SPLive 幻想の月アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/13〜07/17

●本文

「立花さん!大変です!早く出演者を決めろと言われました!」
「立花さん!大変です!出演者が決まらないのでセットが組めません!」
「立花さん!大変です!セットが組めないので・・・」
「あああああああああっ!!!!うーーーるーーーさーーーいーーーっ!!!!」
「「「・・・でも」」」
「ハモるなっ!!」
困ったように顔を見合わせるスタッフに向かってそう叫ぶと、立花・マドカ(たちばな・−)は盛大な溜息をついた。
「とりあえず、今回は『幻想』と『月』でいくわ」
「いくわって・・・だって、出演者も決まってないのに・・・」
「出演者に合わせてもらうわ」
「そんな俺様な・・・」
「私ね、この番組枠をもらった時『SPライブ形式』にしたいって思ったの。だから、テーマだけを決めて、後は出演者達にお任せして・・・」
「スペシャル・ライブですか?」
「違うわ。エス・ピーライブよ」
「・・・セキュリティ・ポリスですか?」
「アイドルのためのコンサートで、どうして要人警護の警察が出てくるのよっ!違うわよっ!SPは、セルフ・プロデユース!!」
 さも当たり前だといわんばかりに声を張り上げたマドカだったが、SPと聞いてセルフ・プロデユースを思い浮かべた人はどれほどいるのだろうか・・・。
「こちらでテーマを出して、それに沿った形のライブを出演者達に作ってもらうの」
「で、幻想と月ですか?」
 スタッフの問いかけにコクリと小さく頷くと、マドカは傍らにあった紙とペンを取り、何かを書き付けた。

・幻想は、歌詞でも曲でも衣装でも。何か1つで『幻想的』なものを表せばOK
・ソロでもグループでも参加可
・背景は、月をモチーフにしたもの。細部はお任せ
・スクリーンにリアルな月を映したい場合は要相談
・照明の色、明るさ、月の大きさ、色、形は事前に提出のこと

「こんなものかしら」
「・・・歌う順番とかってどうするんです?それに、アイドルの紹介とか・・・」
「紹介は自分たちでやってもらうわ。いい?これはあくまでSPなの。スタッフが全てをやってくれる、歌だけ歌えば良いって番組じゃないの。自分達がなにもしないなら、先に進まないのよ」
「はぁ・・・」
「自分の後に歌うアイドルの紹介をやってもらうわ。つまり、1番目の人は2番目の人の紹介をする。2番目の人は3番目の人の紹介をするの。勿論、自分が歌い終わった後にね」
「次は○○さんの番です〜みたいにですか?」
「そうね。うん、そんな感じ。何か一言添えられればなかりのものね。ちなみに、1番最初の人の紹介は1番最後の人がするの」
「はぁ・・・複雑ですね・・・」
「あ、そうだ!これだけは絶対絶対ぜーーったい!」

・歌以外でもなにかプラスのモノを見せること

「ダンスでも技でも、笑顔でも・・・。歌だけじゃない、個性みたいなものも出してほしいの。あと、これも!」

・歌詞はオリジナルのもののみ

「はぁ・・・」
「ほら!大至急出演者を探して!ダッシュダッシュ!!」
「そんなぁぁ〜〜〜!!!」


◆補足
・ステージは2箇所、向かい合わせにあります。2つのステージの真ん中にはエキストラ(お客)が立っており、カメラもあります。
・AステージもBステージも同じつくりです。
・トップバッターは必ずAステージでライブを行ってください。2番目以降はAかBどちらかを選んでください。
・続けて同じステージの使用もOKですが、その場合はバックバンドの入れ替えに時間をロスしてしまいます。
・バックバンドを使わない場合は前もってスタッフに使用する曲を渡しておいてください。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0760 陸 琢磨(21歳・♂・狼)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa3386 硯 円(15歳・♀・猫)
 fa3691 姫月乃・瑞羽(16歳・♀・リス)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)
 fa3938 月影 飛翔(20歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

