水色ドロップアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
宮下茜
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
2Lv以上
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
05/24〜05/27
|
●本文
何でこんな事になってしまったのかと聞かれれば、頭と頭がぶつかったからとしか言いようがない。
どうして頭がぶつかったのかと聞かれれば、足元に落ちたお皿を拾おうとしてしゃがみ込んだタイミングがたまたま同じだったとしか言いようがない。
どうしてお皿が足元に落ちたのかと聞かれれば、広がはしゃいで落したのだ。
「よって、この原因は広!お前にある!」
「えぇぇぇぇ〜〜!!??」
頭の高い位置で結んだツインテール、膝上のスカートにニーソックス。
可愛らしい顔をした少女はそう言うと、目の前の広を睨みつけた。
「どうしてくれんだよコレ!!テメー、どう責任取るんだよ!」
「え!?せ、責任!?そりゃぁ、もしこのまま戻らなかったら葵は俺が責任持ってお嫁さんに‥‥」
「オメー、ぶっ飛ばされてぇのか!?何で俺が広の嫁になんなきゃなんねーんだよ!!俺は男だ!」
「でも葵君、今は雅の体に入ってるんだから見た目は女の子よ?」
三つ編に眼鏡、委員長タイプの桜がそう言って、頬に手を当てる。
「ど、どうしましょぉ〜!これ、元に戻らなかったら私は葵君として生きていかなきゃならないんですよね?私、葵君になりきれる自信がないです」
色白で華奢な体躯の男の子がそう言って、クスンと鼻を鳴らす。
「あ‥‥葵可愛い‥‥」
広が頬を染め、葵がすかさず背中をぶん殴る。
「なに頬染めやがってんだ貴様!それにアレは俺じゃねぇ!雅だ!」
そう。今現在、葵の体には雅が入っており、雅の体には葵が入っている。
体は葵、心は雅と体は雅、心は葵と言うややこしい事態になっているのだ。
「お‥‥俺はどっちに求婚したら良いんだ!?やっぱ体に?それとも心に?」
「何錯乱しやがってんだ!!つか、テメー今まで俺様の事そんな目で見やがってたのか!?ぶっ飛ばすぞ!?」
「落ち着いて葵君。多分広君も錯乱してて、本来意識の下に押し止めている本音‥‥じゃなく、えーっと、何か、不思議な感情が爆発しただけよ」
フォローをしようとしてなおさら葵を窮地に立たせるような発言をする桜。
「背が高くて筋肉質で格好良い広君と違って、葵君は背も小さいですし女の子みたいですし、私から見ても可愛いなぁって思うほどですから、広君がそう言う感情を持っていたとしても不思議ではないというか、大抵の男の子なら思わずキュンとしちゃうような外見ですもん。だから、そんな落ち込まない下さい!ね?」
雅が桜以上のダメージを葵に与える。
「何だ、コレは。皆してよってたかって俺をイジメてるのか!?くっそー!ぜってー将来は190cmになってやる!広なんて踏み潰してやるぅぅっ!!」
「そんな儚い夢物語を言う前に、まずは体を元に戻さないとダメですよ」
「そうだ。ど‥‥どうすれば戻るんだ!?」
「また頭同士をぶつければ‥‥と言いたいところですが、そんな簡単に戻るとは思えませんし‥‥」
「もういっそ、雅ちゃんは葵として、葵は雅ちゃんとして生きて‥‥」
「広、お前は黙っとけ」
葵の目が据わっている。広は口にチャックの仕草をすると大人しく椅子に座った。
「くそー、楽しいキャンプのはずが、人生の大転機じゃねぇか。ンでこんな事に‥‥」
「あの、葵君。先ほどから気になっていたんですが、足‥‥閉じてくれません?」
「ぬわぁ!?わ、悪い雅!」
