黒蝶ノ涙 〜陽〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
7.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/09〜02/11
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●本文
威圧感を感じる、巨大な洋館。
どうしてこんな山の中に洋館なんて?
そう思いつつも、突然の嵐に動揺していた私達は扉を叩いた。
細く開いた扉の先には、銀の鳥籠を持った男性が1人、佇んでいた。
驚くほど美しい彼から視線をそらせば、銀の鳥籠が映る。
その中で、ひらりひらりと飛んでいるモノ。
籠の中を飛び回りながら、それでも外には決して出ないモノ。
それは、漆黒の羽をした蝶だった。
≪映画『黒蝶ノ涙 〜陽〜』募集キャスト≫
*椎名 織(しいな・しき)
中性的な外見をした女性で、髪を長く伸ばしている。実年齢23(外見年齢20〜28程度)
明るく社交的そうな外見をしているが、かなりの引っ込み思案
『私』『〜さん』『です、ます』丁寧な口調(隆は呼び捨て)
隆に思いを寄せているが、隆の好きな人を知っているため、口に出せないでいる
*北岡 隆(きたおか・たかし)
細身で少年のような外見をした男性。実年齢23(外見年齢18〜25程度)
明るく社交的で、常にテンションは高く、笑顔
『俺』『(名前呼び捨て)』『だな、だよな』元気な少年口調
織とは良い友人で、好きな人は別にいる
*冬夜(とうや)
洋館の主で、真っ黒な服を着ている。実年齢は不明(外見年齢15〜20程度)
黒の髪に、黒の瞳をしている
→瞳の色は赤だが、カラーコンタクトで隠している
常に銀色の鳥籠に入れた黒蝶を持ち歩いている
『僕』『〜さん』『だね、かな』穏やかな少年口調
*紅(くれない)
真っ赤なドレスに身を包んだ少女の霊
本名は不明だが、その鮮やかなドレスの色を見て織が命名
→言葉は話しません
・屋敷で働く女性
外見は総じて美しいが、声に力はなく表情も虚ろ
皆首元を何かしらで隠している
・屋敷で働く男性
艶やかな色香を纏っており、口調は丁寧で物腰も穏やか
常に柔らかい微笑を浮かべている
*外見年齢18歳以下の方は役が限られてしまいますのでご注意下さい
≪黒蝶ノ涙≫
・シーン1
1日目、夕方
野鳥の観察のために隆と山に登った織。下山途中で悪天候になり、見つけた洋館に足を踏み入れる
真っ黒なタキシードを身に纏った冬夜が洋服と食事を用意してくれる
隆の隣の部屋に通される織。部屋の中の豪華さに驚いていると、ふと足元に何かが落ちているのに気付く
真っ赤な絨毯に落ちたそれは、動かなくなっていた黒蝶だった
登場人物:織、隆、冬夜、屋敷の住人達
・シーン2
1日目、真夜中
衣擦れの音に目を覚ますと、扉の外に誰かが立っている。薄く開いたドアの下から、真っ赤なドレスが見え、起き上がって扉を開ける織
真っ赤なドレスを着た少女の霊に驚きつつも、促されるままに廊下を歩く
ついたところは冬夜の書斎で、大きな机の上に銀色の鳥籠が置かれている
紅が鳥籠の中から黒蝶を取り出し放す。ふらふらと羽ばたいた蝶が、織の目の前で落ちる
蝶の死骸を手に顔を上げれば、紅が不気味な笑みを浮かべ、織の背後を指差す
振り向いた先には真っ赤な瞳をした冬夜が佇んでおり、その瞳と目が合った瞬間、織の意識が遠退く
登場人物:織、紅、冬夜
・シーン3
2日目、昼
昨夜の事を隆に話すが、笑われてしまう織
もう一度書斎を覗いてみようと足を向けると、屋敷の住人A(女性)が直ぐにこの場所を離れた方が良いと忠告する
髪を掻き揚げ、細い首筋を露にすれば、そこには小さな穴が2つ開いている
驚いて部屋を飛び出す織。廊下を走っていると冬夜とぶつかり、冬夜の手から銀色の鳥籠が離れる
開いた扉から飛んでいく数十匹の黒蝶。数秒宙を漂い、次から次へと落下していく
恐怖に凍りつく織に冷たい視線を返すと、そっと左の瞳に触れる冬夜
真っ赤な瞳を見せられ、再び気を失う織
登場人物:織、隆、屋敷の住人A、冬夜
・シーン4
2日目、夜
目を開ければ真っ暗な部屋の中で、絨毯の上に転がされていた事を知った織が顔を上げる
豪華な椅子に腰を下ろした冬夜が、持っていた銀色の鳥籠をテーブルの上に置くと微笑を浮かべる
冬夜の隣の椅子には、目を閉じてぐったりとした隆が座らされている