 ざわめく会場の中、集められたエキストラ兼お客が開始の時を今か今かと待ち望んでいる。熱気はステージ袖で控えている出演者達にもビシビシと伝わってくるらしく、皆一様に緊張と期待を宿した瞳を真っ直ぐにステージに向けている。
「1番の方、準備お願いします!紹介の方、ステージに」
 スタッフが的確な指示を飛ばし、本日のトップバッターを務める氷咲 華唯(fa0142)が照明の落ちたステージに立ち、その向かいのステージに華唯の紹介役を務める蓮 圭都(fa3861)と月影 飛翔(fa3938)が立つ。
「本番入ります!5、4・・・」
 凛とよく響く男性の声に、ざわめいていた会場内が水を打ったように静まる。スタッフの指が3、2、1と折れるに従ってBステージにライトが集まる。
「お待たせしました。只今よりSPLiveを開催致します。今回のライブはセルフプロデュース。各々のステージを出演者自身がプロデュースしています。テーマは『幻想』と『月』今宵何が見れるかはお楽しみ。それでは始めの幻想です。月夜の下の猫はどんな幻となるのか。氷咲 華唯!!」
 名前のコールでは飛翔と圭都の声が上手い具合に合わさり、わっと会場内から拍手が湧き上る。
 スポットライトがAステージに当てられ、その中心にギターを持った華唯が背の高い丸椅子に座っている。背景の月は小さく、少々落とされた明かりの下で俯いている。明るい満月は鮮やかに浮かび上がり、黒を基調とした幻想的な民族衣装風の恰好をしている華唯の後ろでは、尻尾がゆっくりと揺れている。

『MOON DROP』

僕にできるのはずっと君を見つめることだけ
何もできない無力な自分
同じ存在(モノ)になれたらどんなに良いだろう
すぐ近くに見えるのに距離はこんなにも離れてる

Bright Moon 君はいつもそこにいるのに
そうあることが当たり前であるように
だけど僕には聞こえるんだ
誰かが呼ぶ声がする悲しいと泣きながら

僕はいつだってずっと君のことを見ている
何を想っているんだろう
知りたいことは他にもたくさんある
君から見た僕はどんな風に映るのか

Dark Moon 佇んで揺らめいて
姿は見えなくてもそこに居ると感じてる
いつでも心に届いてくる
誰かが泣く声がする寂しいと震えながら

誰かが呼ぶ声がする悲しいと泣きながら

 最初のサビ部分で光り輝いた月は、次のサビでは色を落とした。そしてそのまま、徐々に漆黒の闇へと包まれ、最後の音が暗闇の中で響いた。
「次は陸 琢磨(fa0760)さん。テーマは人が見る『夢』」
 華唯の声が終わるか終わらないかのうちに、今度はBステージにスポットが当てられる。
 淡い満月の光が木々の隙間から零れ落ちる森の中、アコースティックギターとピアノの繊細なメロディーが響き渡る。バラード調のそれは背景と相まってどこか幻想的な色となって会場中を包み込む。

『SILENT SPEECH』

淡い夢に満たされようとする
月明かりの中で
僕はキミの手を取って
キミと歩くだけ

言いたい事がある筈なのに
夢の中でも叫びにならない嗚咽が漏れるだけ
心は尽きる事無く僕を突き動かすのに
何でこんなに虚しいんだ?

愛すべきキミに伝えるだけの事なのに
ただ言葉にするだけなのに
声は擦れるだけで紡がない
キミは待っていてくれるのに
足がすくんでくる
涙を飲み込む僕を優しく包んでくれる手に
唇が無言の言葉を紡ぐ

「僕は此処にいる・・・」

儚いSILENT SPEECH・・・

 途中にダンスも交え、しっとりとした尾を引きつつ曲が終わると、琢磨はマイクをグッと握りなおした。
「明るさが空回りするほどに・・・いや、此れはアイドルらしいと言った所だろうか?テーマは・・・と言うより、一見は百聞にしかずだな」
 嘆息を洩らした後で一呼吸だけ間を取る。
「『Shamrock』で『Moonlight Kiss』だ」
 Bステージが暗転し、代わりにAステージがスポットの中に浮かび上がる。
 蒼い月が輝く前、シロツメクサの冠に白のフレアワンピースを着て半獣化した富士川・千春(fa0847)とベス(fa0877)、そして硯 円(fa3386)がステージの中央で微笑んでいる。

『Moonlight Kiss』

会いたいのに会えないもどかしさ
夜空の星を数えて 今夜はちょっと眠れないかな

「太陽のような星が夜にも欲しい」と 我侭は言いません
グラスの水に落とした 氷の欠片のように
キミの言葉が 蒼い月に落ちて響き渡る

太陽が地平線に 口づけ(KISS)を交わし
世界が半分 モノクロームに変わったとしても
窓から見える 夜空のヴェールが
蒼い月と紅い星の ささやきを運ぶ

 着ていたワンピースを前に引っ張ると、その下はちょっぴりセクシーな黒い服だった。裾は短く、少し露出が高くなる。その衣装に合わせるかのように、背後のスクリーンでは赤い星が瞬き始め、時折右から左へ流れる。

