Pure Devilアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/15〜05/18
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●本文
最近、町の人々は殺気立っている。
テレビを見てもラジオを聴いても、言っている事はただ1つ。
悪魔を即刻消去せよ。
街中には特殊警察が出動し、黒い羽の生えた悪魔を血眼で探し回っている。
そう、今、この町には1人の悪魔がいる。
どうして人間界に出てきたのかは分からない。
人間界を征服しようとしていると考える者が大半だが、征服しようとしているのならば、逃げ回る必要はない。
悪魔は特別な力を持っているのだから、人間くらい容易く殺める事が出来るだろう。
人々は悪魔の能力を恐れ、拒絶し、消してしまおうとしている。
銀の銃弾が必要だとか、火炎放射器で焼かなくてはならないだとか、妙な噂も立っている。
ポケットから煙草を取り出し、ライターで火をつける。
深く吸い込み‥‥ドンと、何かがぶつかってきた。
視線を落とせば、1人の少年が蒼白の顔で後退ろうとしていた。
「あ、あの、すみませ‥‥ご、ごめんなさ‥‥」
怯える少年の背後に、黒い大きな羽がある事に気づいた。
「お前、悪魔か?」
逃げようとする彼の腕を掴む。ひっと小さく息を呑む音がし、体を固くさせる。
「安心しろ、俺はお前の命を奪いたいわけじゃない」
「つまり、お前は魔界を追放されてきたと?」
「はいです。お前みたいなのはクビよぉぉぉっ!!!と、言われました」
「おいおい、随分テンション高けぇ悪魔がいるんだな‥‥」
「魔界に落ちてきた人達って、皆辛い思いをさせられるんです。僕、それを見てるのがイヤで‥‥」
「仮にも悪魔だろ?」
「悪魔になりたくて生まれてきたわけじゃありません。気づいたら悪魔だったんですから」
レノと名乗った悪魔の少年はそう言うと、シュンと肩を落とした。
「で、魔界を追放されて、どうしろって言われたんだ?」
「天界なら、お前を受け入れてくれるだろうからって。そのためにはまず、人間界に行って天界へ続く階段を知っている女性を探せって言われました」
「その女性の居場所は知ってるのか?」
「いいえ‥‥」
「名前は?」
「確か、百合さんって言ってました」
「‥‥そうか」
「あの、冬馬さんは百合さんって方をご存知ですか?」
冬馬は銜えていた煙草を灰皿に押し付けると、コートを羽織った。
「お前、ついてるな。百合は俺の昔馴染みだ。‥‥天空塔ってところで、巫女をやってる」
「天空塔‥‥この町で一番高い建物ですね?」
「そうだ。そこまで行けば、安全だな」
「あの、冬馬さんもついて来てくださるんですか?」
「お前が1人で天空塔まで行けるのなら俺はココで留守番してるが?外はお前の命を狙う者だらけだぞ?」
「‥‥でも‥‥」
「なんだ、悪魔のくせに俺の怪我の心配でもしてるのか?俺はこの町で一番強いんだぜ?」
ニィっと口の端をあげ、ポケットから煙草を取り出すと火をつける。
「この煙草が吸い終わるまでに決心固めろよ、レノ。天空塔までは決して安心・安全な旅なんかじゃねぇぜ?」
「‥‥有難う御座います、冬馬さん」
≪映画『Pure Devil』募集キャスト≫
*レノ
外見年齢13〜18程度
悪魔だが、優しい心の持ち主
『僕』『〜さん』丁寧な口調
*冬馬(とうま)
外見年齢20以上
運動神経が良く、格闘技全般が得意
頭の回転が速い。ヘビースモーカー
『俺』『呼び捨て』ぶっきらぼうな口調
*町の人
レノの命を奪おうとしている
外見年齢、性別ともに縛りはなし
・百合(ゆり)
外見年齢17〜20代程度
天空塔の巫女で、天界へ続く階段を守護している
心優しく、外見も美しい
『私』『〜さん』丁寧な女性口調
→百合はNPCでも可
●リプレイ本文
「何て事だ!このままでは街が大変な事になってしまう。一刻も早く悪魔を倒さなければ!」
将(Rickey(fa3846))は武器を手に取り、街中に繰り出した。丁度それと同じ頃、街近くの農村に住むアル(アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776))はラジオで悪魔の情報を聞いた。自転車を出し、薪割り用のナタを手に漕ぎ始める。細い道を自転車で駆け抜け、街中で必死に悪魔を探している将と出会う。
