IF 完全密室アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
18.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/18〜05/21
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●本文
右を見ても左を見ても上を見ても下を見ても、全てがコンクリートで固められた室内。
天井からぶら下がった裸電球が白色の光を虚しく落としている。
「ってかさ、何でこんなところにいるんだろう。これ、完全な密室じゃん!」
「大変ですよ!密室といえば殺人事件がつきものじゃないですか!」
「つきものも何も、こんな狭い四角い箱の中で殺人事件とか、全員目撃者じゃん!」
「それより、どうやってここに入ったんだろうね〜」
抜け穴なんてどこにも無い、完全な真四角の箱。
「僕達が寝ている間に作ったとしか思えませんね」
「でも、こんな面倒な事をいったい誰が‥‥」
「‥‥あ、あ、あの、こ、ここって密室なんですよね?全部コンクリートで‥‥あの、酸素って大丈夫なんでしょうか?」
静まり返る場。言われてみれば、酸素が薄くなってきているような気がする。
「ヤバイじゃん!ちょっと、あんまり空気吸わないようにしないと!」
「と、とりあえず皆さん落ち着いてください!あ、そ、そうだ!こんな時こそ‥‥じゃーん!アロマキャンドル〜!癒しの光と匂いで心もリラックス、です!」
ライターで炎をつけ、ふわりとバニラの匂いが香る。
揺らめく炎をじっと見つめ‥‥
「わぁぁぁぁぁっ!!!け、消せ消せっ!!癒されてる場合じゃねぇぇぇっ!!」
「危うく酸素を無駄に消費するところでした!」
「とりあえず、どうやったら出られるのか話し合いましょう」
「誰かさ、何か持ってないのか?壁壊せるようなヤツ」
「あ!」
「なんだ!?何か持って‥‥」
「これ、お役に立てば良いんだけど‥‥」
「お役に立てばって、コレ、バナナじゃん!ただのバナナじゃん!!」
「お腹がすくとイライラしちゃいますからね」
「オメーの空気読んでねー行動にイライラする!」
「なぁ、皆さ‥‥ここに来るまでの記憶ってあるか?俺、自分の名前すらも思い出せないんだけど」
「えー、それってヤバ‥‥‥‥あ、あれ?私の名前は‥‥」
「とりあえずさ、何でこんなところに連れてこられたのか、そこから考えてみたら何か分かるかも知れないよな」
「そうだね。んじゃぁ、皆なんか適当に名前付けない?貴方じゃ、分かり難いし」
≪完全密室≫
何故か完全な密室に閉じ込められた男女
彼らは自分の名前さえ思い出せない状態です
ここはどこなのか、何故自分達はこんなところにいるのか
お財布からは自分の事が分かるようなものは全て抜き取られています
・完全密室に閉じ込められた人々が記憶を回復しようと奮闘するお話になります
・室内には裸電球の他は何もありません
・自分が持っていたと思われるバッグは手元にありますので、それに入る程度の物ならば持ち込めています
・ただし、携帯電話は使えません
・コンクリートの壁ですので、少しの衝撃では壊れません
・話の最後には必ずオチをつけてください
●リプレイ本文
幕が上がり、舞台上で座り込んでいる6人の男女をスポットライトが明るく照らし出す。
『やぁ、初めまして。僕はハツカネズミのオス、チュウ助』
スピーカーから声(桐尾 人志(fa2340))が響く。
『所有アイテムは青カビが生えたチーズさ。僕もこの完全密室の中に入れられたんだけど‥‥何処にいるのかって?あの6人の人達の足元だよ。え?見えない?そりゃぁね、そんなに離れてちゃ見えないよ。僕、小さくてラブリーだし。どうしてこの人達がココに入れられたのか、僕は知ってるよ。でも、それは僕の口から言う事じゃないし‥‥果たして、この人達はここから出られるのかな‥‥?』
長「とりあえず、仮名でも良いから名乗ろう。私は長瀬と言う」
クールな女性(沢渡霧江(fa4354))がそう言って、隣に座った少年(倉瀬 凛(fa5331))に視線を向ける。
壱「それじゃぁ僕は壱で」