たくさんの星が かすかな光を集めて
ほら キラリ☆輝く星が キミの仕草によく似ているよ

流れ星がはぐれない様に 大きな夜空で包み込んでね
星が離れていても 星座を作るように
奏でる音は 星の光よりも遠く遠く

紅い星が街の明かりに 口づけ(KISS)を交わし
少しづつ鮮やかに 彩られていく東の空
窓から差し込む 淡い月明かりは
あたしのこと あと少しだけ 見守ってくれるようです

 踊ったり跳ねたり、じゃれあうようなステージは可愛らしかった。3人がシロツメクサの冠にKissをして観客席へと投げる。スポットライトはそれを追わずに3人を照らし出したまま、ベスがマイクを握り次の姫月乃・瑞羽(fa3691)の紹介に入る。
「次は姫月乃瑞羽さんの新曲です。そして、これが瑞羽さんのデビュー曲になるそうです♪では、瑞羽さん曲名と歌をどうぞっ♪」
 Aステージに向けられていたライトが消され、代わりにBステージが明るく輝き出す。
 大きな黄色い月を背景に、バックバンドとともに浮かび上がった瑞羽は内心の緊張は表に出さずに、ただ笑顔でマイクを握り締めた。
「私のデビュー曲『Sunlight of summer love』聞いて下さい」

『Sunlight of summer love』
作詞:姫月乃瑞羽

私の夏の日 もうすぐやって来る
あの人と迎える初めて夏
この高鳴る気持ち もう抑えきれない
青い海・・・白い砂浜
澄んだ空を見つめたい
あなたと一緒に いつまでも
Hug this feeling to waver
My aweet summer days・・・

 軽いステップを踏みながら、歌詞のない部分はバックバンドに合わせてステージ脇に置いたハーモニカを吹いて繋ぐ。エキストラとは言え、目の前にいるお客さんに楽しんでもらいたい。そんな気持ちが溢れるステージだった。段々と小さくなっていく音を聞きながら、瑞羽はトリの2人の名前をコールする。
「ツインギターのユニット『Moon lotus』の登場です。歌う曲は『月の満ち欠け』をテーマにした曲『月光』です」
 瑞羽の言葉に合わせ、Aステージに光が灯る。それと引き換えにBステージは色を失い、黒く塗りつぶされていく。
 雲に隠れた青白い三日月が艶かしく輝き、その両サイドに圭都と飛翔が立つ。サンドリヨンを着た圭都と白の上下を着た飛翔。その手にはギターが握られており、しっとりとしたバラード調のメロディーが紡ぎ出される。イントロは飛翔のソロで、最初の音が会場に響いた瞬間、に三日月を覆っていた雲がゆっくりとした速度で晴れていく。歌い出しとともに圭都も繊細なギターの音を合わせ始め、2人がステージ中央へと移動していく。

『月光』

どんなに悲しい夜も いつか明けると言い聞かせ
よくあるセリフ抱きしめた
小さな小さな翼が震える
それなら朝は どこまで来ているの?

 圭都のソロが入り、月が段々と色を鮮やかにしていく。
 満月へと導かれる月の満ち欠けは鮮やかで、青白い月は満ちるに応じて輝きを変化させていく。

耳を澄ます
くりかえすばかりと言う毎日は
でも たしかに昨日とは違うでしょう

 月が完全な満月となり、青銀色に輝く光が客席を仄青く照らし出す。強弱をつけた音はまるで波のように心地良く、見る者を惹きこんで行く。

欠けては満ちながら
優しい愛が 私の、あなたの窓辺にも訪れているよ

そっと囁くような knock は
静かに降りそそぐ moonlight

満ちては欠けるとも
優しい歌が 私の、あなたの心にも流れていくよ

やわらかな光は いつだってそこにある

 曲が終わり、ライトが消されていく。圭都と飛翔の姿は完全に闇の中に溶け込み、最後に残ったのは青銀色に煌々と照り輝く満月のみだった。

 Aステージに全員が集まり、会場中にざわめきが広がる中で頭を下げる。一拍遅れで拍手が響き、今回のSPライブは終了したのだった・・・。



 ステージから降りると、どこか浮かない顔をしたマドカが立っていた。
「お疲れ様。個々がとても光っていて良かったわ。トリの2人の演出は素晴らしかったわ。月の満ち欠けと色、幻想と言うに相応しいステージだった」
 マドカはそう言った後で「ただ」と言って顔を曇らせた。
「1つ1つのステージが個別に光っていて、大きな流れまでは作れていないの。単に歌を繋げてみた。そんな感じが否めないかなって。でもね、本当に個々は素敵だった。これから先の貴方達が楽しみだなって、それは今日の収穫」