Welcome to wonderlandアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/27〜05/30
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●本文
真っ白な半袖のシャツに深緑色のチェックの膝上スカート。
胸元には真っ赤なリボンが結ばれ、腰まである長い髪が風に緩やかに波打つ。
有栖は読んでいた本を閉じると、廊下を走ってくる足音に顔を上げた。
「白兎君、何か問題でも起こったの?」
扉を開け、中に走りこんで来た少年に声をかける有栖。
肩で息をしていた白兎が顔を上げ、どう切り出したら良いものかと思案顔になる。
「えっと、その‥‥」
「苣ちゃんが大暴れしてる?」
「そうですね、大暴れと言えば大暴れです。もっとも、暴力的なということではないんですけれど」
「苣ちゃんの性格はよーっく分かってるつもり。で、それは私が不思議の国に帰らないとダメな事?」
「帰ってきてくだされば収拾が付くかと」
「女王様まで懐柔されちゃったのね」
「はい。白い花は真っ赤に染まり、女王様まで顔が赤く‥‥」
「ホストスキルはちゃんと身につけたみたいね。でも、そのスキルの使い方が問題ね」
「ハーレムみたいになってますよ。あっち」
「むぅー、帰るのヤだなぁ〜」
「大丈夫ですよ、有栖なら苣の毒牙にはかかりませんって」
「勿論、苣ちゃんの色香に惑わされるとは思ってないけど‥‥帰るのがヤなの」
「主人公のクセに我が侭言ってどうするんです。そもそも、僕達が外に出てこられるのだって‥‥」
「だってー、あの制服が可愛くないんだもん」
「可愛いじゃないですか、水色!」
「むぅー、きらぁい。私、この制服が好きなのー!」
「我が侭言わないでくださいよー!とにかく、苣を止めますよ?」
「ふわぁーい」
気のない返事をして立ち上がる有栖。椅子に足を取られ‥‥ベシャリとその場に突っ伏す。
「わぁぁっ!!大丈夫ですか、有栖!?」
「あたた‥‥あー、平気平気。いつものことだから」
「‥‥いつものことなんでしたら、そろそろ足元に気をつけようとか言う学習能力が生まれても良い頃だと思うのですが、どうなんでしょうか?」
「白兎ちゃんっていっつも難しい事考えてるよねぇ。脳みそ沸騰しない?」
「有栖はいつもボケっとしてますが、脳みそ溶けてません?」
「‥‥脳みそって、溶けたらかに味噌みたいになるのかな?」
「‥‥気持ちの悪い話をしないで下さいよ。早く不思議の国に行って苣のハーレムを壊しますよ」
「はいっはーい」
≪映画『Welcome to wonderland』募集キャスト≫
*有栖(アリス)
不思議の国の主人公。外見年齢14〜18程度
脳みそが溶けているのではないかと心配されているほどに話が通じない
可愛い天然タイプではなく、見ていて心配になるボケタイプ
考えている事は大抵斜め方向に逸れている
『私』『貴方』(白兎は君づけ、苣はちゃんづけ)
*白兎(ハクト)
不思議の国の住人。外見年齢14〜18程度
キビキビとしており、ツッコミ体質
落ち着いたお兄さん風で常識人。物腰は柔らかい
『僕』『貴方』(苣も有栖も呼び捨て)
*苣(チシャ)
不思議の国の住人。外見年齢16〜22程度
本業がホスト、副業がチェシャ猫と言い張っている
ホストを天職だと思っており、男女構わず口説きまくる
色っぽい二枚目だが、有栖に密かに想いを寄せている時点で何か間違っている
『俺』『君』(有栖はちゃんづけ、白兎は呼び捨て)
*不思議の国の住人
苣の言葉に酔い、苣様ハーレムを建国中
苣様に否定的な白兎と有栖を目の敵にする‥‥かも
●リプレイ本文
物語の入り口に立つ有栖(あずさ&お兄さん(fa2132))と白兎(日下部・彩(fa0117))を確認した後で、苣(橋都 有(fa5404))はそっとその場を離れた。
もう帰る〜と我が侭を言う有栖を必死になって宥める白兎。2人は苣が近くに居た事に気づいていなかったようだ。すっと気配を消してお城へと戻れば、ハートの女王(彩)が頭を下げて立っていた。フリル満載の可愛らしいメイド服に袖を通した彼女は、濃い目の派手なメイクが特徴的だ。
「お帰りなさいませ」
