霞の事情 〜花〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/29〜06/01

●本文

 昔々ある所に、それはそれは可愛らしいお嬢様がおりました。
 泣く子も黙る、超絶美少女の名前は白雪可憐。
 名前にも負けないほどに可憐な少女でした‥‥が、恐竜も真っ青なほどの凶暴な性格をしておりました。

 昔々ある所に、それはそれは美しい外見をした青年がおりました。 
 微笑んだだけで女性を失神させるほどの美貌を持つ、その男性の名前は大胡信也。
 可憐お嬢様のボディーガードでした‥‥が、幻滅するほどのヘタレな性格をしておりました。

 そんな2人が紆余曲折を経て結ばれ、2人の間にそれはそれは美しい3人の子供ができました。
 母親と父親の性質を受け継いでいる3人の子供達は、白雪家を巡る陰謀の魔の手から逃れることが出来るのでしょうか‥‥


≪映画『霞の事情 〜花〜』募集キャスト≫

*白雪 霞(しらゆき・かすみ)
 実年齢は15歳。外見年齢は13〜17程度の男性
 3兄妹の末っ子
 外見は母親似の美少女顔
 性格は父親寄りで、優しく純粋で騙され易い。
 表情は常に穏やかに微笑んでおり、運動神経は皆無で行動が遅い。頭はかなり良い
 一人称は『僕』二人称は『貴方、〜さん』
 『です・ます』の丁寧口調

*ボディーガード
 実年齢は霞よりも上、外見年齢は18〜の男女どちらでも
 可憐(霞の母親)に雇われている。可憐には頭が上がらない
 性格はクールを基準とし、詳細はお任せ

*誘拐組織0−BX
 組織の規模の詳細は分からないが、かなり巨大なものらしい
 白雪家と敵対する黒雨家が霞の誘拐を依頼した
 組織人数は多いが、能力はピンからキリまで
 →今回はランク中〜上程度の能力
 外見年齢は15〜上限はなし

『その他』
・白雪可憐(霞の母親)
 外見年齢は20代前半から30代前半程度
 しっとりとした雰囲気の美女
 一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な女性口調で話す
 キレると一人称『俺』二人称『お前』乱暴な男性口調に変化する
・白雪信也(霞の父親)
 外見年齢は20代後半から30代後半程度
 物腰の柔らかい美男子。
 一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な口調で話す
 可憐に対してのみヘタレモードONになる時がある
・霞の友人
・白雪の家で働く人々

注)霞以外の兄姉や黒雨家の人々を出す事は不可


≪シーン≫

・シーン1
 0−BXのメンバーの1人がボディーガードと偽って霞を誘拐する
 誘拐後に現れるボディーガード
 ボディーガードの携帯に0−BXから連絡が入る

・シーン2
 霞と引き換えに白雪家の金庫に収められた書類をもってこいと命令される
 可憐へと連絡を入れ、こんなもので霞が救えるのならと書類を渡される

・シーン3
 1軒のお屋敷の中で、霞が縛られている
 書類を受け取ろうと近づいてきた0−BXの輩を蹴散らし何とか霞を助け出すボディーガード

・シーン4
 お屋敷から脱出後も追ってくる0−BX
 ボディーガードから書類を受け取ると、それに火をつける霞
 →この程度のモノでしたら、数秒で覚えられます。書類は僕の頭の中です。さぁ、どうします?
 挑発的な霞の態度に戦闘態勢に入る0−BXにボディーガードが応戦しようと武器を取り‥‥
 可憐の指示で屋敷を取り囲んでいたボディーガード達に捕まる0−BX

●今回の参加者

 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)
 fa5316 希蝶(22歳・♂・鴉)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文

 レパード(角倉・雪恋(fa5003))は霞(メル(fa5775))の姿を見つけると、足早に近付き頭を下げた。
「霞様、またしても貴方の誘拐を企む者があるとの情報が入りました」
「レパードさん、お帰りになられたのですね」
「はい、本日より復帰いたしました。霞様、一度別の場所へ避難しましょう」
 黒塗りの車が止まり、霞は微塵も疑うことなく車に乗り込んだ。扉がそっと閉まり、車がゆるゆると走り出す‥‥。レパードは隣に座る霞の横顔を見ながら、口元に笑みを浮かべた。


