Blessing of fate 2アジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
7.2万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
04/14〜04/16
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●本文
*クロリス聖貴族国*
若き天才軍師・メイフィス(26歳)に連れられてクロリスに入ったルカとゲイルは、クロリス家当主レリーシャ(28歳)の屋敷へと足を向けた。
「ルカ王子様、ご無事で何よりでした。この度はこんな事になってしまい‥‥何と申し上げれば良いのか」
「‥‥レリーシャ様、そんな事を言っている場合じゃありませんよ。ルカ王子様がクロリスに入った事はガウロ王の耳にも入っていることでしょう。幾ら聖結界を張っているとは言え、破られないとも限りません」
「それに、取り囲まれてしまえば逃げ場がなくなる」
メイフィスの言葉に頷くゲイル。
「それならば、どうすれば良いと?」
「聖クロリスのため、ルカ王子様をバズティアに引き渡しては如何です?王子様は幸運な事にSクラスの祝福の持ち主。Sクラスの祝福を持つ王族の命を絶つ事は許されていません。ですから現に、ロイ王子様とレイ姫様はエディレイア城で丁重な扱いを受けていらっしゃることでしょう」
「‥‥それが、そうも行かないのです。もしルカ王子様をバズティアの手に渡せば、フェイズは滅びる可能性があります」
レリーシャはそう言うと、窓の外に見える白亜の神殿を指差した。
「あそこに何が封印されているのか、ゲイル殿ならばご存知でしょう」
「呪縛と呼ばれる能力だと聞いた事があります」
「そうです。呪縛とは‥‥」
「レリーシャ様!結界神殿の中に何者かが侵入し、聖結界師が次々と‥‥!」
突如入って来た白い衣装を身に纏った女性はそう言うと、悲愴な面持ちでレリーシャを見詰めた。
「‥‥まさか我が国にバズティアの手の者がいるとは‥‥」
「バズティアが此方へ進軍中、ルカ王子様を引き渡すようにと言っております!」
「‥‥至急軍を整えなさい!応戦します!」
「了解しました!」
聖騎士の男性が走り去り、レリーシャが椅子に崩れ落ちる。
「レリーシャ様!」
「大丈夫です」
「何が大丈夫ですか!クロリスを滅ぼすおつもりですか!?」
「黙りなさいメイフィス!例えクロリスが滅びようとも、ルカ王子様がご無事でさえ居てくだされば、フェイズは救われるのです!」
「何を根拠にそんな事を!」
「呪縛です。呪縛に打ち勝てるのは、ルカ王子様の慈恵の祝福を置いて他にはない」
「‥‥今はそんな事を話している場合じゃないでしょう」
「そうでしたわ。ゲイル殿、どうぞルカ王子様を連れてお逃げ下さい。バズティア軍は私共が足止めを‥‥」
「‥‥どこに逃げれば良いんです?」
レリーシャの言葉を遮って、ルカは低い声で呟くと顔を上げた。
「逃げても逃げても、バズティアは僕を追ってくる!今、この場で立ち向かわないと‥‥!」
「しかしルカ王子様‥‥」
「レリーシャ様、これは‥‥もしかしたら、勝てる見込みがあるかも知れません」
「何ですって、メイフィス?」
「ルカ王子様のお名前で軍を整えれば‥‥」
・バズティア・ザムザ隊との対決
→バズティア3000vsクロリス1500
*バズティア軍
・A:ザムザ隊(1000)祝福隊
→祝福『炎(強)』『水(中)』『雷(中)』
・B:弓隊(500)
→祝福『風(中)』『斬水』
・C:騎馬隊(500)
→祝福『光(中)』『斬炎・斬水・斬風』
・D:歩兵隊(500)
→祝福『影(中)』『水(弱)』『斬闇・斬炎・斬氷』
・E:歩兵隊(500)
→祝福『火(中)』『斬雷・斬火』
*クロリス軍
・A:ルカ隊(500)祝福隊
→祝福『聖光(中・レリーシャ)』『聖祈(中・マリッサ)』『斬炎(ゲイル)』
・B:メイフィス隊(200)弓隊
→祝福『雷(中・メイフィス)』
