朝笑サプリ 雪合戦編アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/17〜12/19
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●本文
『ここはとある高等学校。
少し面白い先生と生徒達が織り成す学園の1コマを、通勤・通学前の貴方に・・・・』
人工雪が舞い散る中、綾音 乱華(あやね・らんか)が相も変らぬゴシックロリータの黒い衣装をズリズリと引きずりながら現れる。
寒いのが苦手な彼女、今日はマフラーに手袋と重装備だ。
「さて、今日は雪合戦を行います」
ズビリと鼻を鳴らしながらそう言い、クシャミを1つする。
「雪合戦をするにあたってのルールと言うか、手順がありますので書いておきます」
乱華はそう言うと、モコモコとした手袋をはめた手に棒を握り、白銀の地面に文字を書き始めた。
*雪合戦を行うに当たっての手順
・まずは2つのチームに分かれます(各チームに1人監督を入れる事)
・次に、自分が用意してきた服を着用します
・その服を着るに値する性格になりきって下さい
・準備の時間は10分です。その間に雪玉を作るなり壁を作るなりしましょう
・笛の合図で速やかに作業を中止し、先生の「スタート」の合図と同時に雪合戦開始です
・雪玉に当たった人は、前回作った雪だるまのところまで避難して来てください
・最後の1人になった人がいるチームが勝ちです
「用意してくる服はどんなものでも構いませんが、寒いのでなるべく暖かい格好をオススメします」
乱華がそう言った時、スタッフから「服に値する性格になりきるとはどう言う事ですか?」と言う質問がとぶ。
「例えば、白いロリータ服を着てきた場合、その服に似合うように仕草や言葉遣いを変えて雪合戦を楽しみます」
つまりは、ロリータ服なんて可愛いものを着ていながら「おい、お前ちょっとこいやぁ!」などと乱暴な口調で喋ってはいけないとか、そう言うことなのだろう。
真っ白でふわふわのロリータ服から想像するのは、可愛らしい女の子だ。一人称は自分の愛称でちゃんづけ、二人称は愛称にちゃんか君をつけておっとりとした可愛らしい口調で喋るイメージがある。
簡単な例を挙げれば、猫耳をつけておきながらワンとかチューとか言ってはいけないのだ。猫耳をつけた以上はニャンと素直に言って欲しい。
ようは服の持つイメージになりきって欲しいということだ。
「まぁ、笑いをとりたければ自分とは正反対の性格を演じてみるのも良いかも知れませんね。監督は衣装のイメージを上手くつかめていない人にビシビシ指示を飛ばしてください」
スパルタOKの許可が下りる。監督はツッコミだけでなく、ボケのフォローも上手く行わなくてはならない大変な仕事なのだ。
「注意事項として、スタッフに雪玉を投げてはいけません。カメラマンなどに当たると怪我をしかねません。それと、天井に向けて投げてもいけません。照明が割れて悲惨な事になります」
当たり前の事を言いながら、足元に降り積もった人工雪に手を伸ばす乱華。
「基本的なルールを書いた紙が教室内に貼ってあるので、忘れている人はキチンと読んでから来ること」
*ルール
・暴力はいけません
・ものを壊してはいけません
・誰かがボケた場合は必ず誰かがツッコんであげましょう
・ツッコミの人はボケに引きずられずにツッコミを貫きましょう
・笑いは爽やかにとりましょう
・制服はきちんと着ましょう
・クラスでの合言葉を忘れないようにしましょう
「それから前回も言いましたが、シロップやスプーン、器などを持ってきた生徒は速やかに提出しましょう。いくら人工と言っても食べられません。お腹を壊します!この雪をカキ氷にしないように、監督は見張りの強化をお願いします」
乱華はそう言ってジロリと生徒達を見渡した後で、ポツリと言葉を零した。
「今回、早めにリタイヤしてしまった人のためにカキ氷を作っておきます。が、手を抜くことのないように気をつけましょう」
最後の言葉に力を込めると、腰に手を当ててお決まりの台詞を紡ぐ。
「クラスの合言葉、忘れている人はいませんね?“皆さん元気に行ってらっしゃいませ”です。これが言えない人は他クラスの刺客ですから気をつけましょう」
●リプレイ本文
乱華は集まった生徒達を見るとこめかみを押さえて深い溜息をついた。
「まず、ツッコミ天然ボケ隊長小峯吉淑(fa3822)今回もまたボケか?」
「な、違いますよ!監督ですっ!」
そう言って胸を張る吉淑だったが、その装いはホルターネックのスパッツ型ビキニだ。トロピカル色のパレオが吉淑が歩く度にヒラリと靡く。足元はハイヒールサンダル、頭には造花で飾った麦わら帽子、冷たそうな氷入りジュースまで装備している。が、彼が立っているのは雪が降りしきるスタジオだ。明らかにおかしい。
「ああ、日差しが眩しいっ」
