾っといてくれない?」
「おう、これが済んだら行く」
 かいがいしく雑用に走る助手を傍目に、スタイリストの百合子はマイクロバスの中でタレントたちと打ち合わせ中だ。肝心の衣装、水着についてである。
「とりあえず、これだけ持ってきたけど‥‥」
 、色とりどりの衣装を前に、タレントたちは自分の好みのものがないか吟味している。もちろんカメラ映えの問題もあるので、彼女たちの好みを反映しつつそれぞれに合うものを選ぶのは百合子の役目だ。
「森守さんは淡い色が似合うから‥‥これなんかどうかしら。水鏡さんはこれ」
 可憐の衣装は淡いピンクのロングセパレートに、シースルー素材のパレオつき。遥のものはパステルブルーにレースの縁飾りつきの、健康的な中に可愛らしいタイプのビキニだ。夏芽に選ばれたのはやはりパレオを巻くタイプだが、上が黒のチューブトップなので、可憐や遥に比べてやや大人っぽい印象がある。
「わ、可愛い!」
「やっぱりちょっと涼しそうですね‥‥お腹とか」
 渡された衣装を前に喜ぶ遥、服の上から体に当ててみる夏芽。
 当然現在、マイクロバス内は男子禁制。しっかり備え付けのカーテンを閉じられた車内で、さっそくサイズが合うか確かめるべく服を脱ぎ始めたタレントたちを横目に、百合子は残りのひとりのために水着の山をかき回していた。
「恵さんは‥‥」
「これがいいわ」
 他の三人に比べて明らかにタイプの違う恵について、さてどうしたものか思案していた百合子だったのだが、当の本人はとっくに目当てのものを見つけ出していたらしい。差し出された真っ赤なビキニを目にして、遥が一瞬言葉を失った。
「す‥‥すごい」
「水着っていうか‥‥紐と布、って感じですね」
 映ってはまずい部分以外ほとんど隠せないのでは、と思わせるきわどい衣装に、可憐も息を呑む。
 これが清純派路線で撮る予定の他の三人が選んだものなら百合子も止めるところだが、恵は元々がセクシー路線で売っている女優である。この水着で見劣りしないだけの体の持ち主だし、自分の見せ方もちゃんと心得ているはずなので、それで行きましょう、ということになった。

 女の子たちの着替えも無事終わり、カメラマンの準備も万端となったのは昼を回った頃。砂浜に点々と散らばっていたゴミや危険物のたぐいもあらかた回収し、となればようやく撮影開始となる。
「そろそろ頃合かな」
 ファインダーを覗き込みながら呟いた円は、タレントたちが待機しているテントのほうに向け、じゃあまず遥ちゃんヨロシクー、と声をかけた。
「はーい」
 元気よく答えながら立ち上がり、するりと遥は着ていたバスローブを脱ぎ捨てる。小道具の浮き輪とビーチボールを手にやや涼しい風の吹く浜辺を横切って、円の指示に従ってまず波打ち際に立った。なまぬるいさざなみが足首を洗っていく。
「どう? 寒い?」
「ちょ、ちょっと。想像してたよりはマシだけど」
 遥の写真に関しては、彼女の持ち味である元気さやかわいらしさを前面に押し出すことが決まっていた。ビーチボールで遊んでいる場面を撮ったり、続いて水面に浮かんだ浮き輪に上半身だけ乗り上げて、にっこりと笑ってもらったり。そのうち円も靴を脱ぎ、波打ち際まで迫ってシャッターを切り始めた。
 ホルターネックを結び直す仕草など、どきりとさせるような場面も入れて、円はふうと息をついた。
「よし。時間を改めてもう一度撮るから、遥ちゃんはこれで一旦休憩ね」
「ありがとうございますっ」
 海から上がると風が当たってけっこう寒いのか、急いでテントまで戻る遥を、百合子がタオルを手に出迎える。入れ替わりに出て行くのは可憐で、久鷹が円の指示に従ってレフ板の向きを調整する。
「こんな具合か‥‥旦那、ライトなしで大丈夫か?」
「今のところはいいや。いい光来てるし」
 可憐の本業はあくまでも歌手なので、歌っているようなイメージで撮ってほしいのだと事前にお願いされていた。セイレーン‥‥人魚の歌姫、というコンセプトで行こうということになったため、少し沖のほうまで行って実際に歌ってもらい、その様子を撮ることになった。
「想い届かぬ人に歌う、って感じで歌ってみて。あ、もうちょっと体濡らしてくれる?」
「は、はい」
 可憐の歌声が響く中、一方の恵はもうひとりのカメラマンである蘭花に撮ってもらっているところだった。もっとも蘭花は女性であるせいか、セクシー、という分野にはいまひとつ明るくないようだ。
「うーん‥‥どこまでやっていいのかしらねえ。ターゲットは十代後半から二十代らしいけど」
「大丈夫! あたしに任せて」
 自他ともに認めるお色気女優である恵は堂に入ったものだ。
 適度に濡れている感じを出すために、霧吹きを使って肌を湿らせる。被写体本人と相談しつつ、恵の武器であるJカップを強調するポーズを中心に撮っていくことになった。連続したシャッター音が響き、やがて恵はするりとブラの紐を解いた。同じ女性である蘭花から見ても迫力のある胸があらわになる。
「待った待った待った! それはちょっとやりすぎじゃ」
「肝心な部分が見えなければ大丈夫よ。下は脱がないし」
 そういうものかしら‥‥と思いつつ、まあ本人が袋とじを希望してるんだからいいわよねと蘭花は考えることにした。
 手で隠したり、うつぶせになってもらったりと、見えたらまずい部分が見えないようにいろいろと工夫しながら、こちらも撮影は順調に進んでいった。