絢「そやな、絢乃でええです」
学生服姿の少女(雅楽川 陽向(fa4371))がやや投げやりな調子で呟き、向かい側に座っていた少女に視線を向ける。
愛「えーっと、じゃぁ愛美で。美人で可愛いから」
自分で言ってのけた愛美(あずさ&お兄さん(fa2132))にツッコもうかどうしようか悩む壱。ぐっと堪え‥‥
姫「うーん、ジョゼフィーヌかフランソワか、どっちにしようか‥‥」
壱「フランス人か!?第一、フランソワは男性名なんじゃ?」
思わずツッコミを入れる。少女(姫乃 唯(fa1463))が困ったように首を傾げ、やや沈黙した後に口を開く。
姫「じゃぁ、姫様でいいや」
壱「じゃぁとかいいやとか言ってる割に偉そうな呼び名!?」
継「じゃあ私は継母で!」
学生服姿の少女(日下部・彩(fa0117))が突如として叫び、拳を握る。
壱「継母!?誰の!?ってか、姫様と継母!?何の童話だよ!」
継「姫と言えば継母、これは世界の常識なのです!」
壱のツッコミもなんのその、自信たっぷりに言い切った継母の隣では、長瀬が無意識のうちに煙草を取り出し、火をつけた。黙々と上がる紫煙をのんびりと見つめ‥‥
壱「わぁーっ!!だから火は駄目だって!酸素減るし!」
継「密閉された場所だと副流煙の効果が何倍にもなるんですよ!」
壱「未成年もいるんだから、締め切った空間でのお煙草はご遠慮下さい!」
長瀬が慌てて火を消し、継母が観客の方に視線を向ける。
継「その他にも、煙草は様々な病気にかかりやすくなるので、吸いすぎには注意しましょう!」
壱「何処見て言ってるの?」
姫「それより、何だか息苦しくなって来てない?もしかして、酸素が残り僅か!?」
壱「え、早っ!!」
姫「皆っ!これ以上酸素を減らさないように息を止めよう!」
姫様が「せーの」と合図を出し、一斉に息を吸い込み‥‥壱以外が息を止めにかかる。
壱「‥‥それって、酸素がなくなる前に窒息するんじゃ?」
姫「ふぅ‥‥ああ、死ぬかと思った!」
愛「ぷはー!」
継「‥‥うぅっ‥‥ぷはーっ!」
長「くっ‥‥!!」
絢「‥‥うっ‥‥すーはーっ!!」
一番長く息を止めていた絢乃が、咳き込みながら壁際に移動する。一番長く息を止められなかった事を悔しがる長瀬だったが、別にそんな競争をしているわけではない。
絢「花畑で河童が遊んどったで‥‥」
壱「窒息寸前じゃないですか!それ以前に、皆さん息なんて止めてたせいで今思いっきり酸度吸ってますよ」
姫「でも、酸素吸わないと死んじゃうよ!?」
壱「それを貴方が言いますか!?」
姫「もう、何一つ解決してないじゃない!このままじゃ酸素がなくなるのは時間の問題!皆何か持ってないの!?」
姫様が自分のバッグを漁り、何もない事に溜息をつく。長瀬のバッグからは煙草にライター、携帯灰皿に消しゴム、乾電池と言った物が次々に出てくる。絢乃の学生鞄からはおやつが数種類、トコロテンやハチミツなどが出てくる。気をきかせて食べるかと差し出して周囲を見渡すが、全員が無言で首を振る。それならばと割り箸を取り出して1人でトコロテンを食べ始める絢乃。ズルズルと言う音が不気味に響く。
愛「私のバッグには何か‥‥」
愛美がチャックを開け、最初に飛び出してきたのは金髪ナイスガイな『お兄さん』パペットだった。
愛「えっと‥‥」
自分でも予期せぬ物体に、周囲の視線が集まる。数秒の重苦しい沈黙(その間も絢乃のトコロテンをすする音は響いている)の後に何事もなかったかのようにチャックを閉める愛美。
壱「今の何?ねぇ、何?」
愛「やー、やっぱり何もなかったねー」
姫「う、うん。そうだよね。チェーンソーとか入ってたら驚きだもんね」
壱のツッコミを完全無視し、お兄さんの存在を必死に記憶から消去しようと試みる人々。乾いた笑いが響き‥‥
姫「あっ!ねぇ、電球の灯りがついてるって事は、電気の線が外に繋がってるんだよね!?コードが通ってる穴がある筈だよ!」
姫様がそう言って天井に手を伸ばし、掛け声と共に電球を思い切り引っ張る。
姫「よし、外れ‥‥たぁ?」
ふっと暗転する舞台上。焦る声が響き、バタバタと足音が行ったり来たりする。
壱「灯りを消してどうするんだよ!これじゃ何も見えないよ!」
