お嬢様の事情3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 7.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/09〜01/11

●本文

 泣く子も黙る、超絶美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)と老若男女誰にでも愛される外見の大胡 信也(おおご・しんや)は薄暗く埃っぽい部屋の中で溜息をついた。
 後ろでに縛られた腕が痛い。
「お嬢様」
「あんだよ」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけねーだろーがっ!くそ、俺様の綺麗な白い肌に傷でもついたらどうしてくれんだあのヤローっ!」
「お、落ち着いてくださいお嬢様!」
 薔薇色の唇を苦々しく噛み、大きな二重の瞳は扉を睨みつけている。
 お人形のように整った外見を持つ可憐は、ドスのきかせた甘い声を室内に響かせた。
「ぜぇってーあのヤローしめる!」

 2人がどうしてこんなめに遭っているのか。1時間ほど時間を巻き戻してみよう。


 今日は可憐の礼儀作法のお稽古の日だ。
「俺様自体が世界の手本だ!つまり、礼儀作法なんて習うだけ意味ねぇっ!何せ、俺が礼を尽くす相手はいないんだからな!」
「そんな俺様なこと言わないで下さい可憐様!」
 超不機嫌になってネチネチ信也をいじめる可憐と、それに耐える信也。
 そんな2人を乗せた車が白雪邸を出て少し走ると、急に停車した。
「ん?どうしたんだ?」
「どうしましたか?何かトラブルでも‥‥」
 立ち上がって運転席を見た信也が顔色を変える。
「貴方は誰ですか!?」
 振り向いた運転手は、見慣れた顔ではなかった。
「おい信也!囲まれたぞ」
 黒服に仮面をつけた人々が2人の乗った車を囲んでいた。
「ぶっ飛ばすか?」
 物騒な可憐の言葉に、信也が軽く首を振って声を潜める。
「2人で相手を出来る人数ではありません。ここは私がどうにかしますから、お嬢様はお逃げください。真っ直ぐに走れば高田様のお屋敷です」
「お前1人で大丈夫なのか?」
「‥‥大丈夫です」
「俺よりも運動神経の悪いお前が、か?」
「それでも、私はお嬢様の付き人です。お嬢様の身を守るのも務めです。さぁ、早く」
 信也がそう言って扉を開け放ち、一番手前にいた黒服にタックルする。可憐が持ち前の運動能力を活かしてヒラリと車を降り、追ってくる黒服を撒いて走り去って行く。
(ぜってーアイツラぶっ飛ばす!信也に怪我させてたら俺様のスペシャル必殺技をかけてやる!)
 可憐はそう思いながら、何とか高田邸まで逃げ切った。
 インターフォンを押し、巨大な扉が開くのを待つ。のんびりとした動きに舌打ちをし‥‥扉の中から黒服に仮面をつけた男が出てくると、可憐の鼻にハンカチを押し当てた。


「それにしても、まさか高田様のお屋敷にまで‥‥」
「‥‥なーんかおかしくねぇか?アイツん家、かなり警備が厳しいはずだぜ?つか、あの運転手どっかで見た事あんだよなぁ」
「庭に潜んでいたんでしょう。インターフォンが鳴って、高田様のお屋敷から誰かが出てくる前に扉を開いたんです」
「や、そんなんじゃない気がすんだ」
「そんなことより、早いところここを脱出しましょう」
「つっても、縄が‥‥」
 信也の手からハラリと縄が落ち、可憐の腕を縛っていた縄を解きにかかる。
「それほどキツク縛られていたわけではありませんでしたから、腕を動かしているうちに緩んできました」
「血が出てるぞ?」
「問題ありません。それより、早くココから出ましょう」


≪映画『お嬢様の事情3』募集キャスト≫

*白雪 可憐
 泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
 ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
 性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
 お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
 俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』

*大胡 信也
 女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
 控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
 性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
 通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
 ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
 ひっそりと可憐に思いを寄せている。白憐(はくれん)と言う白猫を飼っている。

→今回の結末は
『謎の巨大組織の陰謀』か『儚(可憐の母親)&高田家の陰謀』かのどちらかになります

・その他
*可憐と信也を襲った謎の集団(結末前者) 
*白雪 儚(結末後者)
→可憐とよく似た美人で落ち着いた雰囲気
 口調は『〜じゃーん』や『超〜』など若者
*高田一家(結末後者)


*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa4769 (20歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 信也(百鬼 レイ(fa4361))と可憐(角倉・雨神名(fa2640))は重たい扉を蹴り開けると狭く埃っぽい部屋から脱出した。むき出しのコンクリートで作られた階段を見る限り、どうやら先ほどの部屋は地下室だったらしい。
「意外に丈夫な扉だったけど、俺様にかかれば2蹴りだな」
 普通の人ならば絶対に開かないような扉を、蹴り2つでぶち開ける可憐。恐ろしい以外に言葉が出てこない。
「ここは慎重に進んで‥‥」
「あ?何か言ったか?」
 豪華な木の扉を蹴り開けて進む可憐。壊れてしまった蝶番が切ない悲鳴を上げる先には、赤絨毯の敷かれた廊下が続いていた。
「とりあえず、俺様をこんな目に遭わせたヤローンとこに行くか」
「お、お嬢様!ここは素直に脱出した方が‥‥」
「ルッセー!さぁて、どこのどいつがこーんな愉快な事仕出かしてくれやがったのかな?」
 淡い色の唇の端を上げ、キュっと笑みの形を作る。が、瞳はまったく笑っていなかった。