 昴(EUREKA(fa3661))はキリリとした顔立ちの優秀なボディーガードだが、職を離れれば思わず目を見張りたくなるほどのドジさ加減を披露し出す。可憐(葉月 珪(fa4909))に命じられ、霞の迎えに行く途中で困っているらしいお婆さんを発見、声をかければ道に迷っていると言うではないか。この場所ならば知っていますと地図を見ながら案内する事数分、昴はものの見事に迷子になっていた。交番がすぐに見つかったから良かったものの、見つからなかった場合はどうなっていた事やら‥‥
 大した役には立っていないにも拘らず、何度も頭を下げるお婆さんにこちらも同じように頭を下げ、手を振る。その小さな背中が人ごみにまぎれた時、ポケットに入れてあった電話が振動した。慌てて引っ張り出し‥‥反射的に終話ボタンを押す。まだ一言も喋っていないうちから拒否られた相手がすぐに掛けなおしてくる。
『‥‥終話ボタン押しただろ!?』
「な、何故分かった!?」
『ふっ、大宇宙の大いなる意思を受信する事の出来る俺には、お前のドジなどお見通し!』
 自慢げに言う電話の主は、その後も四大元素の精霊がどうたら、天からのパワーがなんやらと延々と語り始めた。最初は大人しく聞いていた昴だったが、途中で痺れを切らし、用件を促した。
『お前が護衛するトロ神が宿った如き子供を、キャッチ&ノンリリースで絶賛引き留め中だ。魔界転生させたくなければ精霊の声に耳を傾けろ。白雪家金庫の書類をレッツ配達、OK承知?』
 相手はこちらの返事を待たずに一方的に切った。それから約5分間、昴は電話の内容の意味を考え‥‥理解できた瞬間蒼白になり、次に肩を落とした。
「こんな相手に出し抜かれたの?」
 意味不明な言葉を繰る相手に‥‥。兎にも角にも、ボウっとしていても霞は帰って来ない。これは可憐に指示を仰ぐしかないと、昴は震える指でボタンを押した。


 甘い紅茶の香りに癒されていた時、電話が耳障りなベルの音を立てた。折角のリラックスタイムを邪魔された事を少々不快に思いつつも、声には微塵にも出さずに電話を取った。
「あら昴さん、どうか致しましたの?」
 声の調子から霞に何かあったのだと悟ると、昴に事情を問いただした。
「‥‥霞が攫われただと?てめぇ、それでもボディーガードか!?一体どこで何しやがってたんだ!まさか、霞が攫われるのを指咥えて見てた訳じゃねぇだろうな!?」
 お婆さんに道案内をしていたら自分まで迷子になってしまったと言う事を馬鹿正直に白状する昴。昴の性格をよく知っている可憐が諦めの溜息をつく。
「金庫の中の書類をよこせってか?ンなもんで良いならいくらでもくれてやらぁ。さっさと取りに来やがれ!」
 乱暴に電話を切った可憐の隣に控えていたリサ(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))がおもむろに立ち上がり、金庫のある部屋へと歩いて行く。見た目は知的でクールなリサだが、中身はドジで何を考えているのかよく分からない。不安に思った可憐がその後を追い‥‥金庫に向かってガレージのリモコンを必死に押すリサに脱力する。
「ンなもんで金庫が開く訳ねぇだろうが!」


「これがその書類だ。で、引渡し場所は何処なんだ?俺も行くぜ」
「しかし可憐様‥‥」
「勿論、ギリギリまで手出しはしねぇ。これはお前の仕事だからな。でも、俺はお前の事を心底信用してるわけじゃねぇ。大事な息子の命がかかってんだ、危ない橋は渡りたくねぇ」
「分かりました」
 可憐が颯爽と身支度をし始め‥‥床に大量の古新聞を広げ『書類は待ってきた』と言う謎の脅迫状を一心不乱に書くリサの姿が目に入る。
「‥‥『持』が『待』になっています」
 昴が真顔で指摘しマジックを取ると『侍』と書いて差し出す。
「これは『侍る』ですよ。書類を侍らせてどうするんです?」
 バチリと視線同士がぶつかり合う。ただならぬ雰囲気を発する2人に喝を入れたのは、可憐だった。
「でめぇらはさっきから何してやがる!ンな事する暇があんなら、さっさと行きやがれ!」
 昴が書類を持って颯爽と踵を返し‥‥扉に激突した。


