絆 〜 Friends 〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/03〜10/07

●本文

 小学校を卒業してから5年、高校生になった私達は変わってしまった。
 仲の良かった5人はもう会うことがなくなり、あの日・・・埋めたタイムカプセルは忘れ去られた。
 私(雫)は心臓の病に侵され、もう先が長くないことを知っていた。
 だからこそ、あの4人に手紙を書いた。手紙が届く頃には私はもういないだろうけれど・・・
 きっと皆忘れている、タイムカプセルを埋めた場所。
 私も場所までは覚えていない。でも、あの時した約束は今でも覚えているから。

『ねぇ、貴方達はあの頃を覚えている?
 皆で一緒に遊んで、皆で一緒に騒いで、1日のほとんどを一緒にいたよね。
 ・・・ねぇ、もうあの日には戻れないの・・・知ってるよ。
 でも、覚えていて欲しいな。
 あの日約束したこと、私がいなくなっても・・・覚えていて、ほしいな・・・』

 この手紙を手にした貴方達が、タイムカプセルを・・・見つけてくれると信じてる・・・。


≪映画『絆 〜Friends〜』募集キャスト≫


*西原 雫(にしはら・しずく)
・身体つきは華奢で、儚い雰囲気の少女
・実年齢よりも少し幼く見える
・心臓の病によってこの世を去る
→映画の中では、度々登場する予定です

*市瀬 薫(いちのせ・かおる)
・しっとりと落ち着いた雰囲気の少女
・実年齢よりもやや年上に見える
・5人組みの中ではお姉さん的な存在
→優しく穏やかでおっとりとした少女です

*西川 祐(にしかわ・たすく)
・今時の高校生風の外見をした少年
・かつてはサッカー少年で爽やかだった
・現在はいたって軽いお調子者
・密かに雫に思いを寄せていたらしいが・・・
→軽い言動が多いですが時々シリアスな表情も・・・

*牧野 譲(まきの・ゆずる)
・しっかりとした雰囲気の少年
・有名私立高校に通う秀才
・港との相性が昔から悪い
・現在の祐は少々苦手な様子
・真面目なお坊ちゃんタイプ
→つねに冷静沈着な対応をとります

*吉良 港(きら・みなと)
・華のある外見の少女で、存在感がある
・毒舌で思ったことをすぐに口に出す
・キツイ性格だが女の子(雫と薫)には優しい
→男の子にはツーンとした高飛車な態度で接し、女の子には非常に優しい態度で接します

*西原 凌(にしはら・しのぐ)
・雫の弟、14歳
・雫と同様華奢で儚い雰囲気
・よく笑う子だったが、雫の死により無表情に
・姉の事が大好きで、尊敬している
・タイムカプセル探しに同行するが、薫以外の3人はあまり好きではない
→無表情で必要最低限しか喋りません


*その他
・小学校時代の担任の先生
・主メンバーの兄弟
・小学校時代の友人
・現在の友人

 など、幅広く募集しております。

*補足

いつか皆でタイムカプセルを開けようねと約束したのが12歳の時・・・現在では誰もどこに埋めたのか覚えていません。
雫からの手紙を手にした4人は凌を連れてタイムカプセルを埋めた場所を思い出すべく歩き出します。
通学路、小学校、公園・・・最終的にタイムカプセルはどこにあったでしょうか。
雫は5人が行く先々に現れます・・・が、最初に見えるのは薫だけです。最終的に他のメンバーも見えるようになるのかどうかはお任せします。
タイムカプセルの中には、未来の自分に宛てた手紙と未来の仲間(自分以外の4人)に宛てた手紙の2枚が入っています。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)

