IF 有能刑事アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 4Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 15.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/02〜06/05

●本文

 煙草を携帯灰皿に押し付け、刑事はふっと視線を下げた。
 隣にいるまだ若い刑事が腕を組みながら頭を捻る。
 ココはとある大企業の社長宅。
 つい数時間前、社長の可愛い息子が何者かによって連れ攫われてしまったのだ!

若「犯人は莫大な金額を用意しろと要求しています!どうしますか!?」
ハ「‥‥焦るな。ゆっくりと考えろ。どうしたら良いのか、ゆっくりと考えれば考えるほど‥‥」
若「時間が迫ってきますよ!何まったりしてるんですか!」
ハ「男はな、どっしりと構えてなきゃいけないんだ。ハードボイルドと言われるためには‥‥」
若「言われる必要ないですから、とにかく早く策を立てましょう!社長は犯人の要求を呑むって言ってますよ!?」
ハ「そうか。やっと、俺の出番だな」
若「とっくの昔にアンタの出番が来てたんですよ。だから僕達ここにいるんですって」
ハ「まずはウィスキーを飲んで‥‥」
若「あんた、勤務中になにしようとしてんですか!!」
ハ「俺の血はウィスキーで出来てるんだ」
若「出来てねぇよ!!怖いこと言うなよ!‥‥はっ!!電話です!犯人からの電話ですよ!」
ハ「よし、俺が出よう」
若「オメーが出てどうするんだよ!!すっこんでろよ!」
ハ「もしもし、ハードボイルド刑事だ」
若「何名乗ってんだよ!しかもハードボイルドいらねぇよ!!」
ハ「‥‥切れてしまった」
若「あたりめーだろー!あぁっ!!もう!これで警察いるのバレちゃいましたよ!?どうするんです!?」
ハ「ふっ、常に危険と背中合わせに生きてきた俺にとっては‥‥」
若「今危険と背中合わせなのはオメーじゃなく、人質だっ!!」
ハ「‥‥絶対に助けてみせるぞ」
若「窮地に追い込んだ人が何言ってるんですか」
ハ「よし、行くぞ!」
若「‥‥‥‥どこにだよっ!!!!!!」
 ハードボイルド刑事と若い刑事(有能)は人質の少年を助け出す事が出来るのか?!


≪有能刑事≫
 若いのに有能な1人の刑事と、ハードボイルドと言いつつ無能な1人の刑事
 チグハグなコンビが手がけた事件は必ず無事に解決するって本当ですか‥‥!?
・ハードボイルド刑事がボケ、若い刑事がツッコミとなり何とか事件を解決の方向へと進めていくお話になります
・犯人や人質、関係者、事件の詳細はお任せします
・話の最後には必ずオチをつけてください
・役名は苗字か下の名前のどちらかだけでOKです
→1文字か2文字のものを推奨します

●今回の参加者

 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa4773 スラッジ(22歳・♂・蛇)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文

○社長宅(舞台向かって右側)
 うろうろする社長の澳(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))が「息子を助けてください」と数秒おきに叫び、宮(シヴェル・マクスウェル(fa0898))が何とか宥めつつもいい加減青筋が浮かび上がってくる。芝(片倉 神無(fa3678))がウィスキーを注文し、宮に後ろ頭を思い切り引っ叩かれる。澳が気をきかせて珈琲を出し、芝が元々緩まっていたネクタイをさらに緩めるとソファーに踏ん反り返る。
澳「身代金ですが、言われたとおり現金で揃えておきました」
宮「本物って、良いんですか社長!?」
芝「どうせ戻ってくるんだ。新聞紙より本物の方が良いだろう?」
宮「(小声で)ちょ、もし取り返せなかったらどうするんです!?」
芝「どうせ新聞紙だろうが金だろうが、紙は紙だろ?」
宮「じゃぁ、自分で用意したらどうです?芝さんのお金なら、万が一の時でも僕も責任を感じないで済みますし」
芝「(小声で)バカ言うな!このハードボイルドセット高いんだぞ!?」
宮「ハードボイルドセット?」
芝「よれよれのシャツとネクタイ、トレンチコート、煙草セット、それが全部入って‥‥」
宮「セットで買うなよ」
 宮が心底呆れた顔でそう言った時、呼び出し音が鳴り響いた。