・C:ジャンゴ隊(200)騎馬隊
→祝福『斬輝(ジャンゴ)』『斬光(ジュベル)』
・600の兵を幾つかの隊に分けて編成
→祝福『光(中)×1』『雷(弱)×2』『炎(弱)×2』『水(中)×1』
→勝利条件『ザムザ隊が敗走する』
→敗北条件『ルカ隊が敗走する』
*援軍
・リリア軍(200)
→条件『敵部隊が1部隊以上敗走』
・メゾン軍(250)
→条件『敵部隊が2部隊以上敗走』
・アーリアル軍(800)
→条件『敵部隊が3部隊以上敗走+ザムザ隊に攻撃を加える』
*その他
・部隊は、兵数50以下になると敗走します
*クロリス未編成兵600の編成方法
・『隊長』『部隊の種類』『人数』『祝福者の有無』をお決め下さい
→部隊の種類
・祝福隊(防御力に優れている)
・弓隊(遠距離攻撃可能だが接近戦には弱い)
・歩兵隊(特出すべき点は無いが、攻守のバランスが良い)
・騎馬隊(機動力・攻撃力は高いが防御力はかなり低い)
→人数は1部隊最低100からとなります
・提示されている祝福者を各部隊に割り振る事が出来ます
→全員入れる必要はありません。部隊のバランスを考えて配属させてください
『フェイズ』
この世界『フェイズ』には3つの王国と幾つかの貴族国、そして多くの町と村があります
『エディレイア』フェイズの中で最も力のある王国
『レティア』エディレイアの同盟王国
『バズティア』軍王国。エディレイアとは不仲
多くの町や村は貴族国に属しており、貴族国は3つの王国のどれかに属しています
『祝福』(宿せる祝福は1つ)
・Bランク:火・水・風など(誰でも宿せる一般的な祝福)
・Aランク:炎・氷・嵐など(Bランクよりやや威力が高い祝福。誰でも宿せる)
→AもBも1文字のもの限定
(Sランク:大地・光陰・雷雨など(貴族以上の身分の者しか宿せない))
・αランク:治癒・結界など(攻撃系ではないもの。誰でも宿す事が出来る)
→強さは『中』のみ
・斬Bランク:刀や槍などの武器に宿せる祝福。攻撃ごとに祝福の威力がプラスされる(種類はBランクと同じ)
・斬Aランク:上記と同じ(種類はAランクと同じ)
→斬S・斬αランクと言うものは存在しない
→フェイズに銃器関係の武器は存在しない
*祝福=魔法とお考え下さい
*強さ
・弱:威力は低いが1日の能力使用上限数は5と多い
・中:1日の能力使用上限数は3(一番一般的な強さ)
・強:威力は高いが1日の能力使用上限数は1と少ない
(祝福:(Sランクの者でも、王族のみ)威力は抜群に高いが、体力の消耗が激しく、使う毎に命を縮める)
*戦闘
・祝福同士の戦闘(撃ち合い)の場合はランクと強さ、種類の相性によって勝敗が決まります
→同ランク、同じ強さ、同種類の場合は打ち消し(どちらにも被害が出ない)になります
*テンプレート
名前:(苗字は必要なし)
立場:(王族、貴族は不可)
年齢:
祝福:
ランク:B・A・α・斬B・斬A
強さ:弱・中・強
武器:(斬B・斬Aの者のみ)
祝福能力:威力・精度・範囲(合計数が5になるように数値を割り振り)
性格:
口調:
所属部隊:隊長名を明記(援軍部隊は不可)
攻撃対象部隊:A・B・C・D・E
・以下部隊の隊長のみ
隊の種類:祝福・歩兵・弓・騎馬
編成人数:
追撃の有無:(敗走した敵部隊を追うか追わないか)
●リプレイ本文
「ルカ王子様のお名前で隊を整えれば、援軍が来る可能性があります」
「それは、どの程度の可能性なのです?」
「わかりません。でも‥‥」
「それ以外にも利点はあるだろ?例えば、ルカ王子の名の下に命を投げ出しても惜しくはないと思う輩が集まるとか、な」
「シグルド!」
「お久しぶりです、ルカ王子」
雷の祝福(斬A・中)を受けし元傭兵のレティア兵士・シグルド(西村 哲也(fa4002))はルカに恭しく頭を下げると微笑んだ。顔に一文字の傷をつけた彼は、ルカがレティアを訪問した際に護衛として付き添った経験がある。
「そうですね、確かにルカ王子様のお名前は強い力を持っています。特に、エディレイアとレティアには」
