お嬢様の事情5アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/18〜01/20

●本文

 泣く子も黙る、超絶対美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)は彼女の世話係の大胡 信也(おおご・しんや)を壁際に追い詰めて迫っていた。
「よう、俺様のお願い、きいてくんねーかな?」
「お、おおおおお嬢様。あの、その‥‥」
 真っ白なきめ細かな肌に、大きな二重の瞳。長い睫毛は頬に薄っすらと影を落としている。お人形のように整った外見の可憐は、良い形をした薔薇色の唇をニィっと笑みの形に引き結ぶと目を細めた。
 王子様か、勇者様かと思うほどの整った美しい外見をした信也が、あまりの恐怖にガタガタと震えながら床に尻餅をつく。
「なぁに、ちょーっとばかし俺様になりきってくれりゃぁいーっつーだけだよ」
 可憐はそう言うと、信也の胸倉を掴んだ。
「俺様のお願い、きいてくれるよな?」
「で、ですが、私とお嬢様とでは身長が‥‥」
「縮め」
「そんな事は‥‥」
「あぁっ!ゴチャゴチャうるせーんだよ!ジジイは、俺様のお願いを聞くか聞かないか、俺様にいびられるか、それとも回避するか、どっちかを選べば良いんだよ」
 信也の脳裏に、幼き日の記憶が蘇った。


 可憐が信也を脅しているのにはわけがある。
 彼女の母親で、可憐とソックリな外見の儚(はかな)が『可憐ちゃんのお婿さん候補』と言ってとある男性を連れてくるのだと言うのだ。
「すっごーい知的な感じでぇ、眼鏡かけててぇ、ビシっとスーツ着てるの!」
 外見は大和撫子のおっとりとした女性、中身は若者の儚はそう言うと、1枚の写真を可憐に差し出した。
 確かに、写っている男性は知的な雰囲気だ。だがしかし、可憐はこの人に見覚えがあった。
「宝田 騎士(たからだ・ないと)」
「そーそー、可憐ちゃんと1回だけ会った事あるよねぇ?」
 騎士と書いて『ナイト』と読む彼の事を、可憐は覚えていた。
 あれは可憐がまだ10歳の頃、宝田家のパーティーに呼ばれた時の事。
 同じ歳くらいのカッコ良い子がいると思い見ていると、何故か薔薇の花を一輪銜えて可憐の前に来る少年。そして、すっと膝をついて可憐の手を取り、手の甲にそっと口付けをしたのだ。
『麗しいお姫様、お名前をお聞きしても宜しいでしょうか?』
 次の瞬間、可憐は彼の顔に蹴りを飛ばしたのだった。
「イヤだ!騎士だけはイヤだっ!!だぁぁぁっ!!思い出しただけで痒いっ!」
 可憐の腕には鳥肌がたっていた。
「えー、でもぉ、騎士君は可憐ちゃんの事気に入ってたみたいだよぉ〜?なんかぁ〜『僕の事を蹴り倒したパワフルなお姫様は彼女だけ。あぁ、僕のスウィートハニー・可憐』って言ってたみたいだしぃ」
 ゾクリと背筋に寒気が走る。可憐は騎士のようなタイプが苦手だった。
「ぜってーお見合いなんてしねぇからな!」
 そう言って断固拒否の構えを見せた可憐だったが、お見合いの日程は進むばかり。それならばと考えたのが、今回の作戦だったのだ。


「つまり、騎士のヤローは俺様の強さに惚れてんだ。なら、猫かぶりお嬢を演じりゃぁ良い」
「それなら、可憐様がご自分でなさった方が‥‥」
「バーカ。俺様だったらぜってーぶん殴るか蹴っ飛ばすかしちまうだろ?」
 可憐はそう言うと、可愛らしい白のワンピースに身を包んだ信也の背を叩いた。
「それにしも良かったぜ。お前が華奢でなかなか可愛い顔してて。女装も似合うな」
「嬉しくないです」
「背は伸びたって事にして、声は風邪。後はまぁ、適当にやってくれ」
「お嬢様〜、やっぱり止めましょうよ〜。だって、こんなの宝田様にバレたら‥‥」
「大丈夫大丈夫。儚だって『うっそー、信也君が可憐ちゃんに〜!?マジウケルんだけどー!そんな楽しい事するんなら、協力しちゃう〜』って乗り気だったし」
「うう、儚様まで‥‥」
 信也は背中まである長い髪で顔を隠しながら、瞳を潤ませた。


