30 seconds CM happyアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
宮下茜
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
2Lv以上
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
2.6万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
12/12〜12/14
|
●本文
淡いピンク色のボトルに躍る文字は赤やオレンジでいかにも楽し気だったが、ボトルを見詰めるユナの表情はどんよりと曇っていた。
「私がイメージガールをしている“Sweet Paradise”が出す、気分に合わせて使うシャンプー&リンスの新作が出ることになったの」
今回は“嬉しい時”に使って欲しい香り。フローラル系の爽やかで明るい香りだ。
「30秒のCMを作るにあたって、今回も先方からCM案の基があるの」
恋愛関係がまったくダメなユナ。その手の話になると途端にカタコト口調になるのだが、今回はスラスラと喋っている。
ただ、口調はどこか素っ気無く冷たい雰囲気を帯びていた。
「‥‥“友達”を基にして作ってきて欲しいそうです」
目を伏せながらそう呟くと、ユナが必須事項の書かれた紙を配り始める。
*以下のことをよく守り期日までにCM案を考えてくること
・曲は25秒程度(30秒CMのうち5秒はブランド名や商品名などを伝えるために無音に)
・ブランド・商品名宣伝のための無音はCMの最後の5秒
・CM内容は詳細なイメージ案を紙に書いて提出(これも25秒程度)
・CMにはユナおよび自分(歌い手・演奏者)も登場すること
・CM内容は、歌詞とリンクさせて『〜のフレーズの時に〜する』と言う書き方でもOK
・また、歌詞とはリンクさせずに個別に書いてもOK
・当日は実際に歌ってもらうので、バックバンドがいない場合は事前にテープを提出すること
→バックバンドはこちらでは用意しません
・当日の演出は一切不要。歌に専念すること
「CMに採用する曲は1つ。今回も先方からイメージが出ているので気をつけてください」
選考ポイント
・曲・CM案とブランドのイメージが合っているかどうか
・25秒以内におさまる内容かどうか
・歌詞内容の明確性(歌詞が伝えたい内容)
・曲・CM案とユナのイメージが合っているかどうか
*“友達”と言うイメージが入っているかどうか
「曲名があれば紙に書いて提出してください。あと、シャンプー&リンスの商品名も募集しています。商品名はグループ関係なく個人で1点だしてもらえると助かります。どうしてその名前をつけたのかの理由も添えて提出してくださると審査しやすいのでお願いします」
聞きようによっては怒っているともとれる口調でそう言うと、ユナが手元に残った書類を整える。
「CM内でのシャンプーシーンの有無はお任せしますが、時間的に厳しいかも知れないのでそこはカットで構いません」
前回の時は頬を染めながら恥ずかしそうに言っていた台詞だったが、今回は淡々とした表情でそこからは何の感情も読み取れない。
「ターゲット層は10代〜20代前半となっていますが、10代と考えて構いません。もしグループを組むようでしたら、グループ名を紙に書いて事前に提出しておいてください。CMの右下に小さく“ユナWith”の後に名前が出ます」
それだけ言うと立ち上がり、小さく「それでは、頑張ってくださいね」とだけ言って一度も振り返らずに部屋を後にしてしまった。
ユナの突然の態度にどよめく場に、ユナのマネージャーの錦下(にしきした)がコッソリと入ってくると、一番手前に座っていた女性にユナの様子を聞く。
「‥‥やっぱり、落ち込んでるみたいだったんだ?」
「落ち込んでると言うか、怒ってるみたいでしたけれど‥‥」
「や、その様子は落ち込んでるんだよ。あぁ。悪い事言っちゃったなぁ」
実年齢より大分若く見える錦下が、眉根を寄せながら唇を噛む。
「あの、ユナさんになんて仰ったんですか?」
「今回、友達が先方のイメージだろう?だから、ユナは友達がいるのかってきいたんだ。勿論いるって即答してくれたんだけど、出てくる名前がみんな‥‥」
そこまで言って口篭る錦下。この先を言っても良いものかと考えた挙句、ポツリと言葉を零す。
「どうもユナは仕事仲間と友達をごっちゃに考えてるみたいで。勿論、仕事仲間で友達って言うのも有りなんだろうけど、ユナの場合は仕事場でしか会わない、話さないような人ばっかりでさぁ」
連絡先も知らない、休日に遊びに行くような事もしない、現場でしか接点がない。
