繋がる殺意 消失アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
3.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/21〜10/24
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●本文
あの子の様子がおかしいことは気付いていた。
でも・・・何か、複雑な悩みを抱えているんだろうくらいにしか思っていなかった。
だからこそ、彼女が送ってきたメールの意味は分からなかった。
『うしろにいるよ』
そのメールを最後に、彼女の行方は分からなくなってしまった。
うしろにいるよ・・・後ろに、いるよ・・・?
彼女の背後には、何かいたのだろうか?
・・・それとも・・・
明るいアップテンポの曲とともに、着信ランプが輝く。
谷内 菫(やち・すみれ)は折りたたみ式の携帯電話を開くとメールボックスに届いた1通のメールを開いた。
宛名は登録されていた友達かららしく、名前が表示されている。
菫はチラリと名前を見ただけで本文に視線を落とした。
『今日から1週間の間に、このメールをお友達に回してください』
「なんだ、チェーンメールか・・・」
『後ろの人が貴方に近づく前に、このメールを**人の**さんに回してください』
「・・・後ろの人・・・?」
『この苗字以外の人に回してはいけません』
『また、1週間以内に**人の**さんに回せなかった場合・・・』
宛名を確認する。そこに表示されていたのは、絶対に有り得ない子の名前だった。
・・・だって、携帯は解約したはずでしょう?
ヒタっと、背後で足音がした気がした・・・。
≪映画『繋がる殺意 消失』募集キャスト≫
*谷内 菫
ごく普通の女子高生
最近親友の少女を亡くしており、落ち込み気味
明るく頭も良いが、少々人見知りをする
*瀬戸内 閏(せとうち・じゅん)
都内で怪事件がらみの探偵をしているらしいが・・・
見た目は優しそうなお兄さん風
自分の気に入った事件以外は調査をしない主義
菫の依頼で今回のチェーンメールの調査に乗り出すが・・・?
*その他
・菫の友達
・調査中に出会う人
●リプレイ本文
このメールを誰が何の目的で広めたのかは分かりません
ただ1つ言える事は、俺は彼女に嘘をつきました
そして、貴方にも‥‥
目の前に座る依頼人の少女・菫【姫乃 舞(fa0634)】とその付き添いで来た谷内 ユカ【田中由香子(fa3819)】、探偵に憧れていると言う菫の同級生・渓内 統也【斑鳩・透馬(fa4348)】の顔を見ながら、閏【西村 哲也(fa4002)】が助手の藤野 怜央【ミッシェル(fa4658)】にお茶の用意を求める。
「ただのチェンメかも知れないんですけど、気になってしまって。大体、あの子からメールなんて届くはず無いんです」
メールを受け取って以来、背後に人気を感じるようになった。菫は居ても立ってもいられなくなり、探偵として名の知れた閏の元を訪れていた。
「もしかして、様子がおかしい事に気付いていながら何もしなかった私を恨んで?」
「そうだとしても、そんな遠回しな事するかな?大体、彼女が亡くなった原因がチェンメだとは限らないでしょ?」
紅茶のカップに息を吹きかけながら閏がそう言い、一生懸命何かの書類を作っている怜央にチラリと視線を向ける。
「まぁ、チェンメの内容も気になるし、その手の類なら少し調べれば出てくるだろうから」
「僕が調べるんですか!?」
「頼りにしてるよ」
谷内 隆久【水沢 鷹弘(fa3831)】はネットの掲示板に書き込まれていた呼びかけに応じ、洒落た喫茶店に来ていた。
「谷内隆久だ。仕事途中なんで手短に頼む」
「お忙しいところわざわざ有難う御座います」
