蒼月の事情3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 4Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 18.5万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 05/07〜05/10

●本文

・物語り憑き
 それは、物語の登場人物達と触れ合う事の出来る、神秘の職業
 それは、親から子へ、子から孫へと受け継がれる伝統の職業
 それは、物語憑き本部からの指令により、日々物語の安全を守る、名誉ある職業


*蒼月家*

 果たし状と書かれた紙を投げつけられ、蒼は隣にいた岬に視線を向けた。
「何これ、ラブレター?」
「思いっきり表に果たし状って書かれてるじゃないですか」
「あれだ、きっと。ツンデレだ」
「だって、今家にこの紙入れてったの男性でしたよ?」
「あれは民間のボランティア団体の方だよ。恋する乙女を応援し隊☆だぜ、きっと」
「何なんですか、それ」
「最近流行り出した団体でさ、あれ、岬ちゃん知らないわけ?おっくれってるー!」
「いいからとっとと手紙読んでみろや」
「えぇっと、何々。蒼慈様、日ごろから貴方様のご活躍を‥‥」
「蒼月隊へって書いてあるじゃないですか」
「きゃーっ!!人の手紙見るなんて!痴漢よ痴漢!!」
「‥‥いい加減、僕を本気で怒らせないうちに話しを進めてくださいよ」
 蒼月隊に届いた手紙には、こう書いてあった。

『本日の夕方5時、第8倉庫近くの空き地にて待つ。Byレインボージャー』

「レインボーじゃー?」
「いやいや、岬ちゃん発音おかしいから。レインボージャーって、知らないの?遅れてるなぁ。忍者っぽい服着た7人くらいの、多分正義の味方だよ」
「何でそんなに曖昧なんですか!?」
「サンタさんみたいなもんだよ」
「どこが!?何も合ってないんですけど。って、言うか、それは物語の登場人物なんですよね?」
「あぁ。確か最近上からの連絡で、レインボージャーが逃げ出したって出てたなぁ」
「何か不満でもあったんでしょうか」
「悪役と人質役を簀巻きにして脱走したらしいからなー、何か鬱憤が溜まってたんだろ」
「‥‥あの、人質と悪役を簀巻きって、正義の味方なんですか?」
「多分な」


*レインボージャー*

「蒼月隊、来るかな?来るかな?」
「きっと来るだろ。何せ、物語り憑き特殊部隊の中でも一番優秀な隊らしいからな」
「腕が鳴るぜぇ〜!!」
「うふふ、手合わせ出来るなんてぇ、た・の・し・み〜!」
「俺らに立ち向かってくる者は全て叩きつぶす!」
「そうだよ!正義の味方なら、人の家のツボとか樽の中からお金拾っても良いんだもんね!」
「‥‥や、犯罪だろ」


≪映画『蒼月の事情3』募集キャスト≫

*蒼慈(通称:蒼)外見年齢21〜25
 高身長の色っぽい二枚目。いたってお馬鹿のボケ属性
 物語り憑き特殊部隊始まって以来の天才
 武器は木刀orプラスチック製の玩具の刀
 相手を無闇に傷つける事を嫌い、動きを封じて説得か、気を失わせて強制送還と言うスタイルをとっている

*時岬(通称:岬)外見年齢16〜20
 クールで落ち着いた雰囲気の少年。身長は普通。常識的でツッコミ属性
 武器は二丁拳銃。弾は3種類あり、状況にあわせて変えている
・結界弾:打ち上げ場所から半径1km以内の一般人や物を保護する
 →空に向かって打ち上げる
 →物語の登場人物が魔法や何かしらの特殊能力を使える場合に使用
 →物語り憑きや物語の登場人物、岬や蒼は結界に守られない(あくまで一般人のためのもの)
・捕縛弾:対象をネットで捕らえる
 →発射後、対象に当たる前に弾が破裂し、中からネットが飛び出して捕獲する
 →対象との距離が近いほど命中率があがる。遠いと逃げられる可能性有
・眠弾:対象やその周囲にいる人物を眠らせる
 →発射後、一定の距離を進むと弾が破裂し、中から薄い煙が出る
 →岬以外は例外なく全員、その煙を吸い込めば眠りに落ちる
 →通常は対象が風下に居る時に使用

