Liberte Amourアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/03〜02/05
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●本文
東京下町にある、知る人ぞ知るバー『Liberte(リベルテ)』
有り得ないくらいに短いスカートをはいた年齢不詳の美女・鏡(ミロワール)が経営するこの店内では、日々色々な事が起こっている。
そして、今日もまた‥‥
細長く白い脚を組むと、鏡は俯いて爪の先をジっと見詰める恋(アムール)に声をかけた。
「爪がそんなに気になるの?」
「え、あ、別に、そうじゃないんです」
長い前髪によって顔はあまり分からないが、かなりの美少女だと言う事を鏡は知っていた。
黒いストレートの髪は腰の辺りまで伸びており、恋が俯くたびに肩をサラサラと流れていく。
「鏡さん、爪が綺麗だなって思って」
鏡の爪には、輝くスパンコールがついていた。
「ネイルアート、好きなのよ」
苦笑しながら、鏡が恋の隣に座ると首を傾げ、前髪の隙間から彼女の顔を窺おうとする。
「前髪、長すぎて前が見えないんじゃない?」
「そんな事無いです。世界が、見えすぎると怖いですし」
「見えなさ過ぎる方が怖いと、私は思うけど」
「‥‥鏡さんみたいに、美女なら世界はクリアに見えていたほうが良いとは思いますけれど」
「貴方も十分美少女顔だと思うけれど」
「美少女なんて、そんな事無いです。そもそも、私、もう少女年齢じゃないですし」
「私から見れば少女年齢だと思うけれど」
「もうお酒も飲める歳ですし、この顔で居酒屋さんに入っても、止められた事、一度もないですよ?」
子供扱いしないでくださいと、恋が頬を膨らませる。
「どう?お店には慣れたかしら?」
「はい。大分」
「他の子とは馴染めてきた?」
少し迷った後で、軽く首を振る恋。
「男の子はまぁ、一先ず置いといて、女の子とは?」
「いいえ」
「そう」
鏡は小さく頷くと、キラリと光る指先でそっと恋の前髪を分けた。
綺麗な色の瞳が不安そうに鏡に向けられ、そっと目を閉じる。
(外見に自信がないって言うけれど、十分可愛らしい顔をしていると思うんだけれどね‥‥)
心の中で呟くと、鏡は恋の前髪をそっとなおした。
≪映画『Liberte Amour』≫
東京下町にあるバー『Liberte』で働く人達は心に何かを抱えている人が多く、今回の恋もその1人です。
*恋(アムール)
本名:大槻 恋(おおつき・れん)
外見:長い髪で顔を隠しているが、よく見れば美少女顔
性格:引っ込み思案で控え目
口調:『私』『〜さん』『〜です』
特徴
1、人の目を見て話す事が出来ない、外見に自信が無い
→鏡とは普通に話す事が出来ます
2、男性が苦手
『キャスト』
*恋
*リベルテの従業員
・リベルテを訪れる客
・リベルテ従業員の家族 など
*鏡はキャスティングの必要はありません
*舞台はバーですので、従業員・客は実年齢20歳以上の設定です
*外見年齢の幼い方は従業員・客としてのご参加は出来ません
『Liberte』
・リベルテ従業員は本名で呼び合うことはなく、本名から漢字を一字とり、それをフランス語読みにして呼び合います
→基本的に従業員は本名を名乗る事はありません(恋人同士になったなどの展開にならない限り)
・恋以外のキャストでリベルテ従業員を選択する場合も上記のように名前をつけてください
・漢字1字の言葉で、フランス語にしても音の響きが不自然でないものを探すのは意外と大変でした(実体験)ので、以下にいくつか名前案をあげておきたいと思います
『雪(ネージュ)』『風(ヴァン)』『月(リュンヌ)』『冬(イヴェール)』『炎(フラーム)』『空(スィエル)』『蝶(パピヨン)』『蓮(ロテュス)』『絆(リアン)』
・漢字1字のままでも名前として出しておかしくないかなと思うものを選びました
・上記で気に入ったものがない場合は独自で漢字1字を設定してOKです
→漢字は決めたけれど読みは任せた!でもOKですが、フランス語では見つからない言葉やフランス語にすると呼び名として微妙になってしまうものがありますので、あまりオススメは出来ません
それでも自分で決めたい!と言う場合はいくつか漢字の候補を出していただけると有り難いです
・リベルテ従業員以外はお好きな名前をつけていただいて構いません
『アムール』
基本的に舞台は夜のバーです