冬夜が織の背後を指差し、そちらに視線を向ければ先ほどの屋敷の住人Aが地面に倒れている
慌てて近付こうとしたところ、紅が何処からともなく現われ、薄い笑みを浮かべたまま屋敷の住人Aの胸にナイフを突き立てる
それを満足げに見届けた後で、冬夜が立ち上がると織の前で足を止め、視線を合わせるべくしゃがみ込む
『君とあの人、どっちを助けるか、君に選ばせてあげる。どっちも何て、甘い事言っちゃダメだよ。そんな事言ったら、どっちの命も奪うから』
登場人物:織、隆、冬夜、紅、屋敷の住人A
・(選択形式)
A、本気の瞳に、逃げる事は叶わないと悟った織が、隆を助けてくれるようにと懇願する
冬夜の瞳が細められ、優しく微笑むと織の頬に手を触れ、紅に何かを指示する
首筋に冬夜の唇が押し当てられ、紅が隆の元へ近付いていくのが見える
冬夜が顔を上げ、織の瞳を覗きこむと指を鳴らす。その音に、紅が持っていたナイフを隆の胸につきたてる
『君を僕の仲間にしてあげる』
目を見開いたまま固まった織に残酷な笑みを向けてそう呟くと、首筋に鋭い歯をつきたてた
登場人物:織、冬夜、隆、紅、屋敷の住人A
B、本気の瞳に、逃げる事は叶わないと悟った織が押し黙った時、隆がか細い声で織を助けてくれるようにと懇願する
冬夜が織の元から離れ、隆の傍まで来るとその体を椅子から引き摺り下ろし、床に放り投げる
手荒い扱いに抗議の叫びを上げた織に冷たい視線を向け、紅に目配せをする冬夜
紅が織の手を取り、屋敷の住人Aの隣に引っ張っていくと、その胸にナイフを突き立てる
隆が声を荒げて叫び、その声の大きさに冬夜が眉を顰めると隆の体を軽く蹴る
『君を僕の仲間にしてあげる』
艶やかな笑みを浮かべ、隆の目の前に手をかざす冬夜。背中に感じた強烈な痛みに叫び、隆の意識が遠退く
登場人物:織、隆、冬夜、紅、屋敷の住人A
●リプレイ本文
○1日目夕方
『新たに訪れた獲物は、随分と面白そうだった。どちらも分かりやすそうなタイプ。暇をもてあましていた僕にとって、願ってもない遊び相手だった』
銀色の鳥籠を片手に持ちながら、冬夜(千架(fa4263))はふわりと柔らかく微笑んだ。
「山の天気は変わり易いから。此処で落ち着くまでゆっくりしていって」
「有難う御座います」
隆(欅(fa5241))が織(椎名 硝子(fa4563))の頭の上に被せていたコートを取ると、濡れているそれを扉の外で1回だけ振った。細かな水滴が地面を叩き、柳(新崎里穂(fa5264))が隆の隣に来るとその手からコートを受け取る。
「律、柳、酒巻。お2人を案内して。それから着替えの準備もね」
「はい」
冬夜の言葉に、律(Rickey(fa3846))が2人の前を立って歩き出す。
「突然の嵐に見舞われるなんて、大変でしたね。どうぞごゆっくりなさって下さい」
2人の後ろからは酒巻(沢渡霧江(fa4354))が無言でついてくる。隆がせわしなく周囲を見渡しながら、しきりに隣を歩く織に声をかける。
「こちらがお部屋になります」
柳が織の部屋の扉を開け、律が隆の部屋の扉を開ける。
「お食事のお時間になりましたらお呼びいたします」
律が丁寧に頭を下げてそう言うと、扉を閉めた。
豪華な部屋に驚いていると、突然扉が薄く開き、松葉(小塚さえ(fa1715))が入って来た。畳まれた洋服を差し出し、何か御用がありましたらお呼びくださいとだけ告げてお辞儀をすると部屋を出て行く。その後姿を見送っていた時、不意に赤絨毯の上に何か小さな黒いものが落ちているのに気がついた。近付いてみれば、それは黒い羽をした蝶だった。
『あの方は、一緒にいらした彼に、恋しているんですね‥‥』
●1日目真夜中
『籠から出れば死んでしまう蝶‥‥それは、この館を暗示しているんだ‥‥』
ふと目が覚めると扉の下から赤いドレスの裾が見え、織は起き上がると扉を開けた。薄い笑みを浮かべた紅(姫乃 唯(fa1463))が手招きをしながら織の前を歩いて行く。
ついて行って良いのだろうかと少し迷った後で、織は紅の後をついて行く事にした。赤い絨毯の上をゆっくりと歩き、紅が入って行ったのは冬夜の書斎だった。勝手に入ってはいけないと思いつつ、無邪気に手招きをする紅の後に続いて中に入る。
大きなデスクの上、銀色の鳥籠の中に入れられた蝶。紅がその中の1匹を取り出すと、そっと宙へと放つ。ふらふらと飛ぶ蝶を、窓から入ってくる月明かりが照らし‥‥突然、蝶が織の前に落ちた。
(あの蝶もこの子が?)
