30 seconds CM sadアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/26〜11/28
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●本文
テーブルの上に乗ったシャンプーのポンプを無駄にプッシュすると、ユナが深い溜息をついた。
中身の入っていないそこから液が垂れることは無かったが、その無意味な動きにその場に居た全員が首を傾げる。
「私がイメージガールをしている“Sweet Paradise”が今度、気分に合わせて使う、シャンプー&リンスって言うのを出すらしいの」
わざわざ気分に合わせてシャンプーとリンスなんか変えてられないわよねーと、否定的な事を言うユナの表情はどこか虚ろだった。
「それで、貴方達に30秒のCMを作って欲しいの」
今回のシャンプー&リンスは“哀しい時”に使って欲しい香り。
甘く柔らかい香りは、まるで傷ついた心を慰めてくれるかのよう‥‥と、企画書には書かれている。
「それでもって、先方が出してきたCM案の基があるのデスが‥‥」
ユナの口調がカタコトになる。
視線はどこか遠くに注がれ、口元には自嘲気味な諦めを含んだ笑みが宿る。
「失恋と新しい恋、この2つを基にして作って欲しい、そーデス」
実はユナ、恋愛関係はまったくダメなのだ。
これは会社の陰謀デスか?と、ブツブツ呟きながらも必要事項の書かれた紙を配り始める。
*以下のことをよく守り期日までにCM案を考えてくること
・曲は25秒程度(30秒CMのうち5秒はブランド名や商品名などを伝えるために無音に)
・ブランド・商品名宣伝のための無音はCMの最後の5秒
・CM内容は詳細なイメージ案を紙に書いて提出(これも25秒程度)
・CMにはユナおよび自分(歌い手・演奏者)も登場すること
・CM内容は、歌詞とリンクさせて『〜のフレーズの時に〜する』と言う書き方でもOK
・また、歌詞とはリンクさせずに個別に書いてもOK
・当日は実際に歌ってもらうので、バックバンドがいない場合は事前にテープを提出すること
→バックバンドはこちらでは用意しません
・当日の演出は一切不要。歌に専念すること
「CMに採用する曲は1つデス。今回、CM案の基を先方から出されているので気をつけてくだサイ」
選考ポイント
・曲・CM案とブランドのイメージが合っているかどうか
・25秒以内におさまる内容かどうか
・歌詞内容の明確性(歌詞が伝えたい内容)
・曲・CM案とユナのイメージが合っているかどうか
*“失恋・新しい恋”と言う2つのイメージが入っているかどうか
「曲名があれば教えてくだサイ。あと、シャンプーとリンスの名前案も募集中デス。商品名はグループ関係なく個人で1点だしてもらえると嬉しいデス。どうしてその名前をつけたのかの理由も添えてくださると審査しやすいデス」
凄く遠くを見ている瞳は、なんだかコレこそ“哀しい時”と言う感じだ。
「CMの内容で、シャンプーシーンの有無はお任せしますが、時間的に厳しいかも知れないのでそこはカットでも全然OKデス」
むしろ無い方が自分としては助かるかも知れないとコソっと付け加えるその頬は、朱色に染まっている。
「ターゲット層は明確には決まってませんが、10代〜20代の女性と考えてOKです。もしグループを組むなら、グループ名を教えてください。CMの右下に小さく“ユナWith”の後に名前が出マス」
ユナが再びポンプを無駄にプッシュし始める。
‥‥その行動に何か意味があるのか。
「はぁ。失恋と新しい恋、かぁ。難しいなぁ‥‥」
憂鬱そうな表情でそう言うと、シャンプーのボトルをテーブルの上に転がした。
●リプレイ本文
○
どんよりと虚ろな瞳で俯くユナに、椿(fa2495)と冬織(fa2993)が視線を合わせ、軽く頷く。
「ユナ殿、やはり此度は壊れ気味かえ‥‥」
その呟きを聞いた悠奈(fa2726)が、久しぶりに会ったユナの変わりように首を傾げる。冬織がそんな悠奈に解説を入れ‥‥
「恋が苦手って、なんだか可愛いなぁ♪」
悠奈の言葉に恥ずかしそうに頬を染めながら更に俯くユナ。
「そうだ、ユナさんに葡萄ジャムのお土産持って来たよ。って、あれ?何かユナさん元気ない?」
