人形遊びアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/17〜10/20
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●本文
『私ノオ人形探シテクレマスカ?』
最近、巷で1通のメールが話題になっている。
『私ノオ人形探シテクレマスカ?』と書かれた本文の下には1つのURL・・・
そのサイトに飛ぶと、画面には2つの言葉が並んでいる。
『はい』か『いいえ』
「“はい”の方を押しちゃうと、知らない場所に連れて行かれて、お人形を探さなくちゃいけなくなるんだって!」
「えー、知らない場所ってどこ〜?」
「さー。だって、はいって押して戻ってきた人いないんだもん」
「だったら、どうして知らない場所に連れて行かれるって分かるのよー!」
「知らないよー!だって、そう言う噂なんだもん!」
『はい』の方に進むと、突然目の前が暗くなり、意識が消失する。
暫くの後に視界が開ければ、そこは見たこともないお屋敷の中。
まず最初に飛び込んでくるのは巨大なシャンデリア・・・そして、近くで誰かが起きる音・・・
この場所に飛ばされた“仲間”の目覚めを感じながら体を起こすと、目の前に佇む1人の少女。
青白い顔をして、真っ黒な長い髪を背にたらし、真っ赤な着物を着てこちらをジっと見ている。深い色をした瞳に生気はなく、憎しみとも悲しみとも分からぬ瞳の色をたたえている。
『千(せん)のお人形、探して?』
ゆっくりと言葉を紡ぎながら、少女・千が血の気のない唇をキュっと引き締める。
『千と、同じ格好したお人形。赤い着物に、長い髪の、お人形。探して。1時間、あげる。お人形、見つけてくれたら帰してあげる。でも、見つからなかったら・・・』
『千の、お人形になってくれるよね・・・?』
口の端から血が零れ、パタリと足元に落ちる。
真っ赤な唇は微笑をたたえ・・・クスリと、小さな笑い声をあげると千は消えた。
≪映画『人形遊び』キャスト募集≫
・千(せん)
このお屋敷で殺されてしまった女の子の霊です。
ずっと大事にしていたお人形をどこかに落としてしまい、探しています。
屋敷の中には、天井が落ちてくる部屋や1度入ったら出られなくなってしまう部屋など、危険な部屋が沢山あります。
千はお屋敷を訪れた人をそのような危険な場所に“遊び”として導きたがります。
千にとって、この場所を訪れた人は良い遊び相手・・・お人形でしかありません。
口調:『千』『お兄ちゃん・お姉ちゃん・貴方』
→基本的には単語でブツブツと切ったような喋り方です。
・この屋敷を訪れた人
年齢・性別、特に指定はありません。
千の人形を探すために屋敷内を走り回っていただきます。
皆さんで協力して人形を探すも、千の遊びから回避するために仲間割れを起こすも自由です。
●リプレイ本文
『千のお人形、見つけてくれるよね?』
山中 彰【Iris(fa4578)】は焦っていた。
「何で僕が・・・!」
妹との待ち合わせ中に入ったメールに載っていたURL。ほんの軽い気持ちで選択した『はい』の言葉の意味を彰は知らなかった。社会人である彼は、そんなオカルトじみた噂話を耳に入れるような環境にいなかった。
「自分の人形なんだろ!?自分で探せば良いじゃないか!」
そうは言っても、リミットまではもう少し。思い出すのは妹の藍子【檀(fa4579)】のことばかりだった。待ち合わせ場所に着いた時、現れない自分の事をどう思うのだろうか?・・・落としてしまった携帯電話には気付かないでくれ藍子・・・
待ち合わせ場所に行っても中々現れない兄を心配してかけた電話は丁度足元で鳴った。兄の携帯電話を開いてみれば、大学でも噂されている『人形探し』のメールが1通。まさかと思いつつ、藍子は『はい』を選択すると兄を追ってこの屋敷に足を踏み入れた。千【千架(fa4263)】の説明を聞き終わるや否や、大声で兄の名前を呼ぶ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃーん!」
