ブバル外伝 〜踊り子〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/07〜01/10
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●本文
緑豊かなブバルディア。
西のインディリアと対を成す大国。そこでは今、大変な騒ぎが起こっていた。
封印されていた魔王と12人の僕達が蘇ったのだ!
魔王と僕達によって支配され行く村々。
人々が嘆き、悲しみ、暗い未来に涙した時、人々の希望・勇者:グラディア・グランズが立ち上がった。
と、そこまで聞けば次元の違う世界のお話だと思うだろう。
しかし、魔王の僕達が次元操作とチェンジの呪文が唱えられるとなれば話はグっと近づいてくる。
ここはとある高等学校。
可もなく不可もない、いたって普通の高等学校だ。
しいて言えば、女の子の制服が他の学校よりも多少可愛いくらいだ。
そんな普通の学校で、先日不可解な事件が発生した。
ブバルディアなる場所の宮廷魔術師だと言うリズ・リンガードと、校内でも1・2を争うほどの美少女:千明・千秋が“チェンジ”してしまったのだ。
勿論、その事は事情を知る人達の手によって有耶無耶にされてしまった。
もうこんな不思議な事は2度と起きないだろう。そう思っていたのだが、その考えは甘かった。
「ん〜、やられたわぁ。まさかリズと同じような状況になるとはね」
“彼”はそう言うと、自分の服装を見た。
「私は男の子にチェンジされちゃったみたいね。あー、それにしてもリズから話を聞いてて良かった。流石に何の前触れもなくこうなっちゃったら焦るものね」
きちんと締めてあったネクタイを緩める。見た目は“彼”である“彼女”は周囲を見渡すと、クセで長い髪を背に払おうとした。勿論“彼”の髪は短い。
「ブバルディア1の踊り子、ララ・ラビーナ様をこんなところに飛ばしてきたノベルちゃんにはたーっぷりお仕置きしてあげないとね」
ペロリ、唇を舐める。
「さて、ノベルちゃんはどこに居るのかしら?とりあえず、そこら辺にいる生徒とっ捕まえて、事情をパパっと説明して引きずり込みましょう。こんな迷路の中で迷ってたら時間の無駄だしね」
ブバルディアから来た者にとって、学校のつくりは複雑だった。
ララは自分が男の姿だと言うのを忘れて、丁度教室の前を通ろうとしていた生徒の行く手を遮った。
「ちょっとそこの貴方、協力して欲しい事があるんだけど」
≪映画『ブバル外伝 〜踊り子〜』募集キャスト≫
*ララ・ラビーナ
ブバルディア1の踊り子で、セクシーなお姉様
カッコ良い男の子と可愛い女の子に目がなく、絡みまくる
踊りで相手を魅了したり、眠らせたりする事が出来る
男の子とチェンジしてしまったことは驚きだが、大雑把な性格なので気にしない
→ララとチェンジしてしまった男子生徒の詳細はお任せします。外見年齢15〜18程度
*ノベル
誰に憑いているのかなどはお任せしますが、ノベル自体は男性です
『僕』『〜さん』『ですよね、です』
→丁寧な喋り方です
ノベルは植物に関係する力を使えます(木の成長を早くするなど。詳細はお任せします)
ノベルはララが苦手で、ララに会わないように逃げ回っています
何とか捕まえる事が出来れば、ララが“説得”をしてブバルに帰る事が出来るかも知れません
*生徒
ララを案内する事になってしまった生徒です
男子生徒に色っぽい口調で呼び止められ、更にはブバルディアなる場所の説明をされます
挙句、自分はララで魔王の僕にチェンジされてしまったと、説明は続きます
常識的に考えて、受け入れられることでは有りません。が、ララが笑顔で押し切ります
納得は出来ないながらも、何となくララが恐ろしいので案内をしてあげる、そんな立場の人になります
詳細はお任せいたしますが、上記の事も踏まえて常識的な性格になるようにお願いします
→ララとチェンジした男子生徒の友人と言う設定を付け加えても可
・その他
ララとチェンジしてしまった男の子の友人
学校関係者 など
*ブバルから来たのはララとノベルのみになります
●リプレイ本文
滝沢 麻衣(姫乃 舞(fa0634))は目の前で艶やかに微笑む音無 優(佐々峰 菜月(fa2370))に冷や汗を流していた。
「あの、何かご用、です、か?」
「ちょっとね、人を捜してるのよ。ノベルって名前なんだけど。貴方知らない?」
「いえ。知りません」
男の子なのに色っぽい優に、麻衣が視線をそらせる。
