ブバル外伝 〜薬師〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/03〜02/06
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●本文
緑豊かなブバルディア。
西のインディリアと対を成す大国。そこでは今、大変な騒ぎが起こっていた。
封印されていた魔王と12人の僕達が蘇ったのだ!
魔王と僕達によって支配され行く村々。
人々が嘆き、悲しみ、暗い未来に涙した時、人々の希望・勇者:グラディア・グランズが立ち上がった。
と、そこまで聞けば次元の違う世界のお話だと思うだろう。
しかし、魔王の僕達が次元操作とチェンジの呪文が唱えられるとなれば話はグっと近づいてくる。
ここはとある高等学校。
可もなく不可もない、いたって普通の高等学校だ。
しいて言えば、女の子の制服が他の学校よりも多少可愛いくらいだ。
そんな普通の学校で、最近不可解な事件が発生している。
しかし、そんな不可解な事件は事情を知る人達の手によって有耶無耶にされてしまっている。
リズ・リンガード、ララ・ラビーナと言ってピクリと反応をする人が居れば、まず関係者だと思って間違いはない。
2度あることは3度ある。
そんなわけで、またこの平穏な学校に不思議が舞い降りてきたのだった。
「‥‥お話には聞いていましたからね。別に驚きはしませんけれど、流石に少し不愉快ではありますね」
彼はそう言うと、自分の格好を見た。
派手に肌蹴させた胸元と、ゴチャゴチャとついているアクセサリー。
“彼”の性格からして、あまりこういった類の人は好きではなかった。
「まぁ、女性にならなかっただけ良しとしましょうか」
しっかりとボタンをかけ、キチっとネクタイを締めると、ワックスで立たせてあった髪を撫で付ける。
「さて、どんなお仕置きをして差し上げましょうか。ブバルディア1の薬師、ロイ・ロードに喧嘩を売って無事で帰ったなんて話しは聞かないと思いますが」
口元に笑みを浮かべる。
「オーバーは元気な人ですからね。多少無茶な薬でも大丈夫でしょう。あぁ、でも、体はこちらの世界の人なんでしたっけ」
暫くロイは無言で目を閉じて考えた後で、教室を後にした。
「何か薬品の揃っている場所があれば良いのですが。まぁ、そこは誰かにお聞きしましょう」
そう呟いた時、廊下の端で楽しそうにお喋りに花を咲かせている生徒達を見つけた。
ロイはゆっくりと近付くと、好意的な笑顔を浮かべて首を傾げた。
「失礼。少しお時間をいただけますでしょうか?」
≪映画『ブバル外伝 〜薬師〜』募集キャスト≫
*ロイ・ロード
ブバルディア1の薬師で、穏やかな物腰の青年
常に紳士的で、男女の区別なく優しい
薬に自分の気を混ぜることで、特殊な薬を作り出す事が出来る
→ロイとチェンジしてしまった男子生徒は、明るく派手なタイプです。外見年齢15〜18程度
*オーバー
誰に憑いているのかなどはお任せしますが、オーバー自体は男性です
『俺』『お前、(呼び捨て)』『だ、だぜ』
→乱暴な喋り方です
炎に関係する力が使えます(炎の柱を作り出したりなど)
オーバーはロイが嫌いです
ただ、ロイの作る薬には何か嫌な思い出があるらしく、怖がっています
→薬を飲ませなくとも、ロイの“説得”しだいでブバルに帰る事が出来ると思います
・その他
生徒
学校関係者 など
*ブバルから来たのはロイとオーバーのみになります
*高校を舞台としているため、外見年齢20以上の方の役は限られてきます
●リプレイ本文
藤翔太『ロイ』(大海 結(fa0074))に声をかけられた日高 由美(姫乃 唯(fa1463))と音無 優(佐々峰 菜月(fa2370))、氷上宙(硯 円(fa3386))は三者三様の表情を見せた。
「きゃはは!何か今日は真面目って感じ〜?マジウケる〜!」
赤茶の髪を綺麗に撫で付け、第一ボタンまでしっかりと締めた翔太の様子に、由美がキャラキャラと声を上げて笑う。見た目が可愛い系なのを気にして、わざと『そう言う格好』や『そう言う言葉遣い』をしていると知っている由美だったが、彼にどんな心境の変化があって『今の格好』をしているのかなどは如何でも良かったようだ。面白ければそれで良い。箸が転がってもおかしいお年頃の彼女は、肩を震わせながら優にもたれかかった。華奢な体型をした優は、由美が寄りかかった事で少しだけよろめいたが、なんとか男の子の意地で持ち直すとキョトンとした表情で翔太を見詰めた。
