お嬢様の事情7アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
5.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/01〜02/03
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●本文
泣く子も黙る、超絶美少女の白雪 可憐(しらゆき・かれん)は開いた口が塞がらなかった。
「ああ、マイスウィート・ハニー!」
「止めてください!落ち着いてください!目を覚ましてください!宝田様!!」
「ノンノン、宝田様なんて、素っ気無い呼び方止めてくれないかな?ハニー?」
「どうか、どうか目をお覚まし下さい!」
修羅場だった。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
悲惨としか、言いようが無かった。
「な、な、な、なにやってんだ貴様ーーーっ!!!」
可憐はそう叫ぶと、大胡 信也(おおご・しんや)に絡んでいた宝田 騎士(たからだ・ないと)の胸倉を掴んだ。
「ハーイ、久しぶりだね、元ハニー」
「元とか言うな!テメェのハニーになった覚えはねぇ!」
「相変わらずつれないね。まぁ、そこに惚れこんだのも確かなんだけどね」
「テメェの話しはどーでも良い!それより、信也を放しやがれ!」
「お、お嬢様、お助け‥‥」
「ふふん。誰が放すもんか!運命が定めた愛する二人を引き剥がすなんて、邪道だよ!元ハニー!」
「うっせー!!運命じゃなく、めっちゃ自力じゃねぇかっ!」
可憐はそう叫ぶと、騎士を鋭く睨みつけた。
さて、どうして信也がかわいそうな状況に陥っているのか。
それはまたしても可憐の母親の儚(はかな)の策略による。
元はといえば可憐のお婿さん候補として連れてこられた騎士だったのだが、可憐は彼に嫌な思い出を持っており、急遽信也を自分の代役にする事を思いついた。
身長を全く考えていない、一発でバレてしまいそうな作戦だったが、幸運な事に騎士はおバカさんだった。
何とか上手く行き、お見合いをぶち壊せたのまでは良かったのだが‥‥
「あぁ、僕は本当は君と結ばれる運命だったんだスウィートハニー!」
と言って、信也の前に現れたのだ。
「ちょ、騎士さん待ってください!俺、男です!」
「ノンノン。性別なんかに囚われるのはナンセンスさ。何せこれは神が与えた、運命なんだから」
薔薇の花を差し出す騎士に、困惑する信也。その様子を見ていた儚が満面の笑みで信也の肩を叩き‥‥
「大丈夫だよ、信也君!愛は性別をも超えるんだから」
彼に、助けの手を差し伸べるほど、儚は甘くなかった。
「さて、もう式の準備は済んでいるからね」
「はぁ!?」
「儚様に信也君のサイズの詳細は聞いていたから、ウェディングドレスもちゃちゃっと作っておいたよ」
「いえ、あの‥‥」
暴走する騎士を止める事が出来ない信也。彼は、外見こそは超がつくほどカッコ良いのだが、中身はいたってヘタレだ。
彼は人に対してあまり強い事が言えない。例え無理矢理花嫁にさせられそうになっていても‥‥
「絶対に君を幸せにするよ」
キラリと白い歯を光らせて、騎士は手を叩いた。
何処からともなく黒服の人々が現れ、呆然とする信也を連れ去っていく。
「お、お、お嬢様〜〜〜っ!!!」
信也の悲鳴が響く中、可憐はあまりの事に呆気に取られていた。
「あいつ、どんだけアホなんだ?」
いきなりプロポーズ、しかも相手の返事も聞かずに連行、さらにはもう結婚式!
流石の可憐にも、予想できないぶっ飛んだ行動の数々に、思わず放心してしまう。
が、このままで良いはずが無い!
