お嬢様の事情2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
5.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/03〜01/05
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●本文
泣く子も黙る、超絶美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)は真っ白な肌に艶やかな長い髪、薔薇色の唇に大きな二重の瞳、まるで精巧に作られた人形のように整った外見をしていた。
頬に薄っすらと影を落とす長い睫毛が、瞬きをする度に揺れる。
「えーっと、お母様?もう一度仰っていただけますか?」
「えぇ、勿論ですわ」
可憐と良く似た顔立ちの母親は、こちらも可憐に良く似た甘い声で先ほどと同じ言葉を紡ぐ。
「今年のお年玉ですけれど、少し趣向を凝らしてありますの」
「趣向、ですか?」
「お年玉をとあるところに隠しておきましたの」
そう言って、上品に口元に手を当てて微笑む。
「どうしてそのような回りくどい事を?」
「直接渡すだけでは、つまらないかと思いまして」
「そうですか」
「そうですの」
うふふ、おほほと、上品な笑い声が響く。
それを近くで見ながら、大胡 信也(おおご・しんや)は冷や汗を流していた。
「‥‥こんの、ババーーっ!!素直に渡しやがれってんだよっ!」
「オーーーッホッホッホ!やぁね〜、そんなつまんないこと、するわけないじゃーん」
「じゃーんじゃねぇよ!自分の歳考えやがれ!」
「だぁってぇ〜。つかさぁ、超うるさいんだけどぉ〜」
「っかーーー!!ムカツク!その言葉遣いがムカツク!」
「お嬢様、落ち着いてください!」
信也が可憐の腕を取って何とか止める。
‥‥実は可憐、こんな“可憐”な外見をしているのに性格はいたって乱暴で俺様だ。
そして可憐の母親である儚(はかな)は、可憐と良く似た顔立ちの美女なのに、性格はいたって“若者”だ。
さらに、可憐の世話役をしている信也は、王子様か勇者様か!?と言うほどの美男子にもかかわらず性格はかなりヘタレている。
この3人、外見と中身がまったく一致していないのだ。
「信じらんねぇ!何でお年玉渡すだけでこうも回りくどいことすんのかねぇ」
「儚様は、時期が来れば直ぐに見つかるところに隠してあると仰っていましたね」
「あぁ。ただ、誰のとこに行くかはわかんねぇっつってたな」
「間違って口に入れてしまう恐れもあると」
「‥‥お金じゃねぇっつってたよな」
暫し沈黙の時が訪れる。
2人とも、最悪の“もしも”に行き当たっていたのだ。
「なぁ、ジジイ。家って確か、近所にお節配ってたよな、毎年」
「えぇ。儚様が毎年配っていらっしゃいますね。昨年度の感謝と、今年度のご挨拶を込めて‥‥まぁ、今年はそのお役は私が勤めさせていただきましたけれど」
「‥‥今年の俺のお年玉、誰のところに行くかわかんねぇっつってたよな」
「はい」
「間違って口に入れちまう恐れがあるっつってたよな」
「えぇ」
「‥‥お節に入れやがったんだアイツっ!!!!!」
「どうしましょぉぉぉぉっ!!!もうお節は全て配り終わってしまいましたよ!?」
「ぜぇぇぇってぇ見つけ出す!おい、ジジイ!配った家に案内しやがれっ!」
「ですけれど‥‥」
「口答えか!?俺様に口答えすんのか!?」
「めめめめめ滅相もありませんです!わたくしめ、お嬢様のためなら火の中水の中」
「には入らなくて良いから、とっとと案内しろ!」
「は‥‥はい‥‥」
‥‥こうして新年早々、わたくしめとお嬢様はお年玉探しの旅に出たので御座いました【信也談】
≪映画『お嬢様の事情』募集キャスト≫
*白雪 可憐
泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』
*大胡 信也
女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
・その他
*白雪家のお節を受け取った人
・可憐と信也の友人
・可憐や信也の家族 など
*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)
●リプレイ本文
可憐(阿野次 のもじ(fa3092))は信也(角倉・雨神名(fa2640))の後に続きながら不機嫌そうに顔を歪めていた。