≪映画『お嬢様の事情』募集キャスト≫

*白雪 可憐
 泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
 ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
 性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
 お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
 俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』

*大胡 信也
 女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
 控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
 性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
 通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
 ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
 ひっそりと可憐に思いを寄せている。白憐(はくれん)と言う白猫を飼っている。

*宝田 騎士
 眼鏡(ダテ)をかけた知的な雰囲気の美男子
 黙っていれば良い男、口を開けばナルシスト風
 『僕』『〜さん』(可憐はハニー)『〜だね』『〜だよね』
 儚と喋る時は一人称は『私』になり『〜ですよね』『〜です』と変わる
 ちなみに儚は『儚様』と呼ぶ

*白雪 儚
 可憐の母親で、外見は可憐にソックリの落ち着いた大和撫子風美女
 中身はいたって若者で、言葉遣いも砕け調子
 『私・儚ちゃん・儚様』『〜さん、〜君、〜ちゃん』『〜じゃーん』『〜でしょぉ』
 『超〜』や『マジ〜』なども使う


・その他
・宝田家のお手伝いさん
・白雪家のお手伝いさん
・可憐や信也の友人     など


*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)

●今回の参加者

 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)
 fa4769 (20歳・♂・猫)
 fa5345 ルーカス・エリオット(22歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 儚(桃音(fa4619))に連れられて宝田家へと向かう道中、泣きそうになっている人物が2人居た。まずはフリフリお嬢様衣装を着た信也(忍(fa4769))。こんなデカイ女怪しまれない訳無いと、瞳を潤ませ困った顔をしながらトボトボと歩いている。
「なに人の後ろに隠れてプルプルしてんだよ!シャキっとテメェの足で歩きやがれっ!」
 可憐(あずさ&お兄さん(fa2132))にそう言われ、アルバート(ルーカス・エリオット(fa5345))がビクっ!と震える。泣きそうになっている人物2人目は、彼だった。可憐と信也は想い合っていると勘違いしている彼は、今回の可憐の作戦に乗り気だった。
(人前は怖いけれど、信也君と可憐様の幸せの為!)
 ちなみに現在、彼が泣きそうになっているのは超絶不機嫌な可憐様が恐ろしいから、ではない。落ち着きのある爽やかな外見をした彼は、凄まじいチキンだった。
「知らない人がいる!怖いから向こう行かない!曲がり角の向こうに何かが潜んでいそうで怖い!‥‥ひぃぃぃっ!!屋根の上に死神がぁぁっ!!」
「ありゃ、カラスだボケっ!!」
 お手伝いさんの衣装を着た可憐にズルズルと引きずられていくアルバート。やたら目立ちながら宝田家に着くと、インターフォンも押さずにズカズカと入って行く儚。そして、扉の前で立ち止まると声を張り上げた。
「ナーイートーくーん!あっそびっましょー!」
 今時小学生でもやらないような呼びかけに、その場に居た全員がツッコもうとして‥‥ドンと、信也の背中に誰かが突進してきた。
「ああ、この運命の再会をどれだけ夢見た事か!一目見た時に君だと直感したよ、マイ・スウィートハニー・可憐!」
 相変わらずの騎士(角倉・雨神名(fa2640))に可憐が総鳥肌状態になり、顔を背ける。
「‥‥やっぱアイツだけは生理的にダメだ」
「ハニー、随分背が伸びたんだね?びっくりだよ!」
「えっと‥‥」
「いやごめんよ、決して悪いと言ってるわけじゃなくて‥‥僕の愛を受け止めてくれるようなパワフルなハニーに惚れ直したよ!」
 可憐を見上げながら微笑む騎士。この身長なのだ、一目でバレるだろうと思っていたのだが‥‥残念ながら騎士はアホだった。
「可憐ちゃんってば、超〜成長期だったのよぉ!マジビックリでしょぉ〜?」
 そんな儚のフォローも入り、騎士は信也を可憐と思い込んだ。このまま行けばどうにかなるかな。可憐がそう思った時、騎士の背後から愛くるしい少女が姿を現した。
「騎士お兄様の妹で撫子と申します」
 場を和ませる愛玩動物系の美少女・撫子(美森翡翠(fa1521))は無言で信也の顔を見詰めた後で、可憐に視線を移した。
 実は撫子、こんな外見をしているが冷めたリアリストで『バカ兄が問題を起こしても困る』と言う理由で今回のお見合いに同行させて欲しいと姿を現したのだ。
(これはバカ兄、嫌われていますわね)
 けれどきっと、バカ兄は気付いていない。何故ならば、アホだから。
 撫子は哀れなバカ兄に指摘してやろうと口を開きかけ‥‥儚のウインクに、口を閉じた。


