雪の事情アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 2.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/05〜04/07

●本文

・物語り憑き
 それは、物語の登場人物達と触れ合う事の出来る、神秘の職業
 それは、親から子へ、子から孫へと受け継がれる伝統の職業
 それは、物語憑き本部からの指令により、日々物語の安全を守る、名誉ある職業


*物語り憑き本部*

 その日、本部は重苦しい静寂に包まれていた。
「ど、どうしましょう」
「とりあえず、特殊部隊を手配した方が良いかも知れない」
「かも知れないとかじゃなく、手配しましょう!何せ数が多いですから!」
 女性本部員の言葉に頷く男性本部員。
「それにしても、どこに行ったのか‥‥」


*寧樹学園*

 その日、有坂 雪(ありさか・ゆき)は有り得ない光景を目撃し、思わず目を丸くした。
「え‥‥今のって‥‥」
「どうしたんだよ雪?次、移動教室だぜ?」
「あ、うん‥‥」
 目を擦り、その人物が入った部屋へと視線を向ける。
 1−Cの教室の中からは、普段と変わらない談笑の声が漏れ聞こえて来ている。
(気のせい、かな?)
 雪はそう思うと、友人達のもとへと駆け出した。
(ここに女の子がいるはずないもんね‥‥)
 雪の通う私立・寧樹学園は全校生徒600人あまりの男子校で、白の学ランと雪の結晶を模した校章が有名だ。
 男子校と言うだけあって、勿論女子生徒はいない。
 けれど先ほど雪は、1−Cの教室に入って行く少女を目撃した‥‥気がしたのだ。
(万が一僕の見間違いじゃなかったとしても、女の子が教室に入ってきたら大騒ぎになるはずだし‥‥)
 雪の足がピタリと止まる。
 今、確かに音楽室に女の子が入って行った気がしたのだ。
「やっば、もうチャイム鳴るじゃん!雪、何ボケっとしてんだよ!」
「あ、うん‥‥」
 友人に促されて教室に入る。
 そこかしこで雑談を交わす生徒達は普段と変わらない様子だ。
(もしかして、こんな昼間から幽霊‥‥?)
 ゾクリと背中に冷たいものを感じ、胸に抱いていた教科書をギュッと握り締めたその時‥‥
「あっ‥‥!」
「どうかしたのか?」
 短い悲鳴を上げた雪の顔を覗き込む友人。雪の視線を追い、何もない空間に首を捻る。
(‥‥見えてない。って事は‥‥)
 雪は、目の前で蹲る少女がどんな存在であるのかを理解すると、ふわりと微笑んだ。
「んっとね、虫がいて‥‥僕、虫苦手だから‥‥驚かせちゃってごめんね?」
「何だ、虫かよ」
 苦笑しながら自分の席へと着く友人。
(物語の登場人物だ‥‥女の子の姿をしてるけど、どの物語の登場人物なんだろう)
 そっと席に座り、少女の動向を窺う。音楽教師が部屋へと姿を現し、少女が開いた扉から廊下へと駆け出して行く。
 雪はそっとポケットの中に忍ばせてあった携帯を開くと、物語り憑き本部からの新着メールがある事に気がついた。
『現在7匹の子ヤギが行方不明中。子ヤギ達は人化しており、見つけ次第早急に保護する事』
(7匹の子ヤギ‥‥ってことは、もしかしてあの子以外にもいるかも知れないって事!?)
 雪は暫し迷った後で、本部宛にメールを返した。
『私立・寧樹学園校内にて人化した子ヤギと思しき少女を発見。周囲に気付かれないように保護し、少女以外にも校内にいないかどうか調べます』


≪映画『雪の事情』募集キャスト≫

*雪(必須)
 有坂家次男。実年齢15(外見年齢13〜18程度)
 低身長で色白、美少女顔。全て母親遺伝子で生まれて来てしまったと言う不幸な少年
 純粋で素直な性格で天然。湊を有坂の中で唯一頼れる存在と認識。常に弱い者の側に立つ

