Eternal Blood 刀と絵アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/09〜01/12

●本文

 光に包まれた。視界はゼロになる。
 また、あの声が聞こえて来る。
 クスクスと、憎悪に満ちた笑い声‥‥
『‥‥で‥‥の』
 何を言っているのかは聞こえない。でも、何かを言っているのは分かる。
『‥‥まだ生きてるの?』
 言葉が聞き取れた瞬間、光が弱まった。

【里奈の日記】

 誰かが肩を揺すっている。私は目を開けると、深く息を吸い込んだ。
「隼人。ここは?」
「カラクリ屋敷」
「え?」
 酷く真剣な顔でそう言うと、隼人がメモの切れ端を数枚差し出した。
 それを受け取りながら、周囲を確認する。床には赤絨毯、天井にはシャンデリア、壁には高価そうな絵が飾ってある。
 学校、病院と続いて今度はお屋敷に飛ばされてきたようだ。
 まだ、この悪夢は続くのだろう。私は手元のメモに視線を落とした。
『ここは危険だ。一歩間違えば全滅する!』
『俺は6人の仲間とここに来た。霊の存在は確認できない。なのに、今生き残ってるのは俺だけだ』
「どう言う事なの?」
 私がそう呟いた時、この部屋に1つしかない扉が開いた。ボロボロになった男の人は、部屋に入った途端に崩れ落ちた。
「大丈夫!?ねぇ!?」
『間違え‥‥死、鎧武者、死。絵、1枚だけ』
「どう言う事なの!?ねぇ!」
『がんば‥‥れ‥‥』
 男性はそう言うと、ガクリと全身の力を抜いた。

【隼人のメモ】

・仲間を捜せ・鎧武者を見たら逃げろ・武器はまだ使うな・外には出るな
・『刀の部屋』では一番(破損部分)な刀を選べ・『絵の部屋』では(破損部分)が赤の絵を選べ
・2階への扉を開ける方法は刀を(破損部分)が赤の絵の(破損部分)に刺せ


≪映画『Eternal Blood 刀と絵』≫

・募集キャスト
*主人公
 必須キャストになります。この世界に飛ばされて来てしまった人で、性別や年齢などは問いません
 主人公視線の物語になりますので、一人称は『私』『僕』『俺』等が適切です
 性格は、冷静沈着な設定の方が無難です
*仲間
 必須キャストになります。主人公同様、性別や年齢などは問いません
・前回生き残った方はそのままの名前でご参加下さい
・前回霊・死亡された方は名前を変えて主人公・仲間としてご参加下さい(霊は今回出現しません)


・刀と絵

 病院から飛ばされてきた先は、大きなお屋敷の玄関でした
 隼人のメモも里奈の日記も、玄関にある棚の上に乗っていますので今回は探す必要がありません
 ただ、隼人のメモは一部破損していて読めなくなっています
 玄関で里奈の日記・隼人のメモを見た後で仲間を捜し、『刀の部屋』に行って刀を取り、『絵の部屋』に行って刀を絵に突き刺して2階へと続く扉を開けると言う流れになります
 2階へと続く扉は『絵の部屋』の中にあります
 →刀や絵の選択を間違えると、間違えた方にカラクリが作動して死亡になります
 今回は霊は出現しませんが、鎧武者(無敵)が出現します。前回得た銃は鎧武者にはききません
 鎧武者は日本刀装備で走って追ってきます。部屋の中に隠れて鍵を閉め、暫く待てばどこかに行ってしまいます。鍵をかけていないと入って来てしまいます
 鎧武者はキャスティングの必要はありません。
 里奈も隼人も、皆さんが来る前にこの世界に飛ばされて来てしまった人ですのでキャスティングの必要はありません
*主人公以外の生死はお任せいたします。主人公は必ず扉の先に向かってください。

●今回の参加者

 fa0203 ミカエラ・バラン・瀬田(35歳・♀・蝙蝠)
 fa0614 Loland=Urga(39歳・♂・熊)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa4391 夜野月也(25歳・♂・犬)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 ゲームだと思っていた。悪い夢だと思っていた。人が目の前で死んだ、そんなのただの悪い夢だ。ホラーゲームのし過ぎだ。そう、思った。でも、夢なら必ず覚めなくちゃならない。僕、伊崎 紅楼(夜野月也(fa4391))はゆっくりと起き上がると周囲を確認した。見慣れた自室であれば良いと、一筋の希望を胸に宿して。
「お気づきになりましたか?」
 希望はあっけなく打ち砕かれ、代わりに1人の女性が困ったような笑顔を浮かべていた。彼女の名前は神谷 玲(葉月 珪(fa4909))と言った。
「ここは一体何処なのでしょうか。病院から飛ばされてきたのですが‥‥」
「え、病院?」
 玲さんは、僕の知らない『病院』の話をしてくれた。前回仲間だった人達の、その後の事まで‥‥。玲さんは、落ち込んだ僕の肩に手を乗せると病院から持ってきたと言う銃を手渡してくれた。ギュっと、その銃を握り締めた時、突然隣で寝ていた男性が起き上がって怒鳴り散らし始めた。どうやら彼は、初めてこの世界に飛ばされてきてしまったらしい。玲さんが簡単な説明を入れると、彼・赤石金剛(Loland=Urga(fa0614))は訳が分からないと言った様子で首を振った。僕はそんな2人を横目で見ながら、日記とメモを探した。メモは一部破損しており、何が書いてあるのか分からない。2人に見せると、赤石さんが立ち上がった。
「うだうだしてるより、行動あるのみだぜ!メモにある刀を取れば良いだろうて!」