「あの、僕達になにか?」
「薬を作るための場所を探しているんです。あぁ、申し遅れました。私はロイ・ロードと言って、ブバル‥‥」
「「ブバルディア!?」」
優と宙の声が重なる。まさか相手の口からその単語が出るとは思ってもみなかった2人が、目をパチクリさせながら顔を見合わせる。
「ブバルディアを知っておられるのですか?」
「あ、あの、魔王のシモベを捜しているんですよね?僕に出来る事なら何だってする‥‥だから、一緒について行って良いですか?」
「私も一緒に行きたい!魔法が見られるし!」
優と宙の言葉に、それならあたしも行こうかな〜?と呑気な様子で由美が言い、ロイが暫し考え込むように目を瞑った後でコクリと頷いた。
トマス・ハント(ルーカス・エリオット(fa5345))は両手一杯に抱え込んだプリントの束に溜息をついていた。
「捨てに行くの面倒くさいなー‥‥窓から放り投げられたら気持ち良いだろうな」
そんな事を言っちゃいけないぜ、教育実習生。などと、誰もツッコまない。そもそも、ツッコム人が居ない。生徒が一揆でも起こせば参加するのになど、とことん教育実習生らしくない。溜息混じりにトボトボ廊下を歩いていると、見知った顔を見つけ、トマスは片手を振って名前を呼びかけた。
「おーい、メリ‥‥」
ドサドサと足元に落ちるプリント。しまったと小さな声で言い、拾い上げようとしゃがめば手元に残ったプリントが全て落ちてしまう。プチ天然なトマスに、メリッサ・グラント『オーバー』(fa4339)がため息をつきながら歩いて来る。
「何やってんだよ」
「ゴメ〜ン!あ、そうだ。拾ってくれるついでに、コレ焼却炉に捨ててきてくれるかな?お願い!頼む!Please!」
「焼却炉?へぇ、ンな場所もあんだな。良いぜ?それってどこだ?」
「行ってくれるの!?Thank you!えーっと、焼却炉は1階に行って‥‥」
丁寧に道を教え、最後のプリントを手渡すと笑顔を浮かべるトマス。
「ポイっと突っ込んでボゥ!と燃やして来ちゃって〜♪あ、でも、余計なモンまで燃やすなよ〜」
わぁったよとの言葉を最後に、背中を向けて去って行くメリッサ。これでやっと一仕事終わったと、安堵の溜息を漏らしたトマスが、ふと足を止めて振り返る。既にメリッサの姿は見えなくなっているけれど‥‥
「そう言えばあの子って、あんな男らしかったっけ?」
(確か、穏和な性格でいつも微笑んでいる、間延びした丁寧口調が特徴の子だった気がする。いや、それ以前に焼却炉の位置を聞くなんて‥‥)
暫く考え込んだ後で、トマスは1つの解を得るとポンと手を打った。
「思春期だからか!」
‥‥頑張れ教育実習生。
「ってゆーかー、薬なんてどうすんの〜?ヤバイ話し〜?つかさぁ、理科室知らないとか、ソレ超ヤバくな〜い?」
「僕ね、いつか君達の世界に自由に行き来したいの。いつかキチンと繋がって‥‥」
由美のキャラキャラとした笑い声と、優のキラキラとした瞳とのダブル攻撃によって、ロイは精神を削られていた。黙ってくれとは思うが、ここまで連れてきてもらった恩もある。とっとと薬を作ってオーバーを探し出すしかない。
宙が興味津々と言った顔で手元を覗き込み、由美が目をパチクリさせる。
「へぇ〜、あんた頭いいんだね〜。すっげー!」
なんだか感心されてしまっているが、ロイの職業は薬師だ。この程度の調合くらいならば目を閉じていても出来る。そう言い返そうとしたが、今は翔太と言う少年になっているのだ。ヘタな事は言えない。
「さて、薬はこれでいいとしてオーバーはどこへ行ったのでしょう」
小瓶に妙な色の液体を入れた後で、ロイは綺麗に片付けてから部屋を出た。やはりと言うかなんと言うか、あの3人はこの後もついてくるらしい。思わず漏れた溜息は、3人には聞こえていなかったようだ。
「あ!シーナ先生と千草先生だ!」
由美が廊下の端を指差しながらそう言い、トテトテと走って行く。その声に、シーナ・ブラウン(椎名 硝子(fa4563))と草薙・千草(ぇみる(fa2957))が足を止める。
