朝笑サプリ 雪だるま編アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/06〜12/08

●本文

『ここはとある高等学校。
 少し面白い先生と生徒達が織り成す学園の1コマを、通勤・通学前の貴方に‥‥』


 雪が舞い落ちる幻想的な空間で、ゴシックロリータの黒い衣装を引きずりながら綾音 乱華(あやね・らんか)が鼻をすする。
「今日は貴方達に2つのグループに分かれて雪だるまを1つずつ作ってもらいます」
 ずびずびと鼻をすすりながら肩を震わせる乱華。
 実は寒いのが苦手なのだ。

A:雪だるま
B:雪だるま

 わざわざ雪の上に書くが、AもBも作るものは一緒だ。書く必要があったのかどうか。
「玄関の脇に1つずつ置きます。織姫と彦星でも、お内裏様とお雛様でも構いません」
 寒さのために投げやりな口調だが、雪だるまの容姿まで投げやりだ。
「雪だるまの目や鼻などは石で、手足は枝などで作りましょう」
 雪だるまに足などあっただろうか。
「個性を活かしたいんです!と言う場合は石や枝でなく、自分達の持ち物で代用してください。ただし、危険物や食べ物を代用してはいけません」
 挟みで口を作るとか、コンパスで手をつけるとかは危険性があるために認められません。と、真面目な顔で言うが誰がそんなことをやると言うのだろうか。
「AもBも、班に必ず1人は監督(ツッコミ)の人を入れましょう。監督の人は責任を持って班のメンバーを正しい雪だるま作りへと導いてください」
 監督に全てを押し付ける乱華。
「巨大な雪だるまを作りたいと言うのも結構なのですが、時間内には作り終えましょう。監督には時計を渡しておきますので各自気をつけるようにしましょう」
 腕時計に目覚まし時計、携帯電話まで手渡される。
「それと、セットに入らない大きさの雪だるまも不可です。天井には気をつけましょう」
 実はこの雪、人工のものだ。カメラの外ではせっせとスタッフが働いている。
「ルールを書いた紙が教室内に貼ってあるので、忘れている人はキチンと読んでから来ること」

*ルール
・暴力はいけません
・ものを壊してはいけません
・誰かがボケた場合は必ず誰かがツッコんであげましょう
・ツッコミの人はボケに引きずられずにツッコミを貫きましょう
・笑いは爽やかにとりましょう
・制服はきちんと着ましょう
・クラスでの合言葉を忘れないようにしましょう

「それから、シロップやスプーン、器などを持ってきた生徒は速やかに提出しましょう。いくら人工と言っても食べられません。お腹を壊します!この雪をカキ氷にしないように、監督は見張りの強化をお願いします」
 乱華の瞳がキラリと光る。誰か持って来ているものはいないかとジロジロと見渡し‥‥
「クラスの合言葉、忘れている人はいませんね?“皆さん元気に行ってらっしゃいませ”です。これが言えない人は他クラスの刺客ですから気をつけましょう」

●今回の参加者

 fa0771 クルディア(30歳・♂・虎)
 fa1401 ポム・ザ・クラウン(23歳・♀・狸)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa3652 紗原 馨(17歳・♀・狐)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)
 fa5043 麻波アサハ(17歳・♀・狐)