『恋を中心とするようなお話を作る』と言う以外の展開はお任せいたします
・恋に自信をつけさせる
・男性が苦手になった原因を追究する
など、夜のバーで起こりそうな事ならば何でもOKです
お話の内容により、恋を含め、鏡以外の生死もお任せいたします
*NG事項
・鏡死亡やリベルテから去るなどの展開
・リベルテがなくなる
・恋以外を主人公に据えてお話を作る
『テンプレート』
役柄:従業員・客・家族・その他
役名:
口調:
性格:
登場シーン:
登場シーン毎の行動:
登場シーン毎の台詞:
●リプレイ本文
○scene1
軽い鈴の音に、空『スィエル』(伝ノ助(fa0430))はテーブルを拭いていた手を止めると困ったような表情で振り返った。
「あ、すいませんお客様。まだ開店では‥‥」
落ち着かない様子で店内を見渡していた少年が「恋って言う人を捜してるんですけど」と呟いた時、当の本人が厨房の方から姿を現した。
「‥‥優?」
恋『アムール』(都路帆乃香(fa1013))が優(月白・蒼葵(fa4264))の顔を見た途端に苦々しい表情になる。
「恋、話を聞いてくれ」
「今から仕事なんだから邪魔しないでよ」
父親への見舞いへ来て欲しいと言う義弟に、強い調子でそれを拒絶する恋。突然始まった口論に空がオロオロとしていると、スタッフルームから雪『ネージュ』(千架(fa4263))が現れて、2人の会話に首を傾げる。
「もう、帰ってってば!」
恋の様子に、これ以上の説得は無理だと感じた優がリベルテを後にする。雪が一瞬だけ恋に視線を向けた後でその後を追い‥‥
「‥‥恋、いいのか?帰してしまって」
空の問いに、答えはなかった。軽く首を竦めた後で、手を叩く。
「さて、もう開店時間だし今日も元気にお客様をお迎えしないとな!」
優の手を掴むと、肩で数度呼吸を繰り返す。
「あの、僕、恋‥‥お姉さんと同じ店で働いてるんだけど、様子見ちゃって気になったから‥‥。えっと、イキナリ何って思うかもだけど、僕、何かお手伝い出来ないかなぁ?」
「‥‥あいつが、あんな風になった原因は俺達にもあるから‥‥」
そう言った後で、優は事の詳細を雪に告げ、恋を説得して欲しいと嘆願した。
「僕、頑張って説得するね」
雪はそう言うと、ふわりと微笑んだ。
●scene2
「いったい何の騒ぎですか?」
香『パルファン』(ヴォルフェ(fa0612))が髪をかきあげながら厨房ら出てくると、空と恋に視線を向けた。「なんでもありません」と言う恋の言葉に、空がいきさつを簡単に香に説明する。
「恋さん、せめて弟さんの話し位聞いておあげなさい」
眉根を寄せて唇を噛んだ恋の様子に、ピアノの前に座っていた歌『シャン』(琴月みちる(fa5368))が優しいバラードを奏で始める。少しでも恋の心を宥められればと思っての事だったのだが‥‥恋はスタッフルームへと下がって行った。空がその後を追い、香は何事も無かったかのように笑顔を浮かべると入って来たお客をテーブルへと案内すべく歩き出した。
「もうすぐバレンタインですけど、今年のご予定はどんな感じで?」
椅子の上に座り、小さくなっていた恋にそう声をかけると、真向かいに座る空。他愛もない昔話を一方的に喋り、学生時代に好きだった子が父親に手作りのチョコを毎年作っていると言う話をした時、ピクリと恋が反応を見せた。
「私の父は‥‥」
低い声で紡ぐ昔話。それは、学生時代の失恋から父親の再婚へと続き、それが原因で男性と接するのが極端に苦手になっていると言う告白に繋がった。
「父への反発や、互いに深く関わらないですみそうだからとの理由でここで働き始めたんです」
けれど、男性はもとより再婚相手の女性が元水商売系なのも手伝って、女性従業員とも一歩引いて構えてしまう所があると、そっと告げた。先ほど現れたのは母方の連れ子で、父親が再婚の事を恋の承諾もないままに決定したため、不必要な孤独感を与えてしまったようだった。現在その父親は具合が良くなく、入院しているのだと言う。
「‥‥父親、ね」
そう呟いた時、突然恋がスタッフルームから駆け出して行った。
「恋さん、どうしたんですか?」
接客中だった黒『ノワール』(橘・月兎(fa0470))が手を止めて恋に声をかけるが、彼女は何事も無かったかのように笑顔を浮かべ、接客を始めた。
「どうかしたのかしら?」
茉莉花(紅雪(fa0607))が、持っていたカクテルグラスに口をつけながら首を傾げた。
○scene3
