霞の事情 〜月〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
宮下茜
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
2Lv以上
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
6.3万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
05/14〜05/17
|
●本文
昔々ある所に、それはそれは可愛らしいお嬢様がおりました。
泣く子も黙る、超絶美少女の名前は白雪可憐。
名前にも負けないほどに可憐な少女でした‥‥が、恐竜も真っ青なほどの凶暴な性格をしておりました。
昔々ある所に、それはそれは美しい外見をした青年がおりました。
微笑んだだけで女性を失神させるほどの美貌を持つ、その男性の名前は大胡信也。
可憐お嬢様のボディーガードでした‥‥が、幻滅するほどのヘタレな性格をしておりました。
そんな2人が紆余曲折を経て結ばれ、2人の間にそれはそれは美しい3人の子供ができました。
母親と父親の性質を受け継いでいる3人の子供達は、白雪家を巡る陰謀の魔の手から逃れることが出来るのでしょうか‥‥
≪映画『霞の事情 〜月〜』募集キャスト≫
*白雪 霞(しらゆき・かすみ)
実年齢は15歳。外見年齢は13〜17程度の男性
3兄妹の末っ子
外見は母親似の美少女顔
性格は父親寄りで、優しく純粋で騙され易い。
表情は常に穏やかに微笑んでおり、運動神経は皆無で行動が遅い。頭はかなり良い
一人称は『僕』二人称は『貴方、〜さん』
『です・ます』の丁寧口調
*ボディーガード
実年齢は霞よりも上、外見年齢は18〜の男女どちらでも
可憐(霞の母親)に雇われている。可憐には頭が上がらない
性格はクールを基準とし、詳細はお任せ
*誘拐組織0−BX
組織の規模の詳細は分からないが、かなり巨大なものらしい
白雪家と敵対する黒雨家が霞の誘拐を依頼した
組織人数は多いが、能力はピンからキリまで
→今回は一番ランクが下の人に限る
外見年齢は15〜上限はなし
『その他』
・白雪可憐(霞の母親)
外見年齢は20代前半から30代前半程度
しっとりとした雰囲気の美女
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な女性口調で話す
キレると一人称『俺』二人称『お前』乱暴な男性口調に変化する
・白雪信也(霞の父親)
外見年齢は20代後半から30代後半程度
物腰の柔らかい美男子。
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な口調で話す
可憐に対してのみヘタレモードONになる時がある
・霞の友人
・白雪の家で働く人々
注)霞以外の兄姉や黒雨家の人々を出す事は不可
≪シーン≫
・シーン1
ボディーガードが霞の学校までお出迎え
最近黒雨家が不穏な動きを見せていると言う事を伝える
・シーン2
霞が母の日に贈り物をしたいと言って、繁華街の方へと歩を進める
気配も無く突然背後に0−BXの者が現れる
→大人しく言う事を聞けば怪我はさせない
・シーン3
連れてこられたのは、1軒のお屋敷
玄関を入り、長い廊下を進み‥‥突然動き出す廊下。強制的に和室へ入れられる
扉が閉まり、鍵がかかる→閉じ込められる
・シーン4
実はここはこの間目をつけておいた場所で、他人の家だと言う0−BX
気づけばだんだん天井が下りてきており‥‥
霞が部屋の隅に置かれていた文字盤を操作し、何とか全てのカラクリをリセットする
●リプレイ本文
「本当にあの人で務まるのかしら」
リサ(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))の呟きに、悠美(フォーティア(fa2516))は洗い物をしていた手を止めた。新しく入ってきたボディーガードの女性が気に入らない様子のリサ。
「絣坊ちゃまを本当にお守りできるのかしら」
「リサ様、霞様です」