「この子がターゲット?お仕事は上手く行ったのね」
 着物姿の都(姫乃 唯(fa1463))が霞を見ながらそう呟き、表情を変えずに棚から凧を取り出すと慣れた手つきで霞の手足を縛り始める。
「あの、レパードさん?」
「ごめんなさいね、ボウヤ。こんな可愛いコを縛り付けるのは気が引けるけれども、逃げられる訳に行かないのよ」
 瞳(椎名 硝子(fa4563))が妖艶な微笑を浮かべ、都が私もこんな事はしたくないけれどお仕事だからと、冷たく言い放つ。
「書類さえ手に入ればお家に帰してあげるから、それまで我慢して頂戴?」
「用があったら言って。あなたに何かあってブツが手に入れられなくなったら困るから」
 どうやらおかしな事に巻き込まれてしまったらしい霞。自分を縛っているものを見つめ、次にその場にいるメンバーへと視線を滑らせる。羽根突きを持った都は無表情で霞を見下ろしており、剣玉を持った瞳は艶かしい笑みを浮かべている。白衣を着た青年・千珠(希蝶(fa5316))はヨーヨーで犬の散歩・ブランコ・ムーンサルト・犬の散歩と延々繰り返しながら自然のオーラがなんたら、神秘の力がどうたらと必死に霞に話しかけている。黙っていれば物静かで知的な雰囲気なのに、喋れば電波系の変人だ。
 霞をここまで連れてきたレパードは実は偽者で、変装の名手だが、ナルシスト気味なのが玉に瑕だ。
「完璧ね、美しきボディーガード、レパード!‥‥霞様を悪の手先から守るのよ!」
 役になりきっている彼女は、右へ左へと無駄に軽快な動きをして見えない相手と戦っているようだ。
「ここはいったい‥‥」
 何処なのだろう。長い時間考えた結果、霞はある1つの仮説を立てた。
「遊戯の大会でも開催されるのでしょうか?」


 現れた昴を千珠が丁重にお出迎えし、瞳がその手に握られた封筒に視線を向けると右手を差し出した。鋭い瞳は、遠まわしに脅迫をしている。霞の隣に立った都にチラリと視線を向け、昴は驚いたような表情で窓の外を見ると「あっ!」と声を上げて指をさした。
 典型的な作戦に見事に引っかかる0−BX達。昴が一瞬の隙を突いて霞の元へ駆け、持っていたナイフで縄を切る。都と瞳がすぐに昴の行動に気づき、千珠だけは必死に窓の外のナニカを見つけようとしている。
「書類を渡さないつもり?約束を破るなんて大したものね」
「素直に渡していれば無事に帰してあげたものを」
 都が羽子板を構え、瞳が剣玉を突き出す。
「私の『けんだまい』全てかわす事が出来るかしら!?」
「昴さん、危ない!」
 ダサイ技名ながらも、なかなかのスピードと威力を誇る『けんだまい』。霞を庇った昴の腕に鮮血が広がる。昴が特殊警棒を取り出して剣玉を弾き飛ばし、ついでに都の羽根も打ち返しておく。
「大丈夫ですか!?」
「このくりゃい大丈夫です」
「本当に大丈夫ですか?痛かったでしょう?今、思い切り噛んでましたし」
 僕のせいですみませんと謝る霞を庇いながら外へと出るが、すぐに追いつかれてしまう。
「貴方、なかなかやるじゃない。敵同士でなければ、良いお友達になれたかも知れないのに」
「どちらが真のボディーガードが、勝負だ!」
 レパードが武器を構え、昴が息を呑む。
「昴さん、書類を見せていただけますか。僕に良い案があるんです。‥‥このままでは、2人とも捕まってしまいます」
 素早く書類を受け取り、乱暴に封筒を開けるとザっと目を通す。霞はニィっと口の端を上げると、書類を高々と上げてそれに火をつけた。
「この程度のモノでしたら、数秒で覚えられます。貴方達が欲しがっていた書類は僕の頭の中です。さぁ、どうします?」
 突然の豹変に、昴が「御両親の血、ですか」と呟き、すぅっと目の色を変えると警棒を構える。今にも襲い掛かってきそうな0−BX達を睨みつけ‥‥
「そこまでにしときな。脳天に風穴を開けられたくなければだがな」
 凛とした声に、全員の視線が集まる。拳銃を手にした可憐が不敵な笑みを浮かべ、その周りには数え切れないほどの黒服が控えていた。その中にはなぜかお玉を持って佇むリサの姿もあった。
「な、そんなもの持ってるなんて卑怯よ!」
「民間人が銃を持ってるなんて‥‥」
 黒服達に捕まる0−BX達。霞が昴の怪我の応急処置をし、都が黒服達を睨みつけると、おもむろに懐に手を入れた。
「こうなったら‥‥私の負けね!さぁ、墨を塗るといいわ!」
 じゃぁ遠慮なくとリサが墨を塗り始め、可憐が霞の頭をポンと撫ぜると微笑んだ。
「流石俺の息子だな。あの迫力は、普通のヤツじゃだせねぇ」
「お母さん‥‥」
「ただし、焼いた書類ちゃんと戻しとけよ?ちゃーんとその頭の中に入ってるんだろ?」
 可憐の問いに、霞は満面の笑みで頷いた。