「いえ‥‥大丈夫ですよ。前には桜ちゃんしかいませんでしたし」
「それにしても、どうしてこんな‥‥」
言いかけた桜が、ハタと口を噤んで顔を上げる。マジマジと雅の顔を見つめ、眉根を寄せる。
「ねぇ、今から変なこと言うけど‥‥笑わないで聞いてね?」
「どうしたんだ桜?」
「雅、ここ来る前に知らない人から飴貰ったわよね?ビー玉みたいな色した、綺麗な」
「うん。貰ったよー!葵君も食べたよねっ?」
「あぁ、結構美味かったけど、それが?」
「あの人、白衣着てたわよね?なんちゃら研究所とか、ネームプレートに書いてあったわよね?」
「お、おい桜。まさかその人が実験目的で飴渡したとか?はは、まっさかー、ナイナイ。だってここ、山奥だぜ?」
「そ、そうだよ桜ちゃん。普通実験って言うのは、成果を見ないといけないんだから〜。あの男の人、私達とは反対の方角に行っちゃったし‥‥」
「‥‥なんちゃら研究所って、何かカタカナの名前の研究所でしょ?それなら、この近くにあるけど」
広がのんびりとした口調でそう言い、葵と桜、そして雅は顔を見合わせるとゴクリと喉を鳴らした。
≪映画『水色ドロップ』募集キャスト≫
*葵(あおい)
女の子よりも可愛いと評判の男の子
性格は非常に荒っぽく、喧嘩っ早い
『俺』『お前』
→現在葵の体の中には雅が入っている
*雅(みやび)
女の子っぽくおっとりした雰囲気だが、服装は露出過多
男の子受けのする外見をしている
『私』『〜君』(桜はちゃんづけ)
→現在雅の体の中には葵が入っている
*広(ひろ)
高身長で筋肉質、格好良い男の子
葵が密かに好き‥‥と言うより、可愛いものは全部好き
『俺』『〜さん』(葵は呼び捨て、雅と桜はちゃんづけ)
*桜(さくら)
三つ編に眼鏡と、見た目は委員長タイプ
中身もしっかりしており、みんなのまとめ役
『私』『〜君』(雅は呼び捨て)
*研究所職員
●リプレイ本文
すっくと立ち上がった雅IN葵(悠奈(fa2726))が普段よりも高い視線に感動しながらも駆け出していく。
「こうしちゃいられねぇ、早速その研究所に行くぞ!!」
「わー、私ってあんなに早く走れるんですねぇ〜」
「葵君、大またで走っちゃダメっ!!」
葵IN雅(雅楽川 陽向(fa4371))がポケンとしながら手を叩き、桜(雨月 彩(fa4992))がすかさずツッコミを入れる。雅の姿が茂みの中に消え、暫くしてから舞い戻ってくる。
「くっそー!!その研究所ってどこだ広っ!!」
「ちょ、葵、痛い‥‥首が絞まって‥‥締まっ‥‥」
「‥‥なんか、いつもより顔が近ぇな」
「そりゃぁ、葵君よりも雅のが背が高いからね」
桜の丁寧な説明に、広(Rickey(fa3846))を地面へと下ろす。心配して駆け寄った葵が広の顔を覗き込み‥‥『葵』なら絶対にやらないような可愛らしい首の傾げ方に広が頬を染める。
「何で俺は雅よりも小さいんだーーーーっ!!」
「何で俺の事蹴るのぉぉ〜〜〜!!??」
葵にキュンキュンしている広の背中を蹴り、ふてくされたようにその場にしゃがみこむ。地面に生えている雑草をブチブチ抜き、無駄に散らして行く。
「くっそー、くっそー!絶対大きくなってやるんだからな!絶対だぞ!ビルとかなぎ倒してやるんだからなっ!」
ガバリと立ち上がった雅に、桜がツッコミの言葉をかろうじて飲み込む。完全に据わってしまった瞳は、沼の底のようにドロリとした色をたたえている。
「おい広、俺の身体に少しでもキュンとしてみろ。ぶちのめしてやるかんな!」
「え、じゃぁ、雅ちゃんIN葵なら‥‥」
「おーまーえーはー、まーーだンな寝ぼけた事ぬかしやがるのかぁ!?」
「喧嘩は駄目よ、葵君、広君」
