Eternal Blood Uの人アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/20〜01/23

●本文

 光の中は、温かかった。
 まるでお湯の中に浸かっているかのような、優しい温度。
 また、あの声が聞こえて来る。
 クスクスと、憎悪に満ちた笑い声と共に‥‥
『ようこそ‥‥私の名前は‥‥この世界の‥‥』
 何かを言っている。けれど、肝心な部分は聞き取れない。
『‥‥本当に実在するのかしら?』
 彼女の言葉はかなり長かった。けれど、聞き取れる部分はほんの少しだけ。
『ねぇ、私は貴方に訊くわ。まだ生きてるの?』

【里奈の日記】

 まだ、この悪夢は終わらない。
 今度飛ばされてきたのは、小さな遊園地だった。
 メリーゴーランドに観覧車、ジェットコースターにミラーハウス、お化け屋敷に不思議な円柱形の建物。
「また、可愛らしいところに飛ばされてきたな」
 隼人がそう言って頭を掻き、メモを探す。
 誰も居ない遊園地はひっそりと静まり返っており、私は霊がいない事を確認してから歩き始めた。
 まずはメリーゴーランドのところまで歩き、次にお化け屋敷とミラーハウスに足を伸ばす。
 お化け屋敷の中は真っ暗で、私は入るのを諦めるとジェットコースターの方へと足を向けた。
 直ぐ前方に見える乗り場付近まで行こうとして‥‥足を止める。足元に引かれた赤い線が気になったのだ。
 どうしてこんな何も無いところに線が?そう思い首を傾げると、突然隼人が声を荒げた。
「それに触るな!!」
「どうしたの?」
「どうやらここは、所定のエリアだけしか行けないようになってるらしい」
「どう言う事?」
 隼人が無言でメモを手渡す。そこには『メリーゴーランド』『お化け屋敷』『ミラーハウス』以外には行くなと言う文字が殴り書きされていた。
 足元に転がっていた石を、そっと赤い線の向こう側に投げる。
 バチリと鋭い音がして、見れば石は粉々に砕かれていた。
「危ないところだったわ」
「そうだな」
「それで、扉はどこにあるの?どうやらここにも霊はいないみたいだけど」
「それが‥‥」
 隼人が口篭る。その手には、小さなメモの切れ端が握られていた。
 私がそのメモに手を伸ばそうとした時、隼人の唇から小さな声が漏れた。
「『U』を持つ人を救えって」
「え?」
 首を傾げた次の瞬間、遊園地に青白い顔をした人が溢れかえった。


【隼人のメモ】

・仲間を捜せ・銃は使うな・『U』の印を持つ人を捜し出せ・『U』の印を持つ人を救え
・エリアの外には行くな・懐中電灯を持っていない場合お化け屋敷には行くな
・次のエリアに行く方法は『U』の印を持つ人を救った後、ミラーハウスに行って『U』の印のついた鏡を割れ


≪映画『Eternal Blood Uの人』≫

・募集キャスト
*主人公
 必須キャストになります。この世界に飛ばされて来てしまった人で、性別や年齢などは問いません
 主人公視線の物語になりますので、一人称は『私』『僕』『俺』等が適切です
 性格は、冷静沈着な設定の方が無難です

*仲間
 必須キャストになります。主人公同様、性別や年齢などは問いません
・前回生き残った方はそのままの名前でご参加下さい
・前回死亡された方は名前を変えて主人公・仲間としてご参加出来ます

・霊
 必須キャストではありませんが、『Uの印を持つ人』として1人だけ参加可能です
 →『Uの印を持つ人と間違われる霊』と言う設定の方がいらしてもOKですが、『間違えられる霊』と言うだけで登場シーン終了になってしまいますのでオススメ出来ません
 →今回の霊は人襲わない&『Uの印を持つ人』以外主人公達に興味を示しません
 性別や年齢などは問いません
 

