SPLive 七色の夏アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/19〜07/23
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●本文
「立花さん!今回のテーマはなんですか!?」
「立花さん!顔色が悪いですけれどもどうかしましたか?」
「立花さん!早くテーマを決めてくれと上が・・・」
「うーーーるーーーさーーーいーーー!いっぺんに話すなっ!」
頭に手を当てながら、立花・マドカはそう言うと青い顔をしてジロリとスタッフを睨みつけた。さながら妖怪か幽霊か、恐ろしい形相のマドカに思わずひっ!と声を洩らしそうになる。
「今回のテーマは『七色』と『夏』で行くわ」
「七色と夏・・・ですか?」
「そう。背景は夏っぽいものに固定するわ」
「夏ですか・・・良いですね。なんだか爽やかで・・・」
「と・こ・ろ・が!七色なんだから、どんな夏があっても良いのよ。青で夏ならば爽やかな雰囲気だけれど、桃で夏ならどこか甘い感じがするでしょう?」
「つまり、夏をお題に何か考えろって事ですか?」
「そうね。夏のワンシーンを歌にした・・・そんな感じが良いわ」
「七色はどんな色でも構わないけれど、なるべくイメージしやすい色が良いわね。その色を照明で出しても良いし・・・」
「背景のスクリーンは幾つか候補あげます?」
「出演者の人から指定があればそれに従って。サンプルはないかって聞かれたら幾つか提示してあげて」
「そうですね、こちらでは『海辺』『花火』『夏の森』の3つの映像を出しときます」
「了解したわ」
マドカはそう言うと、指示を書いた紙をスタッフに手渡した。
・夏のワンシーンをイメージする歌詞、曲
・色は何色でも可。照明の色、明るさと共に指定を明記のこと
・ソロでもグループでも参加可
・背景は、夏を連想させるもの。サンプル以外の映像も可能だが、事前に映像をスタッフに提出すること
・歌以外もなにかプラスのモノを見せること
・歌詞はオリジナルのもののみ
「これにそって動いてくれる?」
「あと、自分の後に歌う人の紹介をするんですよね?トップバッターの人は、一番最後に歌う人が紹介する・・・」
「そう」
青い顔のままフラリと立ち上がると「じゃぁ、後はお願いね」とだけ言ってどこかへと行ってしまった。その足取りは重く、具合でも悪いのだろうかとスタッフの1人が心配し始めた時、隣に立っていた男性がポツリと呟いた。
「ありゃ二日酔いだな・・・」
◆補足
・ステージは2箇所、向かい合わせにあります。2つのステージの真ん中にはエキストラ(お客)が立っており、カメラもあります。
・AステージもBステージも同じつくりです。
・トップバッターは必ずAステージでライブを行ってください。2番目以降はAかBどちらかを選んでください。
・続けて同じステージの使用もOKですが、その場合はバックバンドの入れ替えに時間をロスしてしまいます。
・バックバンドを使わない場合は前もってスタッフに使用する曲を渡しておいてください。
・SPは、セルフ・プロデュースの事です。自分達の個性を、個性が集まった1つのライブの流れを、自分達の手で作り上げてください。
●リプレイ本文
既に開場時刻は過ぎているにも拘らず、スタッフはバタバタと走り回っている状態だった。
「最終チェックお願いします!」
「スクリーンの映像は!?」
その様子を横目に、蓮 圭都(fa3861)は隣に立った柊アキラ(fa3956)と顔を見合わせて小首を傾げた。慌しい会場内はピリピリとした雰囲気に包まれている。
「どうしたんでしょうか・・・」