●犯人のアジト(舞台向かって左側)
 電話を持って固まるエリ(ティタネス(fa3251))とマサ(スラッジ(fa4773))、舞台の隅で縛られている少年(メル(fa5775))がスポットライトに照らされる。
マ「ど、ど、どうしよう?ハートフル刑事が出たぞ!?」
少「あの、それを言うならハードボイルドでは?」
エ「ごめん、多分間違っちゃったんだよ。またかけ直そうか?」
少「電話をかける時は、番号をよ〜く確かめた方が宜しいのでは?かかった電話代の分、身代金が減ってしまいますし」
エ「確かに!(電話をかけ中)あ、もしもし?へ?ハードボイルド刑事?それは失礼しました(電話を切り)どうしよう!ちゃんと番号見てかけたのに、また警察が出たよ!?」
少「でしたら、電話番号そのものが間違っているのではないでしょうか?」
エ「それはないよー!だって、最初は社長が出たし。ねぇ?」
マ「さぁ。俺がかけたわけじゃないから」
エ「はー、それにしてもお腹空いたねー。出前でも取ろうか。私カツ丼にするけど、マサは?」
マ「中華そば」
エ「マジで?もー、空気読めてないなぁ〜取調べと言えばカツ丼でしょ!?」
少「取調べじゃないですよ」
マ「本当に取り調べられる時に食べれば良いし」
少「捕まる気満々ですか!?」
エ「君はカツ丼で良いよね?」
少「はぁ、僕の分まで有難う御座います」
エ「食べないと戦には勝てないからね〜(リダイヤルボタンを押す)もしもし?カツ丼大盛りと中華そば2つずつ、大至急持って来て。えっと、住所は‥‥」
少「何か、人数あって無くないですか?カツ丼大盛りと中華そば2つずつって、全部で4つになりますけど」
マ「どっちも1つずつエリが食べるんだろ」
少「あの、僕大盛りなんて食べられないんですけど」
マ「残りはエリが食べるんだろ」


○社長宅
 逆探知をすべく派遣された岡(古河 甚五郎(fa3135))は突然の展開に困ったような表情を浮かべつつも、自分の出番はこれで終わりですからとでも言いた気に立ち上がると舞台左手方向へと姿を消した。
宮「なにか釈然としないですが、とにかくアジトが分かったなら様子を見に人を手配しましょう」
芝「安心しろ。すでに手は尽くしてある。俺達もすぐに行くぞ!」
 颯爽と走り出す芝。舞台右手から左手へと移り、その後ろを宮と澳がついていく。舞台左手方向が明るくなる。