・Uの人

 カラクリ屋敷から飛ばされてきた先は、遊園地でした
 隼人のメモも里奈の日記も、皆さんが飛ばされてきた場所の直ぐ近くに置いてありますので探す必要はありません
 飛ばされてきた場所で里奈の日記・隼人のメモを見た後で青白い人(幽霊ですが襲ってきません)が出現、仲間を捜しながら『Uの印を持つ人』を捜しだし、彼ないし彼女の悩みを解決し、ミラーハウスへ行って『Uの印のついた鏡』を割って次のエリアへと続く扉を開けると言う流れになります
 →『メリーゴーランド』『お化け屋敷』『ミラーハウス』以外の場所に行こうとした場合は死亡になります
 →今回『お化け屋敷』には入れません(懐中電灯を持っていないため)
 →お化け屋敷に行こうとした場合も、暗がりに潜む『何か』に捕まり死亡になります
 『Uの印を持つ人』の悩みはどんなものでも構いません
 ほのぼのしたものでも、ドロドロしたものでもOKですが、今回行けるエリア内で出来る事にしてください
 里奈も隼人も、皆さんが来る前にこの世界に飛ばされて来てしまった人ですのでキャスティングの必要はありません
*主人公以外の生死はお任せいたします。主人公は必ず次のエリアに向かってください。

●今回の参加者

 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa1814 アイリーン(18歳・♀・ハムスター)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)
 fa4391 夜野月也(25歳・♂・犬)
 fa4478 加羅(23歳・♂・猫)
 fa4840 斉賀伊織(25歳・♀・狼)

●リプレイ本文

 赤い月を見た。それが瞬いた、次の瞬間、温かい光の中にいた。遠くから、声が聞こえて来る。けれど、その意味は分からない。まるで、目が覚める寸前に見る朧気な夢のようだと思った。夢と現の狭間の様な感覚。完全に目を覚ませば崩れてしまう、脆くも淡い一瞬。私、渡瀬 美咲(姫乃 唯(fa1463))はゆっくりと目を開けると周囲を見渡した。
(どうしてこんなところに?)
 疑問が浮かぶ。そもそも、私がこんな所に来る筈はないのだ。だって、私は小さな頃に遊具で怪我をした事があり、遊園地が嫌いだったのだから。それならば、これはまだ、覚めない夢の途中なのだろうか?いや、違う。肌に纏わりつく空気は、確かに現実のものだ。何時の間にこんな所に来てしまったのだろうか?何故?‥‥考えていても仕方の無い事だった。私は傍らに落ちていたメモと日記を取ると、目を通した。メモには乱雑な字で書かれた幾つかの『約束事』
 メモを完全に信じた訳ではなかったが、他に手がかりもない。何より、ココが何処なのか、どういった場所なのかも分からない。メモの通りにするより他にどうしようもなかったのだ。メモの通りに仲間を捜さないと。そう思った瞬間、青白い顔をした人達が園内に溢れかえった。


 血色の良い顔をした人を見かけ、私は近寄った。何かを真剣に話し合っているらしい3人。
「貴方達は、幽霊‥‥ではないよね?」
 私の声に顔を上げた3人は順に此花 桜(ベルシード(fa0190))と伊崎 紅楼(夜野月也(fa4391))そして式守刹那(敷島ポーレット(fa3611))と名乗った。桜さんと紅楼さんは、初めてここに飛ばされてきた私に色々とこの世界の話をしてくれ、紅楼さんは何故か銃を手渡してくれた。霊を倒すことの出来る銃だと言う。桜さんがメモを読み、何かを不思議がっている。そして、小さな石を赤い線の向こうに投げた。
 バチリと大きな音がして、気づいた時には石はなくなっていた。この世界は、甘い夢の世界などではない。私は仲間の存在を大きく感じた。
「『U』の印を持つ人って‥‥何の事だろうね?」
 皆、分からないと言って首を横に振った。一先ず、ミラーハウスを覗いてみようと言う事になり、私達はミラーハウスへと足を向けた。