葵が2人の間に割って入り、普段は見られない葵の可愛らしい態度に広が‥‥以下略。とにかく、2人のためにも、広のためにも、一刻も早く戻らなくてはならない。
「とにかく、研究所の方に行ってみましょう」
「そうだ、早く案内しやがれ広!」
研究所のプレートを横目で見ながら、雅はドスドスと敷地内に入っていくと正面玄関のドアを思い切り蹴り開けた。
「責任者出てきやがれー!!」
「あ、葵‥‥ミニスカートでそんな嬉しい事するなんて!」
「葵君!!もっとおしとやかにっ!!」
広がポっと頬を染め、桜が眦を吊り上げる。
「わぁー、何だかこの研究所、いつもより大きく見えるわ〜」
「‥‥雅サン、何ですかそれは。俺がちまっこいから全てが巨大化していると、普段の私の視点ならもっとちゃんとした高さなのにと、スッゲー遠まわしに不満を述べてらっしゃるんですか?」
「そう言う意味じゃなくて、不思議だなーって思っただけで‥‥その‥‥」
「おや?誰かと思えば、さっき会った子達じゃないか。飴は美味かったか?」
白衣を着た恵(椎名 硝子(fa4563))が笑顔で現れ、雅がガシっとその胸倉を掴むと前後に揺らす。
「美味かったか?じゃ、ねぇぇっ!!戻しやがれ貴様ーーーっ!!」
烈火の如く怒り狂う雅を何とかなだめ、応接室へと通すと4人から事情を聞き、恵は青ざめた。
「何!私も食べたがなんともなかったぞ!?」
「でも、現に俺らはこうして入れ替わってるわけ!」
大股開きでソファーにふんぞり返る雅に、足を閉じるように注意を促す桜。
「おやつ棚の近くに置いてあったから、普通の飴だと思って持って行ったんだが、まさかあれは‥‥ちょ、ちょっと待っててくれ」
慌てて部屋から出て行った恵が、怪しげな研究員ドクター・ドロップ(角倉・雪恋(fa5003))を連れて戻ってくると蒼白の顔で頭を下げた。
「す、すまん!研究物だとは知らなかったんだ。でも、飴は全部食べてしまったし‥‥」
「安心しなさい。普通、飴を開発した時は必ず解毒薬も同時に開発しておくものだ」
「じゃぁ‥‥」
「しかし、今回の飴は失敗作ゆえに、解毒薬は‥‥無いっ!」
「ねぇのかよ!?」
「あ、でもな、もしかしたらコレを食べれば元に戻るかも知れないし、戻らないかも‥‥」
「どっちだよ!?」
恵がポケットから取り出したのは、不気味な色をしたビスケットらしき物体Xだ。見るからに毒素を含んでいそうで、食べたら間違いなく何かしらのコトが起きそうな物体だ。
「駄目だよ葵、雅ちゃん!そんな怪しい物を食べるくらいなら、やっぱり雅ちゃんは葵として、葵は雅ちゃんとして生きていく方が‥‥」
「うるさーい!!」
雅がバクリとビスケットを口に含み、あまりの不味さに涙目になる。気合でゴクリと飲み込み‥‥ポンと言う破裂音と共に、頭の上に猫耳が生える。
「おい、これ何だよ!!」
恵に掴みかかろうとした時、再びの破裂音で猫耳が消え去る。どうやら効果持続時間は短いらしい。
「やはり、きちんと実験しない事には‥‥」
ドクターの言葉を遮るように、ガラガラと何かが廊下を疾走する音が響く。妙に音痴な歌声が聞こえて来て‥‥
「経口♪経口♪注射や点滴は邪道なの♪」
グルグル眼鏡に白衣姿のハク・ペクチョン(星辰(fa3578))と、パンツ一丁で手術台に縛り付けられたウィル(ウィン・フレシェット(fa2029))が通る。ガラガラと手術台がハクの手によって押され‥‥
「あぁ、どうして実験なんて‥‥」
ウィルの悲壮な叫び声が木霊する。
「‥‥実験?実験ってアレか!?アレなのか!?」
「いや、あそこまでは‥‥恐らく、何らかの衝撃を与えれば元に戻る!物理的衝撃に目が行ってしまうところだが、精神的に衝撃を与える事も忘れてはいけない!」