 高田家の一室で紅茶を飲みながら監視カメラの映像を見ていた儚(シヅル・ナタス(fa2459))はキャッキャと手を叩いて喜んでいた。
「さっすが可憐ちゃーん!」
 白いスーツを着、伊達眼鏡をかけた高田家長男の紫苑(水鏡・シメイ(fa0509))が目を細めながらカメラの映像を見詰める。黙っていれば眩しいほどに美しい外見の紫苑だったが‥‥
「あの小娘に信也さんを渡すのは、正直しゃくですね」
 美男子を愛し、愛でる事を趣味とする変態さんだ。ギリリと奥歯を噛み締めながら、小娘(可憐)と信也の成り行きを見守っている。
「でも、春君も紫苑君も、お家貸してくれてありがとう」
 その言葉に、高田家次男の春(忍(fa4769))がすっと視線を儚に向ける。クールで近寄りがたい雰囲気の美男子である春は、その外見に似合わない無邪気な笑顔を浮かべると、喋り始めた。
「広いお家だもーん、1部屋2部屋くらいお安いごようだよ〜?」
 1部屋2部屋なんてレベルではないが、細かい事を気にしてはいけない。と言うか、難しい事を春に言ってはダメだ。会話の途中で内容を忘れるようなアホっ子は、仕事場ではデキル人物と言われているが、家ではデカイ幼稚園児以外の何者でもない。
「でも〜、えっとね〜、俺、違う可憐ちゃん持ってきちゃった?」
 扉を蹴り開ける可憐や、一人称『俺様』で信也に指示を飛ばす可憐を画面越しに見ながら、春が首を傾げる。春は可憐の本性を知らないのだ。
「春、あれがあの小娘の本性です」
「んっと、じゃぁ、アレが本物の可憐ちゃんで偽者の可憐ちゃんは‥‥えぇっと、俺、何話してたんだっけ?」
 キョトンとした春に、頭を抱える紫苑。春と会話をするのは根気がいるのだ。


 大田武子(MAKOTO(fa0295))はビクトリア朝時代のメイドさんを意識した服装に身を包み、髪を三つ編みにし、眼鏡をかけ、モップを片手に廊下に立ち塞がって2人の到着を待っていた。その隣では高田家の使用人である力(Rickey(fa3846))が黒スーツにサングラスと言う出で立ちで並んでいた。
「若様の命とあれば、拙者命を懸けてお2人の前に立ち塞がるでござる」
「若い頃ってなかなか素直になれないものなのよネ。アタシもそうだったわぁ。あの2人が上手く行くように頑張りましょうね、うふ☆」
 ちなみに、バリバリ侍口調なのが武子で、柔らかい女性口調なのが力だ。
「脅かして不安にさせれば、信也さんが良い所を見せて2人の仲が急接近しそうよネ。『可憐は俺が守る!』『信也さんって頼りになるのね、素敵!』なんて、きゃっ☆若いっていいわねぇ」
 絶対に有り得ない可憐と信也のやり取りを妄想してはしゃぐ力。ちなみに彼、「2人で力を併せて困難を乗り切る事が出来れば、ますます愛が深まるに違いないわ!」との理論で2人の脱出を阻むべく、鍵を隠したり罠を仕掛けたりしていた。が、可憐は馬鹿力だ。扉くらい容易く蹴破るだろう。
「数々の試練を潜り抜けた先に立ち塞がる最後の壁!」
 武子が不意に低く喋り出し、力が首を傾げる。
(様々な試練って言っても、そんな大したものじゃなかったと思うけれど)
 ボールが飛んできたり床が開いたりと言った古典的な仕掛けはあったが、運動神経S級の可憐は勿論の事、普通に運動神経の良い信也にもかわせる他愛もないものばかりだ。
「圧倒的な武力を以って2人を窮地に追い込むものの、逆転される。これが若様のシナリオ案にござる」
「あら、そうなの。随分古典的なのね〜」
「流石は若様。斬新的なアイディアでござる」
 力が古典的だと言ったのは聞いていなかったようだ。武子さんの紫苑さん贔屓も凄いわねと、力が呆れた次の瞬間、廊下の端から猛烈な勢いで可憐と信也が走って来た。
「拙者、大田武子と申す。貴殿に一勝負願いたい」
「あぁ!?今それどころじゃねぇんだ!」
 可憐の言葉に耳を貸さずに、武子が竹刀を信也に手渡す。ここは可憐よりも信也と交えた方がシナリオ的にも盛り上がるだろう。そう思っての選択だったが、武子は可憐を甘く見すぎていた。竹刀片手に信也に襲い掛かる武子をアッサリと止め、回し蹴りを繰り出す可憐。その威力たるや、武器無しでも十分だった。
「武子さん大丈夫!?ちょっと、こんなに強いなんてはんそ‥‥」
「ルッセー!俺様の前にいやがんなこのボケーーーっ!!」
 力の背中を思い切り蹴って走り出す可憐。
「ひどいわ、アタシ達はただ一生懸命やっただけなのに」
 よよよと泣き崩れる力と、伸びた武子。信也が何か言葉をかけようとして、可憐の怒声に慌てて走り出した。