控えめな悠美の訂正も、聞いているのかいないのか。モップと間違えて箒をバケツに突っ込み、悠美がどうやって間違いを正せば良いのかと首を傾げる。暫しの熟考の後、直球で言った方が良いかも知れないと思い至り口を開こうとした時、突然玄関の方からガタガタと激しい音が聞こえてきた。視線を向ければ新しく入ってきたボディーガードの昴(EUREKA(fa3661))がドアノブを掴んでスライドさせようとしている。
「昴様、それは引き戸ではなくドアノブを回して押すんです」
冷ややかな視線のリサに代わって悠美が穏やかに教える。ペコリと頭を下げて飛び出して行った昴の足元は、何故か左右の靴の色が違っていた。
「ドアがどう開くのかも分からないような人で、本当に大丈夫なんでしょうか?」
ジャガイモを食器洗い機の中にセットするリサ。慌てて悠美がジャガイモを取り出し、昴の事をとやかく言えないくらいドジなリサに苦笑する。手が空いているのならば窓を拭いてきて欲しいと言ってリサを厨房から遠ざけ、その時になって初めて悠美は重大な事に気が付いた。
「私、可憐様に何を頼まれたからここにいるのかしら?」
言いつけられた用事をすっかり失念してしまった悠美なのだった。
学友の実(氷咲 華唯(fa0142))と後輩の洋(ヨシュア・ルーン(fa3577))と談笑しながら校舎を出、正門の前でキリリとした表情で立っている昴に視線を向ける霞(倉瀬 凛(fa5331))
「見たことないけど、新しいボディーガード?」
実が首を傾げ、霞が「多分」と曖昧に呟いて昴の元へと駆け寄る。
「あの、昴さんですよね?」
事前に可憐から新しいボディーガードが来る旨を知らされていた霞がそう声をかけ、昴が素早く実と洋に視線を投げた後でコクリと頷くと頭を下げる。
「最近黒雨家の動向が怪しいでしゅがご安心下さい。私が全力にてお守りいたします」
「あ!今噛んだ!」
キリリとした表情で確り台詞を噛んだ昴。特技は人の顔と他人のしでかしたボケを忘れない事と言う洋がすぐさま反応を示し、脳内のメモリーに昴の噛みっぷりを焼き付ける。
「白雪家と敵対していると言う話は聞いたことがあるんですが‥‥」
霞が不安そうに顔色を曇らせ、実が同情の眼差しで霞の背中を叩く。
「大きい家だと色々大変なんだな」
どこにでもいるような地味で平凡な外見の実は、成績は中の中、運動神経が中の上と言う平凡っぷりだったが、性格は黒かった。
「ま、俺はそう言うのは逆に騙し返してやるけどな」
黒いオーラを放ちつつニィっと口の端をあげる実だったが、霞と洋、昴は既に繁華街に向けて歩き出しており、彼のことは半無視状態だった。
「このスカーフなんてどうでしょうか。昴さんはどう思いますか?」
綺麗な色をしたスカーフを手に、真剣に悩む霞。
「可憐様もお喜びになりゃれるでしょう」
嬉しそうに微笑む霞から少し離れた位置で、実と洋がゲームに興じている。スカーフとお花と紅茶と‥‥どんな物ならば可憐が喜んでくれるかと必死に頭を悩ます霞の背後では、0−BXの郁(雅楽川 陽向(fa4371))と零夜(藤緒(fa5669))がこっそりと電柱の影から様子を伺っていた。
「ええなぁ‥‥母の日の贈り物必死に選んで、ええ子やわぁ。でも攫わなあかんのよね‥‥うぅっ」
葛藤する零夜の背中をバシリと叩いて送り出す郁。ビシっとスーツを着て首には蝶ネクタイ、頭には丸い小さなサングラスを乗せている郁は、怪しい雰囲気バリバリだ。サングラスは悪役の基本だと真面目に答える三枚目の彼女。悪役なんだからその悪を隠さなあかんやんと、誰からもツッコんでもらえないのは、相方が零夜と言うボケ属性だからだ。
何気なく2人の背後に近づき、人ごみで騒ぎを起こしたくなければ大人しく従えと脅しをかける。背後を取られた失態に舌打ちをしながら「霞様、ここは抵抗なさらず‥‥」と低い声で告げる昴。昴を牽制する目的で霞の肩を抱き、一緒に繁華街を抜けようとして‥‥足が縺れて転倒する零夜。驚きつつも霞に怪我をさせてはならないと、自ら下敷きになって怪我を負う。
「あいたた‥‥うぅ、ボンは無事かいな!?」
「すみません、大丈夫ですか!?僕は平気ですけれど‥‥貴方って良い人なんですね」
攫われそうになっていた事などすっかり忘れてしまった霞が笑顔で零夜にお礼を言い、昴が何となく自分と似たところのある彼女に共感を覚える。その様子を柱の陰から見ていた郁が舌打ちをし、霞の前に立ちはだかると笑顔で右手を差し出す。
「初めまして、0−BXの郁、言います。よろしゅう」