そう言ってドクターが提案したのは、2人の服の交換だ。イヤイヤながらも、それで戻るのならと了承する雅と、それなりに楽しんでいるらしい葵。恵とドロップに別室へと案内され、服を着替えてくる。
「さあ、精神的ショックはどうだね?‥‥いや、しかし良く似合っているな、うん」
「ショックも何も、ズボンのが落ち着くし」
「あ、葵、やっぱりスカートも似合うんだね‥‥」
「黙れ!ってか、全然戻らねぇじゃねぇかっ!!」
「もうさ、戻らなくたって良いんじゃない?随分その身体に馴染んで来たみたいだし。責任持って俺が2人ともお嫁さんに貰ってあげるから‥‥」
「だーまーれっつてんだよ!!つか、元々お前のせいじゃん!!どうしてくれんだよ!」
「うーん、やっぱり俺の所為になるの?」
「お前が皿落とさなければ‥‥」
「だから、ちゃんと責任取るって‥‥」
「お前なんか大嫌いだぁぁぁぁぁっ!!!」
「え!?そんなぁ〜!!」
半べそになる2人を見て、葵が雅の頭をそっと撫ぜる。
「きっと元に戻りますから、大丈夫です。ね?元気出してください♪」
「優しい葵君って言うのも珍しいわねぇ」
それを言ったら、広君を蹴る雅って言うのも珍しいわねと桜が呟き、広が胸の前で手を組むと先ほどまでの半べそはどこへやら、瞳を輝かせ始めた。
「か、可愛い‥‥!雅ちゃんな葵可愛いよ!!ああ、でも、葵な雅ちゃんもまた違った魅力が‥‥!!」
「この状態で頭をぶつけてみたらどうだろう?」
ドクターの提案に顔を見合わせる2人だが、藁にも縋る思いの2人は決心したように頷き合うと立ち上がった。
「よし!雅、やってみるぞ!」
「はいです!‥‥せーのっ!!」
「‥‥あ、そんなに勢いをつけては‥‥」
十分な距離を離れ、ダッシュで近付く2人。恵が止めようとするが、既に時は遅い。ゴツンと言う鈍い音の後で頭を抑えてその場にしゃがみこむ雅と葵。
「いってぇ、俺って石頭だったんだな‥‥しかも、戻ってないし!」
涙目ながらも広を睨みつけた雅だったが、そのまま2人がパタリとその場に倒れ込む。
「わ、私はとんでもない事を!!」
「ああっ、大丈夫!?って、俺は一体どっちを助けたらいいんだぁっ!」
取り乱す恵と、混乱する広。桜が2人に手を伸ばそうとした時、雅がムクリと起き上がるとほにゃんとした笑顔を向けた。
「どうしたの?」
「え、雅‥‥?」
「や、や‥‥やったぜぇぇぇぇっ!!!!」
葵が拳を突き上げながら立ち上がり、嬉しそうに周囲を見渡す‥‥が、先ほどよりも低くなった視線に思わず膝を折る。
「元に戻って良かったねぇ〜」
雅が落ち込んでいる葵に声をかけ、ドクターが実験の成功に大きく頷く。実を言えば、ただ単に飴の効果が切れただけなのだが、そう言ってしまえば『最初から言えよ!』とか『実験の意味はなんだったんだよ!』と言う葵の切れ味鋭いツッコミが繰り出されそうで、あえて黙っている。
「ああ、良かった。危うく首を括らねばならないところだった‥‥」
恵が安堵の溜息をつきながらその場にしゃがみこみ、広が葵の傍にしゃがみこむと満面の笑みで両手を握った。
「ああ、良かった。元に戻って」
「広‥‥」
「これでどっちに求婚するか迷わなくてすむね!」
「はぁ?」
「でも、雅ちゃんな葵も可愛かったのになぁ〜」
「‥‥おい、ちょっと待て。結局俺なのか!?お前の求婚対象は俺なのか!?」
小さくて女顔だからそう言われるんだと、涙目になる葵。絶対に雅よりも、果ては広よりもでっかくなってやると、心中で固く決心をする
「いやぁ、それにしても諸君は素質がある!大人になったら我がアンデッド・ドロップ研究所の職員にならないかっ?」
「ぜってーお断りだっ!!」
ドロップが差し出した右手をパチンと叩くと、葵は自身の姿を見て‥‥悲鳴を上げた。
「あーーー!!服がぁぁぁぁっ!!!!」