霞の事情 〜雪〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
5.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/05〜05/07
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●本文
昔々ある所に、それはそれは可愛らしいお嬢様がおりました。
泣く子も黙る、超絶美少女の名前は白雪可憐。
名前にも負けないほどに可憐な少女でした‥‥が、恐竜も真っ青なほどの凶暴な性格をしておりました。
昔々ある所に、それはそれは美しい外見をした青年がおりました。
微笑んだだけで女性を失神させるほどの美貌を持つ、その男性の名前は大胡信也。
可憐お嬢様のボディーガードでした‥‥が、幻滅するほどのヘタレな性格をしておりました。
そんな2人が紆余曲折を経て結ばれ、2人の間にそれはそれは美しい3人の子供ができました。
母親と父親の性質を受け継いでいる3人の子供達は、白雪家を巡る陰謀の魔の手から逃れることが出来るのでしょうか‥‥
≪映画『霞の事情 〜雪〜』募集キャスト≫
*白雪 霞(しらゆき・かすみ)
実年齢は15歳。外見年齢は13〜17程度の男性
3兄妹の末っ子
外見は母親似の美少女顔
性格は父親寄りで、優しく純粋で騙され易い。
表情は常に穏やかに微笑んでおり、運動神経は皆無で行動が遅い。頭はかなり良い
一人称は『僕』二人称は『貴方、〜さん』
『です・ます』の丁寧口調
*ボディーガード
実年齢は霞よりも上、外見年齢は18〜の男女どちらでも
可憐(霞の母親)に雇われている。可憐には頭が上がらない
性格はクールを基準とし、詳細はお任せ
*誘拐犯
実年齢は20以上、外見年齢は20〜の男女どちらでも
霞の誘拐を企てているが、少々抜けている
人数は1人から3人程度まで
『その他』
・白雪可憐(霞の母親)
外見年齢は20代前半から30代前半程度
しっとりとした雰囲気の美女
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な女性口調で話す
キレると一人称『俺』二人称『お前』乱暴な男性口調に変化する
・白雪信也(霞の父親)
外見年齢は20代後半から30代後半程度
物腰の柔らかい美男子。
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な口調で話す
可憐に対してのみヘタレモードONになる時がある
・霞の友人
・白雪の家で働く人々
注)霞以外の兄姉を出すことは不可
≪シーン≫
・シーン1
ボディーガードが霞の学校までお出迎え、初めて出会う2人
白雪家に霞の誘拐予告状が届いたことを伝える。怯える霞
・シーン2
徒歩、もしくは車で自宅まで送り届ける途中で突如襲われる
誘拐犯登場→霞が攫われる
追うが見失ってしまうボディーガード
・シーン3
途方にくれていると、霞の携帯からSOS電話
犯人達の目を欺いてかけてきているらしく、遠まわしに自分のいる場所を伝える
・シーン4
ボディーガードが現場に到着、犯人達を蹴散らし霞を救助する
●リプレイ本文
仄かに香り立つ珈琲を可憐(EUREKA(fa3661))の前に置くと、リサ(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))は表情を引き締めた。
「わざわざ新しくボディーガードなど雇わずとも、私達にお申し付けくだされば宜しかったですのに」
クールな口ぶりで言いながら、珈琲に胡椒を振り掛けるリサ。
「何だ、それは。俺に対する嫌がらせか?お前、その珈琲飲めるのかよ」
可憐の言葉にキョトンと首を傾げ、一口飲んで吹き出す。
「こ、こんな変な味の珈琲豆は始めてです!」
「豆じゃなく、お前が変なんだ!手前らがそんなだから任せられねぇんだって分かれよ!」
テーブルをひっくり返す勢いでの激しいツッコミだったが、リサは不思議そうな顔のままだった。深い溜息をつき、テーブルの上に置かれた封筒を取り上げる。
「それにしても、リサイクル精神旺盛な環境に優しい誘拐犯ね」
