30 seconds CM pureアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
11/10〜11/12
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●本文
可愛らしいオレンジ色の口紅を指先で弄びながら、ユナはゆっくりと口を開いた。
「私がイメージガールをしている“Sweet Paradise”が出している口紅の第3弾目、ピュアオレンジのCM依頼が来たの」
Sweet Paradiseが出した3つの口紅“小悪魔ローズ”“セクシールージュ”“ピュアオレンジ”
今回は1番最後、ピュアオレンジのCM依頼だった。
控え目なオレンジ色の口紅はあまり色の目立たないタイプで、10代の女性をターゲット層に指定している。
「今回、先方から大まかなイメージが伝えられたんだけれど‥‥」
そこまで言って、口紅をコロリと転がすとボソリと低い声で言葉を紡いだ。
「初恋の、ピュアさ、甘酸っぱさが、コンセプト、だ、そーデス」
ブツブツと単語で言葉を切りながらそう言うと、必要事項が書かれた紙を配り始めた。
*以下のことをよく守り期日までにCM案を考えてくること
・曲は25秒程度(30秒CMのうち5秒はブランド名や商品名などを伝えるために無音に)
・ブランド・商品名宣伝のための無音はCMの最後の5秒
・CM内容は詳細なイメージ案を紙に書いて提出(これも25秒程度)
・CMにはユナおよび自分(歌い手・演奏者)も登場すること
・CM内容は、歌詞とリンクさせて『〜のフレーズの時に〜する』と言う書き方でもOK
・また、歌詞とはリンクさせずに個別に書いてもOK
・当日は実際に歌ってもらうので、バックバンドがいない場合は事前にテープを提出すること
→バックバンドはこちらでは用意しません
・当日の演出は一切不要。歌に専念すること
「CMに採用する曲は1つ。今回、先方から出されたイメージがあるから気をつけてくだサイ」
選考ポイント
・曲・CM案とブランドのイメージが合っているかどうか
・25秒以内におさまる内容かどうか
・歌詞内容の明確性(歌詞が伝えたい内容)
・曲・CM案とユナのイメージが合っているかどうか
*“ピュアオレンジ”と言うイメージに合っているかどうか
「曲名があれば教えてくだサイ。あと、口紅の名前案も募集中デス。商品名はグループ関係なく個人で1点だしてもらえると嬉しいデス。どうしてその名前をつけたのかの理由も添えてくださると審査しやすいデス」
口調がカタコトになっているが、そこはあえてツッコんではいけないのだろう。
まして、ユナは初恋がまだなんじゃ‥‥などと想像を働かせてはいけない。
「ターゲット層の指定があるので、CM内容はその年齢向けのものをお願いしマス。あと、もしグループを組むならグループ名を教えてくだサイ。CMの右下に小さく“ユナWith”の後に名前が出マス」
チョコンと頭を下げた後で、目を伏せるとボソリと低い声で言葉を紡いだ。
「初恋って、なんデスか‥‥」
どうやら事態はかなり深刻なようだ。
●リプレイ本文
○
視線を不自然に揺らしながら、ユナがカタコトの言葉を紡ぐ。
「本日は、宜しくお願いしマス」
「お久しぶりです。どうぞ宜しゅうに」
文月 舵(fa2899)が椅子から立ち上がり、ユナに頭を下げるとそっとその顔を窺う。
「ユナさん、今回もどーぞヨロシク!って、あれ?俺の言葉遣いうつった?」
椿(fa2495)がきょとんとした顔で首を傾げる。
「そんなコト、ないデスヨー」
明らかにおかしな口調に、冬織(fa2993)が顔を覗き込みながら眉を寄せる。
「大丈夫かえ?」
「だ、大丈夫、デス。マス‥‥」
「な、何はともあれ此度もよしなにのう、ユナ殿」
プシュンと、変な音でも聞こえてきそうなユナの口調に冬織がチラリと椿に視線を向ける。一体何があったと言うのだろうか‥‥
●姫乃 舞(fa0634)『予感』
ピアノとフルートの透き通った旋律が、ミドルテンポの優しく可愛らしいメロディラインを紡ぐ。舞は両手でマイクを握ると、すぅっと息を吸い込んだ後に歌い始めた。
見てるだけでいいって 思ってた
けど
今日も 明日も あさっても
ずっと隣に いたいから
どうか届いて
「あなたが すきです」
○蜜月【棗逢歌(fa2161)&仁和 環】
ピアノとアコースティックギターが軽快でリズミカルなメロディを紡ぐ。明るく弾むような旋律は、恋を知った時の弾む鼓動をイメージしていた。恋する女の子への応援歌、そんな気持ちを込めて逢歌は精一杯の気持ちを込めて歌った。
言葉を編めないこのくちびるに
ほんの少しだけ勇気の魔法
背伸びだなんて笑わないで?
