お嬢様の事情4アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 6.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/13〜01/15

●本文

 泣く子も黙り、チョイ怖のお兄さんですらもひれ伏す超絶美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)は長い髪を背に払うと白魚のような細い指先でテーブルの上に置かれていた招待状を指で弾いた。
「ジイヤ。わたくし、甘い物は苦手で御座いますの」
「存じております」
 誰が見てもカッコ良いと叫びたくなるような外見をしたジイヤこと大胡 信也(おおご・しんや)は外見年齢で言えば可憐と同じか少し上程度だ。
 “ジイヤ”と呼ばれるような年齢ではない事だけは確かだ。ただ、可憐の教育係も兼ねている彼は可憐から『親しみ』を込めてジイヤと呼ばれて‥‥いるわけではない。明らかな可憐の嫌がらせだ。
「だぁぁっ!!アイスケーキなんてンなあめーもん食えっかよ!女子供の食いもんじゃねーかっ!」
「お嬢様、お嬢様も女性ですし、世間一般から見ればまだまだこど‥‥」
「ルッセー!俺様は世界の王にして世界の中心だ!俺様の前では魔王だろうが大魔王だろうが暗黒の騎士だろうが、ひれ伏すんだよ!」
 魔王とか大魔王とか暗黒の騎士とか、どうして悪っぽいものばかりが名前を連ねたのか。
 質問を挟みたい信也だったが、残念ながら俺様超絶美少女お嬢様はご立腹のご様子だ。ヘタに言葉をかけてはご機嫌を悪くさせるばかりだ。
「けれどお嬢様、折角のお誘いを無下に断るわけには‥‥」
「だぁらってなぁ、なーんで『アイスパーティー』なんだよ!このクソ寒い中、何が楽しくて外でアイス食わなくちゃなんねーんだよ!」
「長井様は何でも、アイスには特にこだわりを持っていらっしゃるようで、今回のパーティーではウェディングケーキ風アイスが目玉だそうです」
「つーか、夏にやれよ夏に!」
「夏場ではアイスが溶けてしまいますし、外でやると虫が飛んできてしまいますし」
「外でやる必要がねぇじゃねぇかっ!中でやれ!室内で!」
「室内に入りきらないのではないでしょうか。相当大きなアイスだそうですし」
「どんだけデケーんだよ!」
 いちいちツッコミを入れる可憐。
 まぁ、なんと言うか、可憐でなくともツッコミたくなるような面白おかしなパーティーではあるが。
「とにかく、俺はぜぇぇぇってーーー行かねぇからな!だいたいからして、俺が行かなくても大丈夫だろ?アイスが好きなやつが行って‥‥」
「ダメです!お嬢様が行かなくてはダメなんです!!」
 突然声を荒げた信也に、可憐がニィっと悪魔的な笑みを浮かべる。
 冷や汗を流す信也の首をグワシっ!と掴み、顔を引き寄せると声を落とす。
「なぁ〜にをそんなに焦ってるのかなぁ?信也ちゃん?」


 艶やかな長い髪に、真っ白な肌。大きな二重の瞳に長い睫毛。淡く染まった頬に薔薇色の唇。可憐は、自分が美少女だと言う自覚があった。
 だからこそ、可憐には絶対的な自信があった。
 髪を綺麗に背に垂らし、完璧にメイクする。洋服だって自分の外見に似合うように飛び切り可愛い白のふわふわとしたワンピースを作らせた。
「信也様。如何でして?」
「とてもお可愛らしいです」
 信也が目をそらしながら言う。彼もまた、ピシっとしたスーツを着込んでいる。
「これで殿方もわたくしの虜になりましてね」
「か、可憐様‥‥」
「うふふ。あはは、はーっはっはっは!あンのババーっ!!なぁ〜にが『可憐ちゃんの将来のお婿さんを見つけるパーティー』だっ!常日頃から散々信也を薦めといて!」
 怒りに燃える可憐お嬢様は誰にも止められない。
「ぜぇぇぇってーーーぶち壊してやる!」
「可憐様!お止め下さい!本日いらっしゃる方はそれこそかなり‥‥」
「ルッセーー!!黙りやがれ!とことんお嬢演じた後で奈落の底へ突き落としてやるぜ!」
 はーっはっはと、悪役さながらの笑い声をあげる可憐。

  パーティーはどうなってしまうのか‥‥!?