箒を片手に他のメイド達と一緒になって挨拶をする女王だったが、苣の姿が見えなくなると従順なメイド姿から一変、本来の彼女らしさを取り戻した。
「貴方達、やっておきなさい」
廊下に置かれた豪華な椅子に踏ん反り返る女王。苣が通る時だけメイドへと変身する彼女は、かなりの演技派だ。
赤絨毯の敷かれた長い廊下を歩き、謁見の間へと繋がる両開きの扉を押し開ける。黒のシルクハットをかぶり、燕尾服を着た服田(星野・巽(fa1359))が帽子を脱ぐと恭しく頭を下げた。
「お帰りなさいませ、御主人様」
服田がポットを取り出し紅茶の用意を始める。それを横目で見ながら、苣が両手をパンパンと叩いた。
「卵〜卵〜であえ〜!」
その呼びかけに、眠たそうな表情の少年がトテトテと走り寄って来た。薄黄色のストライプ入りスーツに頭に卵を乗せて現れた彼は、決して『卵』と言う名前ではない。『藍』(十軌サキト(fa5313))はシュピっと苣の前に進み出‥‥頭の卵を割られる。ドロリとした黄色の液体が額に流れ、ポケットからハンカチを取り出すと笑顔でそれを拭き、再び頭の上に卵を置く。割られないようにと気をつけてはいるようだが、如何せん藍の動きは緩慢だ。簡単に卵を割られ、頭の上が大変な事になる。
「時に苣様、有栖殿のお迎えは宜しいのですか?」
「んー、白兎が連れてくるだろうけど‥‥ちと不安だな。誰か行かせるか」
「苣様の御随意に」
跪き、手の甲に口付けを落として微笑む服田。
「お前に全て任せる。‥‥お前がいなければ俺はただのダメ猫だよ」
無駄に流し目をキメ、服田の頬に手を滑らせる苣。フェロモン全開の妖しい空間に藍がポっと頬を染め‥‥油断した隙に頭から卵が転がり落ちる。あり得ないくらいに慌てふためき、半べそになっている藍を落ち着かせるべく、苣がそっと背中を撫ぜる。
「眠殿、有栖殿と白兎殿のお出迎えをお願いしたいのですが」
服田の呼びかけに、眠(各務聖(fa4614))が部屋の奥から走ってくるとにこりと微笑んだ。
「道中気をつけて、帰ったらお茶にしましょう」
「はい!美味しいお茶の為に、お出迎えに行ってきます♪」
お城に向かって歩く道中、前方から「うへっ!うはっ!」と言う不思議な声が聞こえて来ていた。これも苣ちゃんのせい?と首を傾げる有栖に、多分違うだろうと呟く白兎。
「この声、弥生さんですよ。彼は苣のフェロモンが効かないタイプです」
冷静に分析する白兎と明後日の方角を見ながら相槌を打つ有栖。そんな2人の目の前に、広大な畑が見え始めた。謎の叫び声を上げながらせっせと畑仕事に精を出しているのは三月ウサギの弥生(柊ラキア(fa2847))だ。黒のタンクトップにアームカバー、首周りには大判の布巻き、下はジーンズ、頭にはピンと立ったウサ耳を生やした彼は、有栖と白兎の姿を見つけるとにこっと懐っこい笑顔を浮かべた。
「有栖、久しぶり。帰って来たの?」
「苣ちゃんが大変って聞いて」
「苣、いい猫!ここ、苣に貰った」
人参狂の彼は、どうやらこの畑で苣に懐柔されているらしい。どうにか彼の目を覚ます事は出来ないかと考える有栖。何でも素直に受け止めるおバカ体質の弥生は、人参に関しては猪突猛進だ。そう、弥生の興味を引くだけの珍しい人参があれば良いのだ。しかし、残念ながら有栖は人参を持っていない。ただ、先ほど畑から引き抜いてきた大根なら持っていた。白兎には、そんなもの持っていてどうするんだと怒られたのだが‥‥
「こっちの方が大きくていっぱい食べられるよー」
「大根と人参は違うでしょう!?」
色も大きさも、人参ではない。それなのに、弥生は新種の人参に目を煌かせた。
「で、でっかい人参!しかも白!新種!うはっ!ぎゃあ!うへっ!」
狂喜乱舞する弥生の目を何とか覚まそうとする白兎だったが、弥生の興味は完全に大根に移っている。頬擦りをし、有栖について行くと言って畑から上がってくる。
「あ、有栖ちゃん達みーつけっ!あれ?弥生ちゃん、大根持って何してるの?」
「有栖が新種の人参くれた!」
「ふーん、新種の人参なんだ☆」
感心する眠に、何か用があるのかと問う白兎。帽子屋さんにお城まで案内するように頼まれたと言う眠に、それなら一緒に行くと言う有栖。苣にさよならの挨拶を言いに行くと言う弥生が大根を小脇に抱えて眠と有栖の後に続き、白兎がのんびりと後を追う。
