Two Daysアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 5.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/21〜01/23

●本文

 窓から見える夜空を見上げる。
 あと数日したら、この場所から出なければならない。
 あと数日したら、あの人とも別れなければならない。
 明日には、行く事を伝えなくてはならない。
 明日、明後日、明々後日には、アメリカに旅立たなければならない。
「どう言うかな」
 きっと驚く。
 そして、どうしてもっと早く言わなかったのか、問うだろう。
「言えるわけ、ない」
 サヨナラが寂しくて言い出せなかったなんて、言えない。
 ギリギリまで先生にも言うのを待ってもらった。
 旅立つギリギリの時まで、皆には普通に接して欲しかったから。
「湿っぽいの、ダメなんだよね」
 どうせ行くなら、笑って行きたい。
 この気持ちに決着をつけて、新しい場所に行きたいから‥‥


 切欠は単純。自分でも呆れてしまうほど呆気なく、空(そら)に恋した。
 小学校の時の運動会、捻ってしまった足を引きずりながら歩いていると、空が手を貸してくれた。
 たったそれだけ。
 きっと空は忘れている、ほんの些細な事。
 ずっと温めていた思い。
 空が陸(りく)と付き合い始めたと知った時は、それなりにショックだった。
 でも、気持ちに諦めがつかないままズルズルと今まで引きずって来た。
 空と居られる時間は後2日。
 明後日‥‥学校に行く最後の日、空と会う最後の日、今までの思いを告げる。


≪映画『Two Days』募集キャスト≫

*海(うみ)
 17歳の高校2年生
 物静かで儚い雰囲気の優等生だが、言いたい事は言うタイプ
 表情に乏しく、取っ付き難いタイプ
 空とは幼馴染で以前から好きだった
・外見年齢15〜18程度

*空(そら)
 17歳の高校2年生
 明るく元気なタイプで、勉強よりも運動の方が好き
 場を盛り上げる才能があり、クラスのリーダータイプ
 誰からでも好かれる人気者
 海とは幼馴染で、少し気になっている程度
 陸から告白され、付き合っている
・外見年齢15〜18程度

*陸(りく)
 17歳の高校2年生
 喜怒哀楽がはっきりしており、地味ではないが、目立つタイプでもない
 場が読めずにキツイ言葉を言って相手の気持ちを抉ることもある
 相手が傷ついている事が分かれば直ぐに謝るが、気づかない限り言葉は止まらない
 海のようなタイプの心を抉りがち
 空とは付き合っており、海とは友達
 海の気持ちには薄々気付いている
・外見年齢15〜18程度

・その他
・友人
・海の家族
・学校関係者   など
*小中高のエスカレーター校設定にした場合、外見年齢小学生・中学生の方は主要人物の後輩として参加可能です


・シーン1
 帰りのSHRで明後日に海がアメリカに行くと言う事がクラスに伝えられる
 その時の、海・空・陸の様子
*SHR(ショートホームルーム)
→担任の先生から明日の日程や諸連絡を伝えられる短い会の事で、大抵は数分で終わります

・シーン2
 海が学校に来る最後の日
 放課後に呼び出された空は、海の告白を聞かされる
 海と空の心の変化
 陸の気持ち

・シーン3
 海がアメリカへと旅立つ日の朝の様子

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3652 紗原 馨(17歳・♀・狐)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa5313 十軌サキト(17歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

○1日目
 凛と引き締まった冬の景色を窓の外に見ながら、海(悠奈(fa2726))は先生に促されるまま教壇に立つと、簡単な挨拶をしてから自分の席へと戻った。帰る途中で、空(十軌サキト(fa5313))のぽかんとした顔と、陸(雅楽川陽向(fa4371))の驚いたような顔が目に入る。
 ホームルームは直ぐに終わり、バラバラに帰っていく生徒達の後姿を見送っていた時、後ろの席の方城・瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))が肩を叩いてきた。
「何で私にだけは言ってくれなかったの?」
 少し怒ったようにそう言って、すぐに表情を和らげる瑞希。
「其処が海らしいんだけどね」
 微笑んだ彼女を押しのけるようにして、陸と空が海の隣に立つ。
「何で教えてくれなかったの!?」
「そうだよ、何でそんな大事な事黙ってたんだ!?」
 怒っている様子の2人。気持ちの切り替えが早い瑞希とは違い、2人の怒りは収まりそうに無い。
「黙っててごめん。‥‥色々あって」
「それにしても、唐突過ぎだろ!?」
「何でアメリカなんて!?」
「従姉妹と一緒に、語学留学する事になって」
「どのぐらい行ってるの?」
「3年か、5年か。そのくらい」
「そんな長期間行くんなら、もっと早くに言ってよ!」
「ごめん」
「陸も空も落ち着いて。海にだって、色々あったんだよ」
「‥‥ごめん」
 何かに気付いたらしい陸が小さくそう呟くと口を閉ざす。自身も小学校時代に引越しを経験している彼女は、海の寂しさが分かっていた。
「私、部活あるから」
 陸がそう言って立ち上がり、逃げるようにその場を立ち去る。
「私も、準備があるから。また明日」
「あぁ」
 海が寂しそうな笑顔を浮かべて腰を上げる。瑞希と空がその背中を見送り、まだモヤモヤしているらしい空が加賀見・慎也(氷咲 華唯(fa0142))に絡み始める。瑞希はチラリと時計を見た後で、窓の外に視線を向けた。校庭を突っ切って帰って行く海の後姿が見えた。