「外に志願兵が集まってるぞ」
シグルドの言葉に、結界の祝福(α・中)を受けしエディレイア王家騎士・メイ(朱里 臣(fa5307))が窓から身を乗り出す。
「凄い‥‥こんなにたくさんの人が‥‥」
「バズティアの半分くらいは集まったと思うんだが」
「早速隊を整えましょう。一刻の猶予もありません。ルカ王子様の部隊にはレリーシャ様と、妹君のマリッサ様、ゲイル殿もルカ王子様のサポートにお入りください。クロリス聖騎士隊は隊長であるジャンゴ殿を中心に編成してください。私は弓隊を率い、ルカ王子様の部隊に敵を近づけないよう全力を尽くします」
「あ、あの!」
メイフィスがキビキビと指示を出している時、突然背後から声がかかった。
「せ、聖結界師見習いのノエルと申します」
増幅の祝福(α・中)を受けし、聖結界師見習いのノエル(ベス(fa0877))がメイフィスの前に進み出る。
「あたしの力も使ってください!」
「増幅の祝福ですか、珍しいですね」
「聖結界師のサポートをさせていたんです」
「そうですか。それでは、シグルド殿。貴方に1隊任せます」
「了解」
「それと、アース殿にエース殿、貴方たちにも1隊ずつ任せます」
炎の祝福(斬A・中)を受けしロッタ村出身文官のエース(柊アキラ(fa3956))と地の祝福(斬A・中)を受けしロッタ村出身武官のアース(柊ラキア(fa2847))が顔を見合わせた後に重々しく頷く。
「それでは、それぞれの隊の編成ですが‥‥」
「ちょっと待ちなさい!」
扉を大きく開け放ち、煌びやかな衣装に身を包んだ女性が1人、颯爽と入ってくる。
「エア?」
シグルドが首を傾げ、一瞬だけ彼女の頬が朱に染まる。
「私も力を貸すわ」
水の祝福(B・弱)を受けし元傭兵のレティアの踊り子・エア(檀(fa4579))が長い髪を背に払いながらルカの瞳を正面から見つめる。
「でもエア‥‥」
「あら、勘違いしないでルド。私は私のために戦うのであって、あなたのためなんてこと、ちょっとくらいしかないのです」
心の中では『あなたのためにがんばります、ルド』と思っているのだが、そんなことは言葉になんてできない。態度だってそっけなく‥‥瞳だけが、すべてを物語っている。
「レティアの踊り子ですもの。ルカ王子様にお力添えをしたく思います」
恭しく頭を下げ、エアはシグルドの隣に並んだ。メイフィスが目を閉じ何かを考え込み、ゆっくりと口を開く。
「それでは、シグルド殿の隊にはノエル殿がお入りください」
「あの、私もシグルドさんの部隊に入ります」
メイが名乗りを上げ、シグルドが顔をしかめる。
「お嬢ちゃんが?やめときな、危ないぜ?」
「私はエディレイア王家騎士です!」
「お嬢ちゃんが騎士、ねえ。ゲイル、お前採用基準甘いんじゃねぇのか?」
「口を慎めシグルド。メイの腕は俺が保証する」
「せいぜい足手まといにならないようにな」
グっと、喉元まででかかった言葉を飲み込むと、メイは左胸に右のこぶしを当てた。
「騎士として、私は私にできることをします」
「そうですね、メイ殿が入っていただければ結界の祝福によって多少の防御力は上がりますし‥‥エア殿はアース殿の部隊でよろしいですね?」
「‥‥メイフィスさんの作戦にお任せします」
本当はシグルドと一緒の隊になりたいのにという気持ちを抑え、エアが頷く。
「至急馬を用意して、リリアとメゾン、アーリアルに使いを出しなさい。この3国ならもしかしたら、援軍を用意してくれるかもしれません‥‥」
「これを結んでおけば、離れていてもあたしの祝福を受けられますから。でも、あまり遠くには届かないので気をつけてください」
ノエルがそう言いながら、赤いリボンを手渡す。
「ノエル、僕にも結んでくれる?」
突然ルカから声がかかり、ノエルは緊張と驚きに鼓動を早めながらもルカの前に進み出た。王家の人と間近に接する機会のなかったノエルにとって、エディレイアの王族は別の次元の人のようにさえ感じていた。
「聖クロリスの加護がありますように」
「ありがとう」
「‥‥あ、あの、ルカ王子様。その‥‥がんばり、ましょうね」