*レインボージャー(虹隊)
『赤・橙・黄・緑・青・藍・紫(各1人ずつ)』
*格好は、それぞれの色で染められた忍者服
*好きな食べ物が1つあり、常にそれを持っていないと落ち着かない
→赤なら林檎、橙なら蜜柑など、自分の色に合うようなものを推奨
*得意技を1つ持っている
→無性に林檎が食べたくなるや、蜜柑を見ると怯えるなど、暴力的でないもの限定

・その他(どちらかを選択)
*レインボージャー8番目の隊員
*蒼月隊に手を貸す物語り憑き

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa3742 倉橋 羊(15歳・♂・ハムスター)
 fa4559 (24歳・♂・豹)
 fa5241 (20歳・♂・蝙蝠)
 fa5404 橋都 有(22歳・♂・兎)
 fa5615 楽子(35歳・♀・アライグマ)
 fa5662 月詠・月夜(16歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

 自称リーダーでハバネロ愛好会会長の赤(九条・運(fa0378))のんびり屋で食いしん坊、晩白柚好きの黄(ティタネス(fa3251))金柑好きーで小姑シスコンな黄の弟、別名金柑小姑の橙(カナン 澪野(fa3319))苦瓜大好き、特技はガリ勉秀才の緑(倉橋 羊(fa3742))青菜が大好きだが主張できず、ブルーハワイのカキ氷シロップが好きだと呟く、気が優しく落ち着いた雰囲気の青(欅(fa5241))プルーンで健康維持、無駄に美形だがおつむが‥‥な紫(橋都 有(fa5404))ブルーベリー好きで乙女風味、でも年齢が‥‥な藍(楽子(fa5615))
「我ら虹隊!」
 格好良く?ポーズをとる虹隊に対抗し、虹の羽飾りを背にポーズをとる蒼(笙(fa4559))岬(冬織(fa2993))が鼻で笑い、虹隊に頭を下げる。
「アレは無視してください。お待たせしました。何処かの阿呆が時代劇の再放送観てて」
「武蔵もシンデレラも遅れた方が縁起いいじゃん!」
「今回はお姉ちゃんの付き添い&橙の地位向上の為に対決してください」
 橙が丁寧に頭を下げ、黄が姉だと告げる。似てない姉弟に微妙な顔をする蒼月隊。緑が打倒蒼月と叫びながら、心中では憧れの蒼との手合わせに喜びを押し殺す。物語の登場人物のくせに、将来の夢は物語り憑きと言う彼の愛読書は『週間物語憑き通信』だ。超達筆な筆文字の果たし状も彼が作り、傑作中の傑作だと自画自賛している。無駄に長いマフラーを巻いた青の後ろで、フリル付き忍者服を着た藍が蒼に熱視線を送る。口篭りながら差し出すハートのシール付きのピンクの手紙。恥じらいからか、青のマフラーを握る手に力がこもり、青の首が絞まる。顔色が悪くなって行くが、ブルーハワイを原液で飲む彼は最初から全体的に青い感じなので分かり辛い。藍からの手紙に心臓が高鳴る蒼。
「時岬様に渡してくださいっ!」
 隣にいるんだから直接渡せよ!という感じだが、恋する乙女はこの手紙を渡すためだけにここに来たのだ。
「時代は暴君なのか!?」
 念のためにと結界弾を放った岬が鼻で笑い、名前が似ているので親近感を覚えた青が「飲みまふか?」とストローと原液を差し出す。
「果たし状とか、てっきり岬ちゃんが暴君だから恨みを‥‥」
 対決を前に準備運動をし始めた蒼の背中を蹴る岬。笑顔で「応援頑張りますね」と突き放した時、虹隊を追って来た月野(月詠・月夜(fa5662))が現れた。勝負を公平にするために審判を買って出るが、月野は物語り憑きだ。
「蒼月隊は好きじゃないです」
 踏み絵だって出来ると言い、落書き済みの蒼月隊の写真を踏む。ツンデレかと首を傾げる蒼と、隠し撮り写真を持ち歩く月野にストーカーの疑いを持つ岬。
「せいぜい頑張ってくださいね」