ありったけの好きをつめこんで
届け、君へ、この笑顔
●Stagione【椿&冬織】『Game of Chance』
前奏無しの、ミドルテンポよりもやや早いくらいの速さで、明るく軽やかなピアノの旋律が響く。椿が奏でるピアノだけのシンプルな伴奏だったが、ほんのりジャズテイストも加えた凝った曲だった。冬織が出だしは控え目に、中盤から盛り上げるように感情の起伏をつけて歌い出す。
唇におまじない
いつもと違う私 気付いてくれる?
一歩踏み出す ドキドキの賭け
私の勝ちなら伝えるわ
『好きです‥‥』
○文月 舵『パルス』
静かなリズムを刻む低音と、メロディアスな主旋律。変拍子で紡がれるキーボードの曲は、後半部分に盛り上がりを見せた。
太陽にまけない笑顔
目が合った瞬間 躍りだすパルス
それはありふれたトクベツ
でもきっと同じじゃない 私だけの
●黒影 美湖(fa3594)『geniality』
事前に提出されたテープから、アップテンポなノリの良い旋律が響く。目の前のマイクスタンドに手をかけると、美湖が透明な声で歌い始めた。
you‘re just so cool
ねえ 振り向いてみてよ
早なるトキメキ 唇の温もり
貴方の胸に飛び込み 伝えたい
私らしい私を 1つしかない笑顔で
○慧(fa4790)『sentimental citrus』
アコースティックギターとハーモニカが主旋律を紡ぎ出す曲は明るく爽やかで、その曲に乗せるように、慧はどこか切ない響きを含みながら歌い上げた。
不思議だね 君の笑顔ひとつで
みずみずしく世界が変わる
オレンジに透き通る陽(ひ)の光
きらきらした横顔が まぶしいよ
●堕姫 ルキ(fa4852)『黄昏ノ夢』
テンポの良い曲調は、何処か切ない雰囲気を帯びたポップスで、心の中の混濁とした感情を吐き出すようにして歌うルキの声は真に迫っていた。
今も先も変わらない、友達だって‥‥それなのに
不意の刹那、現に見ゆる‥‥黄昏ノ夢‥‥
意味も理由も分からない、想いが胸を掻き毟る
夕焼けの貴女、焼きついた影が‥‥離れない‥‥
○
「CM案と合わせて考えた結果、今回は慧さんの案を採用しようと思いマス。それと、店頭用CMは2つ‥‥蜜月のお2人のCM案と、Stagioneのお2人の案を採用したいと思いマス。商品名は、姫乃さんの“Marmalade Dream”を採用したいと思いマス。オレンジ色の口紅と甘酸っぱい初恋のイメージにピッタリだと、思いマス」
未だにデスマス口調でぎこちなくそう言うと、一つだけ気持ちを切り替えるように深呼吸をする。
「姫乃さんの案は、初恋の様子をよく表しているのだけれど、場面転換が多くて少しごちゃっとした雰囲気になっちゃってるかなって。舵さんのCM案はとても画が綺麗なんだけれど、初恋のイメージとしては少し弱いかなって。美湖さんの案もやっぱり、初恋のイメージとしては弱いかな。ルキさんの案はしっとりしていて素敵なんだけれど、見る人を選んじゃうかなって」
そこまで言うと、ユナの視線が慧と逢歌、椿と冬織に向けられる。
「慧さんの案はとてもストレートな10代の初恋のイメージで、大抵の人はこのCMで初恋を連想すると思うの。分かりやすいCMで凄く良いと思うわ。Stagioneのお2人の案は、思わず微笑ましく思ってしまう、色々な世代の人に共感を与える案だと思うの。思わず足を止めたくなるCMって言うのかしら。感情の起伏がよく描かれていると思うの。蜜月のお2人のCMは、明るくてとても魅力的。CM撮影の日が楽しみだなって。棗さん、仁和さんに宜しく言っておいてくださいね?」
ユナの言葉に頷く逢歌。
口調の戻ったユナに、冬織と椿、舵が視線を合わせて安堵の溜息をつく。どうやら一時的なものだったらしい‥‥
「初恋かぁ。いつのコトだったっけかな‥‥忘れちゃったよ☆」