「いたぞ、悪魔だ!」
将がレノ(千架(fa4263))を指差し、武器を手に走り出す。
「この悪魔め、お前の思い通りになると思うなよ、覚悟しろ!」
レノが小さな悲鳴を上げ、冬馬(橋都 有(fa5404))が足元に転がっていた石を掴むと将の腕に投げつける。
「街中で刃物振り回すたぁ、いただけねぇな」
「何故庇うんだ!そいつは悪魔なんだぞ!?お前はこの街を滅茶苦茶にしてもいいと言うのか!?」
狂信的に悪魔は倒さなければならないと信じ込んでいる将は、レノを見る目が血走っていた。
「悪魔だからとか何だとか、ちっせーんだよ、テメーらは」
「何を‥‥」
キっと睨みつける将の顔に、掴んだ砂を投げつける。突然の不意打ちに将が目を瞑り‥‥一瞬の隙を付いて逃げ出すレノと冬馬。
「ちっ、逃がしたか。‥‥やはり俺1人じゃ厳しいな。ひとまずここで悪魔を見た事を警察に連絡しよう」
街角に消えて行った2人の背中は追わずに、将は警察に連絡すべく踵を返した。
春音(小塚さえ(fa1715))は幼い頃から悪魔は恐ろしいものと聞かされてきた。今回も、武器を手に街中に繰り出していく大人達から酷く真剣な面持ちで1丁の銃を渡された。見つけたら撃たないと何をされるか分からない。強い恐怖を感じながら家でじっとしていたのだが、外から聞こえてくる物々しい音に耐えられずに捜索隊の人達に加わろうと家の外に出た。
玄関のステップを下り、声のする方に向かって歩き出す。怒声、罵声、悲鳴。一瞬にして奪われてしまった日常に、悪魔への恐怖心は膨れ上がるばかりだ。赤いレンガの家の角を右に曲がり‥‥目の前に現れた黒い羽の少年。恐怖のあまり銃を足元に落とす春音。
「ーーーーっ!!こ、殺されるっ!」
頭を抱え、蹲る。今にも大きな鎌で首を刈られてしまうのではないかと、ギュっと目を閉じ耳を塞ぎ‥‥いつまでたっても襲ってこない衝撃に、恐る恐る顔を上げてレノの目を正面から見つめる春音。
「こ、殺さないんですか‥‥?」
「僕は‥‥誰も傷付けないよ」
戸惑うように呟いたレノ。悪魔だから信じてもらえないかも知れないけれど、誰も傷ついて欲しくないし傷付けたくはないのだと必死に訴えかける。
「こ、この悪魔は怖い人じゃないの?でも、でも悪魔は怖いって‥‥人を傷付けるって‥‥だけど、この悪魔‥‥人は、私を気遣ってくれてる‥‥」
混乱する春音に、レノがどうしたら良いのかと縋る様な視線を冬馬に向ける。
「教育の賜物だな、こりゃ」
「もし良ければこれ‥‥足から血が出てるから」
レノがハンカチを差し出し、春音がビクリと肩を振るわせる。追っ手が来る様子を敏感に察知した冬馬がレノをせかし‥‥春音がレノの手からハンカチを受け取る。お礼を言おうか迷っている間に2人の背中が遠ざかり、右手方向に消え去った。春音はハンカチを胸に抱くと「ごめんなさい‥‥」と小さく呟いた。
(よく知りもしないで、人の言葉だけで怖い人だと決め付けて‥‥。傷付けてしまったら‥‥ごめんなさい‥‥)
「今こっちに悪魔が来なかったか!?」
「‥‥来ました」
「大丈夫か!?怪我は!?で、悪魔はどっちに行った?」
「怪我は、大丈夫です。悪魔は‥‥左に、行きました」
隆制(巻 長治(fa2021))は若くして父より会社を継いだ。的確かつ無難な経営をする彼は、周囲からは父よりも劣ると言う評価を受けていた。大博打的な経営をいくつも成功させてきた彼の父は、街の有名人だった。
越えられない大きな壁に悩んでいた彼の耳に入ってきたのは、今回の悪魔騒ぎだった。自分の手で悪魔を討てばこの上もない宣伝になる。彼は、一躍ヒーローになれるのだ。
「2ブロック目を右!こっちは反対から行く!」
トランシーバーに怒鳴りながら、レノと冬馬の後を追いかける隆制。手勢達と連絡を取り合い、追い詰めたのは細い路地裏だった。
「ようやく追い詰めましたよ、悪魔さん」
「おい、相手は逃げ回るしか芸のないガキだぞ!血迷ってんじゃねえよ!」
「ガキだろうが、悪魔を討ったとなれば我々は英雄になれる。そうすれば業績も鰻登りと言うものです」
「けっ、腐ってやがる。これじゃぁどっちが悪魔だか分かんねーじゃねぇか」
「そんな口をきいていられるのも今のうちです。この包囲網は2重3重になっています。いくら貴方でも、これを突破するのは難しいんじゃないですか?」