*人化した子ヤギ(必須)
 ・雪以外の方はこの役となります
 ・子ヤギと言う事ですが、特に外見年齢の制限は設けません
→ただし、子ヤギの精神年齢は5〜8歳程度とさせていただきます
 ・性格は皆純粋で素直です(個々に泣き虫や怖がりなどの性格を追加しても構いません)
→捻くれた性格や凶暴な性格は不可となります

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4286 ウィルフレッド(8歳・♂・鴉)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 気が引けつつも、保健室に行きますと言って教室を後にした雪(大海 結(fa0074))は見覚えのある顔にビクリと肩を上下させた。
「湊お姉ちゃんに姫?」
「それ、だぁれ?」
「ユニはユニだよ?お兄さん、物語り憑きさん?」
「え、うん。君達は子ヤギだね?」
 雪の言葉に、湊似のヤギがミナミ(椿(fa2495))、姫似のヤギがユニ(月見里 神楽(fa2122))と名乗る。彼らは本部から、雪に他の子ヤギ達を見つけて欲しいとお願いしに来たのだと言う。それにしても、ワンテンポずれたおっとり系のユニと、身長は大きいくせにまったく頼りになりそうもない雰囲気をかもし出しているミナミ。
(余計大変そうな気が‥‥)
「雪さんは、何だか優しい匂いがするの‥‥」
 突然聞こえた声に、ビクっと驚く雪。ミナミの背後から、メイ(カナン 澪野(fa3319))がちょこりと顔を出す。怖がり屋の彼は、常にミナミの背後にいないとダメなようだ。
「とりあえず、早く見つけ出さなくちゃ」
「お願いします」
 ユニがペコリと頭を下げ、ミナミとメイもそれに続いた。


 動きのトロイユニが何時の間にかいなくなり、珍しい物に興味を示してフラフラと何処かへ行ってしまったミナミ。後ろからキチンと子ヤギ達がついて来ていると思い込んでいた雪だったのだが‥‥
「雪さん、みんながいないの‥‥」
 雪の裾をヒシっと握っていたメイがそう言って、雪は足を止めた。
「え、え!?何で!?」
 役に立っていないどころか、とんだ足手纏いになった2人。隠れている子ヤギを捜す前に、2人を捜すと言う手間が加わり、途方に暮れそうになっていた時、廊下の向こうから2匹の子ヤギが姿を現した。
「あ、いたぁ〜!」
 ミナミが満面に笑みで走って来て、隣に居た子ヤギが溜息をつく。
「ダメだよ、ミナミは目を離すとすぐにどっか行っちゃうんだから」
「ラリーくんだぁ」
 メイがラリー(倉瀬 凛(fa5331))の腕を取り、嬉しそうに縋りつく。
「あれ?ユニがいるって聞いてたんだけど?」
「あのね、ユニちゃんどっか行っちゃったんだ」
 シュンとしながら事情を話すメイ。ラリーが何かを考え、ポンと手を打つと雪に視線を向ける。
「ユニはおやつに連れて歩くから、見つけるのは簡単なんだ。だから狼にいつも一番に食べられるんだけどね‥‥」
「おやつなら、するめがあるけど」
「え、何でそんな渋いの?‥‥まぁ、いっか。これをこうして‥‥」
 ラリーがするめを廊下に置き、ジっと静かに時を待つ。廊下の先からパタパタと言う靴音が響いてきて、ユニがひょっこりと顔を現す。
「見つけた!ユニのおやつ♪」
 満面の笑みでするめを手にし、食べ始めるユニ。
「ラリー君がいてくれてよかった」
「うん、僕に任せて!一緒に捜してあげる」
「それじゃぁ、早速他の子を捜しに‥‥」
 振り向けば、子ヤギ達がふらふらと歩き出しており‥‥
「あ、ちょうちょ〜♪」
「あっちからおやつの匂いがっ!!」
「わー!すっげー!!アレなんだろ〜!?」
「‥‥今度はぐれたら本部に連れて行くからね?」
 雪の満面の笑みにピタリと止まる3人。ミナミが雪の服の裾をヒシっと掴み、ラリーとユニが手を繋ぐ。
「誰かいなくならないように、僕が見てる‥‥ね?」
「うん、お願いするね、メイ君」