●リプレイ本文


『きっと・・・私は元気になるよね・・・。きっと・・・』

 誰かの声が聞こえた気がして、薫【楊・玲花(fa0642)】は首を傾げると背後を振り返った。
「・・・どうか、したの?」
 虚ろな目をした凌【大海 結(fa0074)】が低い声でそう呟き、薫は何でもないと言うように首を振ると凌の頭を撫ぜた。
「薫、久しぶりね!元気だった?」
 弾んだような声に視線を上げれば港【姫乃 唯(fa1463)】が手を振りながら走ってきて、薫の手を取ると嬉しそうな笑顔を覗かせる。
「薫も港も来てたのか」
「あら、あなた達も来たの」
 連れだって現れた譲【富垣 美恵利(fa1338)】と祐【パトリシア(fa3800)】にチラリと冷たい視線を向けると、港が肩に掛かった髪を背に払った。そんな素っ気無い態度に、昔から港との相性が良くなかった譲が眉を顰める。
「薫、後ろにいるの誰だ?」
「雫の弟の凌君よ。一緒に遊んだ事あるじゃない」
「雫の・・・」
 港がその名前に沈んだ表情になり、目を伏せる。
「へぇ、随分大きくなったな!俺のこと覚えてるか?」
 祐がそう言って笑顔を見せるが、無表情な凌は祐と目を合わせようともしない。
「ほら、凌君・・・雫が大好きだったから」
「・・・そうだよな」
 不穏な空気を敏感に感じ取った薫がフォローを入れ、祐が苦笑しながら頷くが、すぐに沈黙が支配する。楽しかった昔が嘘のように今ではギクシャクとした関係になってしまった・・・。
「とりあえず、タイムカプセルを探すか」
「どこを探すわけ?」
 譲の言葉に、港が突っかかる。当てもないのに探し歩くのはゴメンだとばかりに手を振り「これだから男子って嫌なのよ」と呟き心底呆れたような顔をしている。
「そんなに言うなら、お前に考えはあるのか?」
「だからって、当てずっぽうに歩いていれば見つかるってものでもないでしょ!?」
「落ち着いて2人とも!そうだ・・・ね、皆でよく遊んだあの神社に行ってみない?」
 薫の提案に港が頷き、譲も良い案だと言って口を噤む。その様子を見ていた凌が小さな溜息をつき、ふっと空を仰ぎ見た。


『私も、みんなと一緒に、遊びたいのに』

 神社は懐かしい匂いで、胸いっぱいに空気を吸い込むとふっと吐き出す。薫はそんな中、1本の大きな木の下で雫【桃音(fa4619)】の姿を確かに見た。白い着物を着て、寂しそうに木を見上げる雫。けれど直ぐにその姿は掻き消え、声の余韻すらも風に流されてしまう。
「雫・・・?」
「どうしたの?急に立ち止まったりして」
「ううん、なんでもないのよ」
 薫が首を振った時、丁度その木の下に譲と祐が立ち、離れた場所にいた3人を手招きした。
「ここ・・・何か気にならないか?」
「そうね。なんだか昔、この下で・・・何かを埋めようとしていた気がする」
 港の言葉に頷いた譲が、鞄の中から取り出したシャベルを渡す。
「凄いわ譲。流石ね」
 薫の褒め言葉に少しだけ譲が表情を崩し、港と祐も何か気のきいた言葉をかけようと口を開くが良い言葉は見つからない。凌が受け取ったシャベルを手に、木の下を掘り起こそうとして・・・
「こらっ!!そこで何をしているっ!!」
 突然響いた怒鳴り声にビクリと肩を震わせる。覚えのあるこの声は、ここの神主【犬神 一子(fa4044)】のものだった。
「御神体に対して罰当たりなことをするなっ!!」
「あの、私達・・・タイムカプセルを探してるんです」
「・・・お前さん達、小さい時によくここに来て遊んでいた悪餓鬼達だな。そう言えば、以前もその下に何かを埋めようとしていて叱った記憶があるな・・・」
「あの!その後どこに埋めるとか言ってましたか?」
「いや。そこまでは・・・」
 譲の言葉に首を振りながら、だんだんと昔の思い出が胸を過ぎる。今ではすっかり大きくなってしまった4人と、見慣れない1人の少年の顔を順々に見詰め・・・
「随分と大きくなって。昔はよく境内に入って中のものを弄っては遊んで、本当に・・・」
 昔された悪戯の内容を思い出した神主の顔がだんだんと歪んでいく。小言モードに入ろうとする前触れを感じ、チラリと視線を合わせると「せーの」で走り出す。
「こら!待ちなさい!まだ話しは終わっとらーーーんっ!!!」
 いつかと同じ言葉に、4人の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。

「そう言えば、覚えてる?雫が遠足の時に体調が悪くなって、途中で先生が無理にでも帰らせようとしたのを皆でフォローし合って最後まで遠足を続けさせた事があったわよね」
 神社から大分離れた駄菓子屋の前、ジュースを飲みながら一息ついていた時、薫はそう言うと小さく微笑んだ。
「あの時の申し訳なさそうでいて、それでも楽しんでいた雫の顔、今でも忘れていないわ」
「俺も覚えてるよ。みんなで必死になってさ・・・」
「そうそう。雫が行かないなら私達も行かないって駄々こねて。結局先生を頷かせちゃったのよね」
「なぁ、久しぶりに学校に行ってみないか?もしかしたら、思い出せるかも」
 祐の言葉に頷くと、ジュースの空き缶をゴミ箱に捨てて立ち上がった。