慧(fa4790)が首を傾げながらユナの顔を覗き込む。驚いたユナが勢い良く椅子から立ち上がり、後ろにひっくり返りそうになったところをアレクサンドル(fa4557)が腕を掴んで引き止める。
「わっ!ご、ゴメンナサイ!」
「ユナ嬢、お初にお目にかかります」
ユナの手をそっと放し、帽子を胸に一礼する。帽子の中から純白の薔薇を華麗に取り出すとキョトンとしたままのユナに差し出す。
「その美しい瞳の陰りがおいたわしい。この花で貴女の心が少しでも晴れますように」
ユナが顔を真っ赤にしてワタワタと無意味な行動を取り、暫くしてから大人しく椅子に座ると小さな声でそれぞれに準備を促した。
●林檎(fa0484)『シャボン』
バラード調のピアノ曲は少しずつ音階が上がって行き、最後は子守唄のようなゆっくりとした優しい旋律に変わる。林檎がピアノの前に腰かけ、すっと息を吸い込むと歌を紡ぎ上げる。
気持ち 積み重ねながら
少しずつ 膨らませたけれど
はじけた 空を知る前に
次へ続く欠片 飛ばし
今は休もう
○蜜月【仁和 環(fa0597)】『Smile Again』
マイナーコードの前奏は、失恋をイメージに切ない響きを奏でた。アコギを手にした環がアクセントの音を入れ、曲調が一転する。メジャーコードで軽快な曲調に乗せる歌は、歌詞に重ねた想いを精一杯に込めて‥‥
いつも振り返った
幸せな香のキミ 眩しくて
キミに伝える恋の歌 突然だって笑っていいよ
キミの笑顔 見たいから
●姫乃 舞(fa0634)『優しい風』
ストリングスを重ねたスローテンポのしっとりとした優しいバラード曲に乗せる舞の歌声は、穏やかで甘い響きを持っていた。
哀しい闇に 囚われた日々
ふいに
優しい風に 包まれたなら
忘れかけてた 心の宝石
再び 煌めく
○Stagione【椿&冬織】『雨のち‥‥』
ミドルテンポの優しいポップバラードは、雨音のようなピアノの音と良く響くチェロの旋律が溶け合い、優しく柔らかい曲だった。椿の歌声と冬織のコーラスが、旋律に美しく重なる。
冷たい雨が心まで凍えさせても
忘れないで キミは一人じゃない
哀しみ洗い流したい
雨のち笑顔になれ
●BLUE−M【悠奈&アレクサンドル】『恋の予感』
柔らかいキーボードの音色と軽やかなアコギ、アクセントに響くドラムのリズムは優しい音色のポップスナンバーだった。出だしはスロー、アコギで悲しさを。中盤からはキーボードで軽さを出した。悠奈もそれに合わせて歌い方を変え、最後は笑顔で歌いきった。
涙ににじむ冬の街
甘く漂う香りがつつむ
ぬれた瞳で微笑めば
ほら‥‥新しい恋の予感
○慧『innocent moon』
ピアノの旋律がメインの曲は、所々にオルゴールを入れたバラード調だった。優しい音色に重ねるように、慈しむように歌う慧の歌声はクリアな響きだった。
君の髪を月が照らす
さらさらと 哀しい音を立て
「‥‥泣かないで‥‥」
新しい君になれるまで
そっと 見守っているから
●
「今回は慧さんのCM案を採用したいと思います。それと、店頭用CMとして3点、蜜月さんとStagioneさん、BLUE−Mさんの案を採用したいと思います。それから、商品名は仁和さんの“Dolce”を採用したいと思います。馴染みのある言葉で言いやすく覚えやすい素敵な名前だと思います」
環に柔らかな笑顔を向けると、視線を上げる。
「林檎さんの案はシャンプーのCMだって所は強調されていて良いんだけれど、先方のイメージが抜けちゃってるかな。気分に合わせてってところがウリなわけだから、その部分をもっと強調してほしかったかな。舞さんの案は逆に、シャンプー&リンスってイメージが弱くなっちゃってるかな。失恋と新しい恋ってイメージは分かるのだけれど、ボトルが出るまで香水のCMと混同されちゃうかなって」
一呼吸置いてから再び言葉を紡ぎ始める。
「蜜月さんの案は、人を惹きつけるCMって言うのかな。1つのお話になっているから目を惹く、足を止める、店頭用で流したら良いなって。欲を言えば、もっとシャンプーって部分を強調して欲しかったかな?Stagioneさんの案も、人を惹き付ける案だなって。思わず続きが気になってしまう、足を止めて見たくなるCMね。シャンプーとリンスって部分も強調されててとても良いのだけれど、30秒だと少しごちゃっとしてるかな。店頭用として、少し長めに時間を取って撮りたいと思います。BLUE−Mさんの案もやっぱり、人を惹き付ける力があるの。店頭用CMは、人を惹き付ける力があるものが良いの。続きが気になる、お話調のものは店頭用CMに最適だなって。BLUE−Mさんはキャッチコピーが素敵なのと、バッグの中からボトルが飛び出すサプライズが斬新的だなって」
ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべ、慧に真っ直ぐな視線を向ける。
「慧さんの案は、曲とCM内容、失恋と新しい恋、シャンプーとリンスと言う強調、全てが綺麗にまとまっていて凄く良いCM案だと思うの。実際に流れているところを見たいなって、そう思うな。撮影は、置いといて‥‥」
ユナの瞳が途端に虚ろになる。そもそも、撮影をしなければ流れているところなんて見れないではないか。
「苦手なものゆえ仕方ないじゃろうが、此れ迄も様々なCM案にて役をこなして来たじゃろう?自信を持つが良いぞ」
「大丈夫だよ〜?相手を男性と思わなきゃ良いんだし?喧嘩した女友達と新しい出会いって感じで良いんじゃないのかな〜」
冬織の優しい言葉と、悠奈の少しズレたアドバイスにユナの視線が揺れる。
「こーゆートキこそ“好きなモノパワー”なのです!んと、ユナさんケーキ好き?」
「好き、デス」
「後で食べようと大事に残しておいたケーキを誰かが食べちゃっててガーン!?とか、手が滑って床に落としちゃったとか、哀しいヨネ。失恋気分はこれデス!で、そんな時に優しい人が新しいケーキくれたりすると嬉しい、これで新しい恋気分」
完璧とばかりに胸を張る椿だったが、やはりどこかズレている。悠奈がいそいそとお茶の用意をし、冬織が椿に冷ややかな視線を向ける。
「無駄に自信満々な食欲魔人を見習えとは申さぬが」
「へ?冬織ちゃん、何か言った?」
低く呟かれた言葉に、椿が首を傾げる。そんな様子を見ながら、環がそっと商品名を呟く。
「ドルチェ、かぁ。甘いお菓子は哀しい気持ちを癒してくれる特効薬って言うけど、少なくとも椿君には効果絶大だよな」
「今度、食べられるシャンプー&リンスとか開発してくれないかなぁ〜」
「え、でも、それで頭洗うんですよね?」
椿の言葉に舞が疑問を口にし、冬織と環が顔を見合わせて小さく溜息をつく。林檎とアレクサンドルがそんな3人を見て微笑み、悠奈が淹れたお茶をそれぞれに配っていく。
「でも、私は失恋なんて考えたくないですけどねぇ」
現在恋愛真っ最中の悠奈がポツリとそう呟き、ユナが手に持ったコップを取り落としそうになるが、隣に座っていた慧がなんとかソレをキャッチする。
「恋愛中、デス、か?」
「えへへ、そうなの〜。って、何で泣きそうになるの!?ユナさん!!?」
うるりとなったユナに驚いた悠奈が立ち上がり、舞と林檎が慌てて駆け寄る。環と椿が如何したものかと困惑の表情を浮かべ、慧とアレクサンドルが何か出来ることはないかとユナの傍に立つ。
「ユナ殿は今後、恋愛不審にならなければ良いのじゃが」
冬織の呟いた一言が、ズシリとその場に重く響いた。
○ユナ with 慧
『君の髪を月が照らす』
月光だけが差し込んでくる暗い部屋の中。アイスブルーのワンピースを着たユナが濡れた髪をそのままに、泣き腫らした赤い瞳を伏せ、虚ろな表情でソファに座っている。ソファの縁に立っていたシャンプーに宿った月の精霊(慧)がドライヤーを手に、ユナの髪をブローし始める。
『さらさらと 哀しい音を立て』
左手の薬指に光る指輪を静かに見詰め、外そうと右手を動かすがどうしても出来ずに目に涙を溜めるユナ。
『‥‥泣かないで‥‥』
慧の唇が微かに動き、歌詞とリンクする。
ブローし終わった髪を優しく撫ぜる慧。髪は月光を弾き、美しく輝いている。
『新しい君になれるまで』
瞳に生気が宿ったユナが、唇を噛み締め意を決したように目を伏せるとゆっくりと指輪を外し、テーブルの上に置く。初めて視線を上げ、慧を見詰めると穏やかな表情で微笑み‥‥
『そっと 見守っているから』
テーブルの上に転がった指輪の隣、柔らかく光るシャンプーとリンス。
『哀しみに沈みそうになってしまったら』
『Sweet Paradise“Dolce”』
『貴女を包み込む優しい香りを思い出して‥‥?』