「光と影、土と風、火と水が君に味方し、君の進む道を照らし輝かさんことを。君にエディレイアの女神とレティアの女神、聖クロリスを守りし精霊達の加護のあらんことを。御武運を」
最上級の祈りの言葉に、ノエルは瞳に浮かびそうになる涙をグっと堪えた。決して特別ではない、目の前にいる王子の姿にノエルは表情を引き締めると右手のこぶしを左胸に押し当てた。
「勝利を我らの手に!」
「あーあ、やんなっちゃうなぁ」
幻覚の祝福(α・中)を受けしバズティアの幻術師(非正規軍)ゼノビア(あずさ&お兄さん(fa2132))は溜息をついた。愛しのバルバロス様に頼まれてザムザのサポートに来たものの、性格の不一致&ザムザのむさ苦しい外見がイヤで、早く帰りたい気分だった。
「ルカ王子様だって、バルバロス様は手荒な扱いはしないって言ってたんだから、抵抗しないで素直に来れば良いのに、ねぇ?」
胸に抱いた人形に話しかけるゼノビア。
「ロイ王子様もレイ姫様も、特別待遇受けてるんだしねぇ?きっと真の祝福持ちのルカ王子様なら、もっと良い待遇するだろうし。何が不満なんだろう」
ルカがSの祝福持ちでなければ、一気にグレイズ王の祝福でクロリスを焼き払ってしまいたいところなのだが、そうはいかない。ルカだけは傷つけずに丁寧に『保護』しないことにはきっとバルバロスからお叱りを受けるだろう。
「でも、ルカ王子様を保護できた後は‥‥」
*バズティア3000VSクロリス1500
・シグルド隊
「エル・リーツ・クロリス!聖クロリスの名の元に、かの者が宿す祝福にさらなる力を!」
ノエルの声が響き、メイが馬を停止させるとシグルドを振り返った。
「敵兵を発見しました」
冷静なメイの声に、ノエルが祈るように両手を組む。
「ち、力をあわせればきっと勝てますっ!」
「良いか、俺らはクロリスの攻撃の要だ。俺達の隊がやられれば、敵はルカ王子様の隊に手を出すだろう。皆、気を引き締めていけ!」
「1回の結界展開で、弓での通常攻撃は最大3回まで防ぐことができます」
「OK、それで良い。メイは通常攻撃を結界で弾いてくれ」
「隊長!風の祝福が来ます!炎の祝福で打ち消しますが良いですか!?」
「あぁ、風の祝福を全部撃ちつくさせろ!風属性の敵を炎の祝福で一掃、残りの水は斬雷で対抗する!」
*シグルド隊(400)VS弓隊(500)
・バズティア:風の祝福→炎の祝福で打ち消し
・バズティア:弓の攻撃→メイが結界展開:3人死亡(残り397)
・シグルド:炎の祝福→バズティアの風の祝福で打ち消し
・バズティア:弓の攻撃+風の祝福→炎の祝福で打ち消し+結界:2人死亡(残り395)
・シグルド:炎の祝福→対抗手段無し:78人死亡(422)
・シグルド:炎の祝福→対抗手段無し:87人死亡(335)
・シグルド:敵兵に向けて進軍開始
・バズティア:斬水弓攻撃→結界:10人死亡(残り365)
・シグルド:光の祝福→対抗手段無し:65人死亡(270)
*敵隊と遭遇(斬雷槍攻撃VS弓攻撃)
・シグルド隊332:敵弓隊48→敗走
*シグルド隊勝利
「敵は敗走しているもよう。追い討ちをかけますか?」
「いや、放っておけ。しかし、悪い嬢‥‥いや、メイ。さすがはエディレイア王家騎士、だな。お前の力が必要だ。‥‥抜けてんのは俺だったな。おそらく、ゲイルにもメイフィスにもお前の力は評価されてたんだろう」
自分の間抜けさに舌打ちをしたシグルドに、メイがかすかな笑みを浮かべる。
「私も、シグルドさんの実力を過小評価していたようです」
「隊長!リリアの援軍部隊が到着したもようです!」
「メイフィスの作戦通りだな。ルカ王子の御名の下に集まりし兵ってわけか」
*リリア隊到着:バズティア2500VSクロリス1632
・アース隊
「皆、ルカ王子様のために頑張ろう!!僕たちのやることは、敵の気を引きつつ威力を削ぐこと。この場にとどまって祝福で攻撃を仕掛けます。ただし、身の危険を感じた場合は無理せずに離脱すること。良いね!?」