「ってか、新年早々(俺様が後々牛耳る事になる予定の)白雪家の世間体台無しって感じー?」
「お嬢様、お考えが漏れ聞こえて来るのですが」
「‥‥馬鹿野郎!他人の口癖が移ったじゃねぇか!」
「お嬢様、儚様は他人ではなく血の繋がった‥‥」
「るっせー!」
ゲシリ。八つ当たり以外の何者でもない。新年早々無体な可憐だが、今に始まった事ではないので信也は黙って耐えていた。相変わらず健気な男だ。
「よし、ヘタレ野郎!御節回収にはまず隣のくま‥‥」
「高田様です」
「そうそう、ンな名前の。そっから行くぞ」
「明けましておめでとう。新年早々何を慌ててらっしゃいますの?」
大柄で筋肉質、童顔で優しそうな外見の高田麗子(ティタネス(fa3251))は突然の来訪者に驚きながらも事情を聞き、首を振った。
「御節なら先ほど皆でいただきましたけど、それらしいものは入っていませんでしたわ」
「そうですか。それならわたくし達はこれで‥‥」
「初詣よりそちらの方が面白そうですわね。私も同行させていただきますわ」
「いえ、新年早々にこのような事に巻き込むわけには‥‥」
「ほーっほっほ!遠慮なさらなくてもよろしくてよ!」
可憐が必死に遠慮と言う名の拒否をするにも拘らず、麗子は無理矢理2人について来る事になった。これがゲームならばキャンセルボタンで仲間にするのを拒否れるのに!と、可憐が思った事は麗子には内緒だ。
次に可憐一行が訪れたのは姫月 牡丹(槇島色(fa0868))のお屋敷だった。瓶底眼鏡をかけた冴えない容姿の牡丹は、可憐達を部屋に通すとオドオドしながら三つ指をついて頭を下げた。
「あの、新年あけましておめでとうございます」
「おめでとう御座います。本日は、姫月様にお願いがあって参りましたの。御節に一部おかしなものが混入されている疑いがありまして、もし宜しければ確認させていただけないでしょうか」
「えっと、御節を‥‥ですか?お持ちしますのでお茶でも飲んでお待ち下さい」
牡丹はそう言うと、そそくさとお茶を入れて奥へと引っ込んで行った。これだけ大きなお屋敷に住んでいるのに、ジャージにどてらと言うセンスの牡丹に麗子が溜息をつき‥‥可憐が、あんたのセンスも悪いよと言いた気な視線を麗子に向ける。
そうしているうちに、御節を持って牡丹が帰って来て‥‥3人の目の前にお重を置いた拍子に眼鏡が外れた。瓶底眼鏡のせいで分からなかったが、結構な美人だ。
「おいコラ、人様にあげた物をすぐさま返せとはどういう了見じゃ!?この御節に何かあればすぐに返すが‥‥何も無ければどう落とし前つけるんじゃ!?何か言うてみぃ!」
「拝見したいと言うだけですので、何も無ければお返しします」
可憐が丁寧にそう返し、断ってから蓋を開く。食べ物の中に何か入っている可能性があるだけに、丁寧に見ていくが‥‥結局何も見つからなかった。
「もし何かありましたらご連絡下さい」
「わ、分かりました」
牡丹が小さくなって頭を下げ、落ちそうになった眼鏡を慌てて押さえた。
「おーっほっほ!あら、可憐様じゃございませんの。ハッピーニューイヤーですわ!」
田中 よし子(姫乃 舞(fa0634))は高笑いとともに可憐一行を出迎えた。高飛車な性格で、麗子と似たものを持つ彼女だったが、その服装は非常にダサかった。時代遅れなデザインの眼鏡に飾り気の無いブラウス、どうしてチョイスしたのか分からないモンペ。
「わたくしの家まで可憐様自らがご挨拶にいらっしゃるなんて、珍しい事も御座いますのね。天変地異でも起こるかも知れませんわね!」
貴方のその不思議なスタイルこそ天変地異の前触れかも知れません。とは、誰も言えない。早くこの妙なお嬢様の前を後にしたい、その思いから可憐が矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
「御節なら確かに頂きましたわ。なかなかの物でしたわよ。最も、ウチのお料理程では御座いませんけれど!」
「中に変な物は入っていませんでしたか?母が間違って、どなたかの御節の中にお年玉を入れてしまったそうですの」
どんな状況ならお年玉を御節の中に入れるのか。ツッコミを入れたい信也だったが、ヘタレな彼は残念ながら声が小さい。
「その様な物は入っておりませんでしたけれど‥‥面白そうなお話ですわね。わたくしも一緒に参りますわ!」
丁重にお断りしようとした可憐だったが、よし子は無理矢理ついてくる。
(だぁっ!こんな変な格好した女と一緒に歩くのか!?歩くのか!?)
(か、可憐様、落ち着いてください!)