≪映画『お嬢様の事情』募集キャスト≫

*白雪 可憐
 泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
 ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
 性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
 お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
 俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』

*大胡 信也
 女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
 控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
 性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
 通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
 ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
 ひっそりと可憐に思いを寄せている。白憐(はくれん)と言う白猫を飼っている。

・その他
*パーティーに招かれた可憐のお婿さん候補
・長井一家
・可憐や信也の友人   など


*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa2634 霧ヶ峰・まひ流(18歳・♀・ハムスター)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2997 咲夜(15歳・♀・竜)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「皆様、本日は当家のパーティにお越し頂き有難う御座います」
 清楚なお嬢様と言った容姿の長井 静歌(霧ヶ峰・まひ流(fa2634))はそう言うとニマっと笑みを浮かべマイクを握り締めた。
「宴の開始じゃ、あんじょう楽しんでってんかー!」
 『目立ったモン勝ち、面白ければ良い』と言う芸人魂を秘めている彼女は、開場の挨拶を終えた後で隅っこで電話をしていた可憐(阿野次 のもじ(fa3092))に近づくと肩を叩いた。
「どや、この超豪華30段ウェディングアイスは。パティシエ共に不眠不休で作らせた最高傑作、オドレの結婚の前祝じゃ!」
 悪趣味な挙句、労働基準法違反な気がしてならない。
「わたくしのお友達がパーティにぜひ参加したいと仰っているのですが、宜しいでしょうか?」
 勿論と頷くと、静歌はアイスの素晴らしさについて切々と語り始めた。
「この牛乳は北海道から今朝届いたもので‥‥(略)」
 最後まで聞いていては夜になってしまう。熱心に話している静歌をそのままに、可憐は何時の間にかいなくなっていた信也(氷咲 華唯(fa0142))の姿を捜し始めた。


 藤城 直樹(Rickey(fa3846))は静歌に簡単に挨拶をすませると、フラフラと歩く可憐を見つけ声をかけた。
「おお、これはなんとお可愛らしいお嬢様だ!」
 白い歯が眩しい爽やか好青年に、可憐がお嬢様モードで笑顔を向け、頭を下げる。
「藤城様でいらっしゃいますよね。お久しぶりで御座います。白雪可憐です」
「可憐様でしたか。見違えるほどお美しくなられて‥‥」
 そんな事はないと謙遜する可憐に、心の中で笑みを浮かべる。
(ふっ、確かに美少女ではあるが、所詮は子供。俺にかかれば落とす位訳無いぜ)
 実は彼、かなり腹黒だ。そんな彼に捕まってしまった可憐はイライラしていた。とっとと信也を見つけたいのに、なんだコイツは!と思いつつも、何とか我慢をする。
「可憐様、何かご趣味がございますか?僕はチェスが好きでして」
 そろそろ本気で落としにかかろうか。そう思った時、可憐がブチ切れた。右ストレートを直樹の頬にぶち当てる。
「ルッセー!チェスなんざぁテメェ1人でやっとけこのボケ!」
「ななな、なんだキミは!この僕をこんな目に遭わせて、どうなるか分かっているんだろうね!」
 左頬を押さえ、へっぴり腰になりながらも言葉だけは威勢が良い。可憐が『どうなるのか教えてもらおうじゃねーか』と言うように胸倉を掴み‥‥
「お、お母様に言いつけてやる〜っ!」
 重度のマザコンの彼はそう叫ぶと、泣きながらその場を後にした。


 会場の隅の方で成り行きを見守っていた信也を捕まえ、可憐はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。
「よう、随分のんびりしやがってんじゃねぇか。お前も馬鹿ボン共を奈落の底に突き落とす手伝いしろや。俺様がお前を華々しく社交界デビューさせてやるからよう」
「いえ、あの、お嬢様‥‥?」
 指を鳴らせば、何処からともなく爽やかなスポーツ系美少女・大徳寺茉璃(咲夜(fa2997))と大柄で筋肉質、気の良さそうな外見をした高田麗子(ティタネス(fa3251))がメイク道具片手にやって来て信也の腕をガチっと掴んだ。
「最高級ブランドを身に着けての華々しいデビューを提供いたしますわ、信也さん」
「そんな‥‥」
「うちと可憐はんは刎頚の友どすから、可憐はんの敵はうちの敵も同然どすえ。せやから、お手伝いいたします」
 トロリとした京都弁は、声だけ聞くと癒し系だ。相変わらずセンスのないゴージャスなドレスを身に着けた麗子が、信也の顔を掴むと笑みを浮かべる。
「まぁ、綺麗なお肌。メイクのしがいがありますわ〜」
 口元は笑んでいるが、目は笑っていない。ノーメイクでも美しい信也の顔に、乙女心が嫉妬しているようだ。
「後は任せたぜ。俺様の次くらいに可愛くしてやってくれよ」


 黒百合 サレナ(夏姫・シュトラウス(fa0761))は大量のアイスケーキを乗せた大皿を持って可憐の所に走って行くと声をかけた。美少女ではあるが前髪で目を隠すほどの恥ずかしがりやで、可憐と信也に対して恋愛感情を抱いているサレナ。出来れば三人で夫婦になりたいと言う思いを秘めているのだが‥‥
「何でタキシードなんて着てんだお前?」
 その言葉に顔を赤くして俯くサレナ。儚に頼まれたのだと弁解する。まさか、秘めた思いを儚に気付かれ、乗せられたとは言えない。
「で、でも、全然嫌じゃなくて、むしろとても嬉しいです」
 ボソリと本音を零してしまい顔を赤くするサレナだったが、可憐には伝わっていない。
(ンなにタキシードが着たかったのか)
 そう思った時、可憐の視界の端に『とある光景』が映った。