それは友達と言うよりは仕事仲間だろう。錦下がからかうようにして言ったその言葉が、ユナの心を深く抉ってしまったらしい。
「恋愛関係がダメなことは知ってたんだけど‥‥」
言葉を濁しながら頭を掻く錦下。
「まぁ、ユナもプロだから、仕事には支障をきたさないと思うから」
恋愛関係じゃないしねとそっと口の中で呟き、頭を下げると錦下は部屋を後にした。
●リプレイ本文
○
「初めまして、宜しくお願いしまーす♪」
「ユナさんお久しぶりです」
アイリーン(fa1814)の元気な挨拶と、EUREKA(fa3661)のしっとりとした挨拶に、ユナが椅子から立ち上がると微かに笑みを浮かべて頭を下げる。未だにどんよりと落ち込んでいるらしい様子に、椿(fa2495)が持ってきた紙袋を指差すとユナの顔を覗き込んだ。
「んと、今日はアップルパイ持参なのデ、後で食べようネ♪」
「楽しみ、です」
そうは言うものの、しょんぼりと肩を落としているユナの様子に、冬織(fa2993)が「ユナ殿も色々と難儀な娘御じゃな」と、口の中で呟いた。MIDOH(fa1126)が、ユナの様子に首を傾げながらも、持ってきたパウンドケーキに視線を移す。
ユナが何かを考え込むように目を伏せた後で、歌の準備に取り掛かるようにと促した。
●Elevado【MIDOH&ジェイムズ・クランプ(fa3960)】『HAPPY TIME』
一度聞いたら簡単に口ずさめてしまうような旋律を意識して作った曲は、弾むような軽快なメロディだった。キーボードが単音を紡ぎ、ベースが低音を支える。MIDOHが曲に負けないくらいの元気の良い声で歌を紡ぎ上げた。
HAPPY HAPPY HAPPY TIME
あなたとHAPPYNESS
きらきら光る 私の宝物
いつも一緒に 私らしく輝く
○アイリーン『Happiness』
リズム感のあるポップな曲は、ギターとピアノの二重奏。思わず体を動かしたくなるような元気な曲を、アイリーンは弾ける笑顔で歌いきった。
当たり前すぎる日常に
幸せを感じはしないけど
2人で見つけたモノは
小さな幸せ運んでくれる
●Stagione【椿&冬織】『Link』
前奏なしのアップテンポな曲は、軽めに刻んだドラムとアコギの爽やかなメロディラインだった。リズミカルな雰囲気に、時折柔らかさを加えたピアノの旋律が繊細な印象を与え、椿と冬織のツインヴォーカルが曲に表情をつける。
不思議だね
笑顔はしあわせ呼び しあわせは笑顔呼ぶ
幸福の永久連鎖
繋いでいこう どこまでも
けして枯れない笑顔の花 咲かそう
○Y’s【悠奈(fa2726)&EUREKA】『Smile Concerto』
前奏なしのアップテンポなポップスは、明るいピアノの旋律とチェロのか細い音が組み合わさった爽やかな曲だった。アクセントとしてタンバリンの鈴とパーカッションの音が入り、よりリズミカルな雰囲気を醸し出す。EUREKAがアコギを奏で、悠奈が弾むような元気の良い声で歌い出した。
笑顔が奏でるコンチェルト
しあわせ繋ぐ 香りの魔法
あなたに そっと伝えたい
『わたしの秘密 わけてあげる』
●夕波綾佳(fa4643)
綾佳がステージに上がる前に、ユナは彼女を呼び止めると首を振った。
「歌詞とCM案に目を通したのですれど、必須事項をよく読んでいないみたいなので、歌っていただかなくて結構です」
○
「皆さんのCM案を拝見した結果、今回はY’sのお2人のCM案を採用したいと思います。商品名は冬織さんの『Melody』を採用したいと思います。とても可愛らしい響きで、素敵な商品名だと思います。それから、店頭用CMにはStagioneのお2人の案を採用したいと思います」
ユナはそこで一息つくと、先を続けた。
「Elevadoのお2人のCM案は、季節が限定されてしまっているところが少し残念です。季節限定商品のCMならば効果的だと思いますが、そうでない商品の場合は誤解を与える可能性がありますし、季節が過ぎてしまえば別のCMも用意しなければなりません。それと、シャンプーとリンスのCMだと言う部分の強調が少し弱くなってしまったように思います。アイリーンさんの案は、綺麗にまとまりすぎてしまってシャンプーとリンスのCMだと言う強調が弱いように思います」
手に持っていた紙を傍らに置き、ユナは冬織と椿、そしてEUREKAと悠奈に視線を向けた。
「Stagioneのお2人のCM案は、誕生日会のにぎやかな雰囲気とビックリ箱のサプライズがとても良いアクセントになっていると思います。楽しい雰囲気も伝わってきますし、撮影が楽しみです。ただ、場面転換もありますし、25秒で全部のシーンを撮るとやや駆け足気味になってしまいますので、店頭用に少し長めで撮りましょう。前半のパーティーのシーンを長く撮ってみたいです。Y’sのお2人のCM案は、弾けるような楽しい雰囲気が魅力的だと思います。友達、幸せ、その2つが全面に出ているCM案で、思わず楽しい声に目を向けてしまいたくなる、そんなCMになればなと思います」