(こんな男子、この学校にいたかしら?ここまで変わっ‥‥個性的な人なら、噂位は聞いていてもおかしくないと思うんだけれど)
「貴方、名前はなんて言うの?」
「滝沢麻衣と申します」
何故か丁寧語になる麻衣。しかも腰が引けている。優がふぅんと小さく頷くと、ブバルディアと言う場所の話をし始め、さらには自分はブバルディア1の踊り子のララと言う者で、ノベルは魔王の僕の1人なのだと言葉を続ける。普通に考えて、そんな話を信じろと言う方が無理だ。
(この人、何だか怖い。話を合わせておいた方がいいかも‥‥)
生命の危機を感じた麻衣が、優の説明が終わると愛想笑いを返しつつ大きく頷く。
「ええと、要するにノベルって人を捜せばいいんですね?」
「そう。校内の案内を頼みたいのだけれど」
「分かりました〜」
物分りの良い麻衣が優の先に立って校内を案内しようと歩き出した時、優が読みたがっていた本を彼に渡そうとやって来た大南 雪由(小日向 環生(fa3028))が控え目な笑顔を浮かべて本を差し出す。
「音無君、はいこれ、この間読みたいって言ってた本」
「残念ながら音無君は今は不在なの。私の名前はララ。とりあえず、その本は彼の机の上かバッグの中にしまっておけば?」
首を傾げる雪由。目の前に立っているのは確かに優だ。シャキっと背筋を伸ばし、全身から色香が漂い、更には言葉遣いもおかしいが、顔は確かに優だ。それなのに、不在とはどう言う事なのだろうか?眉を顰めた雪由に、麻衣がこっそりと信じられないような事を耳打ちした。
西宮和斗(大海 結(fa0074))は明るく、元気な生徒だった。だからこそ、彼は校則違反だと知りつつも制服のボタンをいくつか開けている時が多かった。だが現在、ノベルとチェンジした彼はキッチリと制服のボタンを上まで締め、オドオドしながらララから逃げられる場所を探すべく校内を彷徨っていた。
「とにかくララに見つからないように上手く逃げなきゃ」
ブバルディアでは、勇者の仲間と魔王の僕と言う敵同士にもかかわらず、ララはノベルに迫っていた。あの色気や有無を言わさぬ俺様気質なところが、ノベルは苦手だった。なるべくひっそり、こっそりと移動しつつも、萎れている植物を見ては治療して歩いて行くあたり、天然と言えば天然だ。
ノベルとチェンジしてしまった人を捜すべく廊下を歩く優と麻衣。その後ろからゆっくりとついてくる雪由は、何故かスカートが驚くほど短い。
「ノベルちゃんを色気で誘き出すのよ!私がやっても良いんだけど、この体じゃね」
と言って、雪由と麻衣にスカートを短くして胸元を大きく開けるように言う優。明らかなセクハラだ。麻衣は校則違反になりますのでと頑なに断ったのだが、優に密かに思いを寄せている雪由は断りきれずにスカートを短くし、ボタンをいくつか開けた。ちなみにこの格好でノベルを誘き出せるかといえば、間違いなくNoだ。ノベルはララのような派手な女性が苦手なのだ。それならコレは何のためか?ララの趣味に他ならない。
「誰かにいつもと違う様子だった人がいなかったか聞いてみましょうか。先生達に訊くのがいいかな?」
麻衣の言葉に、雪由がこっそりと
(ぶっちゃけ音無君が一番変ですよね)
と呟く。が、心の中の独り言など誰にも伝わらない。丁度良くその場を通りかかった科学教師の加賀栗栖(都路帆乃香(fa1013))に声をかける優。普段とは違ってどこか女性的な色気を漂わせる優に驚きつつも、栗栖が首を傾げる。
「どうかしましたか、音無さん?」
「ちょっと人を捜してるんだけど。ノベルって言う名前で、植物を操る事が出来るの」
突然そんな事を言われた栗栖が面食らって大きく瞬きをし、麻衣と雪由が何とかその場を誤魔化し優を引っ張っていく。
「‥‥どうしたんでしょう。音無さん」
現国の教師である草薙・千草(ぇみる(fa2957))は前回の騒ぎの当事者だった。実際に見たものを否定することは出来ない。けれど、あれは夢だったのではないかと言う疑問も浮かんでくる。
(もう、忘れた方が良いかも)
そう思いかけた時、廊下の端で話しこむ生徒達に目が行った。コソコソと声を抑えているものの、何を言っているのか大体聞こえて来る。悪いなと思いつつも、千草は耳をすませた。
「もう、いい加減元に戻ってください!この歳でそんな『ごっこ遊び』なんて流行りませんよ?大体、ブバルディアって言われても‥‥」
「え?」
聞いた事のある単語に、千草は声を上げた。ツカツカと傍まで近づき、優に視線を向ける。確か、この子は大人しくてあまり目立たない生徒だった。それがどうだろう、今ではこの堂々としたオーラ‥‥!
