紅桜ノ血 〜陽〜アジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 宮下茜 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 難しい |
| 報酬 | 7.2万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 02/05〜02/07 |
●本文
驚くほどに真っ赤な花を咲かせる桜は、前日に降り積もった雪の上にハラリとその花弁を落とす。雪が降るほどに寒い中、狂い咲く、桜は何を訴えているのか。
桜の紅はとても目を引くけれど、あまり見てはいけないもののような気がする。
ずっと見ていると、意識が遠くなっていくかのような、不思議な感覚がする。
胸の奥で、何かが疼く。
それはまるで、桜の木が私を呼んでいるかのような、不思議な感じだった。
不思議といえば、この民宿の従業員も皆変わっている。
虚ろな表情をした男性達に、やけに艶やかな色香を漂わせる女性達。
どこか不気味なこの民宿に、私と彼は２泊３日の旅行の予定でやって来た。
‥‥運命の、導きによって
≪映画『紅桜ノ血 〜陽〜』募集キャスト≫
＊綾瀬 杏（あやせ・あんず）
黒髪、黒い瞳の端正な外見をした女性。実年齢２５（外見年齢２０〜２８程度）
→覚醒後は左が金、右が赤のオッドアイに変わる
頼りなく儚い雰囲気だが、かなりの行動派
『私』『〜さん』『かな、だね』少々子供っぽい女性口調（誓は呼び捨て）
誓とは高校の時からの付き合いで、来年には結婚をとの話しも出ている
＊香西 誓（こうざい・せい）
スラリとした長身の男性で、一見すると優男風。実年齢２３（外見年齢２０〜２８程度）
中身はしっかりとしており、頼りがいがある。
『俺』『〜さん』『だ、だな』普通の男性口調（杏は呼び捨て）
＊氷雨（ひさめ）
民宿の女将で、常に淡い色の着物を着ている。実年齢は不明（外見年齢２３〜２９程度）
銀色の髪に、青の瞳をしている
→瞳の本来の色は左が金、右が赤だがカラーコンタクトで隠している
『私』『〜様』『ですの、ですわ』しっとりとした口調
＊鈴（すず）
夜中になると桜の木の下に現れる赤い着物を着た少女の霊
本名は不明だが、彼女が現れる時間になると鈴の音が鳴るために杏が命名
喋る事はないが、常に不思議な笑みを浮かべている
・民宿で働く女性
艶やかな色香を纏っており、口調も丁寧
穏やかな物腰で、常に柔らかい微笑を浮かべている
・民宿で働く男性
声に力がなく、表情も虚ろ
皆左胸に不思議な模様の黒い痣が浮かび上がっている
＊外見年齢１８歳以下の方は役が限られてしまいますのでご注意下さい
≪紅桜ノ血≫
・シーン１
１日目、夜
浅い眠りの中、か細い鈴の音が聞こえ目を覚ます杏。
外から聞こえて来る音に、そっと窓を開ければ桜の木の下に赤い着物を着た少女が立っている
毬をついて遊んでいる少女の視線がゆっくりとこちらへと向けられる
真っ赤な瞳と目が合った次の瞬間、すっと意識を失う
その様子を廊下から見ていた氷雨が口元に笑みを浮かべ、背後に控えていた従業員に合図を出し、杏の体を布団の中へと横たえる
登場人物：杏、鈴、氷雨、従業員達
・シーン２
２日目、昼
昨日の事を誓に話し、夢だと言って笑われる杏
もしかしたらあの木に何かあるのかもしれないと思い、誓を部屋に残し外に出る
満開の桜を見上げていたところ、男性従業員Ａがこちらに近付いてきて、直ぐにこの場所を離れた方が良いと忠告する
真剣なその表情を見詰めていた時、不意に氷雨が登場し、従業員Ａが血相を変えて走り去って行く