「あ、僕は白雪霞と申し‥‥」
「ほな、お2人ともついて来てもらいましょか」
ガシリと霞の手を掴んで放さない郁。昴がまたしても犯してしまった失態に唇を噛み‥‥腰の辺りを押さえて苦痛に耐えている零夜に手を差し伸べた。
「霞君の所ってあんなにボディーガードいたんだね」
去って行く霞達の背中に呟く洋。実が何か不穏な気配を察して押し黙り‥‥その隙に、ゲームは洋の勝ちになっていた。
連れてこられたのは1軒の立派なお屋敷だ。玄関の扉を開け、長い廊下を奥へと進み‥‥突然動き出す廊下に驚きの表情を浮かべる昴と霞、そして零夜。
「お屋敷に動く歩道がついてるなんて、凄いですね」
歩道と言うか、走道と言うか。どんどんスピードが上がる廊下に、昴の顔が引きつる。
「何と言うか、暇人?‥‥この屋敷の持主は‥‥」
「科学者の人の別宅その2か3か4か、何か、とにかく別宅なんや」
郁が必死に足を動かし‥‥何故か仕掛けられていたバナナの皮で盛大に足を滑らせる。慌てて片足を下ろして突っ張り‥‥ジャストタイミングで足下に来たバナナの皮を踏んで滑る。以下ループ状態で加速して行き、いつの間にか道を逸れて姿が見えなくなってしまう。か細い悲鳴が遠くから響き‥‥和室に強制的に放り込まれる霞と昴、そして零夜。乱暴に扉が閉まり、鍵が下り、完全に閉じ込められてしまった3人。
「ふっ、驚いたやろ!うちもめっちゃ驚いたけどな!」
動く廊下を失念しており、巻き込まれて大慌てだった零夜が今更取り繕おうと堂々とした態度で、閉じ込められた事が計画の一部ではないと言う事を暴露する。
「鍵を掛けられてしまいました。昴さん、どうしましょう。これでは贈り物が母の日に間に合わなくなってしまいます」
悠長な事を言って溜息をつく霞だったが、ガタンと言う鈍い音に顔を強張らせると、一斉に天井を仰ぎ見た。
迫り来る天井に驚く昴と零夜。その中で1人だけ、目を輝かせて天井を見つめる霞。
「凄い大掛かりな仕掛けのあるお屋敷なのですね。きっと有能な科学者さんなんですね」
マッドサイエンティストだと続けようとして言葉を飲み込む零夜。
「そうや。かなーり凄い人なんやで?せやから、簡単には逃げられへんで?」
自分達が作ったわけでもないのに、何故か威張る零夜。
「あ、あそこに何かあります。これは‥‥クロスワードパズル?僕達に解けと言う事でしょうか?」
霞が部屋の隅にある文字盤に顔を近づけ、昴がお手伝いをしようと隣に腰を下ろす。淡々と言葉を入れて行く霞と必死に考え込む昴。
「霞しゃま、魚へんに虎は何と読むのでひょうか!?」
「昴さん、魚へんに虎は豹ではなくシャチですよ」
大真面目な顔で訂正を入れ、昴がノロノロとした動きで文字盤を操作する。全てのマスに文字が埋まり、ピタリと天井が止まる。
「え?え?何で解けたん!?うち、あかんやったのにー!?」
零夜が声を荒げ、霞が「零夜さんも挑戦なさったんですか?」と穏やかに質問をする。カラクリを解除された事によって焦り始めた零夜に攻撃を仕掛ける昴。いつの間にか無限バナナの皮地獄を脱出した郁が現れ、零夜の手を乱暴に引いて逃げていく。
「覚えときやー!!」
捨て台詞を吐きながら転びそうになる零夜。それを郁が無理に引っ張り上げ‥‥頭脳派なようでいてバリバリ体育会系の郁と纏め役っぽい年齢の落ち着いた女性なのに下っ端ペーペーの零夜。そんなチグハグな2人の誘拐劇は呆気なく幕を閉じた。
「それでは、遅くならない内に贈り物を買って家に帰りましょう」
「‥‥あの、霞様。不甲斐なくて申し訳ありましぇん‥‥」
「いいえ。昴さんがいてくれたからこそ、僕は無事だったんです」
ふわり、優しい笑みを浮かべてお礼を言う霞に、昴は思わず瞳を潤ませた。
「お帰りが遅いので心配していました」
リサが屋敷の中から走って来て、ほっと安堵の溜息をつく。
「すみません。母の日の贈り物を買っていたらこんな時間になってしまいました」
「いえ、ご無事ならそれで良いんです。絣坊ちゃま」
「あの、僕の名前は霞で‥‥」
「霞様!ご無事だったんですね」
悠美が小走りで寄ってきて、霞の耳元にそっと「実様がお見えです」と囁いた。霞達の様子に不穏なものを感じた実が、わざわざ白雪家まで足を運んでくれたのだ。実を夕食に招こうと霞が提案し、慌しく動き出す屋敷内。霞は1人可憐の部屋の前に立つと、ゆっくりと扉をノックした。