「アンはきっと、日向ぼっこで寝てると思うの‥‥」
 学校内を散策していたブラン(ウィルフレッド(fa4286))を見つけた後で、メイがそう言って外へと出た時、屋上から泣き声が聞こえて来た。見上げれば、屋上のフェンスを乗り越えたところでアン(千架(fa4263))がしゃがみ込み、泣きじゃくっている。ママから貰った大事なスカーフがお昼寝中に風に飛ばされ、フェンスに引っかかったのを取ろうとして外へと出てしまったようだ。
「アンが、アンがっ!どどどどどうしよう!!」
 うろたえるラリー、オロオロハラハラするだけのメイとミナミ。ユニが騒いでいる皆を眺めてポケンとした顔で突っ立っている。
「アン君、その場を動いちゃダメだよ!?今からそっちに行くから‥‥」
 あっと思った瞬間には、みーみー泣いていたアンの体が強風に煽られてグラリと大きく揺れた。しっかりとフェンスを握り締めていた手が無情にも滑り‥‥
「ママーー!!!」
 叫んだアンの声が風に千切れ、雪はブレザーを脱ぐと広げた。ラリーとミナミがそれを手伝い、お手伝いに参加しようとしたメイがベシャリと転ぶ。
「‥‥落ちたら危ないね」
 ユニが場違いなまでに遅い理解をし、アンの体が雪のブレザーの上に落ち、ミナミとラリー、雪がはしっとその体を掴む。恐らく、ラリーと雪だけでは押しつぶされてしまっていたであろうが、そこはミナミが高身長なのを活かして頑張ってくれた。
「いたたた‥‥大丈夫だった?」
 尻餅をついた雪が、お尻を払いながらアンの顔を覗き込む。アンが雪の瞳を真っ直ぐに見詰め‥‥うるりと涙を溜める。みーみー泣き始めたアンにつられてミナミが泣き出し、メイもつられて泣き出す。
「ぼ、僕は泣かないもっ‥‥!」
 必死になって堪えていたラリーもウリュリと瞳を潤ませ、泣き始める。
「えーんえーん、恐かったよー!」
 雪に抱きついてメソメソする子ヤギ達をジっと見詰めるユニ。雪が大丈夫だと慰めながら1人1人を抱き締め、何とか涙がひき始めた頃にユニがえぐえぐと泣き始める。協調性がないと言うか、何と言うか‥‥


 ユニにミナミ、メイにラリー、ブランにアン。見つかったのは6人、残るはあと1人だ。
「ミーナは狭い所が好きなの」
「そうそう、例えば、あんな所とか‥‥」
 メイの言葉を受け、ラリーが柱時計を指差す。
「狭い所にいれば、ママが助けに来てくれると思ってるんだよ」
 雪が柱時計をカチャリと開け、中で小さくなっていたミーナ(姫乃 舞(fa0634))が顔を上げると雪に抱きついた。
「お母さん!」
「ミーナやっぱりここにいた」
 ラリーがそう言って、ミーナが首を傾げながら雪を見詰め‥‥硬直する。
「お母さんじゃない‥‥。もしかして、狼さん?」
「違うよミーナちゃん、雪さんは優しい人なんだよ?」
「そうだよ、ゆんたんは正義の味方なのー♪」
 メイとミナミの言葉に、おずおずと上目遣いで暫し雪を見詰め、大きく頷くミーナ。
「人違いしちゃってごめんなさい」
「ううん、良いんだよ。それより、本部へ戻ろう。きっとお母さんも心配してるよ?」