「敵は火の祝福を持っています。おそらく、撃ち尽くしたらこちらに向かってくるはずです。それまでに何とか数を減らすのです!」
*アース隊(100)VS歩兵隊(500)
・バズティア:火の祝福→エアの水の祝福で打ち消し
・バズティア:進軍開始
・アース:エアの水の祝福→火の祝福で打ち消し
・アース:エアの水の祝福→火の祝福で打ち消し
・アース:雷の祝福+炎の祝福→対抗手段無し:138人死亡(362)
・アース:雷の祝福+エアの水の祝福:101人死亡(261)
*敵対と遭遇(斬地槍VS斬雷+斬火)
「アース、まだ敵は倍以上の人数がいるわ!」
「祝福を持っている人は、射程範囲内の敵部隊に向けて祝福を撃つんだ!」
「アース!?」
・アース:雷の祝福×3→騎馬隊(500):光の祝福×3で対抗123人死亡(377)
・アース:エアの水の祝福→騎馬隊:対抗手段なし:52人死亡(327)
・アース:炎の祝福×4→歩兵隊(500)影の祝福で対抗203人死亡(297)
・アース隊42→敗走:敵歩兵隊92
*敵歩兵隊勝利
「戦線を離脱!早く撤退しなさい!アースも早く!!」
「いや、僕は残るよ。皆は近くの敵部隊まで撤退!」
「アース!!」
エアの言葉にかすかに微笑むと、アースは槍を片手に走って行った。エアはしばしその背中を見つめた後で、クルリと背を向けると他の兵と一緒にクロリスへと逃げ帰った。
→ロッタ村出身武官アース。味方の兵を逃がすために敵兵と対峙、死去。享年26歳
「アース‥‥」
「どうしたの、エース!?」
エースが突然膝を折り、その場に崩れ落ちる。隣にいたルカがあわてて支え、エースの頬を流れる一筋の涙に困惑の表情を浮かべる。
「どこか痛いところでもあるの?気分が悪くなったの?」
「‥‥アースが‥‥。アースが‥‥」
「アースがどうかしたの?エース、大丈夫?」
ルカがエースに真っ白なハンカチを差し出した瞬間、クロリスの聖騎士の衣装を身にまとった男性が入ってきた。荒い呼吸を何とか整えようと深呼吸をした後で、腰に響くバリトンの声ではっきりと告げる。
「ルカ王子様、ご報告申し上げます。アース殿が戦死なさいました」
「そんな‥‥」
(やっぱり、そうだったんだ‥‥)
ルカがエースの首に抱きつき、そっと頭を撫ぜる。レリーシャが目を伏せ、マリッサが唇をかみ締める。
「どうして‥‥こんなことになっちゃったんだろう」
細い声は今にも泣き出しそうなほどに震えており、それでも‥‥決して泣くまいとする意思を感じ、エースは涙を拭うとルカに微笑みかけた。
「決して、後悔はしていないと思います。あいつなりに一生懸命生きた結果でしょうから‥‥」
*バズティア1756VSクロリス1532
・シグルド隊&リリア隊
「手負いの歩兵隊2隊を片付けて、騎馬隊へと向かう」
「リリアが炎(弱)の祝福を持っていますから、水(弱)の祝福は全て打ち消せます!」
「とりあえず、アースの遣り残した仕事を片付ける!」
*シグルド(365)VS歩兵隊(92)
*敵と遭遇(斬雷槍VS斬雷・斬炎)
・シグルド隊350:敵歩兵隊32→敗走
*シグルド隊勝利
*リリア隊(250)VS歩兵隊(297)
・炎の祝福×5→水の祝福×5で対抗:87人死亡(210)
*メゾン隊到着:バズティア1664VSクロリス1767
*シグルド+リリア隊(550)VS歩兵隊(210)
*敵と遭遇(斬雷槍+斬光VS斬闇+斬炎+斬氷)
・シグルド+リリア隊410:敵歩兵隊41→敗走
*シグルド+リリア隊勝利
*バズティア1377VSクロリス1627
*メイフィス隊(200)VS騎馬隊(377)
・ゼノビアの幻覚→弓隊の攻撃失敗
*騎馬隊と遭遇(斬炎+斬水+斬風)
・メイフィス隊152:騎馬隊350
*ジャンゴ隊合流
・メイフィス+ジャンゴ隊322:騎馬隊310
・ゼノビアの幻覚→ジャンゴ隊離脱
*シグルド+リリア隊合流
・クロリス+リリア連合680:騎馬隊49→敗走
「ほとんど全隊こっちに来てるじゃない!こんなの無理ーっ!!撤退よっ!」
ゼノビアが幻覚の祝福を使い、何とか包囲網を逃れる。