●リプレイ本文

 可愛い系元気ボケのあずさ&お兄さん(fa2132)はぷぅっと頬を膨らませると取り上げられたばかりのカキ氷セットに視線を向けた。目の前にこんなに大量に“ご馳走”が鎮座していると言うのに、なんと言う悲劇だろうか。
「明日葉なら絶対やりそうな気がしてたからな」
 他のメンバーを差し置いて、一番に持ち物検査をされたのは何を隠そうあずさだった。
「人工雪でも、衛生管理がされてるわけじゃないと思うし、先生の言う事は一理あるよ」
 ポム・ザ・クラウン(fa1401)が、あずさの背中を叩きながらそう言う。そんな2人よりも少し後ろで、紗原 馨(fa3652)は降って来る雪に笑顔を浮かべた。
「雪をスタジオで見るのって初めてだよ」
 独り言を呟き、おもむろにしゃがみ込んで雪に触れると背後から練乳とコップ・スプーンを取り出して手早く器に雪を入れる。乱華と監督達の目を気にしてチラチラと視線を向けているが、スタッフの事はすっかり忘れているらしい。乱華派のスタッフが馨の行動をそっと告げ、般若のような顔をした乱華が声を張り上げる。
「何してるそこっ!!」
「あっ、あはは、ヤだなぁ。冗談ですって」
 ピっと立ち上がり、練乳のかかった雪を足元に落として踏みつけるとカキ氷セットを乱華に手渡し、仲間達の隣に並ぶ。
「さて、今回は面白いことになってるな」
 そう言って乱華が視線を向けたのは、旧ツッコミ学級委員長の姫乃 唯(fa1463)とツッコミ天然ボケ隊長の小峯吉淑(fa3822)だ。
「べ、別に雪だるまが作りたいからってわけじゃないんだからね!」
 何故かツンデレ風に言って顔を背ける唯。
「ボケと言う事は、ボケ学級委員長か?や、ボケに学級委員長なんか任せられないな。ボケ一般生徒?」
 乱華が首を捻りながらそう呟くが、ボケ一般生徒なんて何だか妙な響きだ。必死に考え込む乱華の前で、吉淑が胸を張ると演説をし始める。
「ツッコミ天然ボケ隊長の称号を得てからと言うもの、自分のあるべき位置を模索してボケやツッコミを繰り返していました。が、今回はしっかりとツッコミ隊長として、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と‥‥」
「さて、ツッコミ天然ボケ隊長の宣言は置いといて、とっとと雪だるまを作り始めるか」
「はいっ!」
 乱華の無情な言葉によって、吉淑のツッコミ復活宣言はブチリと音を立てて断ち切られた。


「雪だるまの8の字型のフォルムは既に完成されたもの。見せて頂くからね、貴女達の意気込みを」
 サングラスをずらし、キラリと眼光を光らせたポムの目に飛び込んで来たのは、同じBチームの少女達のやる気に満ちた勇ましい姿などではなかった。可愛らしい悲鳴を上げながら、漫画じゃないんだからとツッコミたくなるような角度で雪に埋もれている、もとい、刺さっている甲斐・大地(fa3635)と何かを呟きながらその場を行ったり来たりしている馨の姿だった。
「とりあえず、向こうは動物モノを作るみたいだからこっちもそれにあわせよう?」
 サングラスをトレンチコートのポケットにねじ込みながら、ポムが提案をする。着々と進んでいるらしいAチームの様子に多少の焦りを感じながら、馨が何かを作り始め、自力で雪から脱出した大地もソレに続く。が、見守っているポムから見れば2人がせっせと何を作っているのかはまったく分からなかった。ドーナツ型の物を数個作る馨の隣ではサイコロ状の塊を幾つも作っては積み上げている大地。
「何か違うような気がするけど、まぁいっか」
 適当な事を言って、馨が大地の作ったサイコロ状の塊の上にドーナッツ型の物体を組み合わせる。
「それは何かなぁ?」
 ポムが呆れながらツッコミを入れるが、必死な様子の大地と馨には聞こえていないようだ。
「そうだ!監督さんって携帯電話持ってましたよね、それ使っても良いですか?」
「何に使うの?」
 ポムの質問に、馨が「手に」と明るく返すが、精密機械になんて事をしようとしているのか。あえなく却下された案にガッカリした馨の隣で、大地がどこから取り出したのか雪だるま(らしき物体)にビキニを身に着けさせる。
「な、何してるんですか!?そんなのしたら動物じゃなくなっちゃうよ!?」
 ポムが慌てて止めるが、安心して欲しい。ビキニがあろうがなかろうが、動物どころか雪だるまにすらも見えない。結局何が作りたかったのかと問い詰めるポムの言葉に、馨と大地が声を合わせる。
「だるま落とし!」
 ‥‥それはだるま違いだ。