「くそ、ンで俺様が信也なんぞを‥‥」
文句を垂れながら、儚の部屋を蹴り開ける可憐。
「おいババア!式場の場所を教えろ!お前なら知ってんだろ!?」
≪映画『お嬢様の事情』募集キャスト≫
*白雪 可憐
泣く子も黙る、超絶美少女。外見年齢15〜18程度
ふわりと天使の微笑を向けられたがために卒倒した男性がいるとかいないとか
性格は腹黒で大雑把で俺様。猫かぶりの術に長けているため、お嬢様演技も完璧
お嬢様時は『わたくし』『〜様』『ですわ、ですの』信也は『ジイヤ』または『信也さん』
俺様時は『俺、俺様』『お前、てめぇ』『〜だぜ、だよな』信也は『ジジイ』または『信也』
*大胡 信也
女性ならば思わずキュンとしてしまうほどの王子様&勇者様外見。外見年齢15〜20程度
控え目な笑顔(困った時)と凛々しい表情(夕食のメニューを考えてる時)に卒倒する女性がいるとかいないとか
性格はいたってヘタレ。可憐に散々いびられた過去を持つために、絶対服従
通常時『俺、私(可憐に接する時)』『〜さん』『です、ます』可憐は『お嬢様』または『可憐様』
ヘタレ時『わたくしめ』『〜様』『です、ます』可憐は『お嬢様』
ひっそりと可憐に思いを寄せている。白憐(はくれん)と言う白猫を飼っている。
*宝田 騎士
眼鏡(ダテ)をかけた知的な雰囲気の美男子
黙っていれば良い男、口を開けばナルシスト風
『僕』『〜さん』(信也はハニー、可憐は元ハニー)『〜だね』『〜だよね』
儚と喋る時は一人称は『私』になり『〜ですよね』『〜です』と変わる
ちなみに儚は『儚様』と呼ぶ
・白雪 儚
可憐の母親で、外見は可憐にソックリの落ち着いた大和撫子風美女
中身はいたって若者で、言葉遣いも砕け調子
『私・儚ちゃん・儚様』『〜さん、〜君、〜ちゃん』『〜じゃーん』『〜でしょぉ』
『超〜』や『マジ〜』なども使う
・その他
・宝田家のお手伝いさん
・白雪家のお手伝いさん
・可憐や信也の友人 など
*注意事項*
・その他のキャストの性格を決めるにあたって以下の事を厳守下さい
*見た目と性格のギャップ
例1)超美少女でお嬢様外見なのに俺様口調で凶暴な性格(可憐)
例2)王子様か勇者様かと思うほどの外見なのに、ヘタレで腰の低い性格(信也)
●リプレイ本文
儚の部屋に、本人は居なかった。ただし、そこには意外な人物が鎮座していた。
「げっ、何で薫がいんだよ!?」
可憐(あずさ&お兄さん(fa2132))の声に、従姉弟の薫(カナン 澪野(fa3319))がさも迷惑そうな顔をして眉を跳ね上げる。アンティークドールのような可愛らしい美少女外見の薫は、可憐に少しばかり似ていた。そして、中身が外見のままではないと言う点でも可憐と似ていた。‥‥これは、白雪の血筋に宿る呪いか何かだろうか。
「おい、ババアはどうした!?」
「さぁ」
「くそ!ババアいねぇと信也の居場所が分からねぇじゃねーか!」
『信也』の言葉にピクリと反応した薫が、読んでいた雑誌をテーブルの上に投げ捨てると鋭い視線を向ける。
「あの目障りな男が信也兄さんを拉致監禁してる場所なら知ってる」
「何だと!?どこだそれ!教えろ!」
「お前に教える義理はないが‥‥お前、信也兄さんをあの生ゴミから奪還するために行くんだよな?」
「ったりめーだろ!そのために聞いてんだよ!ジジイなんざどうでもいいが、騎士のアホに好き勝手されちゃシャクだからな」
その言葉に薫が舌打ちをし、それでも信也(忍(fa4769))を生ゴミ‥‥ではなく、騎士(倉橋 羊(fa3742))の元から奪還するには手を組むしかない。2人は目から火花を散らしながらイヤイヤ手を結んだ。
(そもそも、儚様はどうして俺の服のサイズを知っていたのか。寸法を測った事があったか?イヤ、そんな事はなかった。それならどうしてだろう。儚様は見るだけで人の寸法を言い当てる特技でもあったのだろうか?)