走りにくいブーツを脱ぎ、耳元で揺れる邪魔なイヤリングを捨てる。
「・・・藍子!?」
長い廊下の端から声が聞こえ、彰がこちらに向かって走って来る。藍子が安堵の涙を流し・・・彰は愕然としながらも藍子の肩をそっと抱き締めた。
笹原 南【鷹野 瞳(fa2151)】は必死になって玄関からの脱出を試みていた。メールの噂は知っており、消去しようとして手違いで押してしまった『はい』のボタン。開く様子のない扉を蹴りつけ、1番近くの部屋に入ると手当たり次第に物を投げて人形を探し始める。
「あー!大会は明日だってのに、こんな所で油売ってる暇なんてないんだよ!」
物陰からその様子を見ていた千は、乱暴極まるその行動に不満を持っていた。ただ、物事には順序がある。もう直ぐで1人、お人形になるから・・・
『ちゃんと、お人形・・・探さないから』
プツリと、人が人形になった音を聞いた千はそう呟くと微笑を浮かべ、南の前へ姿を現した。
『そんなに帰りたいなら、貴方だけ、特別。お人形の場所、教えてあげる』
突然現れた千に驚きつつも、家に帰れると思った南は千の後に続いて食堂へと移動した。
「なんだ、聞いてたより良いトコあるじゃん。サンキュウな」
『ココ』
「へー、こんな所に人形隠してあるのか、変わってるなぁ、千」
整然と並ぶ食器類を見詰めながら南がそう言って千を振り返った時・・・スパっと、目の前が真っ赤に染まった。何が起きたのか分からずに混乱する視界に、自分の胴体が映った。手足がバラバラに飛び散り・・・南は、自分の首が落ちたことを知らないままその場に崩れ落ちた。
『千が、知ってるわけない。知ってれば、貴方なんかに頼まない』
佳南 澪【カナン 澪野(fa3319)】は微かに聞こえて来るピアノの旋律に耳を傾けながら、自分が居る状況を把握しようと周囲を見渡した。
オカルトサイトでMLに参加していた澪は、届いたメールに好奇心をかきたてられて『はい』の選択をするとこの屋敷に飛ばされた。千からの説明も、屋敷の状況も事前に仕入れていた知識の通りだが・・・
「このピアノ、どこから?」
哀愁を含んだ美しい旋律に、澪は導かれるように1つの扉を押し開けた。
「誰かいるの?」
美しい曲線を誇るグランドピアノを前に、秋月 怜【相沢 セナ(fa2478)】は澪の方を見ようともせずにひたすらピアノを奏でていた。その表情には一切の感情は無く、指だけが複雑な動きをみせていた。
「あの・・・」
澪が室内に歩を進め・・・ピタリと音を止めた怜が、鍵盤に落としていた視線を上げ、心此処に在らずと言った平坦な口調で言葉を紡ぎ始める。
「可哀想な千。全ての元凶は、あの子ではないのに・・・」
「え?」
「いつになったら、解放されるのでしょうか。いつになったら、この曲が届くのでしょうか。家族が幸せだった頃に聞いたこの曲が、いつになったら・・・」
「それは・・・」
澪の問いかけを遮るように、怜は再び美しい旋律を奏で始めた。物悲しいその曲に、澪の思考がだんだんとおかしくなっていく。・・・長居をしてはいけない。そう直感で感じた澪が慌ててピアノ部屋を後にし・・・
「また・・・1人・・・」
屋敷の中を走り回り、澪は1つの部屋の前で足を止めるとそっと扉を開いた。無人のその部屋は綺麗に整頓されており、窓際にポツリと置かれた小さなデスクの上に1冊のノートが乗っていた。それを手に取り、パラリとページを捲る。
“・・・で、だんだんと・・・いく。全ての元凶・・・”
“も、ない・・・やっぱり・・・人形が原因”
「人形が原因?」
ポツリと言葉を零す。ノートに書かれた文字と、怜が言っていた言葉がピタリと合わさる。・・・人形が、原因・・・?