「知ってるか、そこの無能紫。蒼月隊の蒼慈が紫のポジション狙ってるらしいよ」
 そんな緑の言葉に騙されてついてきた紫。簀巻きにされた人質の世話を押し付けられ、恨みも無いのに可哀想だと言って縄を緩め、緑のアッパーをくらったらしいが、二枚目はそのくらいでは傷つかない。打倒蒼に燃える紫の隣では、緑が「馬鹿は扱いやすくていいな」と小さく呟いていた。
「お姉ちゃんは呑気なんだからー」
 小脇に抱えた晩白柚を橙に手渡し苦笑する黄。気づいたら第1試合の選手に選ばれていたのだ。要領の悪い姉にもっと気をつけなくちゃダメだと言いながら、それでも嬉しそうに応援しだす橙。
「正義の味方たる者、邪悪が出現した際の警鐘は素早く行わなければ!」
 赤が腰に手を当て上空を指差す。第1試合はピンポンダッシュだ。正義の味方ではなく、ただの迷惑な人だ。
「何が蒼月隊だ!ちょっと背が高くて男前で強くて友達がいるくらいで!俺だって仲間と青君がいる。この壁の花のポジション、譲るわけにはいかない!」
 蒼を指差す紫。壁の花なんて、ただの無能ポジションを譲られても迷惑だ。
「僕は友達ではありませんから」
 岬が間髪いれずに言い、蒼が精神的ショックに跪く。月野が試合開始を告げ、黄がピンポンすると凄まじい勢いで走り去る。止まるタイミングが分からないらしく、地平の彼方に姿を消した。ピンポンしながら「すみません!」と深々と頭を下げる紫。動作は速いのだが、5軒に1軒は捕まって謝り倒す羽目になっている。蒼が昔を懐かしみながら「ピンポンの蒼ちゃんと呼ばれた俺の力を見よ!」と言って走り出し‥‥
「卓球だろ!?壁打ちでもしてろ!」
 あまりの迷惑行為に岬が拳銃で蒼の頭を殴り、虹隊を捕縛弾で捕らえた。


 互角判定の後、緑に役立たずの太鼓判を押された紫が無駄な美形光線を放ちながら、唯一の友人であり親友の青のマフラーに顔を埋めてさめざめと泣き始めた。型はダサイが柄は格子とクールな紫の忍者服。チーンと鼻を噛み、青がフガフガと何かを言うがマフラーが邪魔で聞こえない。次の対決は他人に迷惑のかからないように達磨さんが転んだにすると言う青。マフラーを外せば流れる口調で聞き取り易いが、色素定着寸前の青色の舌が不気味だ。月野が目を瞑り、達磨さんが転んだと言って振り向く。V字の蒼、黄と橙は無難な格好、蟷螂ポーズの緑、何故かすまし顔で岬に近づく藍。
「疾き事風の如く!静かなる事林の如く!侵略する事火の‥‥」
「赤さん、失格です」
 動かざる事山の如くが一番大事なゲームなのだ、コレは。赤が月野の隣に立ち、再びゲーム再開。M字開脚、ブリッジと何故か難易度重視の蒼、緑の虫特集の緑、セクシーポーズをキメながら岬に近づいていた藍はウインクで失格になったが、岬の優しい微笑みに大満足、失神寸前になった。不自然な格好で止まろうとした黄に思わず注意をした橙が失格になり、黄もベシャリと崩れる。何故かスタスタと蒼に近づいた緑が突然ペンと物語り憑き通信を無言で差し出す。
「僕、物語り憑きになりたいんです」
 突然の告白にずっこける虹隊+岬。通信にサインをし、緑の肩を叩いて微笑む蒼。
「緑、立派な物語憑きの星を目指そうな!さぁ、夕日に向かって走れ!」
 岬は蒼の頭を思い切り叩いた。