「む〜、バルバロス様が来ればあんたたちなんかギッタギタなんだからっ!」
大量の幻覚がゼノビアと同じことを言いながら、四方八方へと逃げ去って行った。
*バズティア1000VSクロリス1280
*ザムザ隊(1000)VSルカ+エース隊(600)
・ザムザ隊:水の祝福→対抗手段なし:64人死亡(残り536)
・ルカ隊
「ルカ王子様!ザムザ隊がすぐ目の前まで来ております!」
「敵は次に炎の祝福を展開するもよう!」
「エース隊に確か雷の祝福がいたはず、それで対抗しよう。全員戦闘用意!」
・クロリス+リリア連合
「しまった、ザムザ隊がルカ王子様の隊に攻撃を!祝福隊、射程距離に入ったら遠慮なく撃て!」
「シグルドさん、こちらの結界を解き、ルカ王子様の軍に結界を展開します。良いですね!?」
「勿論だ。ノエル!増幅の祝福はあそこまで届いてないよな?」
「はい、もう少し近づかないと‥‥」
「よし、一刻も早く戻るぞ!急げっ!!」
・ザムザ隊:炎の祝福→水の祝福+メイの結界発動で被害なし
・エース:雷の祝福→水の祝福で打ち消し
・メゾン:炎の祝福→水の祝福で対抗。38人死亡(962)
*アーリアル隊到着:バズティア962VSクロリス2016
・ルカ隊
「アーリアルも到着しましたし、シグルド達の部隊も帰ってきています。おそらく、勝利は確定しました」
レリーシャの言葉に、ルカは虚ろに頷くと椅子に腰を下ろした。
「ザムザ隊は四方を取り囲まれ、逃げ場はない状況です。アーリアル隊の祝福によって保有祝福が尽き、肉弾戦しかなくなっています」
「ザムザ隊は祝福隊だから、ジャンゴやシグルドの騎馬隊には勝てない」
「ルカ王子様、我が聖クロリスをお守りくださり、ありがとうございました」
勝利を確信し、微笑むレリーシャ。ザムザ隊はシグルド隊とジャンゴ隊、アーリアル隊に囲まれ、すでに敗走しそうな雰囲気だった。メイフィスがエースとともにルカの元へと走ってくる。
「ルカ王子様、ザムザ隊はすでに敗走準備に入っているもようです。追撃はしますか?」
「いや、その必要はない。手の空いているものは負傷者の救助に当たって‥‥」
その言葉を遮るように、勢いよく扉が開くとメイが髪の毛を揺らしながら走ってくる。
「ルカ王子!」
「どうしたの、メイ、そんなに急いで」
「外、外見てください!!大変なんです!」
メイの背後からは、ノエルとシグルドが走りこんでくる。何かを悟ったメイフィスが窓を開け、身を乗り出す。エディレイアの方角から飛んでくる、紫色の祝福の塊にレリーシャの顔色がさっと変わる。
「破滅の祝福‥‥」
「嘘よ!ここにはルカ王子様もいるのよ!?」
「‥‥破滅の祝福を打ち消すには、慈恵の祝福が必要です」
メイフィスが苦々しくつぶやき、髪をかきあげる。
「おそらく敵は、ルカ王子様の実力が知りたいのだと思います。‥‥バルバロスの作戦かと」
「でも、ルカ王子の祝福は‥‥」
メイが言いかけた言葉を飲み込む。Sランクの祝福は、その威力の大きさに比例して使う者の命を徐々に奪って行くのだ。
「ダメです。王子にそんなことはさせられません」
エースがきっぱりと言い放ち、ゲイルが思案顔で目をつぶる。
「‥‥メイフィス、僕の祝福で破滅の祝福を打ち消せる可能性はどれくらいなんだ?」
「わかりません。ルカ王子様の能力によりますが、うまく当たれば確実に消滅するかと」
「それなら、やってみる価値がある」
「ルカ王子!ダメです!だって、ルカ王子は今まで一度も慈恵の祝福を展開したことがないじゃないですか。Sランクの祝福がどれほどの威力なのか、どれほどルカ王子の命を縮めるのか‥‥」
「メイ、僕が立たないことにはこの場にいる全員が破滅の祝福によって命を落とす。そうだろ?」
「王子、どうかお考え直しください」
まだ他に何か策があるかも知れない。ルカが祝福を展開せずとも、他に何か活路は見出せないのか。視線がメイフィスに集まり、彼は軽く首を振ると重々しく口を開いた。
