夢の事情 〜雪〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
2.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/30〜07/03
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●本文
昔々ある所に、それはそれは可愛らしいお嬢様がおりました。
泣く子も黙る、超絶美少女の名前は白雪可憐。
名前にも負けないほどに可憐な少女でした‥‥が、恐竜も真っ青なほど凶暴な性格をしておりました。
昔々ある所に、それはそれは美しい外見をした青年がおりました。
微笑んだだけで女性を失神させるほどの美貌を持つ、その男性の名前は大胡信也。
可憐お嬢様のボディーガードでした‥‥が、幻滅するほどのヘタレな性格をしておりました。
そんな2人が紆余曲折を経て結ばれ、2人の間にそれはそれは美しい3人の子供が生まれました。
母親と父親の性質を受け継いでいる3人の子供達は、白雪家を巡る陰謀の魔の手から逃れることが出来るのでしょうか‥‥
≪映画『夢の事情 〜雪〜』募集キャスト≫
*白雪 夢(しらゆき・ゆめ)
実年齢は17歳。外見年齢は14〜18程度
3兄妹の長女(上から数えて2番目)
外見は母親似の美少女顔
性格は我が侭で俺様、自分さえ良ければすべて良し
頭はかなり良く、腹黒。運動神経はそこそこ
気を許した者には懐くが、そうでない者にはとことん冷たい
一人称は『夢』二人称は『貴方、呼び捨て(相手が尊敬できる人だと思えばさん付け)』
高飛車な口調『ですわ・ですの』
*ボディーガード
実年齢は夢よりも上、外見年齢は18〜の男女どちらでも
可憐(夢の母親)に雇われている。可憐には頭が上がらない
性格はクールを基準とし、詳細はお任せ
*飛田 肇(とびた・はじめ)
実年齢は17歳。外見年齢は15〜20程度
白雪家と敵対している黒雨家の遠縁にあたる者
黒雨家からの指令により、夢の気をひこうとしている
『その他』
・白雪可憐(夢の母親)
外見年齢は20代前半から30代前半程度
しっとりとした雰囲気の美女
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な女性口調で話す
キレると一人称『俺』二人称『お前』乱暴な男性口調に変化する
・白雪信也(夢の父親)
外見年齢は20代後半から30代後半程度
物腰の柔らかい美男子
一人称は『私』二人称は『貴方』丁寧な口調で話す
可憐に対してのみヘタレモードONになる時がある
・夢の友人
・白雪の家で働く人々
注)夢以外の兄弟を出すことは不可
≪シーン≫
・シーン1
黒雨家が不穏な動きを見せているとの情報を入手し、夢にボディーガードをつける事になった可憐
ボディーガードが学校まで迎えに行けば、肇と親しそうに歩いている夢を発見
丁寧な物腰で挨拶をする肇に好感を抱くも、鋭い瞳に違和感を感じる
・シーン2
朝、肇が夢を迎えに来て仲良く2人で学校へと出かけて行く
肇の雰囲気に引っかかりを覚えるボディーガード
可憐の仕事場に入り、書類を捲れば黒雨家の遠縁として肇の名前を見つける
・シーン3
夢を迎えに行く途中で肇の姿を見つけ、後を追うボディーガード
路地裏に入り、携帯で黒雨家とのやり取りをしている肇
もう少しで夢を落とせそうだとの言葉に、肇の肩を掴もうとした時、背後から現れた夢が肇の頬を叩く
・シーン4
→夢が本気で貴方を相手にしているとでも思って?