不意にルキがそう言葉を紡ぎ、冬織が昔を懐かしむように目を細める。
「私はまだ、お芝居の中での疑似体験でしか経験した事が無いのですが‥‥」
舞がそう呟き、舵がその背中をポンと軽く叩く。
「ふふ。気持ちではっきり分かることなんて僅かですよ。気が付いたら好きやなあって、うちはそうでした」
「初恋は‥‥わしは既に忘れてしもうたが、好いたものを目前にした様なれば、ほら、
斯様な感じじゃろ」
冬織がそう言って、椿の目の前にお菓子をぶらさげる。椿の目がキラリと光り、頬が朱色に染まる。
「た、食べてもいいの?」
「椿さんの初恋はお菓子だったんですか?」
「ゆ‥‥ユナさん、それは違うと思いますけど‥‥」
とんちんかんなユナの発言に慧が思わず口を挟む。キョトンとした表情をしたユナが、なにかを思い出したように表情を曇らせ、再びのデスマス口調で、ポツリと低い声で言葉を紡ぐ。
「私、好きな人、今までいなかったんデス。演技、上手く出来る自信がないのデス」
「好きな人いないって、つまり初恋もまだってこと?」
ルキの言葉に頷くユナ。目を伏せて、どうしたら良いのかわからないといった表情で俯くユナの肩をそっと叩くと、冬織が柔らかい笑顔を向ける。
「相手を己が好物とでも思うて演じるが良かろう。ほら、あんな風に」
その指先にはお菓子を手に入れてホクホク顔の椿がおり、ユナがパっと顔を上げると慧と逢歌、椿を順番に指さして命名していく。
「慧さんは葡萄!逢歌さんは苺!椿さんは林檎!」
「そうそう、その意気じゃ」
「ユナさん、それはなんや、だいぶ違うと‥‥」
「俺も林檎好きです!」
舵が変な方向に向かっている話を訂正しようとして‥‥椿が突然挙手するとユナと林檎トークを交わし始める。苺と言われても、どうしたら良いのか分からない逢歌が、同じように葡萄と言われた慧をチラリと見やる。
「ユナさんにはリラックスして撮影に臨んで欲しいから、葡萄でも全然構わないよ?緊張しちゃってたら、せっかくの可愛い顔が台無しだし、ね?」
天然タラシの慧がそう言いながらユナに輝くばかりの笑顔を向け‥‥その瞬間、ユナが顔を真っ赤にして椿の後ろに隠れた。
「葡萄さんが!苺さんが!林檎さんがっ!!」
「ユナさん、落ち着いてください!」
取り乱したユナに美湖が声をかけ、舵と舞もそれに加わる。どうしたら良いのか分からない男性陣の隣でルキがクスリと声を上げて微笑み、冬織がふむと小さく頷くと頭の中でユナの情報を付け足す。
『ユナ:恋愛関係はかなり苦手』
●ユナ with 慧
『不思議だね 君の笑顔ひとつで』
スコートを穿いた足を伸ばし、疲れたようにベンチに座っているユナ。隣に置いたテニスラケットに視線を移し、深呼吸をする。そんなユナの背後にそっと近づく部活の先輩(慧)。無防備な背後から、冷えたペットボトルをその頬に当てる。驚いて顔を上げるユナに、優しい笑顔を向ける慧。
『みずみずしく世界が変わる』
頬を赤く染めたユナがまごついているうちに、慧がペットボトルを手渡して去って行ってしまう。ユナが貰ったペットボトルを大事そうに胸に抱き、去って行く慧の背中を見詰めながら、肩を落とす。
『オレンジに透き通る陽(ひ)の光』
ふと何かを思い出したようにポケットを探り、口紅を取り出すとひと塗り淡いオレンジ色を唇に重ねる。落ち込んだように伏せていた視線を上げて、淡い色の唇を噛み締めると笑みを浮かべる。口紅とペットボトルをラケットの隣に置き、すっと立ち上がる。
『きらきらした横顔が まぶしいよ』
遠くに立つ慧に向かって走って行くユナ。
ベンチの上に置き去りにされた口紅にオレンジ色の夕陽が当たる‥‥
『恋を知った貴方へ』
『Sweet Paradise“ Marmalade Dream”』
『きっと届くよ、その気持ち‥‥』