 大抵の罠は自力で何とかしてしまう可憐だったが、危険そうな罠には「信也、行け!俺様のために!」と言って信也を先に行かせてしまう。ヘマをすれば怒られ、無事にすり抜けても「珍しく役に立っている」と感心されるダケだ。
「だぁぁっ!つか、ここドコだよ!?」
 可憐がそう叫んだ時、角から見慣れた姿が現れた。高田家の末っ子である彼の名前は高士(鷹見仁(fa0911))。結構しっかりした外見にも関わらず、可憐LOVEで人の話を聞かない、迷惑を顧みない、反省しない、追い詰められると泣いて逃げ、更には都合の悪い事は綺麗サッパリ忘れてしまうと言う、言ってみれば厄介な人物だった。しかも高士、信也以上のヘタレだ。
「ああっ!可憐さんっ、このボクに会いに来てくれたんだね?」
 犬のように駆け寄ってくる高士に、可憐が笑顔で「違いますわ」と否定を入れる。が、彼はまったく聞いていない。可憐の1歩前で足を止めると、目を輝かせる。
「いつ見ても可憐さんは美しいね」
「いやですわ、高士様ったら。そんな‥‥おい、ちょっと待てよ。ンでてめぇがここにいんだよ!?つか、アレか!?ここお前ン家か!?」
 猫かぶりが崩れる可憐。突然の豹変に高士が一瞬フリーズし、何事もなかったかのように爽やかな笑顔を浮かべる。
「そうだけど?可憐さんはどうしてここへ?」
「そうか。これはアイツが仕組みやがったんだな。おい高士!てめぇの兄貴どもがどこにいるか知ってっか!?案内しやがれ!」
 可憐の言葉に素直に頷く高士。そんな彼に信也が「お願いします」と声をかけ‥‥
「何だ、いたのか執事」
 すごーくイヤーな顔をされる信也。高士は何となく、信也の事が嫌いなのだ。


 高士の乱入と言う予想外の展開に驚きつつも、儚と紫苑、春は可憐と信也の勇姿を画面越しに見ていた。可憐と信也が少し良い雰囲気になると、悶え始める紫苑。
「ふふ、素晴らしいですよ信也さん。貴方のような男性と一夜を共に出来たら、どれだけ幸せでしょう‥‥ふふ」
 画面の向こうの信也がゾクリと肩を震わせる。不気味が笑い声を上げている紫苑の隣では、春がTV番組並みのアクションシーンに拍手を送っていた。
「すごぉーいっ!」
「春、もう少し落ち着きなさい」
 キャッキャとはしゃぐ春に、紫苑が溜息混じりに言葉をかけた次の瞬間、外側から扉が蹴り開けられた。
「よう、待たせたな」
「あ!可憐ちゃんだぁ〜!カッコ良かったよぉ〜っ!」
 春が可憐に飛びつき、春の性格をよく心得ている可憐が、背伸びをしながら春の頭を撫ぜる。
「んで春。この面白可笑しい計画を立てやがったのはどこのどいつだ?」
「んっとぉ、俺とお兄ちゃんは儚さんに頼まれて‥‥」
「やっぱテメェの仕業か!何のためにンな手間の込んだ事を!」
「2人を仲良くさせようかなって思って〜。だって、今朝の占いで『思い立ったが吉日』って出てたしぃ、可憐ちゃんと信也君は『親しい人との仲が急接近』って出てたしぃ」
 なんら悪びれた様子の無い儚。更には、今までの事をビデオで録画してあると言い「可憐ちゃんと信也君の勇姿をご近所さんに見せなくちゃ!」と言って高笑いをしつつ窓から飛び降り走り去って行く。儚の華麗な身のこなしに瞳を輝かせる春。儚の仕業だったと知った信也がヘタリ込み、そんな信也の様子を不敵な笑みを浮かべて紫苑が見詰める。
「貴方を必ず私のものにしてみせますからね。ふふ‥‥ふふふ」
 黒い電波をキャッチした信也が肩を震わせ、可憐が深い溜息をつくと信也に手を指し伸ばす。
「お前、今回はなかなか使えたな。だから、特別に今度ボーナスやるよ」
 素っ気無い口調。でも、少し照れたような横顔。
 信也は可憐の華奢な掌の上に自身の掌をそっと乗せると、立ち上がった。