●2日目
 朝から緊張していた。あまりの緊張感に、何度やめようと思ったか分からない。でも、今日しかない。従姉妹に背中を押された時から、絶対に言おうと決めていたのだから。
 まだ昨日の事を引きずっているのか、不機嫌そうな表情の空が、海の呼び出しに応じて屋上に来る。彼は、海が黙っていた事をこの場で謝るのならば、全てを許そうと思っていた。そして、明日、アメリカに旅立つ海を笑顔で送り出してあげようと思っていた。
「何?」
 憮然とした態度の空に苦笑しつつ、海が遠い昔の事を喋り出す。突然何を言い出すのだろうか。首を傾げた空に、海が少し寂しげな笑顔を見せる。
「憶えてない、よね」
「‥‥どうしたんだ?海?」
「私ね、あの時からずっと‥‥空が好きだったの。1人の、男の子として‥‥」
「はい?」
 突然の事に脳の回路がショートしたらしい空が、ポカンとした表情のまま押し黙る。沈黙の時が流れ、耐えられなくなった海が走り出す。
「え、ちょ、海!?」
 そのまま階段を駆け下り、靴に履き替え校庭を突っ切る。校門で海の帰りを待っていた瑞希のところまで走り、瑞希がこちらを振り向く。その顔を見た途端、涙がこぼれてきた。
「如何したの?」
 突然の涙に驚いた瑞希がそう尋ね、けれど海はそれに言葉を返す事が出来なかった。
 ここでは目立つからと、瑞希が手を引きながら彼女の家へと上げてくれ、ひとしきり泣いた後で瑞希が持って来たカモミールティーにほっと一息つく。
「ごめんね。突然」
「ううん。全然構わないよ」
 優しい笑顔。他の子よりもほんの少しだけ大人びた彼女は、海が空に告白したと言う事をつっかえながら一生懸命話すのを、黙って聞いていてくれた。
「そっか。でも、気持ちは打ち明けられたんでしょ?」
「うん。これで思い残すことは無いから。‥‥行って来るね」
「‥‥明日の準備はどう?」
「順調だよ。後は身の回りのものだけ」
「そっか。‥‥家まで送るよ。それで、少しだけ寄り道しない?新しい喫茶店見つけたの」
「行く‥‥」


 スタートラインに立って前を見詰める陸上部の部員達を横目に、海は友人の天野 風香(紗原 馨(fa3652))と後輩でマネージャーの霧生・雨(角倉・雨神名(fa2640))相手に声を荒げていた。
「突然なんてヒドイ!」
 切欠は風香が何気なく言った「海ちゃんアメリカ行っちゃうって、陸は知ってた?」の一言だった。今まで押し込めていた感情が爆発したかのように不機嫌になる陸。
「落ち着いてください陸先輩!そんなに眉間に皺よせてると将来大変ですよ」
 雨の発言に、陸が般若の表情になる。大体、引越しもした事の無い人間に何が分かると言うのだろうか。友達から別れる、あの切ない気持ち‥‥。陸は風香と雨に何とか宥められ、椅子に座ると仏頂面で床を睨んだ。
「海も空の事が好きみたいなんだよね。海、どうするつもりだろう」
「え、海ちゃんって空君の事好きだったんだ?」
「風香は鈍感だなぁ。雨だって知ってるよね?」
「はい。雨は地獄耳なので♪」
「あの時の私は言えなかった。未来になった今、伝える事が出来て幸せだけど‥‥海にとっては今があの時の私と同じはず」
「あれ?噂で海先輩が空先輩に告白したとか聞きましたけど?」
「え!?それいつなの!?」
 雨に掴みかからんとする陸を何とか宥める風香。
「ついさっきですよぅ!それに、雨だってちゃんと聞いたわけじゃないです。偶々って言うか‥‥」
 呆然とした様子の陸に、風香がかける言葉を選んでいる。
「大丈夫です!万が一陸先輩が今の恋に敗れても、風香先輩がお嫁にもらってくれます!」
 天然雨は言葉を選らばずに思ったままを口走る。
「あのねぇ」
「ダメですか?まさか先輩、雨のこと‥‥」
「あぁもう!風香!このおバカの口塞いで!」
「OK」
「はっ!まさか、陸先輩と風香先輩、どっちも雨の事‥‥」
「ナイナイナイナイ」