継「そもそも、電気コードの穴程度じゃ人は‥‥ピーーーっ!!」
長「誰だ、放送禁止用語発してるヤツは!?」
継「放送禁止用語じゃ‥‥ピーーーーっ!!」
絢「先生は体育の教師なのに、階段踏み外して落ちてましたよ」
壱「誰だよ、全然関係ない話してるの!?」
継「絢‥‥ピーーーっ!!」
愛「あ、あった!」
愛美がバッグの中から取り出したアロマキャンドルにライターで火をつける。癒し系の匂いが漂うが、気分はちっとも軽くならない。
壱「うう、もう火を点けるしかないのかな」
愛「真っ暗じゃ何も出来ないしね」
壱「そうだよな。背に腹は変えられないか‥‥」
愛「まぁ、こんなものもあるけど」
愛美が小型の走馬燈を取り出し、長瀬が気をきかせて持っていた電池をプレゼントする。コンクリートの壁に映る絵がなんとも物悲しい。
壱「灯りにはなるかも知れないけど、鬱陶しいよ!目がチカチカするんだけど!」
愛「酸素も使わないし灯りになるし、良いかなって思ったんだけど‥‥不吉な連想をさせるよね」
盛り下がる雰囲気の中、継母があっと小さな声をあげると懐中電灯を取り出した。
壱「持ってるなら早く出してよ!」
継「持ってるとは思わなかったんですよー!」
ぷぅっと膨れながらも懐中電灯のスイッチを入れる継母。不要なアロマキャンドルの炎を吹き消し‥‥いつの間にか夏服に着替えている絢乃。壱が呆れ顔でツッコミを入れようと口を開きかけた時、突然継母がはっとした表情で立ち上がった。
継「そうか、判りました!これは宇宙人の陰謀だったんですよ!」
愛「な、何だってー!?」
ジャーンと言う、切ないくらいに安っぽい効果音が鳴り響く。
継「事実、アメリカではエリア51にUFOの基地があると言いますし、グレイは夜な夜な牛を誘拐しているのです。我々も恐らく宇宙人の実験の為に‥‥」
壱「それ、具体的にどんな陰謀?人間をコンクリート部屋に閉じ込めて何になるんだよ」
継「そ、それは‥‥宇宙人の考えは地球人にはわからなくて‥‥」
しどろもどろになる継母に、宇宙人よりも貴方の考えの方が遥かにわからないと壱がツッコミを入れようとした時、今度は姫様が立ち上がった。
姫「ねぇ、あっちの方から光が見えない?」
客席の方を指差し、舞台上の6人がジっと客席を見つめる。
姫「‥‥大変です!こっちには、壁がありませんでした!」
継「そう言えば、さっきから人の声が聞こえると思ったんです」
愛『今更ですが、上演中のお喋りはお控ください』←プラカード
壱「‥‥初めに密室だなんて言った人誰だよ!全く、今までの騒ぎは何だったんだ‥‥」
長「無駄な体力を使ったな‥‥」
絢「浦島太郎やなー」
姫「ああ〜、助かったぁ〜。皆良かったねぇ、間一髪だったよねっ!」
舞台上の6人が舞台を降り‥‥
壱「‥‥所でさ、皆‥‥記憶は戻ったの?」
全「‥‥あっ!」
全ての照明が落とされ、一瞬にして暗闇に染まる。
『いやぁ、皆出られて良かったね〜。記憶が戻ったのか、戻らなかったのか、君はどっちだと思う?‥‥それにしても、何のためにあんな所に入れられてたんだろうね。精神医学の実験か何かだったのかな?‥‥まぁ、何はともあれ出られて本当に良かった。それじゃぁ、僕達もここから出ようかな。‥‥え?僕『達』って何かって?僕達は僕達だよ。ねずみもゴキブリも、1匹見たら数十匹も数百匹もいる可能性があるって、君達忘れちゃってたかな‥‥?』
客席の椅子の足元から空気の玉が飛び出し、スピーカーからねずみとゴキブリが走っているようなカサカサと言う音が響く。まるで足元をねずみとゴキブリが走り回っているような感覚に、客席のそこかしこからざわめきが起こった。
○おまけ『彼らの本名&本業は!?』
長瀬:本名は一倉・涼子(いちくら・りょうこ)とある大会社の社長秘書
壱:本名は二宮・清(にのみや・せい)有名私立中学2年生
絢乃:本名は三瀬・志信(みつせ・しのぶ)私立のお嬢様高校1年生
愛美:本名は四川・瑞穂(しせん・みずほ)超人気アイドルグループの1人
姫様:本名は五菱・薫子(いつびし・かおるこ)とある大会社の社長令嬢
継母:本名は六山・玲子(むやま・れいこ)有名私立高校2年生
チュウ助:本名は‥‥って、チュウ助はチュウ助ですよ!