 ハイヒールにスーツ、きっちり纏めた髪が眩しいデキル秘書風の外見をした小早川 薫(姫乃 舞(fa0634))は物陰で信也達を見詰めながら口を開いた。
「俺も信也さんがウォーリーって言うの?気になるんすよねー」
 抑揚の無い若者言葉に、無意味に入るカタカナ英語。そんな薫の隣では、ヤンキー風の強面青年が白雪家独特のフリフリお手伝いさん衣装を着て立っていた。彼の名前は甘粕康祐(森里時雨(fa2002))儚から『誰をとは言わないけどぉ〜、頑張って守ってあげてね♪』と言われ、何故か渡された衣装を着、こうして守るべき相手の『騎士』と『可憐』を見詰めている。可憐の(被害者の)ボディーガードをして早数年、まさかこんな理不尽な役‥‥じゃなく、大役が回ってくるとは!
「何?あの気障なスピーチって言うの?凄いっすよねー」
 薫が騎士を見ながらそう言った時、儚と可憐がこちらに歩いてきた。そして、こっそりと信也達の様子を窺う2人の隣につく。
「信也さん結構可愛いっすよねー。騎士さんにバレないって凄くないっすかー?」
「信也君ってばぁ〜可憐ちゃんよりよっぽどお淑やかだからぁ、騎士君も気に入っちゃうんじゃないの〜?」
 薫と儚のダブルサウンドに、「ルッセーババー!」と絶叫しそうになるのをなんとか堪える。
「騎士君ちっちゃいけどカッコイイじゃーん。何で可憐ちゃんは嫌なのぉ?」
「キモイからだ」
 理由はその一言に尽きた。


 騎士は強い可憐が好き。そう聞いていたアルバートは、木の影から『可憐様の魅力』についてドモりながら語っていた。
「かかか可憐お嬢様はとっても清楚で可愛らしくて、ままま正に荒地に咲いた癒しの花で!」
 それは一体何処の可憐だろうか。涙を浮かべつつ必死に訴えていたアルバートだったが、騎士は彼の言葉よりも彼自体に興味を示していた。
「可哀想に、寒いんだねプルティー。僕が温めてあげよう」
 プルプルしてるから『プルティー』騎士のネーミングセンスはいまいちだ。薄ら笑みを浮かべながら手を広げて迫ってくる騎士に危機感を感じ、アルバートが泣きながら可憐達の方へと走り去る。
「シャイなんだね」
 純粋に怖いだけだろう。そんな騎士の隣で、撫子が信也に笑顔を向けていた。
「随分と綺麗なお手伝いさんがいらっしゃるようですが、新しい可憐様のお世話係の方ですの?それに、噂の大胡様は本日はいらっしゃいませんのね」
 冷や汗が背中を滑る。もしやコレで騎士にバレたのでは!?いやいや、騎士は途轍もないアホなのだ。途方もないアホなのだ。
「ハニーの方が美しいさ」
 アレが本物の可憐だ。
「あの、騎士様は、おじょ‥‥わたくしの、何処が御気に召したのでしょうか?」
「何もかもだよ。その瞳、その髪、あぁ、美しい‥‥。それにしてもハニー、今日は元気がないみたいだね。昔のようにハニーのキックが飛んでくるかと思ったのに」
 どう返したら良いのか分からずに黙り込んだ信也を椅子に座らせると、騎士がグイと顎を掴んだ。
「覚えているかい?昔、手に口付けをした時、君は愛を込めたキックをお返ししてくれたね。あの素敵な思い出は忘れられないよ。‥‥今日は2人で大人の口付けを交わそう、そして君の愛の攻撃を受け止めてみせるよ!」
 突然の展開に硬直する信也。撫子が『お可哀想』と言う表情で顔を背ける。騎士の顔がどんどん近付き‥‥