黒雨家との繋がりを怪しみ、動向を探っていただけだと言う夢
本当は少しだけ肇に惹かれ始めていたのだが、その感情を押し殺し、毅然と突っぱねる
●リプレイ本文
「そうですか、分かりました。ご苦労様。‥‥黒雨家の奴ら、まだくだらない事を考えてやがる」
可憐(葉月 珪(fa4909))は電話を切ると、苦々しい表情で唇を噛んだ。美人は怒っていても絵になるというが、可憐の場合は怒っていると非常に怖い。誰も絵になんて書けやしないだろう。信也(時雨(fa1058))は部屋の隅でビクビクしながらも、可憐の言動を見守っていた。熟考の後に顔を上げた可憐は、部屋の隅に置かれていたベルを鳴らすとソファーに腰を下ろした。ほんの十秒かそこら、部屋に沈黙が訪れる。控えめな軽いノックの音に可憐が返事をし、ドアが開けられる。キリリとした表情の女性が室内へと入り、メイド服を着た少女が下がろうとするのを可憐が止める。
「アルルも入ってらっしゃい」
「はい、可憐様」
アルル(アルディーヌ・ダグラス(fa4382))が部屋の隅に立ち、レパード(角倉・雪恋(fa5003))が勧められるまま、可憐の前のソファーに腰を下ろす。
「黒雨家がまた不穏な動きを見せています。貴方には、夢のボディーガードについてもらいたいと思います」
「あの、夢にボディーガードをつけるのは少しやりすぎじゃ‥‥」
口を挟もうとした信也に、無言の睨みをきかせる可憐。何か文句でもあるのか?とドスのきいた声が聞こえた気がして、信也は身震いした。
「いえ、何でもありません。可憐さんの言うとおりです」
「良いですか、夢にもしものことがあった時には‥‥」
その先は言わずもがな、どうなるか分かってるよな?と言う、またもや無言の威圧感にレパードはただ頷くばかりだった。夢の御付のアルルが淡々とレパードに夢の趣味や性格などを語った後で、ふと可憐に視線を向けると小首を傾げた。
「あの、可憐様、そう言えば、外で植木職人の方がなにやら怒鳴っておりましたが」
「ん?あぁ、良いんだ、あれで」
紅茶を一口、可憐はニヤリと口元に不敵な笑みを浮かべた。その頃外では天道次郎丸(鬼道 幻妖斎(fa2903))が頭をかきむしりながら空に向かって叫んでいた。
「いくらなんでも、コレは‥‥!!」
手元には、モアイ像や宇宙怪獣、人魚姫や金閣寺のイラストが数枚落ちている。庭木の全てをこの形に整えろと、どこかの鬼女王様に命令されたのだった。
「貴方の様な方がこの学校にいらしたなんて、存じ上げませんでしたわ」
「重たい荷物を抱えている女の子を助けるのは、当然の事と思いますが。そもそも、先生もあんな重いものを女の子に運ばせてはいけませんよね」
「そうね、あの方は私が物凄く強い力を持っていると思い込んでいるのですわ。私のお母様は確かにとてもお強い方ですけれど」
夢(姫乃 舞(fa0634))はそう言うと、悪戯っぽい瞳を肇(倉瀬 凛(fa5331))に向けた。
「そもそも、最近は見ても見ぬふりが流行っているようで、誰も手を貸してなんてくれませんわ。貴方、流行には疎いんではなくて?」
「そうですね、そうかも知れません」
「面白い方ですのね。貴方がお望みなら、夢のお友達にして差し上げても宜しくってよ」
「お嬢様」
校門の影から現れたレパードに、夢はにっこりと柔らかい笑顔を向けると肇を紹介した。肇が手を差し出し、レパードが軽く握り返した時、背後から肇を呼ぶ声が響いた。
「肇兄さん、抜け駆けですか?」
ダークスーツを着た中性的な容姿に不釣合いな声の高さ。勇(十六夜 勇加理(fa3426))は夢の手をそっと取ると、口付けを落とした。
「あ、こちらは肇さんの妹さんで、勇さんです。勇さん、こっちは私のボディーガードの‥‥」
「レパードさん、ですね。お噂は伺っております」
勇が丁寧に頭を下げ、レパードもソレに応じる。夢が腕時計に視線を落とし、あっと小さな悲鳴を上げるとレパードの袖を引く。
「大変、もう帰らないと。今日は外でお母様達と食事をする約束なんですの」
「それでは夢さん、また明日」
肇が手を振り、勇も笑顔を見せる。夢が走り出し‥‥レパードの視界の端、ほんの一瞬だけだが、肇が鋭い瞳で夢を見つめ、にやりと笑ったのが目に入った。咄嗟に振り向いた時には、既に邪気のない笑顔で手を振っており‥‥
「今日は霞も来るんですの。お兄様も来られれば良かったのですけれど‥‥」
(あの瞳‥‥まるで、獲物を狙うかのような‥‥)
「レパード?どうかいたしまして?」
「いえ、何でもありません‥‥」