「何で物語り憑きなんかになりたいんだよ!」
 橙が緑に食って掛かり、緑がイヤそうな顔をしながら手を振る。
「こっち向くなチビ。へたれ面見てると知識が口から抜ける」
「そんな事言うのはこの口かーっ!!」
 得意技、口に金柑詰め(主に緑対象)を繰り出す橙。食らえイボイボ!とばかりに苦瓜をを振り回す緑。見かねた黄が「喧嘩はそこまで〜」と間に割って入り、2人を猫掴みする。愛しい姉に叱られた橙がしゅんと反省し、黄が頭を優しく撫ぜる。
「落ち込んでる橙君可愛い。お肌ピチピチだし‥‥馬鹿ぁぁぁっ!!ヒロインは私なのに!」
 藍が癒し系の黄に抱きつき、さめざめと泣き始める。
「待って、僕は男の子ー!」
 橙がすかさず否定を入れるが、微妙に女の子風ミニスカ仕様忍者服は美少女顔とあいまって、ナチュラルヒロインだ。
「頑張ったとこで歳は誤魔化せないよ、オバサン」
 キっと緑を睨む藍。緑の首に手刀を入れようとし、避けられる。「毎度食ら‥‥」ドスリとブローが入り、沈む緑。藍がえへ☆と可愛く微笑み、その場に居た全員は心中で合掌しつつ目をそらした。


 最後の対決は格好良いポーズだと言う。正義の味方たる者、邪悪の前に現れたなら威圧し、己を誇示し、民草を鼓舞するような格好が必要不可欠だという赤。とりあえず、顔につけた仮面を外せ。忍者服なのにどう見てもジャージの黄と緑。緑にいたっては足元は突っかけサンダル、グルグル眼鏡に必勝額当てと言うか鉢巻、手には参考書(一応手裏剣になる)と言うダサさ加減だ。ポーズ云々の前に、見た目がダメだ。それでもここで諦めてはどうしようもない。それぞれが所定の位置につき、ポーズをとる。苦瓜をヌンチャクのように構えて片足を上げる緑。思いっきり口が「ホァチャー!」と叫んでいる。必殺、ブルーベリーアイパワーでおめめぱっちりの藍に、ヒロインにしか見えない恥じらい風乙女ポーズの橙。後方でパワーアピールをする黄に、紫のバラを咥えプルーンを顔の横に構えた紫の前髪を、清涼な風が靡かせる。足元はX立ちで、鈴の音のような効果音がどこからとも無く聞こえてくる。長いマフラーが電柱に引っかかり、首を絞められつつも色を欠く事のないよう爪先だけでもフレームインを目指す青。
「ズレてますね」
「このズレも作戦か?」
 見事なズレに頭を捻る蒼月隊。とりあえずこちらもポーズを取らねばと、渋々拳銃を構える岬にノリノリで菖蒲を咥えて無駄に流し目フィーバーポーズな蒼。
「岬ちゃん全然ダメ。もっとこう、アンニュイな中にスペクタクルな感じで!」
「意味分かんねぇよ」
 冷たい岬に涙しながらも虹隊に「お前達、結構やるな♪大同小異と書いてライバルと呼ぼう」と言って近づき、虹隊+蒼でコラボDE決めポーズをする。橙が感動しながら尊敬する青のマフラーをギューっと引っ張った。


 いっぱい運動したからお腹空いたと言って、岬の出したごった煮を食べ始める黄。蒼慈家の今夜の夕食はカラフルだ。「皆さんの好物てんこ盛りです」と言う『レインボースペシャル丼』を前に涙する蒼。空腹は最大のスパイスの黄と、味覚で感じる全てをハバネロ味に変える暴君降臨の必殺技を持つ赤はまだしも、他の面々は食欲を失っていた。橙が金柑味のお茶を岬に勧め、お互いの苦労話に花を咲かせた。