ユナはそう言うと、小さく溜息をついた。それを合図に椿がアップルパイを取りに席を立ち、MIDOHも持ってきたパウンドケーキを膝に乗せる。ユナが机を動かして簡単なテーブルを作ると、しゅんと肩を落とした。未だに錦下の言葉が深く心を抉っているらしい。
「友達かあ、誰が友達で、誰が仕事仲間かって線引きも難しいと思うけど、ね」
アイリーンの言葉に曖昧に頷いたユナが、椿の持ってきたアップルパイとMIDOHの持ってきたパウンドケーキをテーブルに乗せ、紙皿を取ってくると紙コップにお茶を注いでいく。
「ねぇ、ユナさん。良ければ私、お友達候補に立候補しちゃおうかな。友達の定義は人それぞれだもんね、一緒にいるだけが友達じゃないと私は思うよ?」
例えば遠く離れていて偶にしか会えなくても、気持ちが通じ合っていれば友達と呼べるのではないか。悠奈は携帯を取り出すと口元に笑みを浮かべた。
「お休みって、楽器演奏してると終わっちゃうのよね‥‥。この悪癖がバツイチの原因?‥‥だから呼び出し大歓迎よ?」
EUREKAがそう言って携帯番号とメアドの書かれた名刺をユナに手渡す。それを見ていたMIDOHもメアド交換を申し出る。
「クリスマスにはグリーンカードも遅れるしね」
「えっと、でも‥‥あの‥‥」
「メールアドレス交換会!良いじゃないですかっ!」
悠奈が微笑みながらアドレスの書かれた紙を差し出し、暫くオロオロとしていたユナが自分のアドレスの書かれた名刺を取り出すと配っていく。
「ユナ殿とも結構な付き合いじゃ。良ければ‥‥文通でも」
冬織が住所と電話番号の書かれたカードをユナに手渡す。携帯のアドレス交換会に飛び込んだ古風な文通と言う言葉に、ユナが驚いて椿に視線を向ける。
「えぇっと‥‥」
「携帯メールは打ち方が分からぬで‥‥」
頬を染める冬織をキョトンとした顔で見詰めるユナの耳元で椿が「冬織ちゃんにメール教えてあげてネ」とこっそりと耳打ちをする。
「‥‥何だか、プレゼントを貰ったみたい」
ユナが小さくそう呟き、俯いていた顔を上げ、滅多にしないような満面の笑顔で一番近くにいた冬織の袖をギュっと掴んだ。
「これから、お仕事以外のメールも入るんですよね?なんだかそれって、素敵な魔法みたい!今度、ストラップを買いに行きたいなって思います。だって、こんな素敵なもの、落として壊れちゃったら大変だもの」
無邪気に喜ぶユナは、普段見る冷たい大人びた表情とはうって変わってとても少女的だった。大切そうに携帯を握り締めたユナに、椿がアップルパイを勧める。悠奈がMIDOHの持ってきたケーキに頬を緩め、ユナがぱくりとパイを頬張る。
「美味しい‥‥」
「それなら、今度一緒に食べに行こ、ユナさん」
そう言って指きりをする椿。突然の遊びの約束にユナが椿の手を無意識に握り締め‥‥
「デート!」
と言う、椿の一言に顔を赤くすると隣に座ってた冬織に助けを求めるように袖を引き、冬織がそれに応えて懐からお菓子を出すと椿に見せた。
「待て!」
冬織の言葉に従ってピっと大人しく座った椿に、ユナが声を上げて笑いながら「今度絶対一緒に食べに行きましょうね。約束です」と念を押すように言った。
●ユナ With Y’s
『笑顔が奏でるコンチェルト』
パジャマ姿でおしゃべりに夢中になっている2人の少女(悠奈&EUREKA)の右手奥にある扉が開き、お風呂上りらしく髪を濡らしたユナがバッグを片手に入ってくると首を傾げる。
「何の話?」
「内緒〜♪」
顔を見合わせて首を傾げたり、唇に指を当てたりしてはぐらかそうとする悠奈とEUREKA。
『しあわせ繋ぐ 香りの魔法』
「教えてよ〜!」
笑いながら悠奈にじゃれつくユナと
「ダメだよ〜♪」
と言いながら逃げようとする悠奈。それを遠くで見詰めて笑っているEUREKA。ユナが悠奈に抱きつき、さらりと揺れたユナの髪の香りに悠奈がふっと真顔になる。
「良い香りだね」
『あなたに そっと伝えたい』
悪戯っぽい笑顔でユナとEUREKAが顔を見合わせ、持っていたバッグの中からシャンプーとリンスを取り出すユナと、部屋の片隅に置かれていたバッグから同じ物を取り出して微笑むEUREKA。
「じゃーん!」
『わたしの秘密 わけてあげる』
「えー、2人でずるい〜!」
悠奈が逃げるEUREKAを追いかけてドアの向こうに消え、暫くその扉を見詰めた後で、ユナが唇に人差し指を当てて悪戯っぽくウィンクをする。
テーブルに置かれたボトルが大きく映し出され‥‥
『弾ける香りを纏う髪は』
『Sweet Paradise“Melody”』
『友達だけに教えたい、秘密の幸せ』