●犯人のアジト
 関係者以外立ち入り禁止という黄色いテープが必要以上に張られ、宮が思わず「なんじゃこりゃ〜!?」と叫ぶ。何の競技だか知らないが、くぐったり飛び越えたりした先には、無駄にガムテープで白線を引き、靴跡や指紋を採取しようと頑張る岡の姿があった。
岬「我々は包囲されている!大人しく手を上げ、ゆっくりと出て来い!」
宮「こっちが包囲されてどうするんだよ!!」
 拡声器で呼びかける岬(伊藤達郎(fa5367))のお茶目な言い間違いに目くじらを立てる宮。
エ「どうしよう、何でバレたんだろう!?」
少「出前の電話をする時、リダイヤルしてませんでしたか?」
エ「そうだ!どうしようマサ!!」
マ「落ち着け、落ち着くんだ!こんな時こそ‥‥ひ、人質の命が惜しかったら中華そばを渡せ!!」
岬「どうやら犯人側は混乱しているようです。人質に銃を向けています!」
芝「ふむ、どうするか。おい、岡さん!出前の品は持って来たか?」
岡「えぇ、持ってはきましたが‥‥」
芝「よし、これで説得できるな」
宮「ひとまず要求の品を渡すんですか?」
芝「いや、後で俺が食べる!」
宮「意味わかんねぇよ!!」
芝「とりあえず、拡声器をこちらに。んっ、あーあー、ただいまマイクのテスト中」
岬「さっき俺がテストしたっつーねん!!」
芝「初めまして。と言いたいところだが、数度電話で喋った事があるな。俺こそが、ハードボイルド刑事だ。良いか、今から俺が言う事をよく聞いてほしい。‥‥お前さん達にも故郷ってもんがあるだろう?お袋さんが今のあんたを見たらどう思う?(中略)俺にもお袋がいてな、18の時に亡くなったんだが‥‥口煩いが優しいお袋だった」
宮「何勝手に死なせてるんですか!この間署に電話かけてきたじゃないですか!」
芝「だから、俺はお袋の墓の前で誓った(中略)そして捜査の末、俺はロスで悪党どもと大捕物を繰り広げ‥‥」
宮「何か、全然関係ない方向に逸れて来てる気がするんですけど。それに、オメーいつロスに行ったんだよ!?」
芝「そこで俺は叫んだ!『そこまでだ、悪とども!』すると悪党は拳銃を俺につきつけ(中略)」
宮「何で自分語りになってんだ!?」
マ「ハードボイルド刑事も苦労したんだな。きっとお袋さんも立派に育ってくれて天国で喜んでるんだろうな。だから、天国から電話をかけてきたんだな」
エ「うんうん、感動だよね」
少「あの、刑事さんの言葉にまんまと絆されているところ悪いのですが、何だか口上も処々に矛盾している箇所がいくつかあったようですが‥‥。あ、ほら、何か、いつの間にかお母さん蘇ってるみたいですよ?この間お袋の誕生日の日にお菓子を贈ったら、これ以上太らせる気かって殴られたって言ってますし」
エ「あ、あたしの感動をかえせー!!」
芝「だからな、お袋さんは大事にしなけりゃならない。いくら贈ったお菓子を突っ返されようとも、元気なら良いじゃないか」
マ「もうお前の説得は聞き飽きた!それより、中華そばはまだか!?とっととそばを持って来い!」
 マサが窓を開け、銃を撃つ。乾いた音の後で、スローモーションで倒れ込む岬。ドサリと地面を1回跳ね、何かをゆっくりと紡ぐ唇。映画ならば演出として良いが、これは舞台だ。あまりのノロさ加減に宮が「早くしろ!」とツッコミをいれ‥‥
マ「あ、ヤベっ!弾入れるの忘れてた!」
 宮が思い切りコケ、何を思ったのか芝が血相を変えて岬に駆け寄る。
芝「だ、大丈夫かぁぁぁぁ!!!」
宮「撃たれてもいねぇんだから大丈夫に決まってるだろうがぁぁぁ!!!」
 目を開けるんだ!と叫ぶ芝の背中を銃口が狙う。すでに弾は込められており、乾いた音と共に凶弾に倒れる芝。舞台上が一瞬シンとなり、芝が間を持たせた後でゆっくりと起き上がる。
芝「へっ、死に損なっちまったか」
マ「効いてない!?」
少「凄い、ハードボイルド映画の刑事さんみたいだっ!」
芝「コイツが俺を守ってくれた」
宮「それはただの防弾チョッキだろ!?しかもオメー、着るの嫌がってたじゃねえか!」
岬「宮さん、無理やり着せたんですね。ご苦労様です!」
宮「とにかく、犯人は動揺している!今のうちに少年を‥‥」
 犯人のアジトの中から平然とした顔で岡が出てくる。
岡「あ、少年の指紋ならちゃんととりましたよ」
宮「だったらそのまま連れて来いよ!!」


○舞台中央
 縄を解かれた少年が満面の笑みで澳に駆け寄る。
少「お父さぁぁぁー‥‥あれ?」
 手を広げて待機していた澳も近付く少年に首を傾げる。少年が澳の目の前まで来て足を止め‥‥
少「この人、誰?僕のお父さんじゃないよ?」
澳「違う!この子は私の息子ではない!」
エ「え、嘘でしょ!?女の人の右側に写ってるのが社長の息子で良かったんだよな?」
マ「いや。向かって右側‥‥つまり、あの女性の左側が社長の息子だが?」
エ「‥‥‥‥‥‥えぇぇぇぇぇぇーーーー!!!??」
芝「ふっ、まったく、因果な商売だな、刑事ってやつは」
宮「なにのんびりそんなこと言ってるんですか!じゃぁ、社長の息子は!?」
岡「まぁまぁ、宮さんも珈琲でもどうです?事件の後の珈琲は、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように清く、恋のように甘いんですよ」
宮「まだ何も解決してないのに、何くつろいでるんだっ!!!とっとと社長の息子の行方を捜しに行きますよ!」
芝「まぁ、待て。ハードボイルドたるもの、慌ててはならない。泥のような珈琲をすすって‥‥」
宮「泥なのは珈琲じゃなく、オメーの頭だ!あぁぁ!!もう、話にならない!岬!お前が一緒に来るんだ!」
岬「え!?でもまだ俺、珈琲飲んでな‥‥」
宮「(ブチリとキレ)とっとと来いっつてんだよテメェら!!!」
全「‥‥い、イエッサー!(立ち上がって敬礼)」