信也は痛む胃を抑えながら、なんとか可憐を宥めた。
最後に来たのは三条充子(シヴェル・マクスウェル(fa0898))のお屋敷だった。ドレスにコートの外国人淑女は可憐達が尋ねていくと優雅な物腰で現れて笑みを浮かべた。
「いらっしゃ〜い」
関西独特のイントネーションだ。
「ありゃ、今日はお友達も沢山なんね?可憐ちゃんに信也君によし子ちゃんに麗子ちゃん、それから、貴方は?」
「私は美少女探偵の山田 クリスティ 彩子(仮名)。探偵なので本名は明かせません」
そう言うと眼鏡をかけた文学少女風の彩子(泉 彩佳(fa1890))が唇に指を当てた。
「探し物と言えば探偵に頼むのが一番ですわ!」
この張り紙を見て電話をいたしましたのと言って、麗子が可憐に1枚の紙を手渡す。
「探偵ごっこで作ったやつですけれど、きちんと事務所につながるようになっています」
ピンク色のいかにも怪しげな張り紙に電話をかけるなんて、麗子はどうかしている。そもそも、事務所と言いつつ書かれているのは携帯の番号だ。
「高田様に山田様、お2人とも何かまちが‥‥いえ、何でも御座いません」
ジロリと睨まれた信也が、可憐の背後に隠れる。
「この貼り紙のどこがおかしいとおっしゃいますの?」
何もかもだ。
「さぁ、そんなところで話しとらんで。生憎主人はおらんけどゆっくりしたってや〜。ああ、そうそう。儚さんも来てはるで?」
いきなりの敵の登場に驚く可憐。やはりお年玉はここにあったのかと思いつつ、充子に事情を説明して御節を取りに行ってもらう。そして、可憐は敵が寛いでいると言う部屋の扉を思い切り開け放った。
「あ、みんな〜、やっほ〜♪」
「こンの、ババー!!なに寛ぎやがってんだアホー!」
まったりとお菓子をつまんでいた儚(角倉・雪恋(fa5003))に可憐がつかみかかろうとした時、充子がお重を持って入ってきた。金目のものではなかったのを残念がりながら、お重の中に入っていた龍玉を可憐に見せる。
「こんなでかいもん間違って喰えるかボケっ!!」
「食べられますよ♪」
大食いの彩子が手を伸ばそうとするが、可憐がそれを叩く。と、叩いた拍子にお重が傾き中から封筒が落ちた。恐る恐る豪華なそれを開ければ、中には見た事のある文字で一言
『これを見てから10秒以内に龍玉7つ集めないと栗きんとんの中の時限爆弾が爆発します☆』
チクタクと、秒針が無情にも時を刻む音が響く。
「お嬢様!わたくしめに構わず、おおお逃げください!!」
「お前がしがみついてちゃ逃げられるモンも逃げらんねーだろーが!!」
可憐が、背中ににしがみついている信也を一喝する。
「だ、誰か何とかなさい!」
よし子がオロオロとしながら座布団の下に隠れる。が、薄い座布団1枚ではどうにもならない。
「どどどど、どうしましょうかかか、可憐様!」
プルプル震える信也の腕を振り払うと、ガラリと窓を開ける可憐。
「ンなお年玉ってあるか!?お年玉は時限爆弾?‥‥アホかーーー!!」
大きく振りかぶって上空へと飛ばされる重箱。そして‥‥パカーンと言う音が響くと、上空から『あけおめことよろ♪』と書かれた紙が降って来る。他にも『世界が平和でありますように』や『今年も美しさが損なわれませんように』や『儚様世界一☆』などと書かれた紙が降って来る。
「今年の初ビックリ〜」
「儚さんらしい演出やわ〜」
「さ、流石は儚様。お、面白い趣向でしたわ!」
充子が感心したような声を洩らし、取り乱していた自分を誤魔化すかのように、よし子が座布団の下から出てくると乱れた髪を整える。
「わたくし、修行して出直して来ますわ!それでは皆様ごきげんよう。おーっほっほ!」
「あー、驚きましたわ。でも、流石は儚さん」
よし子が不思議な言葉を残して去って行き、麗子がほっと胸を撫ぜ下ろしながらそう言う。
「たまやですわー。本年も良い年でありますように、わたくしも神様にお祈りいたしますわ」
今更ながら猫をかぶり、にっこりと天使の笑顔を浮かべて乱れた服を直す。
「そや、はいこれ、お年玉。皆にもな〜」
充子がそう言って、麗子と可憐、信也にポチ袋を手渡し、よし子の分は麗子に渡してもらうように頼む。少し考えてから彩子にも手渡し‥‥
「あ、そうです!お年玉で思い出しました。今回は紛失物探しなので、可憐さん‥‥と、信也さんの2人にお年だ‥‥じゃなく、探索料を請求しますね」
「あはは、山田様?」
可憐が可愛らしい笑みを浮かべながら彩子に近づき、どす黒い笑みに変えると地獄の底から響いて来るような低音で呟いた。
「お前は今回なんの役にたった?第一、お前を呼んだのは俺じゃねぇ。麗子に言え、ンなもん」
儚からお年玉を貰えなかった可憐は、超絶不機嫌だった。