閏の言葉に軽く頷き、珈琲を注文するとストローでアイスティーをかき混ぜていた菫に携帯の画面を見せる。
「このメールか?」
菫が隆久から携帯を受け取り、閏とユカ、透馬がその手元を覗き込む。
今日から1週間の間に、このメールをお友達に回してください
後ろの人が貴方に近づく前に、このメールを5人の谷内さんに回してください
この苗字以外の人に回してはいけません
また、1週間以内に5人の谷内さんに回せなかった場合
「丁度1週間前に届いたものだ。文章が途中で途切れているが、どうせ『貴方は死にます』とでも続くんだろうな。単なる悪戯だろう」
「これ、谷内さんから回ってきたんですよね?」
「あぁ。それが?」
閏が考え込むように視線を宙に彷徨わせ、隆久が腕時計に目を落とすと鞄から財布を出し、テーブルの上に小銭を置く。
「仕事途中で抜けてきたものでな」
「有難う御座いました」
何かを言いたそうに隆久が口を開き、軽く首を振った後で何も言わずに喫茶店を後にする。
「おかしいな‥‥」
閏がそう呟き、菫がユカと顔を見合わせて首を傾げる。
「そう言えば菫さん。その、亡くなったお友達のご家族には会えますか?」
「どうだろう。確か奈々には歳の離れたお兄さんがいたはずですけれど」
「奈々さんの家まで案内していただけませんか?」
「良いですけれど‥‥」
菫が立ち上がり、閏がポケットから財布を取り出してレジへと向かった。
谷内 勇【Iris(fa4578)】は突然の訪問者に驚きながらも家に招きいれた。
「菫さんとユカさんだね。奈々がよく話をしていたよ。大好きな子達だって」
深い悲しみの色をのぞかせながら勇がそう呟き、膝の上で組んだ手の上に視線を落とす。
「『何でもないよ』って言うから、自分から言ってくれるのを待ってたんだけど。こんなことになるなんて」
その言葉に、菫の脳裏にふっと谷内 奈々【桐沢カナ(fa1077)】の明るい笑顔が浮かび、すぐにその笑顔が翳っていく。
「奈々、私にも言ってました。『何でもないの、いいから菫は気にしないで』って‥‥」
「そう言えば、携帯を見て沈んでいる様子だった」
勇の言葉に閏と菫、そしてユカが顔を見合わせ‥‥
「奈々さんの携帯電話はまだお持ちでしょうか?」
「えぇ、解約はしましたが」
「見せていただけませんか?」
勇が軽く頷き2階からピンク色の携帯電話を取ってくると閏に手渡す。携帯を開き、勇の了承を得てからメールボックスを開く。そして、1通のメールを見つけると閏の目が見開かれた。
翌朝のトップニュースは、郊外で見つかった男性の他殺体だった。被害者の名前は『谷内隆久』
「谷内さんが‥‥やっぱり、このメールが‥‥いやぁっ!次は私の番なの!?」
「落ち着いて菫!そうだ、私のところにも送ってみない?漢字は同じなんだし」
「そうよ。メールの通り1週間以内に5人に‥‥駄目、そんな事出来ない!」
菫がユカの言葉に首を振り、その光景を見守っていた閏の携帯が振動する。
「はい、勇さんですよね?」
「えぇ。今日は少し報告が。俺のところにも例のメールが届いたんです」
「本当ですか!?文面は‥‥」
「奈々や菫さんの所に届いていたものと同じです」
「そうですか。やはり‥‥」
二言三言言葉を交わして携帯を切ると、横から怜央が閏の袖を引っ張った。
「あの、実は昨日ネットで類似の事件を探していて、1つ気になる事件があったんです」
怜央が新聞記事をそのままプリントアウトした紙を手渡す。『イジメ、大量の不幸のメールを送られ失踪か?』そんな見出しが躍る記事の中、一際目をひきつけたのはいなくなった少年の名前だった。
「谷内‥‥」
閏が何かを言いかけて口を閉ざし、ややあってから怜央の肩を叩いた。
「もうじき、1つの解決を見せるだろうね。この事件は」