 久しぶりのツッコミとあって、吉淑は弾けていた。コートと手袋の防寒はバッチリ、竹刀も完璧☆シーズンだから、ちょっぴり可愛くサンタ帽子まで被って、Aチームを見渡せる場所に逞しい表情で仁王立ち!まずはパーツごとに分かれるんだと言う監督の指示に素直に従って、クルディア(fa0771)が頭、あずさと唯が胴体に分かれる。どのくらいの大きさにしようかと相談しあう3人だったが、答えはすでに決まっていた。
「俺の地元じゃ、こんくらいじゃ雪だるまとは呼ばないぜ」
 手で大体の大きさを示しながら、雪国出身と言うクルディアがそう呟く。
「Bチームよりも大きな雪だるまを作っちゃおう!」
 唯の逞しい言葉に、猫耳つきの毛糸の帽子が揺れる。帽子と手袋とマフラーと、完全防寒の体勢で雪だるま作りに挑むあずさだったが、アイドル根性なのか芸人根性なのか、コートは着ていない。
「そうだ、大きく、高く、天をも突き破るように!!」
「天井につかないようにっ!」
 クルディアの興奮した言葉を破ったのは、吉淑の声だった。その言葉で多少冷静さを取り戻した3人が、シャキシャキと素早い動きで頭と胴体を作り始める。ゴロゴロと雪玉を転がすあずさと唯の耳に、聞きなれた曲が聞こえて来る。スタッフの間違った粋な計らいで選曲されたその曲は、大玉転がしを連想させるソレだった。無心になってゴロゴロし続ける3人に、監督の声がとぶ。
「そこ!同じ場所で転がしすぎると土やゴミがつくだろう!きみっ!綺麗な球体になってないじゃあないか!待ち給え!もっとだ、もっと!それ、ワン、ツー!ワン、ツー!息を合わせて!」
 ‥‥張り切りすぎだ。とは、お茶の間の皆さんのツッコミであって、その場にいる全員はいたって真面目だ。「はい、監督っ!」と、なんとも涙ぐましい青春ドラマが展開されている。出来上がった2つの巨大な雪玉をうっとりとした顔で見詰め、吉淑が3人の肩を叩く。
「流石だ。皆僕が見込んだ通りだ!」
「有難う御座います、監督っ!」
 感動の場面だったが、その数秒後には大変な事件が起きていた。いざパーツ合わせの段階になって吉淑は“あること”に気が付いた。
「監督、重すぎてのりません!」
「頭の方が大きいよっ!」
 吉淑のツッコミを受け、胴体の方を乗せようとするが重過ぎてこちらも持ち上がらない。どうしようかーと、呑気な様子で首を傾げるあずさと唯。先ほどまではあんなに頼れる監督っぷりを発揮していた吉淑だったが突然の問題に冷静さを失い、オロオロとし始める。
「あ、あああ、じゃあ、どどどうしよう」
 竹刀を雪の中に落とし、頭を抱える吉淑。
「どうしようか。乗っけるのは無理なんだよね?」
「あ、だったら横にくっつけたらどうかな?じゃーん、寝ている雪だるま!ダメ?」
「あ、そそれいいですねっ!!」
 唯の提案に吉淑が飛びつき、唯がそれならと小さ目の雪玉を4つ作って体にくっつけていく。
「はい、亀さんの出来上がり〜!」
「こ、甲羅の模様を刻んだらどうかな?」
 吉淑の苦し紛れの言葉に、それもそうだと唯が刻みを入れ始める。その様子を見ながら、おもむろに亀の背中に乗ったあずさが浦島太郎ごっこを敢行し始める。唯が乙姫様、クルディアと吉淑がタイとヒラメと、役割を決めるが誰もが優しい瞳で見守っているだけで参加してくれる様子は無い。
「とりあえず、かか亀完成〜!わ〜」
 小刻みにパチパチと拍手をする吉淑に、唯が合わせる。
「う〜らしまさん、うらしまさん♪お腰につけたキビダンゴ?」
 あずさが亀の背中で不思議な歌を歌いながら、お腰からシロップを取り出して亀の背中に‥‥かけようとしたところを吉淑に止められる。
「わわ、何してるんですかっ!」
「つかさ、俺思ったんだけど」
 今まで黙って新たな雪玉を作っていたクルディアが不意に口を開き、クワっと声を荒げる。
「頭がでかいんじゃ無い。土台が小さいんだよーーー!!!」
「も、もうその話しは終わりましたからっ!!」
 クルディアの逆切れは、何故かワンテンポ遅れている。


「それにしても不細工な雪だるまだな」
 完成した雪だるま?を前に乱華が率直な意見を述べ、馨が何かを思いついたようにポンと手を叩くとどこからとも無く巨大な木槌のようなものを取り出した。
「実はこれ、だるま落としなんですよ!だからこうやって‥‥」
 ドンと言う音とともに、雪が崩れる。隣の亀雪だるまに被害が無かったのは幸いな事だったが、雪だるま落としはグチャグチャになっている。
「あー、やっぱり雪じゃダメなんですね」
「‥‥紗原は居残りで雪だるま作っていくように!」
 どうやら次の撮影でも雪だるまは使われるらしい。居残りと言う言葉に不満の意を表す馨だったが、抗議の言葉を紡ぐには時間が無さ過ぎた。乱華の起立・礼の号令に皆が声を合わせる。

  「皆さん元気に行ってらっしゃいませ!」