「今ね、お城大変なんだよー!女王様はボンテージ着せられてメイドさせられてるし、帽子屋さんはこき使われてるし!」
「へー、女王様なら似合いそうな格好。でも、メイドさんのお仕事は皆丸投げしてそう」
「私も食べられそうになって脅かされたし、黒兎ちゃんは泣きながら家出しちゃうしー」
それまでは呆れ顔で眠の話を聞いていた白兎が、双子の弟・黒兎(羽生丹(fa5196))の話にピクリと耳を動かす。あの気の強い黒兎が泣いて家出なんてありえないと思いつつ、家出の部分はあっているのだろうなとボンヤリと考える。
「だからアリスちゃん、苣様をどうにかして‥‥」
「うん、どうにかしないと、私が外の世界に帰れないから」
『帰る』ではなく『行く』だと訂正しようとした時、お城の中から服田が爽やかな笑顔で出現すると有栖の手を引いて強引にお茶会へと引きずり込むと労わりの言葉をかけて眠にお茶を出す。
「何でハーレムなのに男の方が?」
「幼き姫君もすっかり一人前のレディにおなりで、白兎殿も益々ご健勝のご様子。安心いたしました」
白兎の疑問は無視し、慣れた手つきで紅茶を淹れる服田。フェロモン全開で、ゆるりと御茶を召し上がってくださいと言ってカップを差し出すが、有栖は首を横に振った。
「お気に召しませんか?それでは、有栖殿のお好きな御茶をお煎れしましょう」
「蜂蜜はないの?」
突然の言葉に首を傾げる服田。蜂蜜がないと知り、残念そうな有栖が席を立ち、今度は用意しておいてねと釘を刺すとお茶会の会場から脱出する。多分苣は謁見の間にいるだろうという白兎の言葉に、赤絨毯の上を走る有栖。途中、案の定丸投げメイドとなってのんびりと服田が淹れたローズティを飲んでいる女王を見つける。やっぱり女王様だもんねと納得した時、謁見の間の扉が自然と内側に開いた。
「やあ有栖、今日も全力全開で可愛いね」
「あー、苣ちゃん!あんまり皆に迷惑かけちゃダメっているも言ってるでしょー?」
その度に帰ってこなくちゃならないんだからと、膨れ面の有栖。藍が有栖の到着にトテトテと走ってくると、手をブンブン振る。
「有栖ー!お久しぶりですー」
「藍ちゃん、走ると頭危ないよ?」
そうでしたと足を止める藍。すかさず卵を割る苣に、1テンポ置いてから、またですかーと苦笑しつつ片づけをする藍。
「どうしてよけれないのかなー」
「それはね、藍ちゃんが頭に卵乗っけてるからだよ」
意味の分からない事を言う有栖だったが、藍はそれで納得したようだ。有栖にそっと近付き、長い髪を撫ぜる苣。フェロモン全開の笑顔でそっと髪に口付けを落とす。
「そろそろ俺のものになる気になったかな?ああ、1人で寂しいならそこのお供の彼も一緒でいいよ」
刺々しい言い方は、有栖と仲の良い白兎に嫉妬しているようだった。バチリと2人の間で視線がぶつかり‥‥
「僕、有栖の味方!でも、貰ったものは返さない!」
若干空気の読めていない弥生が胸を張って2人の間に割って入る。廊下から服田と女王が姿を現し、何事かと問いた気な視線を苣に向ける。
「おや、俺の可愛いうさこは大根持ってご乱心かな?帽子屋、彼に畑丸ごと分の人参を」
「!! 僕苣の味方!」
突然寝返り返す弥生。僕の世界の中心は人参だから、有栖ごめん!と言って目を輝かせる。有栖が再び大根で釣り、それに負けじと苣が人参を提示する。
「うはっ!に、人参いっぱい!当分は5食人参で生きれる!」
嬉しそうに飛び回る弥生を見ながら、同じ白大根ならふくよかな女性の脚の方が好みだと呟き、服田に同意を促す苣。
「私は、苣様が一番素敵かと」
苦笑しながら藍にマシュマロ入りミルクティを差し出す。
「とにかく、ハーレムはかいさーんっ!!」
宣言する有栖に、逆らえない苣。楽しかったのに残念だと呟きつつ、女王の前に跪き手の甲にキスを落とす。
「また遊んでくださいね」
この場は貴方のものですと言い、手を取って王座に着かせる。いつの間にかいなくなってしまった眠を気にしつつも、有栖に爽やかな笑みを向ける苣。
「まぁ、ハーレムじゃなくとも帽子屋のお茶と有栖姫の笑顔があればどこでも満足だしな」
「私は蜂蜜入り紅茶さえあれば誰も居なくても満足だけどな」
有栖の言葉に、すかさず蜂蜜入り紅茶を出す服田。有栖が歓声をあげて紅茶に手を伸ばし‥‥
「これがライバルとは、手強いですね」
服田の言葉に、苣はただ苦笑しながら頭を掻いた。