目から涙を流しながら、天井を仰ぎ見る。夏を満喫しているコスプレなので、寒さ負けは御法度なのだが、痛ましい姿にこちらが泣きたくなってくる。
「あと異様に浮いてるのが、そこの美少女」
そう言って指をさされたのは千架(fa4263)だった。
「美少女じゃねぇ‥‥じゃなく、皆様初めまして」
やけにゴテゴテとした白のウェディングドレス姿の千架はクルリとクラスメイトに向き直ると頭を下げた。
「そして本日まで大変お世話になりまして、先立つふ‥‥じゃねぇや、千架幸せになります」
キラキラスマイルを向けられても、如何したら良いのかわからない。急に始まった台詞の意味もしかりだが、それ以前にあんたら男じゃ(以下略)
「この2人以外は、まぁ分かるコスプレだ‥‥いや、ちょっと待て!?旧ツッコミ学級委員長姫乃 唯(fa1463)なんだそのブカブカの衣装は!」
唯が着ていたのは、戦隊ヒーロー物の赤いコスチュームだった。唯いわく「朝番と言えば戦隊ヒーロー!」と言う事だが、虚しい独りチームだ。しかも、成人男性用のコスチュームらしく、ブカブカなのが貧弱ヒーローっぽく映る。
「あー、もう!とにかく雪合戦開始だ、開始っ!」
乱華はそう言うと、ヒラヒラと手を振って盛大な溜息をついた。
Aチームはレッドヒーローの唯と夏のお嬢さんの吉淑、厳つい戦国武将スタイルの可愛い系元気ボケ・あずさ&お兄さん(fa2132)、パツパツの執事服を着た犬神 一子(fa4044)と言う布陣だった。
「ヒーローはそんな卑怯な事はしない!真正面から戦うのみだ!」
と言って雪玉も壁も作らない唯。しかも、雪合戦開始時には「君達は安全な場所に避難するんだ!ここは任せろ!」とヒーロー発言をし、吉淑の「チームプレイって言葉知ってますかぁ!?」と言う台詞すらも聞こえていない様子だった。雪玉が行き交う中にヒーローらしく飛び出し、ブカブカの衣装を踏んづけてヒーローらしくなくコケる唯。
「うわっみっともなっ」
「必殺・雪玉ビーム!」
唖然とする吉淑の前で、ひたすら雪玉を投げて攻撃を開始する唯。我武者羅ぶりが尚更ヒーローらしくない。しかも、壁を作っていなかったために真っ先に当たるヒーロー。
「やっぱりヒーローも赤だけじゃ役に立たないよね〜」
朝のヒーローも、グループにならなければその実力は発揮できないようだ。
ヒーローの脱落を受けて、派手なミニスカサンタ姿の竜華(fa1294)は首を傾げていた。4:4で分かれたはずなのに、何故か同じチームの人間が3人しか居ない。
「しまって行こう!センター行った!」
と言いながら、野球のユニフォームを着用して走り回る海風 礼二郎(fa2396)と千架しかいないのだ。もう1人はどこに行ってしまったのだろうか。過剰に野球のような動きを入れて走り回る礼二郎を視界の端に、竜華は壁の陰に隠れて動かない千架に声をかけた。
「何でウェディングドレスなの?」
「白雪には保護色のドレスが最適かと」
「逆に悪目立ちしてるわよ?それより、早く行かないの?」
「お父様の到着がまだですの」
「父親って、犬神さん?」
竜華の質問には答えずに、寒いからと言って上に半纏を着込む千架。居座る気満々だ。
礼二郎の奮闘を見ながら、あずさはこの戦の勝利を感じていた。何せ、こちらは鎧装備だ!
「これなら雪玉が当たっても痛くも痒くもないわ!」
「いや、当たった時点でダメだから」
痛くも痒くもないだろうが、失格にはなる。しかも、重量のある鎧のせいで動きが鈍い。
「雪だるまより亀っぽいわね!」
夏のお嬢さんは辛辣だ。と言うのも、何もないところで突然転んで「者共!起こせぇっ!」だ、そりゃぁ亀っぽいと言いたくもなるだろう。しかも、スタート合図時からノロノロと動くこと数分、ヒーローがいなくなった後に「者共かかれぇっ!」と叫び、出陣の合図のホラ貝を吹くもひゅ〜っと言う情けない息の音が聞こえただけだ。「音出ぇへんのかい!」と言う吉淑のツッコミに心から拍手を送りたい。
そんな亀さん武将はズッコケヒーローの次に雪玉に当てられて、雪だるまの場所へと避難しようとするのだが、どう頑張っても素早く動けない。
「うっわー、邪魔☆速く撤収!撤収!」
「も、者共、手伝うのじゃぁっ!」
なんとも傍若無人な亀武将さんだったのでした。
「御主人様、逝ってらっしゃいませ」
と笑顔で言いながら雪玉を投げる一子だったが、壁を破壊するほどの剛球は本当にソウなりかねない。ただ、コントロールの関係でまだ誰にも当たっていない事が救いだった。
「むむむ、当たりませんなあ。失礼いたしました」
執事式のお辞儀をして謝る一子だったが、当たったら失礼しましたどころの騒ぎではない。
「きゃぁ〜、執事萌え〜!頑張れぇー!」
夏のお嬢さんがその背中に黄色い声援を向ける。何度も言うが、頑張れば人の生死に関わる。そんな弾けているAチームとは逆に、Bチームは追い詰められていた。唯一頑張っていた礼二郎が夏のお嬢さん攻撃に倒れてしまったのだ!