不思議に思いながらも氷雨に桜の事を聞くが、あの赤い着物の女性のことは何も分からない
登場人物：杏、誓、従業員Ａ、氷雨
・シーン３
２日目、夕方
誓が温泉へと行っている時、不意に誰かに呼ばれたような気がして外に目を向けると、桜の木の下に男性が蹲っている
気になって外に出てみれば、従業員Ａが胸から血を流して絶命している
驚いて引き返そうと立ち上がった杏の袖を引っ張る鈴
恐ろしいほどに残酷な笑みを浮かべ、杏の視界を遮る。目の前が真っ暗になった瞬間、意識を失う
登場人物：杏、従業員Ａ、鈴
・シーン４
２日目、夜
目覚めれば真っ暗な部屋の中で、窓から差し込む月明かりの中で誓が眠り込んでいるのが見える
右手に何かを握っている感触を感じ、見れば血のついたナイフが月明かりを反射する
銀色のナイフの中、映った杏の瞳は左右が違う色になっている。驚いてナイフを落とし、その音で目覚める誓
氷雨と従業員達が入って来て、窓の外を指差す。桜の木の下で血を流して蹲る従業員Ａと、その傍にしゃがんでいる鈴
登場人物：杏、誓、氷雨、従業員達、従業員Ａ、鈴
・シーン５（選択形式）
Ａ、杏が彼を刺したのだと勘違いし、取り乱す誓
鋭い言葉を浴びせ続ける彼を氷雨が取り押さえ、従業員が杏の手にナイフを握らせる
氷雨の声に導かれるように、泣きながら誓の胸にナイフを突き立てる杏
登場人物：杏、誓、氷雨、従業員達
Ｂ、全ては仕組まれたことだと言い、杏の手を取って逃げようとする誓
氷雨と従業員達の間をすり抜け、何とか外まで逃れるが鈴が立ちはだかる
杏だけは逃がしたい誓と、誓だけは逃がしたい杏。そんな２人の背後から氷雨と従業員達が音も無く近付き、杏を抱きかかえる
鈴が誓を刺し、杏の絶叫が響く
登場人物：杏、誓、氷雨、従業員達、従業員Ａ、鈴
●リプレイ本文
監督の山尾は、鬼道 幻妖斎（fa2903）とシヴェル・マクスウェル（fa0898）を呼び出すと苦い顔をした。「２人とも、役がつかめていない。ちゃんと役作りが出来ていない役者を画面に入れるほど甘くはない」
○１日目夜
規則的に聞こえて来る鈴の音に、杏（結（fa2724））は浅い眠りから覚めると起き上がった。「何かしら？」口の中でそっと呟き、音の出所を探れば、閉められた窓の向こうから微かに聞こえてきているようだった。立ち上がり、窓に手をかける。
『開けてはいけない』
刹那、そう思った。けれど、杏はゆっくりと窓を開けた。
目に痛いほどに紅の桜が、風に揺れている。その下で、真っ赤な着物を着た少女・鈴（桃音（fa4619））が柔らかく鞠をついている。伏せた目は鞠をジっと見詰め、微笑んでいるようにも見えた。
（どうしてこんな時間に子供が？）
鞠が強くつかれ、鈴の胸元まで上がると両手で掴む。ゆっくりと、上げられた顔。赤い瞳と目が合い‥‥ふっと、意識を失った。
その様子を廊下で見ていた氷雨（笙（fa4559））が、口元に残酷な笑みを浮かべながら背後に控えた北斗（水沢 鷹弘（fa3831））と珊瑚（姫乃 舞（fa0634））に合図を出す。北斗が杏の体を抱きかかえ、珊瑚がその体に布団をかける。
「ふふ。本日のお客様は、どの様な舞台を見せてくれるのでしょうか」
珊瑚が杏の髪を優しく撫ぜる。その背後では、北斗が複雑な表情で氷雨の横顔を見詰めていた。
『私と、遊んでくれる人‥‥ミツケタ‥‥』
●２日目昼
「昨日ね、桜の木の下に不思議な女の子がいたの」
真剣な表情で昨夜見た事を誓（蘇芳蒼緋（fa2044））に伝えると、杏は『どう思う？』と首を傾げた。
「寝惚けてたんじゃないか？」
「そうじゃないの」