チラシ製手作り封筒の中には、裏紙使用の手紙が入っている。直接投函したらしく、切手の貼られていない表には綺麗な文字で白雪可憐様と書かれてあった。
清水 晟(アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776))は霞(倉瀬 凛(fa5331))と並んで歩きながら、通り過ぎていく生徒達を見てはあれこれと毒舌を飛ばしていた。
「最近、鋼君の家、借金とか大変らしいよ。ほら、事業がうまく行ってないらしくてさ。ウチも気を抜くとあぁなっちゃうよ。その点、霞さんの所は良いよね。天下の白雪家だもん」
「そんな事ないよ」
霞が微笑みながら首を振った時、目の前に1人の女性が立った。
「本日より霞様の身辺警護をさせていただく、レパードと申します」
深々と頭を下げるレパード(角倉・雪恋(fa5003))に、笑顔で頭を下げる霞。晟が手を振って去って行き、レパードは声を落とすと誘拐の予告状が届いている旨を伝えた。
「恐いです‥‥何故僕を?」
不安そうな表情で1歩前に踏み出し‥‥ガクンと、膝を折ったところを咄嗟に支える。
「霞様、大丈夫ですか?」
「少し驚いただけ。大丈夫です」
儚い笑みを浮かべながらも頷くと、霞は車に乗り込んだ。
突然車の前に飛び出してきた男性に、運転手は慌ててブレーキを踏んだ。当たり屋としか思えないような豪快な飛び出しをしてきた男性を心配して、霞が車を降りる。
「あの、だいじょ‥‥」
「すみません、道を尋ねたいんですがっ!!」
「道ですか?」
明らかにおかしいシチュエーションにも関わらず、男性の持っていた地図を覗き込んで丁寧に道を教えて行く霞。曲がり角に差し掛かった時に突然男性が霞を抱き上げ、走り出した。
「あれ?」
「2人とも上手く逃げるんだぞ、手伝わせてすまんっ!!」
不穏な空気を察し、レパードが霞の後を追おうと車を降りた瞬間‥‥ドンと派手な音を立てて2人の少女がぶつかって来た。
「いったぁ〜い、何するのよぉ〜!足折れちゃったかも〜!」
「うぅ、ボキッていいました。痛いです」
自分からぶつかってきて何を言う。カルシウムを摂れ。と、普通ならば言うところだが、レパードは紳士?だった。
「これは申し訳ありません、こちらの不注意で」
「もうっ、気をつけてよね!」
「あ、足は大丈夫だったみたいです、ごきげんよう☆」
ヒラリと手を振って去って行く2人。気づけば霞の姿はどこにもない。
「まさかあの娘達も共犯だったとは、やられたわ」
レパードは携帯を取り出すと、短縮から可憐の番号を呼び出した。
「すみません、霞様を攫われてしまいました」
『あぁ!?何だと!?あのシケた予告状成功させてどうすんだよっ!!お前、霞保護するまで戻って来んな。連れ戻せなかったら‥‥分かってんだろうな?』
『だから言ったじゃないですかー、絣坊ちゃまは私達にお任せくださいと!』
『うるせーぞリサ!手前はいい加減、霞の名前を覚えろっ!!』
西園寺家は、超名前負けの極貧家族だった。表札だけは無駄に大理石の良い物のくせに、自宅は廃屋としか思えないボロ屋だ。長男の輝(仁和 環(fa0597))が出がらし過ぎてほとんど白湯と化しているお茶を霞の前に出し、遠慮は要りませんからと付け加える。
「大成功ね、さっすが輝兄ぃ!」
ソバージュに濃いめのメイクが目を引く長女の望(姫乃 唯(fa1463))が無邪気に微笑み、令嬢風の外見をした次女の光(角倉・雨神名(fa2640))と手を合わせる。
「これで塩かけご飯の毎日ともサヨナラね!豆腐なら何丁買えるかしら。海苔も付けてもいいわよね?」
「あぁ、これで試食コーナーに通わずに済むな!パンの耳以外も買えるし‥‥」
「もー、兄さんも姉さんも食い意地張ってるんだからー。確かに私も、回転寿司食べ放題は魅力的だなって思うけど‥‥」
「あの、回転寿司って何ですか?」
霞が恐る恐る言葉を挟み、光が目を丸くする。
「回転寿司知らないの?一皿100円もする超高級料理なのよ。でも、私の本命は100円ショップで高級店のブランド品を買い漁る事だけどね!」
「あ、あの、100円ショップって何ですか?」
「100円ショップも知らないの!?しょうがないわね、今度一緒に行きましょ!」