「もう勝手に飛び出してきちゃだめだよ?」
「えー、雪、もうお別れなの?」
 ラリーがしゅんとし、ミナミとメイが離れたくないと駄々をこねて腕にしがみ付く。
「雪ママといるの〜」
 ウルウルした瞳を向けながら服の裾を引っ張るアン。
「あの、雪さんも困ってますし‥‥」
 ミーナが3人を宥めようとするが、どうしても雪と離れたくないと言い張る。
「またきっと、会いに来るから‥‥ね?」
「本当!?約束だよ?」
 ミナミが小指を雪へと向け、指きりげんまんをする。
「また一緒に遊ぼうね」
 ユニが手を振り、ラリーとメイが雪に抱きついた後で本部員の手を取る。アンがててっと雪の前に走ってくると、お別れの涙を浮かべながらもふわりと微笑む。
「今日は、ありがと。絶対、会いに来てね?」
 雪はアンの頭をそっと撫ぜると、物語へと帰って行く子ヤギ達に手を振った。


○おまけ『正反対設定』
・コニ♂(神楽)挨拶
雪「湊お姉ちゃんに姫?」
コ「俺の名前はコニです。お兄さんは物語り憑きですね。その可愛らしい顔立ち、柔らかい物腰、貴方は噂に聞く有坂家の次男、雪さんですね?兄姉妹にイジメられる、天性のMっ子の!!」
性格:物知り。でも何故か人から嫌われる

・チナミ♀(椿)蝶々を追いかけて
チ「あ、ちょうちょ〜♪」
雪「はぐれたら本部に連れて行くからね!?」
チ「でも、あれがないと他の子を捜せないのよ?だって、黒魔術には生贄が必要でしょう?(くすっ)」
性格:どす黒い。趣味は黒魔術、特に人を呪う事

・ミイ♀(カナン)衝撃的出会い
ミ「雪さんは何だかカリスマの匂いがするわ!私のライバルね!」
雪「へ?」
ミ「(周囲を見渡し)みんなー、今日は私のライブへ来てくれて有難う〜!」
性格:目立ちたがり屋。自分をアイドルだと思い込んでいる

・リリー♀(凛)頼れない
メ「ユニちゃんがどっか行っちゃったんだ」
リ「え!?ユニちゃんが!?ど、どどどうしましょぉぉぉっ!!(ブルブル)わ、私が悪いんですか!?私が生まれてきたばっかりに‥‥!!(ブルブル)」
性格:被害妄想が激しい。常に震えている

・ミラン♀(ウィルフレッド)『子』ヤギ?
雪「一緒に他の子ヤギ達を捜そう?」
ミ「えー、私こっから動くのヤー。ダルイしぃ〜面倒臭いしぃ〜」
性格:やる気ゼロ。息をするのも疲れると言い張るつわもの

・ラン♀(千架)猛獣姫
ラ「(フェンスの外で立ち往生)」
雪「今そっちに行くから‥‥」
ラ「(強風が吹いてフェンスから落下)どけどけぇぇぇっ!!!(雪達を蹴飛ばして華麗に着地)ふっ!さすが私!100点満点だわ!」
ユ「ランちゃんすごーい!(拍手)」
性格:体育会系。1人でも生きていけそうな逞しさ

・シーナ♂(舞)勘違い
シ「(柱時計の中で丸まっていると、雪が扉を開ける)また来やがったか狼めがぁっ!!今度こそ俺様の鉄拳を喰らえっ!!(パンチ)」
雪「(壁に吹っ飛び)」
ミ「うわーん!!ゆんたんがぁっ!!」
性格:喧嘩っ早い。相手をよく確認しない


雪「こんな子ヤギ達じゃなくて良かった‥‥」