美笑(fa3672)が不安そうな顔で2人に近づき、ステージの袖から会場内を見詰める。Bステージにスタンバイに入っていた3人の目の前、Aステージでなにやら大掛かりなセットが組まれているらしいのだが、こちらからではよく見えない。
「新しくセットを組んでいるんだけれど思いの外時間が掛かっていて。要領が悪くて申し訳ないわ」
3人の背後から暗い表情のマドカが出て来てそう言うと、チラリと腕に巻かれた時計に目を落とした。
「そろそろ開場しないとダメね・・・」
◆
予定から30分遅れての開場に、場の空気は張り詰めていた。散々待たされたお客は椅子のないこの会場内で立ったままライブを見ることになっている。各ステージに散ったスタッフも緊張の面持ちをしており、どこかぎこちないまま合図が出される。
「本番5秒前、4、3、2・・・」
「さあSPLiveの始まりです!今回のテーマは『七色』と『夏』そんな夏のワンシーンを飾る最初のステージは今勢いのある女性三人のユニットDream Gardenです!」
Bステージの中央で、圭都とアキラが背中を合わせて片手を差し出す。ユニット名のコールが2人の綺麗に合わさった声で告げられ、Aステージにライトが集中する。
真っ白なスモークが立ち上り、微かなモーター音が響く。青のライトが照らし出す中、ブンと微かな音を立ててモーター音が止まった。会場内にざわめきが走り、スタッフ数名がスモークの中体勢を低くしてステージに近づくと、小桧山・秋怜(fa0371)とリュティス(fa1518)に手を差し伸べる。元々ステージになかった奈落を急ごしらえで作ったために、上手く作動しなかったようだった。
スタッフの手を借りてステージに上ると、背景は既に青空に浮かんだ虹が映し出されており、シャボン玉が左右から飛んできている。
『The other side of a rainbow』
七色に輝く空
水面(みず)の上に輝く光
僕はそれを追いかける
いつか再び君に出会える様な気がするから
今年も僕はその光を追いかける
The sky which shines in rainbow clor
いつかきっと再び君に出会うその時まで・・・
この手に掴んだその輝きを
見失わないように離さないよう ぎゅっと掴み続ける
The sky which shines in rainbow color
Until someday to catch in my hand
いつか君と一緒にその輝きを見つめるその日まで・・・
「二人で一人、一人で二人の不思議アイドル『あずさ&お兄さん(fa2132)』の音楽への初挑戦です」
Aステージが暗転してBステージにライトが集中する。
明るいライトの中、サンバ調の軽快なメロディーが鳴り響く。海辺の背景が鮮やかで、寄せては引く波の下、あずさがグっとマイクを握り締める。
『Come To Me!』
眩しい夏の空の下 気分は今日もサイコー!
だけど私の隣 空席なのはどう・し・て?
『こんな美人が二人もいるってのに、みんな見る目がないわね』
「えーと、お兄さんちょっと離れてくれるかなっ?」
『なんで!?』
小指の先の赤い糸 いつか出会うはずの人
運命を信じてるけど やっぱり待ちきれな・い・よ!
『もう少し落ち着きなさいな。がっつくと貧乏くじを引くわよ』
「あっ、あんなところにかっこいいオジサマがっ!」
『えっ! どこ、どこなの!?』
「ウ・ソ♪ お兄さんこそ、もう少し落ち着いたらっ?」
赤い糸を引っ張って あなたをここへ引き寄せる
夏が終わるより早く 私に会いに来・て・よ!
「一体どんな人が来てくれるのかなっ……なんだかドキドキするよっ」
『引っ張ったら、その先に「スカ」って書いた紙が』
「む〜、そんなことないもんっ!」
小指に引きを感じたら ためらわないでついてきて
一瞬一秒でも早く 私に会いに来・て・よ!