「詳しくお話を聞かせてもらえるかしら?私が一緒だと何かと便利よ?生徒だけじゃ入れない所とか行けるし」
突然の職権乱用宣言に驚く麻衣と雪由を無視して、千草は優の瞳を真っ直ぐに見た。
「私の名前は草薙千草。リズさんと会った事があるの」
北 恒明(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))は歴史担当教師で、その記憶力はかなりのものだった。ベテラン教師である彼は、強面で怖そうに見えるが、怒った時以外はどちらかといえば面白くて親しみやすい先生だった。
「大南に音無?」
すっと、足早に廊下を通り抜けようとしていた3人の生徒と見知った教師を呼び止めると、恒明は明らかに服装違反をしている優と雪由に視線を向ける。怒られると思って首を竦めた雪由と、平然とした顔をしている優。恒明は不思議そうな表情で2人を見比べるばかりで怒り出しはしなかった。と言うのも、普段から雪由も優も問題のある生徒ではなく、大人しすぎて逆に心配なタイプだった。だからこそ、心配して理由を尋ねるものの、雪由の説明はまったく理解できないものだった。更には、優の様子が普段とは違う。誰かに無理矢理やらされているのではとは思うが、千草がいる時点でソレはないだろう。
「草薙先生、これは一体?」
「えーっと、そうです!劇の練習なんです」
ブバルディアと言う国を舞台にしたもので、優は踊り子のララ役だと言うのだが、どうして優に女性の役を割り振ったのか。それならば雪由や麻衣の方が適任ではないのか。問い詰める恒明に冷や汗を流しつつも、適当な事を並べ立てて足早に彼の前を後にした。
シーナ・ブラウン(椎名 硝子(fa4563))は薔薇の花を挿した花瓶を持って廊下を歩いていた所、ふと優達一行とすれ違い足を止めた。
「制服はキチンと着ませんと、生活指導の先生に怒られますヨー?」
イギリスから来た英語教師のシーナは、ふわりと微笑むと千草に「先生も注意しないと」と言う視線を向けた。
「あの、シーナ先生。いつもと違った様子の人とかいませんでしたか?」
麻衣が控え目にそう尋ね、シーナが首を傾げながらふと花瓶の中の薔薇の視線を落とす。
「そうデース!この薔薇は、枯れてしまったので捨てようとしていたのデース。そうしましたら、和斗サンが通りかかかって、再び花を咲かせたのですネー。彼にそんな特技があったナンテ、ワタシ知りませんでしたー!」
天然ボケな彼女は、素晴らしい特技ですと言って疑いはしなかったらしい。どちらに行ったのかと尋ねる4人に右手方向を指し示し、凄く慌てていたと言う事を伝える。簡単なお礼の言葉を述べてから走って行く4人の背中に、シーナは声をかけた。
「廊下は走ってはイケマセーン!」
スパーンと音を立てながら体育倉庫の重たい扉が開け放たれ、和斗ことノベルはビクリと肩を震わせると、ツカツカと歩いて来た優ことララに潤んだ瞳を向けた。
「やっと見つけたわよ。ノベルちゃん」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「あんまりこっちの世界に迷惑をかけないでもらいたいわね。そもそも貴方、魔王の僕だけど基本的に優しいでしょ?ねぇ、私が何を言いたいのか、分かるわよね?」
「すぐに戻すから何もしないでっ!」
半べそ状態のノベルに、ララが苦笑する。
「今は男だから苦手じゃないでしょ!」
「ぐすっ、だって、中身が‥‥」
「ブバルに戻ったら覚えてろよお前」
低い声でそう呟かれ、ノベルが謝り倒す。そして、涙ながらに呪文を詠唱する。
「皆にも迷惑かけちゃったわね。いつかブバルに来なさいよ。ララ様の踊りを見せてあげるわ」
ララがそう言って微笑んだ次の瞬間、淡い光が発せられ、優と和斗の体から力が抜けた。慌てて千草と麻衣が2人の体を支え‥‥優が目を開ける。
「あれ僕、ちゃんと男の子?」
「音無君!?」
「あのね、信じてもらえないかも知れないけれど、僕、勇者様の仲間になったんだよ?」
雪由が優に戻ったと安堵の溜息をつき、けれど最後に見た強気な音無君も素敵だなと、遠くで思う。起き上がった和斗に手を貸す千草。その様子を見ながら、麻衣はそっとその場を後にしようと後ろに下がった。そして‥‥ドンと、誰かにぶつかった。見れば栗栖が呆然とその場で立ち尽くしており‥‥
「発光現象が、発光現象が‥‥」
ブツブツとそう呟くと、ふっと意識を失った。