「Sランクの祝福、しかも全てを無に返す破滅の祝福に対抗できるとすれば、全てに慈しみと恵みを与える慈恵の祝福以外には考えられません」
「でも‥‥!!」
言いかけるメイの言葉を遮るように、ルカが右のこぶしを左胸にあてると息を吸い込んだ。
「‥‥エディレイア国第3王子ルカ・エディレイア。エディレイア国を崇めし全ての民は我が意の前に伏せ、道を開けろ!!」
「ルカ王子様‥‥」
凛と響く強い意志を持った声に、その場にいた全員が跪き、ルカは真ん中にできた道を堂々と歩くと外に出た。その後を追いかけて外に出てみれば、すでに破滅の祝福はすぐそこまで迫ってきていた。紫色の祝福の塊が髑髏へと形を変え、クロリスを飲み込まんと口を開ける。
「我が身に宿りし慈恵の祝福よ。全ての生きとし生ける者に慈しみを。全ての者に大いなる恵みを与えん」
まばゆい光が高く掲げられた指先からほとばしり、まっすぐに破滅の祝福へと向かっていく。輝く白い祝福の塊は1人の美しい女神の姿へと変え、髑髏を真正面から受け止めるとそっとそれを胸に抱いた。
全てを慈しみ、恵みを与える祝福。それは、敵味方問わずに全ての者に平等に与えられる、女神の愛‥‥破滅の祝福が打ち砕かれ、女神が細かい光の粒となって戦場へと降り注ぐ。地面に倒れ伏した者の体に光の粒が降り注ぎ、まだ息のあった者は自力で立てるまでに回復し、既に息絶えた者は小さな花の種となって再びの生を受ける。
「凄い‥‥」
「これが、慈恵の祝福の力‥‥なの?」
メイとエアが呟き、ゲイルが光の粉の降り注ぐ戦場へと走って行くと、必死に何かを探す。シグルドが暫しその姿を見つめ、エースの背中をたたく。
「アースの種を探してるんだろ、きっと。お前も、行かないと」
「え、えぇ‥‥」
戸惑いながらもエースがゲイルの後を追い‥‥ノエルが「あっ」と小さく悲鳴を上げた。ルカの体が斜めに倒れこみそうになるのをメイフィスが支え、すぐに治癒のできるものを探して来るようにと指示を飛ばす。
「メイフィス、ルカ王子様は‥‥」
「やはり少し力が強すぎたようです。呼吸も脈も弱い‥‥」
「ルカ王子‥‥」
メイがそっとルカの手をとり、ぐったりと力なく閉じた瞳を見つめながら唇をかみ締めた。
「‥‥また、お守りできませんでしたね‥‥」
慈恵の祝福によって花の種へと変えられた戦死者達は、クロリスの広大な庭園へと埋められることとなった。敵も見方も関係なく、咲き誇るであろう花の色に今から思いを馳せる。エアは隣を歩くシグルドに視線を向けると、少しすねたように口を尖らせた。
「ルド、最近随分とメイさんと仲が良いようですが?」
「あぁ、あいつ結構筋が良くてな。いろいろ教えればまだ伸びそうだ」
「そうですか。仲が良くて結構なことです」
「なにすねてんだよ」
「別に、すねてなんかないですわ」
「‥‥あ、シグルドさんにエアさん。こんなところにいたんですか?」
「ノエル」
「かわいいお人形が売ってたんで、思わず買ってきちゃったんです。ルカ王子様のお部屋、殺風景ですから」
「‥‥まだ、目は覚まさないのか」
「はい。体自体はもう回復していて、そろそろ目覚めても良いころだろうってメイフィス様は仰ってましたけれど‥‥」
「聖結界が出来上がっているから、しばらくは大丈夫だろうけれど、バズティアがどう動いてくるのかはまだわからないから気が抜けないわね」
「メイフィスはどう言ってるんだ?」
「ルカ王子様が目を覚まさないことにはなんとも言えないそうです。下手に動くと危険だって言ってました」
「今はメイとエースがついてるのか?」
「はい。ゲイル様とマリッサ様も一緒に‥‥」
「‥‥俺さ、Sランクの祝福が間近で発動されるところ始めて見たけど‥‥あんなに強大な力を秘めていて、惹かれるものがあるのに、もう2度と見たくないと思うのは何でなんだろうな」
「慈恵の祝福は、他者に慈しみと恵みを与えるものだけれど、それを発動したルカ王子様は瀕死の重態になってしまう‥‥だからじゃないかしら」
エアがさびしそうに目を伏せ、吹いた風に靡く長い髪を手で押さえる。