「続いてはっ! クリアーな歌声のプリズムが映し出す虹!桐原 芽衣(fa3376)さんですっ!」
スクリーンに真っ青な空が一面に広がる前で、黄色いワンピースに麦わら帽子を被った芽衣が軽やかな足取りでステージ中央へと歩み寄る。
『七色の虹』
虹の足元には宝物が埋まってる
だれもが知っているおとぎ話
さあ、虹を探しに行こう
軽いステップを踏みながら
うきうきとどきどきを一緒にして
虹探しのスタートの合図
それは空が泣くのを止めた時
さあ、走っていこう
あわてん坊の虹が消える前に
その足元に辿り着けるように
行った事もない遠い場所
虹が生まれる最初の所
さあ、掘り出そう
夢と希望のシャベルを持って
期待で胸を一杯にしながら
七色に輝く虹を探しに行こう
その足元にはとびきりの幸せが眠っている
ピアノが主旋律を奏でる曲は弾むようで、見ているとどこか温かい気持ちになれるステージだった。静電気を帯びたシャボン玉がステージを舞い、手に持ったストローでシャボン玉を軽く揺らす。軽い足取りのステップは楽し気で、最後に芽衣は近くを漂っていた虹色のシャボン玉をパチリと割った。
「次は美笑さんの、新作音楽ゲーム収録曲”Sun―Set Game―Set”にバトンタッチ、です」
幸運のストローをタクト代わりに使い、それを受けて水色のワンピースを着た美笑がステージ中央にライトアップされる。オレンジのライトに照らされたスクリーンには夕暮れ時の浜辺が映し出されており、ミドルテンポのユーロビーロが切ない旋律を帯びて響き始める。
『Sun―Set Game―Set』
突然 あなたに誘われた 海へのJourney
これが きっと最後のChanceだと 自分に言い聞かせる
だけど 知ってしまった あなたの その視線の先
そして この旅行の 意味・・・
だから
夕闇迫る 黄昏の浜辺で
ひとり たたずんでる あなたに
伝えたい でも言えない たった一言
あなたが好きですと・・・
美笑の片手に持ったショルキーはゲームの画面と連動しており、何度かゲーム画面がオーバーラップする。歌いながらのプレーと言う事もあり、ゲームが疎かになると思いきや、歌の方が疎かになって途中で何度か歌声が途切れた。
「ゲームも遊んでねー☆」
GAME OVERの画面を前に、美笑は笑顔で手を振ると、ふっと表情を大人びたものに変えた。
「・・・日も暮れて、夏の夜といえばお祭。そんなお祭の中を金魚のように泳ぐようにあなたの傍にいたい。今日、最後の曲はそんな素敵な歌です。では、朧月読のおふたりで『金魚姫』です。どうぞ」
ぼんやりとしたオレンジ色の照明がステージを浮かび上がらせる。丸いライトは提灯のようで、その中を和柄のシャツにダークグレーのズボンを合わせたアキラが、黒地にレトロな柄を散りばめた浴衣を着た圭都の手を取りエスコートしながら現れた。圭都の腰を締める赤い兵児帯が長く垂れており、さながら金魚のように宙を泳いでいる。
『金魚姫』
暗い道沿いに明かりが浮かぶ
昼の熱を胸に秘めたまま
夜空を背景とした中で、アカペラの伸びやかな声が響く。ぼんやりとしたオレンジ色の照明が2人を浮かび上がらせ、声が消えた後に一拍置いてから軽快なエレキギターの旋律が空気を振るわせる。
赤い帯をひらひらり 金色の光弾きながら
夜の背景の中、遠くから赤い点が浮かび上がり、段々と此方に近づいてくる。ソレは小ぶりの金魚で、真っ黒な夜の中を泳いでいく。1匹、また1匹と増えて行く金魚はスクリーンの中を楽しそうに泳ぎまわる。
いつもより綺麗に お祭りの夜
腕を伸ばして掴んだ服の端
出あった視線が揺らめくの
赤い金魚が意志を持って散らばっていく。それは段々と金魚の形を崩し、小さな光の粒となって夜空に大輪の花を咲かせていく。
1つ、また1つ、咲く華は明るく、散る粒は夜の闇に溶け紛れていく。
カランコロン 人の流れに
カランコロン はぐれないように
圭都のソプラノの声を支えるように、アキラが低音のハモリを入れる。しっとりとした雰囲気で旋律が抑えられ、圭都が下駄で石を蹴るような仕草を入れる。
はぐれないように泳ぐ
赤い帯をひらひらり 金色の光弾きながら
抑えられていた旋律がふっと掻き消える。ハモリの余韻のみが打ちあがる花火の下で響き、段々と落とされていく照明の中、最後の花火が上がる。
大輪の華、それが消えた時・・・会場内はしっとりとした闇に包まれた。
◆
「マドカさん、本日は有難う御座いました」
演奏中も笑顔を絶やさなかったアキラがそう声をかけ、廊下に立っていたマドカが顔を上げる。
「皆、お疲れ様。トラブルがあって申し訳ないと思うわ。けれど、怪我がなくて本当に良かった。あずささんは可愛らしかったわね。あと、朧月読の2人はとても素敵だったわ。背景がね、綺麗で演出も細やかで。引き込まれるようなステージだったわ」
マドカはそう言ったきり青い顔をして押し黙ると、目を伏せた・・・