 海の幼馴染で、明日一緒にアメリカへと旅立つ事になっていた敷嶋みづほ(武越ゆか(fa3306))は突然空に呼び止められ、足を止めた。
「あのさ、明日‥‥」
「海の事だよね?」
 訳知り顔のみづほは、乗る便と出発時刻の書いた紙を空に手渡した。
「時間の余裕を見て空港に行くの。見送りにくるんだよね?」
「‥‥えっと」
「来なさいよ。って、言うか、来る義務があると思うんだけど」
 全部分かっているのよ。海が貴方に何を言ったのかも、それに貴方がどう『答えなかった』のかも。そう語っているかのようなみづほの視線は冷たかった。何も言わずに去って行く彼女の背を見詰め、項垂れている空に慎也が飛びつく。
「幼馴染が海外に行っちゃって寂しいのか〜?」
「‥‥それが‥‥」


○3日目
「今日、行っちゃうんだよね。向こうでも元気に暮らすんだよ。色々大変だと思うけど、電話でもメールでも良いから、連絡頂戴ね」
「うん。有難う」
 海は瑞希からの電話を切ると、空港へと向かった。住み慣れた町が背後に流れていくのと見詰めながら、蘇ってくる楽しかった思い出に目を伏せる。
 空港に着いたのは、搭乗時刻の大分前だった。
「あ、そうだ!なんか買ってくるから、海はここで待ってて。動いちゃダメだからね!」
 荷物を押し付けて、みづほが何処かへと走って行く。何を買うんだろうか。そんな事に考えを巡らせようとした時、不意に視界の端に見慣れた姿を見つけた。
「海!」
「空に、陸?来て‥‥くれたんだ‥‥」
「良かった、見つかって。あのまま行かれたんじゃ、後悔してたから。俺、ゆっくり考えたんだ。でも、今は良く分からないから、ごめん。帰ってくるまでに気持ち見つけておく。陸も、ごめん」
「何よそれ!ちゃんと答えなさいよ!信じらんない!」
「だ、だから、ごめんって!」
 詰め寄る陸に、空が後退る。男でしょ!はっきり言いなさいよ!そんなどっちつかずで良いと思ってんの!?と、陸の罵倒が空港中に響く中、突然海がクスリと声を上げて笑った。
「なんか、昔もこう言うことあったよね。空ってば、変わってない」
「そう言えば、あったわね」
 陸がふっと遠い目をした後に、口元に笑みを浮かべる。
「期待、しちゃうよ?」
 海が泣きそうな笑顔を浮かべ、小声でそう呟く。両手に紙袋を持ったみづほが帰って来て‥‥
「海!搭乗案内始まったよ!」
「今行く!‥‥それじゃぁ、なるべく早く帰ってくるね」
「うん。また会ったときにね」
 大きく手を振る海に、手を振り返す空と陸。暫く見詰めていた背中は、やがて人込みの中に紛れて行ってしまった。
「また、会おうね」
 陸が呟いた言葉がポツリ、広い空港内に広がって行った。


●インタビュー
・悠奈&サキト&陽向
『今回、有名な役者さんを脇役に起用と言う事でしたが?』
悠「同じシーンを撮る時は緊張しました。私は七瀬さんとのシーンが結構あったのですが、なんて言うか、オーラがあって‥‥」
陽「私は角倉さんと一緒のシーンがあったのですが、とても綺麗で思わ見詰めてしまいました(苦笑)」

『新人のサキト君は特に緊張したのでは?』
サ「えぇ(苦笑)氷咲さんとのシーンがいくつかあったのですが、とても緊張しました。でも、リラックスして頑張ろうと言ってくださり、とても嬉しかったです」

『現場の様子はどうでしたか?』
陽「終始和やかなムードでした」
サ「とても楽しい撮影でした」

『この映画について何か一言』
悠「純粋で心温まるお話です」
サ「3人の恋愛模様が見所です」
陽「とても優しい映画ですので、ぜひ劇場へお越し下さい」