混乱している信也は、隣に座る騎士の甘い言葉を右から左に聞き流していた。
(そう言えば、俺が連れ攫われる時、可憐様が放心していた‥‥もしかして、俺があまりにも不甲斐ないから今度こそ見捨てられてしまったのだろうか)
何語かも分からない言葉(信也の意識が別のところにあり、騎士の比喩たっぷりの言葉を翻訳する事が出来ないでいるため)をまくし立てていた騎士が、突然信也の頬に手を伸ばし‥‥危険を察知した信也が騎士の頭を押さえる。
「照れちゃって、ハニーは本当に純だね」
煌く笑顔を振りまく騎士。
信也はこの時、身長を含め、騎士よりも腕や脚の長さがある事を神に感謝したのだった。
儚の計らいによって、薫と可憐は招待状を持って信也と騎士が『永遠を誓う』場所へと赴いていた。そのままではバレる危険性があるからと、髪型やメイクを弄って変装した可憐と、ピンクの姫ロリ風ドレスを着こんだ薫。
「で、薫。何でンな格好してんだ?」
「へ、変装だ!」
何故か焦った様子の薫の足元で、奇妙な鳴き声が響く。
「‥‥わんわんわん〜」
鶴の羽にぐるぐる眼鏡、首輪にメイド服と言う奇妙な出で立ちをしたごんべえ(仮)(湯ノ花 ゆくる(fa0640))が2人に向かって吠え立てる。
「‥‥やっぱりアイツは変なヤツだ。なに飼ってんだ?」
可憐が眉を跳ね上げ、薫が微妙な顔をして1歩下がる。わんわんと吠え立てるごんべえ(仮)を蹴っ飛ばすと、爽やかな顔をして教会の方へと歩いて行く可憐。
「おい、伸びてるぞ!?」
「大丈夫だ。動物なら問題だが、見た目は人間だからな」
だから良いと言う事でもない気がするのだが。
「本来ならば同性同士の結婚など神罰テキメンで撲殺なのですが、宝田様は素晴らしき神の使徒であります故きっと神も大目に見てくださる事でしょう」
シスター・ケイト(深森風音(fa3736))は優しげな瞳でそう言うと、信也と騎士を交互に見やった。簡単に言ってしまえば、宝田家はこの教会に多額の寄付をしているから、少しの事は目を瞑ろうと、そう言う事だ。ここでゴチャゴチャ言って、宝田家から寄付を打ち切られたら元も子もない。金のためなら悪魔にも魂を売る金の亡者の彼女が、そんな不利な事をするはずがない。
(お嬢様のウエディングドレス姿を見る前に自分が着る事になるなんて!)
今にも泣きそうな顔をした信也の隣では、キリリとした表情の騎士が『踏み台』の上に立って、シスターの有り難くも何ともない話に静かに耳を澄ませている。
そんな2人の背後では黒百合 サレナ(夏姫・シュトラウス(fa0761))が複雑な表情を浮かべた顔を前髪で隠している。そもそも、愛は性別を超えると言う意見には大賛成だが、その相手が信也と言う事には大反対だ。可憐と信也の両方に思いを寄せているサレナは、行く行くは2人と結婚して幸せな生活を送る予定なのだ。それなのに、こんな邪魔が入るなんて‥‥。だがそんなサレナの思考も、ドレス姿の信也を見た瞬間に切り替わった。信也の隣でタキシードを着て佇むサレナの様子を思い浮かべ、ポーっと思わず顔を赤らめる。
そんなサレナの隣では綾小路 冷(倉瀬 凛(fa5331))がクールな容姿とはおよそ似つかわしくはないハイテンションな言葉を2人に浴びせている。
「騎士さん、信也さん、ご結婚おめでとうっス!とっても綺麗っスよ!」
ヒューヒューと、今時誰も使わないような言葉ではやし立てる冷。とりあえず、面白ければ何でも良いのだ。シスターだって、冷の言葉に注意を促す事はない。
「純白のドレスがよく似合うねハニー。まるで朝露に輝く咲き出しの白い野薔薇!そしてその美しい黒髪。僕の心を震わせる闇夜のようじゃないか。満点の星屑を隠しているのかい?罪作りだね。‥‥おや、泣いているのか?照れ屋さんなマイスィートハニー、嫌がってるふりなんかして、駆け引きを楽しみたいんだね」