紅の薔薇をお土産に現れた勇と、丁寧な物腰で現れた肇に連れられて学校へと歩き出す夢。弾むような嬉しそうな声、甘い笑顔‥‥強(倉瀬 凛)はそんな3人を羨ましそうに見つめると、溜息をついた。
「夢様、僕がもっと強ければお傍にいて守って差し上げるのに‥‥」
口に出して、赤面する強。クールな外見に似合わず気弱で純情な彼は、白雪家の使用人として働き始めた当初から夢に淡い思いを抱いていた。身分違いの恋とは斯様も辛いものなのかと、本日何度目かの溜息をつき‥‥可憐の部屋の前で足を止める。開け放たれた扉、カサカサと何かを探しているような音‥‥強はへっぴり腰になりながらも箒を装備すると部屋の中に恐る恐る足を踏み入れた。
「ど、泥棒退散!」
そんな言葉で泥棒が退散するとは思えないが、強は目を瞑ると大声で叫んだ。目を瞑っている時点で危ない。
「ち、違います強さん!」
「あれ?レパード様‥‥どうしたんです、こんな所で?」
レパードが書類片手に慌てて顔を上げる。強が、泥棒でなかった事に安堵しつつも眉を顰める。視線がレパードの手に握られた書類へ向けられ‥‥
「だ、ダメですよレパード様!書類なんて持って行っちゃ!僕が可憐様に叱られます〜!」
そもそも、レパードは一度偽者が登場した事があるのだ。こんな場面を可憐に見られたら、それこそ雷‥‥それもとんでもなく大きいものが落ちるに決まっている。直撃したら、生命の危険だ。慌てて強がレパードを部屋の外に連れ出そうとした時、背後に凄まじい悪寒を感じて足を止めた。
「こんな所でナニしてんだ、2人とも」
にっこり。可憐の笑顔を見た強は、その場で卒倒した。
「肇君と勇君が、黒雨家の遠縁だったなんて‥‥」
「レパードのお手柄だ。流石だな」
「夢ちゃん、あんなに嬉しそうにしてたのに‥‥どうにか、出来ないのですか?」
「どうもこうも、できるわけねぇだろ。これは夢の問題だ。ガキ同士の問題に大人がしゃしゃり出て行くと、余計こじれる」
「でも‥‥」
「信也、言っとくけどな、アイツはお前が思ってるよりよっぽどプライドが高くて強い女なんだ。‥‥俺様に似て、な」
校門前でレパードを待っていた夢だったが、お嬢様育ちは待たされることに慣れていない。ほんの3分かそこら待っていただけで痺れを切らし、歩き出した。賑わう繁華街を抜け、細い路地に差し掛かった時、見知った背中を見つけて足を速めた。声をかけようかと息を軽く吸い込み‥‥
「大丈夫、任務は忘れていないさ。でも‥‥」
「でも、の先に俺を失望させるような言葉は来ないよな、勇?あんなお嬢様育ちの娘なんか、簡単だろう?お前が俺に任せてくれって言うから動いていないだけで、お前にその気がないのなら、俺が落としてやるさ」
「いや、大丈夫だ。オレが‥‥必ず、落としてみせるさ」
勇がはき捨てるように呟き、肇が満足そうに大きく頷くと勇の肩を叩いた。その話を傍で聞いていたレパードが思わず飛び出そうとした時、聞きなれた靴音が背後から響いた。パンと、軽い音。勇が打たれた頬を押さえながら目を丸くし、夢が続いて肇の頬も打つ。
「何を‥‥!」
「夢が‥‥夢が、本気で貴方達を相手にしているとでも思って?」
涙を堪えた睨みが、次第に崩れていく。高笑い。それも、狂ったような、高笑い‥‥
「あまりにタイミング良く近付いてきたものですから、黒雨家の差し金かもしれないと動向を探っていただけですわ!」
「夢さん、これは‥‥」
「その事も分かりましたから、もう夢には近付かないで下さいまし!帰りますわよレパード」
「‥‥言い訳はしない。でも、オレは本気でお前が‥‥」
「言い訳は、しないのではなくって?」
背を向けて歩き去る夢に、勇は唇を噛むと反対方向へと歩いて行く。その場に残った肇が任務失敗の報告を黒雨家へと入れ‥‥
「美しい薔薇には、貴様らのような害虫から身を守る棘があるということだ」
雨が降る。どんよりとした雲から零れ落ちる雫に、レパードは傘を取り出すと夢に差し出した。小刻みに震える背中は見ない事にして、ただただ、雨に濡れるアスファルトに視線を落とす。
雨が降る。肇は携帯をポケットにしまうと、今さっき分かれたばかりの気高い少女に想いを馳せた。
(白雪夢、か。もっと違った場面で出会えたならば‥‥)
雨が降る。その雫は頬を流れる己の涙と混じり合い、服を濡らす。
「オレは、大馬鹿者だな」
黒雨家からのコールに、勇は携帯を地面に叩きつけると踏み潰した。
雨が降る。悲しい涙を全て包み込み、流し去るかのように、冷たく、激しく、雨が降る‥‥