行方不明だった少年の遺体は、彼の携帯電話の近くに横たわっていた。それは見ようによっては『携帯の後ろ』であり、菫はその事実に納得すると深く頷いた。
「亡くなった男の子の霊が、寂しがって奈々を連れて行ってしまったのかな。奈々は優しい子だったから」
「そうかも知れないね」
学校帰りの菫を家まで送り届けた後で、閏は勇に1通のメールを出した。
「あのメールはどう言う事なんですか?事件は解決したじゃないんですか?」
「確かに1つの解決をしました。でも、どうしても分からないんです。もし亡くなった少年の怨霊が原因だとして、何故文字に拘ったのでしょうか?普通、人は名前を覚える時音から覚えるはずです。谷内と書かれて、大多数の人は『たにうち』と読むでしょう。でも、菫さんは『やち』です」
勇が黙って閏の次の言葉を待つ。
「菫さんよりも『たにうち』であるユカさんの方に送りそうですが。何故このメールを5人もの人に回さねばならなかったのか。そして、何故谷内隆久さんを惨殺しなくてはならなかったのか、不思議です。俺が思うに、隆久さんはこの事件とは関係なかったんではないでしょうか。メールの本文からして、彼のところに来たものは内容が明確でした。‥‥勇さんの所に来たメールの発信元は奈々さんでしたよね?」
「はい」
「勇さんの所に来たメールも、菫さんのところに来たメールも『有り得ない人』からのメールです。でも、隆久さんの所に来たメールは違う」
「でも、それなら一体誰が‥‥」
「‥‥思うに、消えていた部分は最初から存在しなかったんですよ。つまり、何人の誰に回すのかが分からないメールなんです。でも、ただの不幸のメールと言うわけではないんです。現に、奈々さんは‥‥」
「でも、菫さんはメールの内容に従っていないけれど‥‥生きている」
「このメールは、1週間後と言う時間指定がある。そして、奈々さんは1週間後の日、正門前で菫さんとユカさんと別れてから行方不明になって遺体で見つかった」
「えぇ、そうです」
「菫さんは1週間後の日、うちに来ました。そして、俺が家まで送って行きました。きっとその後は家を出ていないのでしょう。分かりますか、2人の違いが。奈々さんは、1人になってしまったから命を落としてしまったのではないのでしょうか?」
「え?」
「勇さん、貴方のところにメールが来て今日で丁度1週間後ですね。会社帰りのお疲れのところをわざわざ引き止めてこうしてお話をしている理由が、分かりますか?」
閏は不敵な笑顔を浮かべると、壁にかかっている時計を見上げた。
「日付が変わってしまいますね。明日もお仕事があるんですよね?」
「えぇ」
「考えてもみてください。同じ苗字の人間が5人も身近にいるなんて中々ない。チェンメの目的は広まることです。だからこそ、無理な指定はしない。途切れてしまうからです」
「このメールには何か、不思議な力があるのでしょうか」
「詳しいことは分かりません。でも、1つ言える事は菫さんも貴方も明日があると、そう言うことです」
勇の目の前に奈々が現れ、可愛らしく笑うと手を振って行ってしまう‥‥そんな幻を見た。
「勇さん、奈々さんのお友達に『谷内圭吾』と言う方はいますか?」
「初めて聞く名前ですが?」
「そうですか。奈々さんの受け取ったメールの発信者が彼だったんです。こちらでも少し探してみたんですが、少なくとも奈々さんの周囲にそんな名前の人はいなかったんですよ」
「それは一体誰なんですか?どうして奈々と‥‥」
「これもある意味、有り得ないメールなんでしょうかね?」
カチリと日付が変わる音を聞き、閏は席を立つと勘定を済ませてから店を出た。その瞬間、ポケットに入れていた携帯が振動し、メール有の文字が浮かび上がる。
携帯を開け、メールボックスを調べれば『瀬戸内麗』と言う人物から1通のメールが届いていた。
「‥‥もう、生き残る術は分かっているんですから」