 メイクをしている間中、麗子は信也の背中を押すべく言葉をかけていた。
「貴方、このままでいいと思ってらっしゃるんですの?いくら可憐さんでも、いつまでもこんな調子だと行き遅れてしまいますわよ」
 もう少し積極的に行けと言うアピールのつもりだったが、遠まわしに『パーティをぶち壊すな』と釘を刺しているようにしか聞こえない。普段は婿候補を片っ端からぶっ飛ばしている可憐だが、もしかしたら今日来ている人の中で良い人を見つけるかも知れない。そう思うと、胸が痛んだ。
 完璧なお嬢様メイクを施され、可憐の姿を見つけようと彷徨っていた時、不意に腕をつかまれた。見れば金城・麗人(角倉・雨神名(fa2640))が天使のような笑顔を浮かべて立っていた。
「麗しいお嬢様、宜しければボクとダンスのお相手を願えませんか?」
「いえ、あの‥‥私は‥‥」
 やや声の低いお嬢様だと思いつつも、麗人は笑顔を崩さなかった。
(うまく取り入って玉の輿ゲットだぜ!)
 人畜無害な顔をした天使は、中身は腹黒だ。お金持ちの貴公子な外見からは考えられないほど貧乏で、更にはナンパ好きだ。今回のパーティも、玉の輿目当てでやって来たのだった。
「趣味は株取引を少々、将来の進路は立派な結婚詐‥‥いえ、結構茶道が得意で‥‥」
 麗人が自己紹介がてらに自分の事を話し始める。
「年収は一兆円ですので、ボクと結婚すれば老後の心配は一切無用です!」
 一兆円は嘘な挙句、可憐も信也も老後の心配なんてしていない。どうやって断ろうかと信也が考えを巡らせようとした時、可憐が走り込んで来て麗人の背中に蹴りをかました。
 何が起こったのかわからない麗人が背中を押さえながら振り返り‥‥
「お前の心の中、見切った!!」
 突然言われた台詞に目を丸くする。
「お前は金持ちではない。このパーティに招待されたのではなく、玉の輿目当てにこっそり入り込んだ部外者だぁぁっ!!!」
 いきなり核心を突かれ、麗人が「うっ」と胸元を押さえる。ベタな反応を見せた後に少しフリーズし、やがて低い声で喋り始めた。
「そうさお金目的さ。文句あるかーっ!みんな貧乏が悪いんだーっ!」
 わーんと、泣きながら去って行く麗人。
「ふっ、正義は必ず勝つ!」
 どちらかと言えば、可憐の方が悪だ。


 その後も、言い寄る婿候補を茉璃と共に奈落の底へと突き落として行った可憐。アイスにタバスコをかけたりと、やる事がえげつない。見かけによらず小食の麗子がアイスを少し口にした後で自分の婿候補を探しにかかり、サレナが大盛りのアイスを可憐と信也に勧めるが断られてしまい、かなりのハイペースで自分で処理していく。
「う、美しいお嬢様、良ければ私と一緒に、お、踊りませんか?」
 儚から貰ったカンペを見つつサレナが可憐に声をかけるが、声が小さすぎて聞こえていない。静歌がそろそろ終わりの時間だと、声をかけようとした時、まだ大量に残っていたウェディングアイスが突如もぞもぞと動き始めた。


 一体これから何が起ころうとしているのか!?可憐が静歌に視線を向けるが、彼女も何が起こるのかわからないらしく困惑した表情で首を振っている。
『大変だよ、大変だよ!あと30秒で大爆発が起きるよ!』
 突然聞こえた声は、可憐はもといその場に居るほぼ全員に聞き覚えのあるものだった。そう、これは、可憐の母親にして今回のパーティの仕掛け人の‥‥
「ヤベェ!あいつならやりかねねぇっ!とにかく逃げるぞ!」
 オロオロする信也の腕を掴み、走り出す可憐。
『3、2、1‥‥』
 バァンと、凄まじい音がして弾けるウェディングアイス。中から『儚様最高』や『ビックリドッキリ☆』と書かれた紙が舞い落ちてくる。
「流石は儚さん。素晴らしい演出でしてね」
 静歌がそう呟き、アイスまみれになった茉璃が苦笑する。麗子が顔についたアイスを拭っていると、ハンカチを差し出されて顔を上げる。何時の間にか戻ってきていたマザコン直樹が優しい笑みを向け‥‥その瞬間、麗子は恋に落ちた。
「ったく、無茶苦茶やりやがんな」
 苦々しくそう呟き、微笑む可憐。アイスまみれになって切れるのがアホらしく思えたのだろう。顔についたアイスを拭いながら立ち上がり、信也の手を取る。
「おい、お前のタキシード、確か向こうに置いてあったよな」
「えぇ。お嬢様、着られますか?」
「あぁ。で、お前と踊ってやる」
「はぁ‥‥?」
「しっかりしぃや、信坊!なぁにポカーンと間抜けな顔してんねん」
 静歌がそう言って肩を叩き、可憐が着替えに戻る。
 ゆったりとした曲の流れる中、お嬢様・信也とタキシード・可憐は手を繋いで優雅に踊っていた‥‥