部屋の中で息絶えていた蝶を思い出し、驚きの表情を浮かべる織。
(この蝶と同じ様に、貴方の運命も‥‥)
紅が薄笑いを浮かべながら、細い指を織の背後へと伸ばす。振り返れば、冬夜が無言で立っており‥‥真っ赤な瞳と目が合った瞬間、ふっと意識が途切れた。
「織さんは、飛んで逃げられるかな?」
冬夜の言葉が室内に響き、紅が楽しそうに微笑みながら足元に倒れた織を見下ろす。冬夜が足元に転がった黒蝶の死骸を踏みつけ‥‥
『僕からは絶対逃げられないけどね』
○2日目昼
「くっ‥‥っはははははっ!」
隆の豪快な笑い声に、織は溜息をついた。昨夜の事を考えていた所、隆に声をかけられ、様子がおかしい理由を問われたから、ありのままを答えただけなのに‥‥
「昨日疲れてたから、変な夢でも見たんだよ」
にこやかな笑みを浮かべながらそう言って、織の頭を撫ぜる隆。確かに、夢と言われればそうかも知れないが、それにしたって随分とリアルだった。
(もしかしたら、書斎に行けば何か分かるかも知れない)
隆に別れを告げ、書斎へと足を向ける。長い廊下を真っ直ぐに歩き‥‥書斎の中には、松葉が佇んでいた。織の顔を見て弾かれたように走って来た松葉が、必死の顔で言葉を紡ぐ。
「今すぐここから離れて。‥‥いえ、逃げてください。このままここにいれば、貴方は命を落とすか、彼を喪う事になります」
きっぱりとした口調でそう言われても、その言葉は容易に理解できるものではなかった。
「‥‥私の言葉が、信じられませんか?‥‥そうですよね、そう簡単には信じられないですよね。でも、これを見ても信じられませんか?」
髪をかきあげ、細いうなじを見せれば、そこには小さな穴が2つついていた。
「これはまさか、冬夜さんが?」
瞬時に吸血鬼を連想した織が、踵を返す。長い廊下を走り‥‥ドンと、何かにぶつかった。カシャンと大きな音が響き、数十匹の蝶が籠から出て行く。
「‥‥そんなに急いで何処へ行くの?」
宙を漂う蝶は、次から次へと落下していく。織の膝の上にも、冬夜の肩の上にも。けれど冬夜は、まるで何も起きていないかのように、柔らかく微笑んでいた。固まっている織の目の前で、冬夜の手の中に最後の1羽が落下してくる。
「あーあ、全部死んじゃった」
手の中でぐしゃりと蝶を握りつぶし、嘲笑うかのような冷たい視線を織へと向ける。
「これを殺したのは織さんだよ」
冷たく微笑みながら左の瞳に触れ、コンタクトを外すと赤い瞳を向ける。その瞳を見た瞬間、ふっと織の意識が途切れた。
冬夜が、体の上に落ちた蝶を床に叩き落としながら笑い声を上げると、鳥籠を抱きかかえる。
『僕に隠し事なんて、出来ると思ってるの?』
●2日目夜
目を開ければ真っ暗な部屋の中だった。ゆっくりと顔を上げ、周囲を確認する。豪華な椅子に腰を下ろした冬夜が、持っていた銀色の鳥籠をテーブルの上に置くと微笑を浮かべる。その隣の椅子には、ぐったりと目を閉じた隆が座らされている。一瞬、死んでいるのかと思うほどに無表情で動かない隆だったが、呼吸のたびに微かに口や胸が動いているのが分かる。ほっと安堵したのも束の間、冬夜の細い指が織の背後を指差し、つられて視線を向ければ、松葉が涙を流しながら倒れていた。
助けなくてはと立ち上がった瞬間、冬夜の凛と良く響く声が室内を揺るがした。