 儚は状況に飽きていた。中身若者の彼女の興味は信也達から逸れ、隣でプルプルしているアルバートへと移っていた。
(突き飛ばしたらどうなるんだろう!超気になるじゃーん!)
 と、言うわけで、思ったが即実行の儚様はいたいけな少年を突き飛ばした。アルバートが思い切り飛び出し、騎士の背中にぶつかる。
「キャーッ!ひ、ひ、人前!!」
 脱兎のごとく駆け出し、茂みの中に隠れるアルバート。儚が「何アレ〜超面白いんだけどぉ〜!」と言って笑っている時、信也同様騎士の突然の行動に硬直していた可憐が立ち上がった。
「騎士の好みが変わった=俺様が出て行っても問題なし。だよな?」
「や、でもー、信也さんもホルドアウトって言うの?頑張ってるみたいっすしー、もう少し‥‥あー、行っちゃった」
 止める間もなく可憐の蹴りが騎士に決まり、信也を指差して声を荒げる。
「てめぇの目は節穴か?よく見ろ!こいつは男だ!」
「お、お嬢様!落ち着いてください!」
 信也がヘタレ全開でへっぴり腰になりつつも、怒り心頭の可憐を止めようとした時、突然可憐の背後から康祐が飛び出して来て騎士の腕を取った。
「俺が可憐だぜ!見ての通り日本男児だ、夜露死苦な!」
 こうなっては自分がお嬢様の替え玉に!と、泣きそうになりながらも可憐と信也に逃げるように声をかける。
「テメェの死は忘れねぇぜ!逃げるぞジジイ!」
「勝手に康祐さんを殺さないで下さい!」
 叫ぶ信也の腕を取り、走り出す可憐。信也が騎士に向かって「すみませーん!」と叫び‥‥繋いだ手を見詰めて、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。


「マジ最高だったしぃ〜!次は何しようかしらぁ〜?」
「ちゃんと生ゴミは持って帰りますので、ご安心下さいませ」
 ションボリしている兄を生ゴミ扱いする妹は鬼だ。撫子がキリリと表情を引き締め、部屋でじっくり商談でもと儚に話を持ちかける。儚がそれに頷き‥‥茂みの中でプルプルしているアルバートに気付き、手を差し伸べる。
「行くよ、プルティー♪」
 儚は彼の本名をすっかり忘れていた。



○NG集
・雨神名『にゃんこハニー』
「‥‥僕の愛を受け止めてくれるようなパワフルにゃハニー‥‥」
(一同沈黙)
「にゃハニーですの」
「にゃハニーだね」
「にゃハニー‥‥」
「み、皆さんで言わないでくださいーっ!!(顔真っ赤)」

・桃音&ルーカス『やりすぎですのー♪』
(突き飛ばしたらどうなるんだろう!超気になるじゃーん!)
「えい!(突き飛ばし)‥‥あ」
「(思い切りつんのめり、地面へダイブ!)わああぁぁぁっ!!」
「思い切り過ぎましたのー。大丈夫でしたか!?」
「あ、だいじょう‥‥」
「プルティーさん」
「本名でも役名でもなく、そっち!?」

・翡翠『ゴミの行方』
「ちゃんと生ゴミは捨てて帰りますので、ご安心下さいませ」
(沈黙)
「‥‥捨てずに持ち帰ってくださいですのー」
「‥‥ご、ごめんなさい!(顔真っ赤)」