 ミラーハウスの中はしんと静まり返っており、人の気配はなかった。印を持つ人も、Uの鏡すらも見つからなかった。そう、Uの印のついた鏡など、何処にもなかったのだ。
「Uの印のついた鏡なんてどこにもないじゃんか〜」
 紅楼さんの声が、ミラーハウスの中に響く。何もない以上、ココを探していても仕方がない。私達はミラーハウスから出た。ミラーハウスの隣はメモに入ってはいけないと書いてあったお化け屋敷だ。そこに、1人の女性が入って行きそうになるのを見て、紅楼さんが声を荒げる。
「入っちゃ駄目だ!」
 彼女の名前は時津波(斉賀伊織(fa4840))と言い、この近くで目覚めでメモを探すためにお化け屋敷の中に入ろうとしたのだと言う。
「懐中電灯が必要って事は、ひょっとしてまたここに戻って来る事もあるのかな?」
 紅楼さんの呟きが聞こえたが、私には『Yes』とも『No』とも言えなかった。
 青白い人達がゆっくりと歩く中、Uの人を捜して歩き回る。と、不意に声が聞こえた。霊ではないらしい女性と男性。
「なんで私なんかが生き残ったの?」
「まだ諦めるには早いだろう?」
 2人の会話が聞こえた瞬間「清花!?」と波さんが声を上げ、走り出して行った。2人の視線が波さんに注がれる。男性の方は神谷 蒼(加羅(fa4478))、女性の方は山本清花(都路帆乃香(fa1013))と言い、今まで仲間だった人を亡くしているようだ。
「何で私なんかが生き残ったの?」
「もう少しでここから抜け出せるから、一緒に頑張ろうよ」
 紅楼さんと蒼さん、波さんが必死で説得を試みているようだけれど、どうやら清花さんにその言葉は届いていないらしい。
「そうだよ。また三人で一緒に会えたんだから、いつか此処から出られる可能性だってある」
「もういいじゃない。私の事なんて、放っておいて」
 清花さんが涙ぐみながらそう言った時、それまで黙っていた刹那さんが口を開いた。
「いいって言ってるんだから置いて行けばいいんじゃない?」
 心底面倒臭そうな表情で、ポケットから煙草を取り出すと口に銜え「そんな事より火無いかな?火」と言って首を傾げる。
「そんな事言ってる人がイザと言う時真っ先に見捨てられるんだよ」
 紅楼さんがあからさまに嫌そうな表情で冷たく言い放つ。
 先ほどまで和やかな雰囲気だったのに、急に仲違いが起きてしまった。
 蒼さんと波さんは顔を見合わせて気まずそうに眉を顰めており、紅楼さんは刹那さんに鋭い視線を向けている。刹那さんはそんな事知った風ではなく、蒼さんから受け取ったライターで煙草に火をつけ、紫煙を吐き出している。桜さんはと言うと、何を考えているのか良く分からない雰囲気で、視線を遠くにやっている。そもそもの発端に清花さんは呆然と成り行きを見守っているだけだ。
「‥‥どうしても独りで行動したいって言うなら、無理強いする事はしない。でも、一緒にいた方が良いとは思うよ?」
「ごめんなさい」
 私の言葉に、清花さんは謝罪の言葉を述べると同行を申し出た。