絶対に見たのと主張する杏の言葉に、苦笑しながら否定を入れる誓。
確かに、自分だって昨日見たものは信じられなかった。けれど‥‥実際に自分の目の前で起きた事を否定する事は出来ない。
「おい。どこ行くんだ？」
「外」
杏は素っ気無くそう言うと、部屋を飛び出した。あの桜の木の下に行けば、何か分かるかも知れない。民宿の廊下を足早に抜け、閉じていた扉を開け、外に出る。相変わらず目に痛い桜の紅を見上げ、寒さに顔を顰めると木の下まで歩いて行く。
「綺麗」
漏れた言葉に、思わず首を傾げる。綺麗な桜。確かにそうだけれど、この色はなんだか恐ろしいような‥‥ザっと、砂を蹴って近付いてきた北斗に視線を移す。
「直ぐにこの場所を離れた方が良いですよ」
「え？」
真剣な表情は、確かに何かを杏に訴えていた。けれど、それが何なのかは分からなかった。不思議そうな顔の杏に、更に何か言葉をかけようとした時、不意に桜の陰から艶やかな笑みを浮かべた氷雨が姿を現した。はっとした北斗の視線と、氷雨の視線が合わさった瞬間、氷雨が冷たい笑みを浮かべ‥‥北斗が弾かれたように走り去る。
（何だったんだろう）
杏は疑問に思いつつも、氷雨の昨晩の話をした。氷雨が鈴の話に驚いたように目を丸くし、考え込むように目を伏せた後で軽く首を振った。
『お役に立てず、申し訳ございませんわ‥‥』
○２日目夕方
不意に誰かに呼ばれたような気がした。杏の名前を呼ばれたわけではなかったけれど、その言葉は確かに杏に向けられているような気がした。
『私はもうお終いだ』
そう聞こえた気がしたのだ。そっと窓の外に視線を向ければ、桜の木の下に見覚えの有る男性が蹲っている。
（何をしているのかしら？）
気になって見ているものの、男性は一行に動く気配がない。もしかして、具合が悪くて倒れているのかも知れない。杏は反射的に駆け出すと、外に出た。夕暮れ間近の空は、様々な色が混じり合ったパレットのようで‥‥紅色の花弁が目に痛い。そして、男性の胸から流れ落ちる、赤々としたモノ‥‥。叫び声は、出なかった。言葉は全て、喉に張り付いていた。立ち上がり、誰かを呼ぼうと民宿の方へと走り出そうとした杏の袖を、誰かがゆっくりと引っ張った。
小さな頭、真っ赤な着物‥‥上げられた顔は、無邪気に微笑んでいた。まるで男性の姿など見えていないかのように、純粋に‥‥ふっと、意識を失う。鈴の赤い瞳が瞼の裏に焼きついていた。
『ねえ、次は‥‥貴方がアソンデ？』
●２日目夜
ふと目覚めれば、隣からは規則正しい寝息が聞こえて来た。何時の間に夜になったんだろう。何時の間に寝かされていたんだろう？杏は不思議に思いながらも、体を起こした。
（今、何時だろう）
枕元にある携帯に手を伸ばそうとした時、右手に何かを握っている事に気付いた。一体何を握り締めて眠ってしまったんだろうか？ゆっくりと右手を布団から出せば、月光にキラリと光るナイフ‥‥そこには血がべっとりとついており、そして、ナイフに映った自分の瞳を見て、杏は思わずそれを落とした。カツンと言う微かな音に、誓が目を擦りながら起き上がる。
「ん、どうした杏。眠れないのか？」
「違うの、そうじゃなくて‥‥」
「お客様、失礼いたします」
扉が開き、氷雨と珊瑚が入ってくる。氷雨がナイフを見詰め、珊瑚が窓に近付くと首だけをこちらに向け、外を見てみるようにと無言で訴える。
開け放たれた窓の外、紅の桜、その下で胸から血を流し、絶命している北斗。隣でしゃがんでいた鈴が胸から流れる血を指先につけ、恍惚の表情で掌を見詰めると、そっと口元に持って行く。淡い色の舌が細い指先についた血を舐め‥‥
「なっ！？」
「ち‥‥違うの！」