どうにもついていけない話に困惑しつつ、霞は望に視線を向けると首を傾げた。
「あの、足の具合は大丈夫でしたか?」
「あんなの平気よ。あんたってば、結構いい奴なのね〜!」
何故か霞に好意的な光と望。本当に予告状を出して来たのはこの人達なんだろうかと疑問を持ち始めた時、輝が低い声で呟いた。
「身代金、幾らにしようか。‥‥お、思い切って53万とか!!兄ちゃん鬼か?」
「兄さん、そんな大金‥‥!!」
驚く妹達。確かにそれは大金過ぎだと輝が首を振った時、霞が口を挟んだ。
「あの、身代金ってもっとキリの良い数字の方が良いと思います。例えば、100万円とか」
何故か助言する霞。100万円でも大分少ないけれどと心の中で呟き‥‥
「100万円!?そんなの、国家予算だよ!」
頓珍漢な事を口走る輝。恐らく兆と言う数字を聞いても、脳内で勝手に超と変換してしまう人種なのだろう。霞はゆっくりと鞄に手を入れると、素早くレパードの短縮を呼び出した。耳に当てる部分をハンカチで押さえ、向こうからの音声をコチラに漏らさないようにと細心の注意を払う。
「あの、誘拐犯さんじゃ呼び難いので、西園寺さんとお呼びしていいですか?あ、表札にそう書いてあったから‥‥ここって、ご自宅、ですよね?」
霞からの電話を受けたレパードは、霞と西園寺兄妹の会話から大体の場所を割り出すと、終話ボタンを押した。
「どうかご無事で‥‥」
ポツリと呟き、走り出す。霞を捕らえている犯人が、彼に危害を加えない事を祈って。
ショボイ夢物語に花を咲かせていた西園寺家の扉が開け放たれ、レパードが怒りをあらわにズカズカと入って来る。
「どうしてここが分かったのよ!?」
望が驚きに目を見開き、光が何とか誤魔化そうと言葉を練るが、なかなか上手いものが見つからない。生活のかかっている輝が必死の形相で「肉入コロッケ〜!」と叫びながら腕を振り回し、レパードに挑むがあっさりと負けてしまう。
「あ〜ん、私の卵焼きが!デザートにバナナも付ける予定だったのにぃ〜」
望が泣き崩れ、光がオロオロと視線を彷徨わせる。
「お前達、反省のかけらもないのか。‥‥まとめて断頭台に送られたいようだな」
「くっ‥‥妹達は関係無い。全部俺の仕業だ!!」
「兄さん!!私達だって‥‥」
「良いから、お前達は口を出すな!」
泣き叫ぶ光と望、覚悟を決めた輝の前に立つレパード。レパードが右手を振り上げ‥‥すっと、霞が輝の前に立ちはだかった。
「あの、あまりこの人達を傷付けないであげて下さい。本当は悪い人達じゃないんです。僕にお茶まで出してくれて‥‥」
「しかし‥‥」
「実は皆さん、誘拐ごっこをやってたんですよね?偶々僕が誘拐される役になっただけで‥‥今度は、違う遊びをしましょうね」
穏やかな笑顔を浮かべる霞。レパードが「霞様には負けました」と溜息交じりに呟く。
「お怪我はありませんでしたか?」
「僕は大丈夫だよ。でもレパードさん、頬に傷が‥‥」
「ここに来る途中でどこかに引っ掛けたのでしょう。この程度なら問題ありません。これが役目ですから」
霞はレパードにハンカチを渡すと、西園寺兄妹を振り返った。
「あんた本当にいい奴なのね。よく見たら結構可愛い顔してるし。一寸トロいけど!」
「‥‥怖い思いさせて、ごめんな」
望と輝がそう言い、光が深々と頭を下げる。
「霞様に免じて今回は許す。だが、二度目は無い」
レパードの隣で、霞が可憐へと連絡を入れる。
『そう、怪我が無くて何よりだわ。結果オーライって感じね。で、その兄妹だけれど、お仕事が必要なら、今度庭の草取りでも頼もうかしら』
広大な庭を一生懸命草取りする西園寺兄妹の姿を思い描き、霞は苦笑した。電話の向こうではリサが涙ながらに『絣坊ちゃまがご無事で良かったです!』と叫んでおり、可憐に『霞だっつの!』と訂正を入れられている。霞は終話ボタンを押すと、レパードに向き直った。
「僕、貴方となら上手くやって行けそうな気がします」
右手を差し出し、固く握手する。西園寺兄妹が2人の姿に感動の拍手を送り‥‥霞は可憐から聞いた仕事の内容を彼らに紹介した。
「じ、時給1500円ですか!?光、望、家を立て替えるのも夢じゃないぞ!」
輝はそう叫ぶと、妹達と手を取り合った。