「それにしても、Uって何なんだろう?」
「Uと言うと、思い浮かべるのは『音叉』に『馬の蹄鉄』に‥‥」
 紅楼さんの言葉に、蒼さんが思いつく限りの言葉を並べ立てる。
「馬って言うと確かメリーゴーランドがあったな」
 桜さんが独り言のように呟き、私達はメリーゴーランドへと足を向けた。明かりの灯っていないメリーゴーランドは真新しい白馬が微動だにせずに空中で停止している。
「あのピエロ、衣装にUって書いてあるよ!もしかして?」
 私の言葉に、目を細めて頷くメンバー。恐る恐る近付いて行くと、ユウ(アイリーン(fa1814))がパっと顔を上げ、突然鈴を鳴らし出した。
「やっとお客さんが来たあ〜!さあさあ、メリーゴーランドで遊んで行ってよ!」
 突然の展開に呆気に取られる私達をよそに、メリーゴーランドに乗り込むユウ。
「青白い顔のお客さん達は見向きもしてくれなくてさ、夢が無いよね〜」
 ヤレヤレと言った様子で首を振ると、私達に視線を向ける。
「もしかして、これが願い?」
 桜さんが複雑な表情を浮かべ、波さんが愕然とした表情で呟く。
「幽霊とメリーゴーランド‥‥」
「この歳になってメリーゴーランドかよ」
「こんなの乗るの初めてなんだけど」
 蒼さんと刹那さんは少々渋っていたが、これで解決するのならと仕方がなしに白馬に跨る。清花さんと桜さんも無言で乗り込み、紅楼さんにいたっては上機嫌で白馬に跨った。
「こんな事で良いなんて、ラッキー☆たまにはこんなほのぼのしたのもいいな〜」
 私は遊園地に嫌な思い出がある。けれど、乗らなければこの場所から出られない。どうやらこのメリーゴーランドは、全部に人が乗らなければ動かないようだ。残っている白馬は1頭。私はゆっくりと白馬に跨った。
「発進〜!」
 ピエロ・ユウの声が響き、場違いなまでに明るいオルゴールのメロディが流れ出す。輝くライトに、回る世界。青白い顔をした人々は、こんなに楽しげなメロディにも顔を上げずに、ただ地面を見詰めているだけだった。


  メリーゴーランドが速度を落とし始める。ユウがお礼にと『U』字の蹄鉄を私に手渡した次の瞬間、閉演の合図が園内に鳴り響いた。メリーゴーランドが止まり、少しだけ寂しそうな表情のユウが顔を上げる。
「終わり、だね。さあ、急がないと。行き先は、分かってるよね?」
 勿論だった。ユウが私達の前を歩き、ミラーハウスの入り口まで来ると足を止める。相変わらず青白い顔をした人々は地面以外見ていない。
「この蹄鉄が、ミラーハウスの『Uの印の鏡』の鍵になるんだね」
「これって、ミラーハウスの鏡ならどれに当ててもいいの?」
「そう」
 私と紅楼さんの質問に頷くと、ユウが1歩後ろに下がった。
「ボク‥‥いえ、私はここまで。失敗した人達は皆、幽霊になって遊園地に留まるの。ミラーハウスを見て全部思い出したわ。私がどう諦めて、死んだかも‥‥ね。さあ、急いで。貴方達は突破した。次へと、進んで。終わりを目指して」
 笑顔で手を振るユウがだんだん薄れていく。それだけじゃない。青白い顔をした霊達も、色が薄くなってきている。視線を遠くに向ければ、遊園地の端から凄まじい勢いで黒い影がこちらに向かってきている。
「閉園だ‥‥」
 誰かが呟いた。多分、蒼さんだったように思う。でも、違う人だったかも知れない。私達は急いでミラーハウスに入ると、蹄鉄を鏡に押し付けた。薄っすらと浮かんだ『Uの印』に、私は思い切りその鏡を割った。桜さんが急いで私の手を取り、私も隣に居た紅楼さんの手を強く握った。
 割れた鏡の中から、眩い光が漏れ出す。それはあまりにも強く、目も開けていられないほどだった。目を閉じる。右手に、左手に、感じていた手の感触が無くなる。その瞬間、悟った。『ここで一旦終わりなんだ』と。そして『ここからまた始まるんだ』と。


 これが私、渡瀬 美咲がこの世界に初めて足を踏み入れた時のお話
 私はこの『空白の時』が何であるのか、考えた
 どうして『空白の時』を挟むのか
 何故『空白の時』が必要であるのか
 私は、考えた‥‥