「あたし、メイさんとエースさんが話してたのを聞いちゃったんですけど‥‥もしこのままルカ王子様の目が覚めなければ、それはそれで幸せなのかも知れないって。だって、目が覚めてもこの世界はルカ王子様に辛いままだから‥‥きっと、夢の中ではラズ王子様もリア姫様もいて‥‥アースさんも、いるんだろうねって‥‥」
風が強く吹き荒ぶ。草の匂いと土の匂いをふんだんに含んだ爽やかな風は、ほんの少しだけ涙の匂いも纏っている様な気がした‥‥
○おまけ
・『大変な作業』
フェイズに住む人達にとって、自分達の居住地を言い表すのは結構大変なのです。
例えばロッタ村住人の場合
ア「エディレイア王国属国ターフェス貴族国領ロッタ村」
となります。さらにどこに住んでいるのかまで入れると大変なことになります
ア「エディレイア王国属国ターフェス貴族国領ロッタ村、第3ブロック23」
ブロックとは、数件の民家の集合体のことです。第3ブロックと言うのは、村の入り口から3つ目のブロック、23と言うのは、左側の3番目の家と言うことになります。ちなみに1は右ですので、右から4番目の家ならば14となります。
もっとも、他国の人と会話をする場合は大抵『エディレイア王国のロッタ村』と言うように省略します。全部言ってたら大変ですからね。なので、中には全部言えない人もいるわけであって‥‥
ラ「エディレイア王国属国‥‥た、ターフェス貴族国?えぇっと、ロッタ村‥‥あ、アキー!!僕達ってどこに住んでるんだっけ!?」
ア「(台本読み中)東京都ですよ(冷たい」
・『王家と民』
エディレイアもレティアも、王族と民との間にそれほど隔たりはありません。願い出れば謁見もできますし、お城は自由に入って良いことになっています。
ベ「何か城下町で事件があった場合、王様に直々に裁いてもらう事もできます」
あ「特にレティア王とエディレイア王は民からの人気が厚いからね」
ベ「それにしても、破滅の祝福を受けたのがエディレイア王で良かったよね。もしバズティア王が破滅の祝福を持ってたら‥‥」
あ「きっと、王様に直々に裁いてもらおうなんて人、バズティアにはいないよ」
・『恋愛』
貴族以上の身分の者でないと王族の結婚相手に相応しくないと言う考えはこの世界にはありません。
檀「一般の人でも大丈夫ってことですね?」
臣「そうです。王族の中には庶民出の人も結構いるみたいですよ」
哲「王家主催の食事会とかでも、民が呼ばれる場合もあるしな」
臣「何らかの能力に秀でている人、王家のために力を尽くしてくれた人など、王様が会ってみたいと思う人が呼ばれるみたいです」
哲「そこでお姫様や王子様と会って恋に落ちる人もいる‥‥そう言えば、王家の王子様やお姫様って何故か綺麗な子が多いよな‥‥(何かを考え中」
臣「あ、でも、ナンパとかしたら叩き出されちゃいますよ。いくらフレンドリーな王家とは言っても、不敬罪はちゃんとありますからね」
哲「へ!?まだ何も言ってない‥‥」
檀「(ジロリ」
哲「お、王家の人は敬う対象であって、恋愛の対象ではありません!(何故か敬礼」
・『祝福』
祝福はそれぞれが持って生まれた特別な力ではありますが、幼いころから使いこなせていたと言う人はいません。ある程度の年齢になり、練習を積んだ人のみが祝福を展開することができます。
ア「ほとんどの人は強制的に練習させられますが、中にはいろいろな事情が重なって練習の機会を逃してしまい、大人になっても祝福が使えない人がいます」
臣「体の弱い人、人里離れたところに住んでいる人など、練習できない環境にあった人は仕方がないですが‥‥たまに面倒だからと言って練習しない人もいます」
あ「小さい時にきちんと基礎を身につけていれば、安定した祝福使いになることができるんだ」
ベ「‥‥そう言えば、アースとエースはエースの方が力があるんだよね?」
哲「双子なのに」
檀「もしかしてアースって‥‥練習サボってたのかしら?」
ラ「え!?そう言う役の設定なわけであって、別に僕が悪いわけじゃ‥‥って、どうして皆そんな目で見るの!?(焦り」
ア「きっと監督には全てわかっていたんでしょうね(しみじみ」