澪は慌ててポケットに手を入れると携帯電話を引っ張り出した。親指をボタンにかけ・・・突然天井から細い糸が無数に下りて来て、澪の華奢な体を絡め取ると天井へと引き上げていく。体が軋む音を聞きながら、澪は必死になって携帯に文字を打ち込んだ。
『人形が』
そこまで打ち終わった時、首にかかっていた糸がグっと絞まり・・・澪は気絶すると手から携帯を落とした。気絶した澪の首を絞めあげていた糸は、その体から完全に力が抜けるまで決して力を緩める事は無かった。
千はその様子を最後まで見届けると、もう動かないお人形に向かって無垢な笑顔を向けた。
『今から、千のお人形・・・ね?』
藍子はもう動かなくなってしまった彰の傍で泣きじゃくっていた。
『お人形、見つけられなかった。仕方ないの』
ふっと現れた千が、微笑みながらそう言い・・・藍子はカっとなると立ち上がって右手を振り上げた。
「お兄ちゃんを返してっ!!」
千の丁度頬の部分に振り下ろされた手は、スカっと宙を切った。勢いをつけすぎたために藍子がその場に転び・・・行き場のない怒りが涙となって零れ落ちる。目の前で時間切れによって“人形”になってしまった彰の最後の顔が頭から離れない。
『もう、終わり?・・・つまんない』
向かってこなくなった藍子に不満の言葉を向けながらも、新しいお人形の到着に千がすっとその場を後にする。遊んでくれなくなった彼女にもう用はない。
「お兄ちゃん、おにー・・・ちゃん」
彰に折り重なるようにして泣きじゃくりながら、藍子は“人形”になった。
朝日奈 ヨウ【神代アゲハ(fa2475)】は自分が置かれている状況に戸惑いを隠せなかった。この噂を上司命令で追っていた・・・けれど、所詮は噂。本当にあるわけがないと思っていたのだが・・・メールに載っていたURL、『はい』を選べば、屋敷の中に飛ばされていた。
噂通り、千と言う少女の幽霊にも会った。つまりは、この後も千の言葉通り、人形を見つけられなければ・・・。ヨウは屋敷の中を足早に歩き始めた。そして、途中で何体かの“人形”を見つけた。玄関から伸びる廊下の先、小さなホールのような場所に折り重なって倒れていた兄妹の人形、キッチンでバラバラにされていた1体の人形・・・。1番驚いたのは、携帯電話が落ちていた部屋だ。落ちた携帯を拾い上げ、何の気なしに頭上を見上げれば・・・
「人形・・・か」
ヨウはそう呟くと、散策途中で見つけた1つの部屋の前に立った。扉を開けて少し確認しただけのこの部屋には、数え切れないほどの人形が積まれていた。それが本当に人形なのか、元は人間だったのか分からなかったため、用心して入らなかったのだが・・・後はここしか考えられない。ヨウは意を決すると部屋の中に入り、人形の山を1つ1つ見ていく。赤い着物・・・赤い着物・・・
「これか?」
黒い髪に赤い着物の人形が、ジっとこちらを見ている。きっとコレだ。そう思い手を伸ばし・・・不意に人形がニコリと微笑んだ。
『はずれ。千じゃない。お人形、見つけて』
「なっ・・・」
人形だと思ったソレは千本人で・・・千が微笑む中、人形達が扉を塞ぎ、ヨウに向かって襲い掛かってくる・・・。
百【桃音(fa4619)】は人形部屋に入って行く姉の後姿を見つけ、走り出した。ずっと捜していた相手・・・悪霊に邪魔をされて傍にさえ寄れなかった相手。
「お姉ちゃんっ!!モモだよっ!千お姉ちゃんっ!」
突然閉まった扉を叩きながらそう叫ぶが、扉は無情にも開く様子はない。頬を大粒の涙が流れ落ちる。扉を叩く手に力が篭り・・・
『ウルサイ』
突然聞こえた声に百が振り返った瞬間、百の体はまったく別の部屋に飛ばされていた。いつもそう。お姉ちゃんに近づこうとする度に、邪魔をする・・・
「おねぇちゃ・・・。・・・お人形じゃなくて、モモの事、見つけて欲しいのに・・・」
あの子のせいで、お姉ちゃんはモモの事を忘れてしまった。
なんとか立ち上がり、窓の向こうに見える人形部屋へと視線を向ける。
「本当の“お人形”はお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんの傍に、いつも“あの子”はいるのに・・・。どうしたら、お姉ちゃんもみんなも、ここから出られるの・・・?」
千の背後で、千のお人形が笑う。
・・・違う。千がお人形?千のお人形のお人形?
『私ノオ人形探シテクレマスカ?』
『はい』
―――――ねぇ、結局、誰がお人形だったの・・・?