茉莉花と一緒に来店した恋の前に飲み物を出し、一息つくのを待ってから、ゆっくりと事情を聞きだすと、その場に居た人々は三者三様の表情を浮かべた。
「恋、あのね、弟さんから話聞いたんだけど、お父さんのお見舞い、行ってあげたらどうかなぁ?死んじゃったら二度と会えないんだよ?僕の母さんみたく‥‥」
雪が必死にそう訴えかけた時、ピアノの前に座っていた歌が口を開いた。
「実際貴方の弟はああして貴方を訪ねてきた。それだけでも貴方が誰かに愛されていると言う証拠になるんじゃない?」
恋が何かを言おうと口を開き、そのまま店の外へと走り出す。
「恋、待ってよ!」
「馬鹿ねえ、逃げたって逃げた分追ってくるだけなのに」
歌がテンポの速いフーガを弾きはじめる。「誰が?」との質問に、彼女はフーガを締めくくりながら答えた。
「自分自身が、よ」
●scene4
「確かにそれは酷いわね」
茉莉花は恋から事情を聞き終わると、軽く溜息をついた。
「恋さん、貴女はお父さんから何故再婚を急いだのかをきちんと聞かれましたか?きっと、貴女のお父さんに聞けば教えてくださると思いますよ」
黒が優しくそう諭し、香が頷くと微笑を浮かべる。
「そうです。尚の事お父さんに会いに行った方が良いですよ。きっと、貴方のお父さんも何故再婚を急いだのか貴方に教えられていないままだと思いますし‥‥」
そんな3人のアドバイスに、恋は何も答えずに目の前に出されたミルクにそっと口をつけた。
○scene5
優を伴ってリベルテを訪れた恋は、晴れ晴れとした表情をしていた。病床の父を見舞ったと言う報告を聞き終わり、皆一様に安堵の笑顔を浮かべる。
「そうですか、よかったですね」
「それは何より♪」
黒と香がそれぞれにお祝いの言葉を述べ、雪がほにゃんとした笑顔を浮かべながらトテトテと走って来ると恋の頭を撫ぜる。
「おかえり、恋。んっと、頑張ったねぇ」
歌が鏡に曲のリクエストを受け、ゆったりとしたバラードを弾きはじめる。途中からピアノを離れ、アカペラでマイクは使わずに歌い上げると恋の傍まで歩き、そっと前髪を掻き分け額に軽くキスを落とした。
「今宵の主役に、祝福を」
店内からまばらな拍手が響いた時、突然扉が大きく開け放たれ、手に買い物袋を幾つも提げた空が入って来た。
「か、帰ってたのか、良かった‥‥」
安堵したのも束の間「少しお買い物を頼んだだけなのに、どうしてこんなに遅くなるのかしら?」と、鏡からきつい指摘を受ける空。ただひたすら謝り続ける空を横目に、黒が恋の肩をそっと叩いた。
「さて、片がついた所で仕事を始めましょうか?」
その言葉に、鏡が持っていたグラスをテーブルに置くと、優に鋏を手渡した。前を向いていくと決めた恋には、もう長い前髪は必要ないから‥‥
●舞台裏
今しがた出来上がったばかりの映画を見ると、野々宮は低い声で唸った。
「うーん、よく分からないな。つか、シーン3と4がダブってる気がする。それ以前に恋がどうやって父親と向き合うようになったのかが分かんねーな」
4から5への流れが唐突だったのだ。
「シーン2の説明が長い。ツラツラと身の上を語るだけじゃ、映像にするとつまらない。見る人にとってみれば、恋の過去の出来事を延々語られるのは苦痛だ。それならもっと、会話でつなげて欲しかったと言うか‥‥そもそも、再婚どうのこうのと言った根の深そうな恋のトラウマを、そんな簡単に解決して良いのか?」
それこそ、同僚のありきたりな言葉で克服してしまえるような問題だろうか?
「出だしは結構良かったんだけどな。話を広げすぎかな?」
野々宮はそう言って『リベルテ』に入ると大きく伸びをし、バーカウンターに座るとリベルテメンバーを手招きした。
「一杯どうだ?撮影は終わったし、次の撮影まで時間がかかるし、置いておいても仕方がないし。あぁ、未成年は酒はダメだぞ。あっちに水道があるから」
差別だ。不満顔の未成年者の頭をそっと撫ぜると、野々宮がスタッフにジュースを持ってくるようにと指示を出す。
「あの、封を開けた酒持ち帰りたいです‥‥ダメですか?」
やや上目使いになりながら紅雪がそう呟き、野々宮がキョトンとした後ですぐに笑顔を浮かべる。
「あぁ、今も言ったけど別に封を開けてないのも持って帰って良いぞ?他にも、持って行きたい人がいたらどうぞ」
ひらりと手を振ると、野々宮が手馴れた様子でカクテルを作り始めた。飲める人の前に作ったカクテルを置いて行き、それぞれに行き渡ったのを確認するとグラスを上げる。チリンと、グラス同士がぶつかり合う乾いた音が響き‥‥バー・リベルテは暫し活気付いたのであった。