「まだ逝かないの?」
竜華が千架にそう訊くが、一子の豪腕ぶりからして洒落にならない。
「花嫁はヴァージンロードを歩くものですわ!」
「誰が花嫁ですか〜〜〜!!!」
そんな大声とともに、壁の下から赤い雪男・九条・運(fa0378)が姿を現した。雄叫びを上げる勇ましい運に、千架がつぶらな瞳を潤ませる。
「赤絨毯発生!行って参ります」
そう言って踏んでいるのは運だ。ぐえっとなっている運だが、細い千架は(多分)軽いので大丈夫だろう(多分)
「花嫁と言えばブーケトスっ!!」
雪玉を後ろ向きに投げる千架。その雪玉はれっどいえてぃを直撃した。
「味方に投げないの!」
「‥‥ダメ!やっぱり意に添わぬ結婚は出来ないわ」
竜華のツッコミを完全無視して、千架は一子の方に手を差し伸べた。
「セバスチャン!連れて逃げて!」
「お嬢様!」
セバスチャンって勝手に名前付けるなよ、それ以前に、逃げてとか言う問題じゃないよ等、ツッコムべきポイントは沢山あったはずだ。それなのに、吉淑がチョイスしたツッコミは明後日の方角を向いていた。
「ちょっと待たんかいやぁ!うちが許さんでぇぇ!」
執事さんはうちのもんやで!な、ノリだ。お茶の間から怒涛のツッコミが聞こえて来る。そんな吉淑の目の前で、千架と一子が手を固く握り合う。竜華が盛大な溜息とともに雪玉を握り締め「お幸せにね、祝儀よ〜♪」と朝笑らしい爽やかな笑顔で2人に祝福を投げつける。
「セバスチャン!私を庇って‥‥」
竜華の攻撃に千架が目を潤ませ、一子がカッコ良く雪玉から千架を庇うが、庇った時点で失格だ。
「お嬢様、最後までご一緒できずに申し訳ありません‥‥がくっ」
「セバスチャーンっ!!!」
「可哀想な執事タン」
そう言いつつ、吉淑はしっかり千架に雪玉のご祝儀を投げてあげたのだった。
竜華と吉淑の一進一退の攻防を見ながら、唯は半纏を着こんで寒さに震えていた。乱華から出されたかき氷を食べながら、ブルブルガタガタ。最初は幸せそうにカキ氷を食べていたあずさだったが、真っ青な唇でコレは罰ゲームなのでは?と言う考えが浮かんでくる。が、一切手は休めずに食べ続けている。
「さぶいよ、温かい豚汁が食べたい」
震えながらそう呟いた唯の言葉に、一子が持ってきた水筒からカップに緑茶を淹れて「御主人様、お茶が入りました」と言いつつ唯に差し出す。彼はこうなる事を予想して熱い緑茶を水筒に持ってきたのだった。嬉しそうにそれを受け取ってコクリと一口、唯がカップを雪の上に落とした。
「冷たっ!!」
「え?」
慌てて一子が確認してみると、なんと中身が冷たい緑茶に変わっている!一体誰がこんな事を?沈黙する失格組の目の前で、乱華が雪玉を掴むと吉淑と竜華に当てた。
「おーっほっほっほ!やっぱり乱華のクラスの子達はダメね!」
高笑いとともに顔を覆っていた乱華マスクを取る。中から現れた顔は、乱華の美しい顔などではなかった。なんと言うか、まぁ、濃い顔と言うか、そのー、濃いヒゲとブルーを基調とした濃いメイクの男せ‥‥女性?だった。
「誰ですかあんた!」
「私の名前は乱葉(らんよう)よ!隣のクラスの担任の美人女教師よ!」
女発言はこの際置いておくとしても、美人とはとんだ勘違いだ。
「この番組を乗っ取りに来たわ!そう、朝笑サプリは私のように美しい者が担当してこその番組!」
美しさで言えば、乱華の方が格段に上だろう。突然の闖入者に戸惑う朝笑メンバーの前で、乱葉は高らかに宣言をし出した。
「乱華は預かったわ!返して欲しくば私の挑戦を受けなさい!」
‥‥どうする、朝笑学園乱華クラスメンバー!?