「くそっ、てめぇも悪魔なら悪魔らしく人間くらい蹴散らせよ!」
「でも僕、冬馬さんみたいに脚長くないですし‥‥」
「誰が本当に蹴れってんだよ!ったく、どんだけボケなんだお前は」
盛大な溜息をつく冬馬。隆制が仲間達に合図を出すために手を上げ‥‥
「おい、俺が合図を出したらひたすら真っ直ぐ走り抜けるんだ。良いな?」
低い声にコクリと頷くレノ。取り押さえようと向かってきた男性を蹴り飛ばし、一瞬怯んだ隙にレノに合図を出し一気に走り抜ける冬馬。
「やはり一筋縄では行きません、か」
ヤレヤレと首を振る。まだ余裕があるのは、外には彼の仲間が配備されており、どこへ逃げようとも必ず見つけられる自信があったからだ。
「悪魔さんならあっちに行きましたのー!」
少女の声が聞こえ、そちらに向かって走る隆制達。建物の角を曲がれば、高い壁が道を遮っていた。
「‥‥行き止まり、ですか」
「お話を聞く限り、悪魔でいることが嫌なんでしょう?どうしてその姿のままいるんです?」
アス(阿野次 のもじ(fa3092))と名乗った少女は、大きな瞳をさらに大きく見開いて首を傾げた。
「羽を消せば楽になるのに。そこまでお力が弱いとは思えませんが?」
「え、この羽って消せたんですか!?」
「‥‥俺様があれほど‥‥えーっと、ご、ごほん!そうそう、これからお2人とも天空塔へ向かわれるんですよね?北大通から1本奥に入った道を行けば安全だと思いますわ」
「‥‥お前、何者だ?」
助けてもらったお礼を述べるレノの隣で、冬馬が不審気な瞳を向ける。アスがクスリと不敵に微笑み‥‥
「天空塔には知り合いがいるんです。もし宜しければ、アスが宜しくと言っていたと百合さんにお伝え下さい」
「百合を知ってるって事は、天空塔の者か?」
「そんな『高い位置』にはいない者ですけれど」
そう言って、手を振り2人の前を去って行くアス。レノと冬馬が天空塔に辿り着くまでの時間稼ぎとばかりに、あちこちで偽の悪魔出現情報を流して騒ぎ立てる。浮き足立つ人々、その情報に翻弄される隆制。
「どうやら少女がデマを流していたようです。既に悪魔は天空塔へと入ったと」
「‥‥その少女とは?何故悪魔を庇うような真似を!?」
「それが、何者なのかは誰も‥‥」
「くくく、知りたいのなら、教えてやろう」
背後から聞こえてきた声に、隆制は振り向いた。少女の影が黒い翼を伴って大きく広がり、愛らしい外見が崩れて行く。
「ワシの名は大悪魔アスタロト。お前達も、聞いた事くらいはあろう?」
「アスタロト‥‥」
「全員がお前達のような愚か者揃いなら街ごとぱっくり頂こうかと思ったが、どうもお人よし同士引き合うようじゃな。今回は特別に『お前達』だけで済ますとするか」
影が隆制達を呑み込み、引きずり込む。果て無き奈落の底へと堕ちる感覚に、気が遠くなり‥‥
「ふん、レノを苛めて良いのはワシだけだ。まぁ百歩譲ってヤツの名誉のために、命を奪う事はせぬがな」
アスタロトはそう言うと、足元で悪夢にうなされる人々を見て口の端を上げた。
「道中の困難、お察しします。もう大丈夫ですよ」
長い黒髪を揺らしながら、百合(虹(fa5556))がレノに視線を合わせると優しく微笑む。
「しっかり届け物は渡したぜ?」
冬馬が煙草に火をつけ、百合が何も言わずにただ柔らかい笑みを浮かべて頷く。
「それでは、天界への扉を‥‥」
「待ってください百合さん」
レノが百合の手をとり、真剣な眼差しで百合を見つめる。
「僕をここで働かせてください!‥‥今は何が出来るか分からないけど、人間世界の傍で人間が魔界に堕ちて苦しむ事のないように頑張りたいんです」
「レノさん‥‥」
「理解し合いたい、苦しんで欲しくない。だから、頑張ってここで人間のために働きたい」
「‥‥いーじゃねぇか百合。働かせてやれよ。良いかレノ、未来を決めるのはお前だ。最終的に責任を負うのもお前だ。お前の決めた事に、誰も文句言う筋合いはねぇ」
頭をポンと撫ぜ、天空塔を後にしようと歩き出す冬馬。百合がレノの考えを受け入れ、歓迎の意を表し‥‥
「そうだ、百合。アスってヤツ知ってるか?」
「‥‥えぇ。そうですか、彼女が‥‥」
一人納得する百合に、アスからの伝言を伝えてから天空塔の扉を押し開ける冬馬。
「あの、冬馬さん、有難う御座いました!」
「ま、しっかりやれば?」
口元に笑みを浮かべ、ヒラリと手を振って去って行く冬馬。紫煙が風に流され‥‥ふっと、掻き消えた。