硬直したように固まった誓が、すぐに脳をフル回転させる。その視界の隅に、氷雨の哀しそうな表情と、珊瑚の勝ち誇ったような笑顔が映った。
○結末
誓がはじき出した答えは、杏を信じると、ただその１点だけだった。杏の手を取り、走り出す。
「杏、こっちだっ！」
「此処からは逃げられませんわ」
氷雨の恐ろしいまでに残酷で艶やかな笑みを視界の端で捕らえながら、誓は杏の手を握って我武者羅に走った。
（とにかく杏だけでも無事にここから逃がさないと‥‥）
周囲を見ている暇は無かった。玄関を開け、外へと走り出す。鈴がどこからともなく現れ、可愛らしい‥‥そう、もしこの子が生きているとすれば、本当に可愛らしい‥‥無邪気な笑顔を浮かべると首を傾げた。
「そこをどけっ！」
唇についた血が、淡い色の唇を鮮やかに色付けている。
「お客様、どちらに行かれるのですか？まだチェックアウトのお時間にはなっておりませんよ」
柔らかい微笑を浮かべた珊瑚が杏を抱きかかえる。杏がもがいて抜け出そうとするが、珊瑚の力は凄まじいものだった。
「杏！くそっ、杏を放せっ！」
誓が杏の目を見たまま手を伸ばす。鈴が後ろで組んでいた手を解き、背伸びをすると無防備な誓の背中に抱きついた。前に回された手の中で、光るナイフ。誓の目には、杏しか映っていない。杏が手を伸ばし‥‥ずぶり、ナイフが深々と刺さった。
「いやーーーーっ！！！！！」
「っ、あ、んず‥‥逃げ‥‥」
鈴の手が離れ、誓が前のめりに地面へと倒れ込む。必死に伸ばした杏の指先は、誓に触れる事はなかった。
「いやーーーっ！！誓、誓っ！！！！」
泣き叫ぶ杏の声に、鈴が控え目で無邪気な笑顔を浮かべ、氷雨に視線を向ける。氷雨が楽しげに微笑み、鈴の頭をそっと撫ぜると桜の木を仰ぎ見た。
紅桜が風に揺れる。
ざわり、大きく、強く‥‥
右へ、左へ、まるで手を振っているかのように、ゆっくりと‥‥
●
「いやー、良かった！特に鈴と氷雨は最高だった！鈴は気持ちが表情に上手く出ていたし、氷雨も上手く役をつかめていた！従業員２人も上手く役作りが出来ていた！‥‥主役２人は役を掴みきれてなかった感があるが‥‥まぁ、今度に期待かな？」
山尾は苦笑しながら、出演者達に小さな花束を手渡した。
○ＮＧ集
・鷹弘『お足元にご注意ください』
「直ぐにこの場所を離れた方が良いですよ」
「え？」
桜の陰から笙が登場。艶やかな笙の笑顔に、鷹弘が弾かれたように走り‥‥
「（足元がずるり）うわぁっ！！」
「だ、大丈夫ですか！？」
「水沢さん、怪我は！？」
「だ、大丈夫だ‥‥」
・舞＆結『映画と現実の違い』
「まだチェックアウトの時間にはなっておりませんよ」
柔らかい微笑を浮かべた舞が結を抱きかかえ‥‥その腕から必死に抜け出そうともがき、もがき‥‥もが‥‥
「（押さえきれずにひっくり返り）きゃぁっ！！」
「（我に返ってびっくり）あっ！だ、大丈夫ですか！？」
『珊瑚は力持ちだけど、姫乃さんはそうじゃないからね？』
「すみません！（深々と頭を下げ）」
・桃音＆蒼緋『３７ｃｍ差』
「杏！くそっ、杏を放せっ！」
桃音が組んでいた手を解き、背伸びをしながら無防備な背中に抱きつ‥‥
『あ、すみません！若干画面に入らないので、蘇芳さんしゃがんでください』
「え！？しゃがむんですか！？」
「頑張ってくださいですのー！」
・桃音＆笙『３９ｃｍ差』
「いやーーーっ！！誓、誓っ！！！！」
泣き叫ぶ結の隣で桃音が控え目な笑みを浮かべ、笙が楽しげに微笑みながら桃音の頭を‥‥
『あ、すみません！笙さんもしゃがんでください！』
「しゃがむんですか！？」
「お兄−さん、頑張ってくださいですのー！きっと足腰が鍛えられますのっ！」