どこをどうしたらそこまで自己中心的な考えが出来るのか。一度騎士の頭の中を覗いてみたい気分だった。シスターが騎士の長く甘ったるい言葉に薄っぺらい笑みを浮かべ、咳払いを1つすると喋り出す。
「宝田騎士。汝、健やかな時も病める時もこの者を愛し続ける事を誓いますか?」
「勿論だよ!」
「大胡信也。汝は‥‥以下略。それでは誓いのキスを!」
信也が誓うか否かはどうでも良かった。それよりも、さっさと終わらせたい。彼女の気持ちは痛いほどに良く分かるが、シスターとしてはダメな気がする。
騎士が踏み台の上で一生懸命背伸びをし‥‥その間、信也の頭の中は可憐の事でいっぱいだった。そりゃもう、可憐に嫌われたかも知れないと思えば思うほどに涙が溢れ出し‥‥そんな事を考えるより、まずは自分の置かれた状況を心配しろと言う感じだが‥‥
「僕の心は既に君の虜。どんな素振りも可愛らしく見えるばかり。その涙すら僕の穢れたハートを洗うよう‥‥」
「いい加減にしろこのアホー!」
「ヘヴァっ!!」
可憐が立ち上がり、騎士を蹴り倒す。悪魔の手先が来たとばかりに正義の心を持ってして可憐を排除しようとしたシスターが、あっけなく可憐の蹴りに倒される。
「な、何をするんだい元ハニー!魅力的な僕をハニーに奪われた事を羨んでいるのかい?しかし、これも儚さ‥‥いや、神の与え給うた宿め‥‥」
「ルッセーボケナス!黙りやがれこのナルシー!」
「信也兄さん大丈夫?‥‥僕、僕本当に心配で」
可憐が騎士を蹴り飛ばしているその隣では、薫がうるうるとした瞳で信也を見詰めていた。
「ジジイも何大人しく花嫁やってんだっつー‥‥何やってんだそこっ!!」
頬を赤らめ、信也に抱きついた薫を蹴り飛ばす可憐。軽い薫が吹っ飛び、騎士にぶち当たる。
「いたたたた。何て乱暴な‥‥君、大丈‥‥」
「この暴力女が!」
腰をさすりながら悪態をつく薫の肩を、騎士がそっと抱き寄せる。
「な、何すん‥‥」
「申し訳ない元ハニー。いや、旧ハニー(可憐)の事ではないよ。僕の運命の人は君ではなかったようだ。ここにいたんだね、僕の運命の人。ほらご覧、僕等を祝福するウェディングロードが用意されている!」
教会なんだから当たり前だと言いたいところだが、薫は恐怖に固まっていた。騎士が薫の華奢な体を抱き締め‥‥その様子を見て、可憐が信也の腕を掴むと走り出す。
「ほら、とっとと帰るぞ!あんまり手間掛けさせんなよ。ったく!」
可憐が来てくれた事に感激している信也と、そんな2人をはやし立てる冷。2人が手を取り合って教会を脱出し‥‥
「止めろー!!」
「俺が生涯かけてお仕えするのはお嬢様だけです〜〜!!!」
薫の悲壮な叫びと、信也の生涯下僕宣言が綺麗にハモった。
○お嬢様の事情の舞台裏
「まるで朝露に輝く咲き出しの白い‥‥ぶはっ!!」
耐え切れなくなった羊が笑い転げ、忍が微妙な顔をして背後を振り返る。
「そんな笑い転げる事!?」
力強く頷いた共演者達に、マジマジと自分の衣装を見て苦悩する忍。
「笑いを堪えるって大変だよね」
しみじみとあずさが呟き、カナンが肩を震わせながら小さく頷く。
「シノちゃん褒めるなら黒髪じゃなく、美味しそうな黒餡だよねー」
ポツリと呟く羊。実は先ほど『白い大福』と言いそうになったのを慌てて堪えたのだった。そんな事を思っていた時、キューっとお腹が鳴った。突然の事に羊が顔を赤らめ、風音がセットの隅に走って行くとバッグの中から小さな包みを取り出し、共演者達に配っていく。
「買って来たものだけど、良ければどうぞ」
「あ、まっふぃーん!」
「有難う御座います!」
わっと喜びの声を上げるメンバーに、おやつ休憩をとると告げる監督。凛が気を利かせて人数分の紅茶を淹れ‥‥ほのぼのとした現場は、甘いマフィンと紅茶の香りに包まれた。