 廊下に出ると、セーラー服を着た中学生くらいの少女が涙目で蹲っていた。彼女は藤原 沙羅(桃音(fa4619))と言い、少し前にこの場所に飛ばされてきて1人で彷徨っていたようだった。
「大丈夫?」
 玲さんの言葉に、コクリと頷くと沙羅がポケットから小さな鍵を取り出した。どこの鍵なのか分からないが、拾ったのだと言う。「お守りなの」と言って僕に鍵を手渡し、一緒について言って良いかと聞く、沙羅ちゃんの頭を優しく撫ぜる。
「勿論だよ」
「俺達と居ればもう大丈夫だぜ!怖がんなくても大丈夫だ!」
 豪快な口調の赤石さんだったが、弱い者には優しかった。僕達は、一番手前にあった部屋の扉を押し開けた。そこにはズラリと刀が並んでおり、1人の男性・松原 大和(雨堂 零慈(fa0826))が興味深そうに刀を眺めていた。ここが刀の部屋か。そう思った時、赤石さんが一番豪華な刀を見詰め「ほう、こいつは振り回すのに良さそうだぜ」と呟くと大和さんに向き直って首を傾げた。
「お前は取らないのか?」
「えぇ」
「なら、こいつは俺のものにして良いよな!」
 刀に手をかける。僕と玲さんがメモの内容を思い出して慌てて止めようとし、大和さんが何かを言おうと口を開くが赤石さんの動きの方が早かった。飾ってあった刀を持ち上げたその瞬間、多数の槍が壁から、天井から出現し、赤石さんを貫いた。
「見ちゃダメっ!!」
 目を見開いたまま固まった沙羅ちゃんを、玲さんが慌てて抱き寄せる。まだ息のあった赤石さんが口元に笑みを浮かべ、僕に視線を向けた。
「ざまあねえな。まぁ、後は宜しくたのまぁ‥‥」
 赤石さんの体から力が抜け、全身から血が噴出す。僕の頬に飛んだ血を親指で拭えば、呆然とした大和さんがボロボロの刀を持っているのが目に入った。


 客室1と書かれた部屋の扉を開けると、女性と少女が驚いたような表情でこちらを振り返った。女性は荒井・マリア(ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203))と言い、少女は黒崎・来兎(因幡 眠兎(fa4300))と言った。2人ともこの世界に初めて来たらしく、僕は簡単に説明をするとメモを手渡した。
「何これ読めないじゃないノ。まあ、こうなった以上出る方法を考えるしかないデショウ」
 落ち着いた雰囲気のマリアさんは、怯えている沙羅ちゃんの髪をそっと撫ぜ、頬に飛んでいた鮮血を親指で拭った。
「慌てたら危ないんデショ?」
 心強い味方の登場に僕達は安堵すると、隣の部屋・客室2へと足を向けた。ガランとした広い室内で、1人の女性が腕から血を流しながらベッドの上に座っていた。彼女の名前は羽村鷹子(羽曳野ハツ子(fa1032))と言い、腕の傷に驚いた玲さんが沙羅ちゃんをマリアさんに託すと持っていたバッグの中から包帯を取り出した。
「この怪我はどうしたんですか?」
 玲さんの質問に、ヒステリックな調子で鎧武者にやられたと訴える羽村さん。この状況に納得が出来ていないらしく、日記やメモすらも疑っている様子だった。それまで黙っていた来兎ちゃんが、ここに来た時に鎧武者に出会ったと呟き、玲さんが「それなら十分に気をつけないといけませんね」と言ってその話題を終わらせた。僕達は客室2を後にすると、客室3の前で立ち止まった。鍵の掛かっている扉に、沙羅ちゃんから受け取った鍵を差し込む。簡単に開いたそこには、大きなテーブルが1つ置いてあるだけだった。テーブルの上には、2枚の紙が並んでいた。1枚は『額』とだけ書かれた紙。こちらは、メモの破損部分とピッタリ一致した。問題はもう1枚の方だった。『青空にストライク』そうとだけ書かれた紙に、思わず首を傾げる。
「額が赤い青空の絵に刺せって事なんだろうけど」
 『ストライク』が何なのか、考える僕達から少し離れた位置では羽村さんが煙草をふかしながら小馬鹿にしたような視線を向けている。
「ここで考えていても分かりませんね。実物を見た方が早いかも知れません」
 玲さんの言葉に、僕達は廊下に出た。絵の部屋はどちらだろうと首を傾げた時、不意に来兎ちゃんが僕の肩を叩いた。指先を追えば、赤い鎧に身を包んだ1人の武者。「走って!」マリアさんの声が響く。大和さんが沙羅ちゃんを抱きかかえて走り出し、僕もそれに続こうとした時、来兎ちゃんが鋭い視線を鎧武者に向けているのが目に入った。
「来兎ちゃん?」
「大丈夫だよ。私コレでも殴り合いには自信があるんだ。時間稼ぎしてあげる」
「でも!」
「もしかしたら、倒しちゃうかもね。一度は階段から叩き落したし、頭蓋も砕いたし。相手は相当バテてると思うんだ」
 そうは見えない。でも、来兎ちゃんの瞳に迷いは無かった。僕の肩を押し、笑顔を浮かべる。
「悪い夢なら覚めて欲しいけど、やるっきゃないよね。後から行くよ」
 止める言葉も聞かず、来兎ちゃんは鎧武者に向かって走って行った。「伊崎さんっ!」沙羅ちゃんの声が鋭く響く。僕は、声の方に向かって走った。