「余計な事をした松葉には罰を」
不意に現れた紅が、銀色のナイフを大きく頭上に振りかざし、松葉の胸に突き立てる。
「いやぁっ!!」
鮮血に染まった松葉の胸に、思わず織が悲鳴をあげ‥‥
「逃げられないの知ってて、馬鹿な娘」
満足そうに微笑んだ冬夜がそう呟き‥‥ゆっくりと立ち上がると織の前に立った。
「面白いゲームを思いついたんだ」
織がビクリと顔を上げ、紅が『ゲーム』の言葉に目を輝かせる。
『君とあの人、どっちを助けるか、君に選ばせてあげる』
『どっちもなんて、甘い事言っちゃダメだよ』
『そんな事言ったら‥‥どっちの命も奪うから‥‥』
○結末
自分の想いが届く事はないと、織は知っていた。それなら、隆が助かって両想いになってくれれば良い。‥‥そう、だから‥‥
「隆を、助けてください」
冬夜の瞳が細められ、優しく微笑むと織の頬に触れる。視線だけで紅に何かを合図し、そっと首筋に冬夜の唇が押し当てられる。
紅は、その様子を見ながら微笑んでいた。そもそも、織の選択は紅の好みではなかった。美しい人間愛、自己犠牲‥‥くだらない。良い子ちゃんで居ようとする織は嫌いだった。けれど、冬夜の今の指示は好きだった。
(さすが冬夜。そう言うところが大好き)
絶望の色を宿した織を横目に、ナイフを持って隆に近付くと、その青白い頬をそっと撫ぜた。なかなか綺麗な顔をしている。けれど、もうバイバイ‥‥
「素直に助けると思ったら間違いだよ」
冬夜の指の音で、ナイフを思い切り隆の胸に突き立てる。目を開ける事無く、隆は唇の端から一筋の血を流しただけで絶命した。
(選択もなされたし、こっちの人間はもういらない。可哀想。あの子が自分を選んでいれば、貴方は助かったのにね)
クスクスと小さく笑いながら、隆の口の端を流れる血を指にとり、もう2度と動くことはないであろう唇に色をつけていく。
「な、助けてくれるって‥‥!」
「君を僕の仲間にしてあげる」
目を見開いたまま固まった織に、残酷な笑みを向けてそう呟く冬夜。首筋に鋭い歯をつきたてた瞬間、織の意識が混濁した。くすくすと、紅が笑っているのが聞こえる。本当に楽しそうに、くすくすと‥‥
『優しい心は綺麗だから生かしてあげる』
『でも逃げようとした罰は必要だよね?』
『‥‥1羽くらい死んでも、また増やすからいいんだ‥‥』
●
「冬夜が最高に良かった!役をしっかりつかめてるし、役を自分のものに出来ていたな!あと、紅と律もなかなか良かったな!松葉も味が出ていたし。織と隆は‥‥役がつかめてない感があったが、最後の方で少し巻き返してきたかな?」
○舞台裏
・欅と千架『それぞれの胸のうち〜羨望と感謝〜』
鳥籠を持って走っていた千架が絨毯に足を取られ、転倒しそうになった所を欅に助けられた時
千「うわ、すみません!欅さん」
欅「いや、良いんだ。怪我は?」
千(でっけー、こんくらい身長あれば良いのになぁ)
欅(千架さん、俺の名前普通に欅って呼んでくれた!呼んでくれた!)
・さえと里穂『ほのぼの会話』
さえがナイフで刺されるシーンを練習中
里「ナイフで刺されるの、痛そうですね」
さ「でも、ナイフは刃が引っ込む仕組み?ですし」
里「もし刃が引っ込まなかったら痛いですよね」
さ「‥‥刃が引っ込んでも、柄が当たったら痛そうですね」
里「ですねぇ」