 夕方から夜にかけては、可憐と夏芽をメインに撮影することになった。
 日が傾いてくると体も冷えてくる。待機中の女の子たちやスタッフには、百合子と久鷹で用意してきた飲食物を配ることにした。好みにあわせて紅茶や緑茶、レモネードには百合子のアイデアで蜂蜜が入っていてほんのりと甘い。食事のほうはあらかじめ作ってきたものを火にかけただが、蘭花の豚汁や百合子のうどんなど、こちらも体の温まるものを中心にしたので、こちらもなかなか好評だったようだ。
「よーし。夏芽ちゃん、どうぞー」
 この時間帯になるとさすがに自然光だけでは撮れないので、ライトを使っての撮影である。夏芽のイメージは『天候を操る女神』。やや大人っぽい水着にあわせたコンセプトにしたようだ。
「女神だし、あんまり笑顔全開でなくてもいいからね。威厳がなくなっちゃうし」
「ええと‥‥これぐらいですか」
 『お天気お姉さん』という仕事柄笑顔は基本なので、表情を作ることには慣れている。軽く口角を上げた彼女の表情をファインダーに捉えながら、そうそういい感じ、とシャッターを切る円。夏芽は多少はセクシーを意識しているらしく、軽く砂浜に寝転がって、こうですか? などと尋ねたりもしていた。
 そして最後は夜の海をバックに、可憐の撮影である。昼間との対比をつける意味で、夜のカットを入れたいのだという。
「じゃ、可憐ちゃん、寒いだろうけど頑張って」
「は、はい。あの、歌ってもいいですか。そのほうが気分が出るので」
「どうぞどうぞ。プロの歌がタダで聞けるんだから役得だよねえ」
 冗談なども交えつつ、持ち歌のバラードを歌う姿を撮っていく。出来上がりはなかなか上々でつい円も興が乗ってしまい、その撮影が終わった頃には真っ暗になっていた。
 翌日に軽く全員集合の写真を何枚か撮影し、打ち上げもかねて浜辺でバーベキューを催すことになる。

 その雑誌の記念すべき一周年の号は、その全員集合の写真のうちの一枚が表紙に決まったという。
 それぞれタイプの違う女の子たちが、こちらを向いて思い思いの表情で笑っている。背景は広い海、そして白い砂浜。雑誌名のロゴのすぐ下に『一周年記念豪華グラビア収録』とでかでかと文字が入り、その下に『過激袋とじグラビアも』とある。
 表紙の効果かそれとも袋とじの効果かは定かではないが、この号はいつもよりも大幅に部数を伸ばすことになる。