 部屋の中に入ると、突然大和さんが何かを思い出したような顔をして扉へと向かった。
「何処に行くんです!?」
「分かったんだ。あいつらの本体は刀だ!」
 制止も聞かずに大和さんが外へと飛び出す。
「自分から死にに行くなんて馬鹿ね」
 羽村さんが苦々しく呟いた次の瞬間、鍵をかけ忘れていた扉から鎧武者が入って来た。驚いて固まった僕達の前で、マリアさんが持っていた小型ナイフを鎧武者の顔目掛けて投げつけた。
「Take That!」
 綺麗に鎧武者の額にのめりこんだナイフに、鎧武者が崩れ落ちる。マリアさんが少しだけ首を竦め、此方に戻ってくる。鎧のない部分が弱点なのか。そう思った時、マリアさんの背後で鎧武者が立ち上がると刀を振りかざすとマリアさんの背中を斬った。マリアさんが床に倒れ込み、鮮血を広げる。
「何よ、使えないわね!」
 羽村さんがヒステリックに叫び、謎の解けていない僕達に罵声を浴びせる。
「そうか!分かった!真ん中に刺せば‥‥」
 言うが早いか、僕は絵の真ん中に刀を突き刺した。微かな音を立てて右手の本棚がスライドし、上部に『L』と書かれた扉が出現する。これで扉は開いた。でも、鎧武者はすぐ近くまで迫っていた。もう間に合わない。そう思った時、鎧武者が目の前で崩れ落ちた。何が起きたのかは分からない。けれど、この隙に早く扉の向こうに行ってしまおう。走りだした僕の腕を、沙羅ちゃんが引っ張ると首を振る。
「松原さんが」
 そうだった。大和さんを置いてはいけない。羽村さんが何かを叫んでいるが、ここまで一緒に来た仲間を置いていく事は出来ない。時間にすれば数分程度だろうが、長い時間だった。傷だらけの大和さんが部屋の中に姿を現し、走りよろうとした僕と沙羅ちゃんを止めると首を振った。
「気をつけろ。鎧武者の亡霊は、刀の数だけ‥‥」
 一体何を言っているのだろうか。そう思った次の瞬間、大和さんの背後から鎧武者が現れて彼を斬りつけた。飛ぶ鮮血に、僕は沙羅ちゃんを抱き上げると扉まで走った。
「伊崎さん!沙羅ちゃんっ!!」
 玲さんが手を広げ、僕は沙羅ちゃんを彼女に託すと後ろを振り返った。鮮血の中に沈む大和さんと、走って来る鎧武者。そして‥‥崩れ落ちたはずの鎧武者が、再び立ち上がっていた。
『彼らは、無敵』
『彼らは、永遠』
『彼らに、終わりはない』
「伊崎さんっ!!」
 玲さんの声に、僕は扉の中に飛び込んだ。眩い光が、視界を奪う。

 『まだまだ、気付かないでしょうね』
 『だって、全ての鍵はまだ揃ってないんだもの』
 遠くから声が聞こえて来る
 『あと幾つ世界があると思う?』
 分からない
 『あと何人、死ぬと思う?』
 分からない
 『貴方は、最後まで残れるかしら?』
 ‥‥分からない

 この悪夢が何時覚めるのかも
 この世界があとどれくらい続くのかも
 全ては分からない
 でも、1つだけ分かるのは‥‥
 僕はまだ、この世界で生きている、それだけ‥‥