『お姉さんらしくなりたかったな・・・薫ちゃんみたいに』

 切なそうな顔をしながら校舎を見上げていた雫がそう言って微笑むと・・・ふっと、掻き消えた。
 数年前に廃校になってしまったこの場所は懐かしく、荒れてしまった校舎内は悲しいものがあった。教室を1つ1つ見て歩き、最後に職員室の扉を開ける。
「・・・あら?」
「美登里先生・・・?」
 窓際に立っていた山村 美登里【都路帆乃香(fa1013)】は突然の教え子の訪問に驚きながらもここを訪れた経緯を聞き、視線を落とした。
「貴方達、本当は学校の校庭に埋めようとしていたのよ。でも、この学校は廃校になって将来的に取り壊されてしまうことが決まっていたから、別の場所を教えてあげたの。“桜公園”覚えているかしら?」
 美登里の言葉に、ふっと閉ざされていた記憶が蘇る。皆で笑って埋めた、未来への手紙は・・・。
「美登里先生、有難うございました!」
 走り出した背中を見詰め、変わらない姿に思わず頬を緩める。誰かに呼ばれてこの場に来たのだが・・・。
「西原さん、だったのかしら・・・?」


『皆の事、忘れられないよ・・・私がこの世界から消えてなくなっても・・・』

 一心不乱に桜の木の下を掘り続ける。忘れていた記憶を、絆を、取り戻すために・・・

『雫へ:可愛い妹みたいな雫。私がずっと守ってあげるからね』
『薫へ:優しくて大好きな薫。これからもずっと皆のお姉さんでいてね』
『祐へ:未来のサッカー選手!ずっと応援してるからね』
『譲へ:喧嘩とかもしちゃうけど、これからも一緒に遊ぼうね』
『未来の港へ:幸せにしてる?きっと今でも皆と一緒に遊んでいるよね・・・』

『皆へ:皆でこの手紙を見ていますか?いくら時間が経っても、私達が大親友だったことをこの手紙を見て思い出してね。変わらぬ友情を願って』
『未来の薫へ:相変わらず、皆の中に入って苦労してますか?大親友の雫も港も祐も譲も一緒にいますか?綺麗になって、恋人も出来ているのかな?でも一生の大親友達を蔑ろにしてはダメだからね』

 それぞれが描いた未来。仲間に宛てた手紙を回し読みする。
「祐、字下手。って言うか、美人までは良いとして毒舌治せとか言うな!薫には色々助けられたとか書いてあるくせに」
「それに、祐が雫に宛てた手紙・・・思いっきり告白ねコレ」
 薫がそう言って苦笑して・・・その時、目の前に雫の姿が現れた。直ぐ隣に居た凌がはっと息を呑むのが分かり、他のメンバーの顔にも驚きと喜びの色が表れている
「雫・・・」
 港が祐の背中をそっと押し、譲も祐の肩を叩く。
「祐、最後のチャンスよ」
 港の言葉が静かに公園内に響き渡る・・・
「俺、ずっと・・・雫のことが好きだったんだ。いつだったか雫、サッカーやってる俺が好きって言ってたよな?俺・・・もう1度サッカーやってみようと思うんだ」
 背が低く体格的に不利な祐は、高校生になって周囲のレベルの高さに一度は諦めた。けれど、過去の自分からの応援の言葉、雫の言葉・・・もう1度、向き合う勇気をくれた・・・。
 半べそ状態になりながら思いを告げた祐に、雫が切ないくらいに優しい笑顔を浮かべ、順々に1人1人と視線を合わせるとすっと目を閉じた。
 一陣の風が吹き、目瞑った瞬間・・・さっと、その気配が消えてしまうのを感じた・・・。
「・・・私達、また戻れるかしら。皆で遊んだ、あの頃みたいに」
「きっと、なれるさ」
 港の言葉に譲が頷き、凌がにっこりと雫を思わせるような可愛らしい笑顔を浮かべると空を見上げた。
「祐、カッコ良かったわよ」
「う、うるさい。泣いてなんかないぞ」
「別にそんな事は聞いてないだろ。それとも、泣いてるのか、祐?」
「こっち見んなっ!!」
 祐の頬が朱に染まり、必死に顔を背けるその姿に苦笑する。澄み切った空を誰ともなしに見上げ・・・

「雫・・・有難う」

 港の言葉に、自分の気持ちも重ねる。
 再び取り戻した絆を、決して手放さないと心に誓って。