「Oh!今日は制服キチンとしてますネ〜!良い事デース!良い子には、これをあげまショウ!他の生徒達にはナイショですヨー?」
悪戯っぽくウィンクをして、シーナが焼き芋を手渡す。
「え!?焼き芋〜!?」
「ある親御サンからおイモを頂いたのデース。どうしようか考えていましたら、メリッササンがたくさんプリント抱えていましたので、そのお手伝いをしてあげましたのデース。そうしましたら、メリッササンが焼却炉の火を強めておイモを焼いて下さったのデース!」
「え?火を強めた、ですって?」
「最近は、不思議な特技を持つのが流行っているのでショウか〜?」
ロイが何かを考え込むように目を伏せた時、背後から明るい声が聞こえて来た。
「あ、良い匂いですね〜!」
「トマス先生!先生もいかがデスか?メリッササンが焼き芋にして下さったのデース!」
「いただきます!‥‥メリッサと言えば‥‥俺がプリントを焼却炉に持っていくように頼んだんですけど、なんだか男らしくなってたような‥‥。思春期ですかねぇ?」
「この年頃は難しいですからねぇ」
「あの、メリッサさんが今どこにいらっしゃるか分かりますか?」
「まだ焼却炉の所に居ると思いますヨー?プリントを全部焼ききるまで、マダマダかかりそうデシタからネ」
シーナの言葉に満足したらしいロイが、深々と頭を下げると焼却炉の位置を訪ねようとして‥‥何かを悟ったらしい千草が案内をすると名乗り出る。
「それでは、貴重な情報有難う御座いました」
「いいえー。‥‥って、廊下は走ってはイケマセーン!」
千草を先頭に走り出した一行の背中に、シーナの声が突き刺さった。
「こんな所にいたんですか。随分と捜しましたよ」
ものすっごいいい笑顔で立ちはだかったロイに、オーバーが苦々しい表情を浮かべながら声を張り上げる。
「わざわざ俺を捜しに来た事、後悔しやがれ!」
火は俺の味方!そんな場所で俺に勝負を挑んだ事をあの世で後悔するんだな!そんな威勢の良い事を言いながら炎をロイ達に向けて放つが、ロイが持っていた小瓶の蓋をさっと開けると中の液体を炎にかける。ジュっと言う音とともに、炎は消え去り‥‥
「その反抗的な態度、お仕置きが必要のようですね」
ニヤリ。邪悪な笑みを浮かべ、ポケットから取り出したのは先ほどの薬を更に『危なく』したような色をした液体の入ったビンだった。途端に怯え出したオーバーが、その場で尻餅をつく。
「辛いのは嫌ですよね?こちらの世界の方達に迷惑をかけるわけにはいきませんし‥‥ブバルに戻してくれますよね?」
コクコク大きく頷くオーバー。
「薬が怖いの〜?えー、女々しいなぁ」
「バッカ!コイツの作る薬は毒薬に近いんだぞ!?人の飲みモンじゃねぇ!」
宙の言葉にかみついたオーバーが、はたと口を閉じると上目使いでロイを見やる。が、言ってしまったものを取り消すわけにはいかない。とっても『素敵な笑顔』をしたロイが、オーバーの肩をポンと叩く。
「戻ったら改めて薬を試すとしましょう‥‥じっくりとね」
ガタガタ震え出したオーバーが、それでも何とか呪文を唱え‥‥ふっと、2人の体から力が抜けるとその場に崩れ落ちた。
暫くしてから目を覚ました翔太とメリッサは、自分の姿を見て、ほっと安堵の溜息をついた。
「何か、すげー変なトコに飛ばされたー。っつか、何この格好!」
「なんだか凄く面白い夢を見たんですよ〜」
2人が同時に『ブバルディア』と言う単語を口にし‥‥顔を見合わせると、説明を求めるべく千草に視線を移した。
○舞台裏
撮影に使った焼き芋があまったので、皆様でどうぞーと、言う事で、ブバルディアメンバーは適当な教室に入って焼き芋を食べる事にしました。
「ちょうどコップもありますよ!」
ルーカスがそう言って『コップ』を取り出し、ジュディスが『やかん』を取り出す。円とぇみるがスタッフからお茶を貰って来て‥‥硝子が『アルコールランプ』に火をつける。
「あの、なんだか間違ってる気が‥‥」
「食べられれば大丈夫だよ。‥‥多分」
結の言葉に曖昧に返す唯。菜月が苦笑しながら『コップ』代わりの『ビーカー』を手に、しみじみと呟く。
「理科室でおやつ、ですか‥‥」
おそらく、部屋の選択を間違えている。
‥‥無言で焼き芋を食べるメンバーは、あえてその事は口に出さなかった。