Liberte Ventアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 宮下茜
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/15〜02/17

●本文

 東京下町にある、知る人ぞ知るバー『Liberte(リベルテ)』
 有り得ないくらいに短いスカートをはいた年齢不詳の美女・鏡(ミロワール)が経営するこの店内では、日々色々な事が起こっている。
 そして、今日もまた‥‥


 黙っていれば良い男なのに、口を開けば‥‥と言う人は、世の中には少なからず居る。
 勿論、見た目で中身を決め付けるなんてどうかと思うし、ましてや勝手に思い込んだ事が違っていたからと言って難癖をつけるなんてもってのほかだ。
 でも‥‥と、鏡は目の前に座る男性に視線を向けた。
「風(ヴァン)って煙草吸ってたのね」
「あれ?鏡さん、知りませんでした?」
 誰が見ても二枚目だと口をそろえて言うだろう、知的な雰囲気のする風は、口元に微かに笑みを浮かべると髪をかきあげてそっと声を落とした。
「‥‥あぁ、でも、外ではあまり吸わないですね。だから鏡さんが知らないのも無理はない。俺、本当にリラックスしてる時しか煙草吸わないですから」
 ふぅっと紫煙を吐き出し、向かいに座った鏡の隣に移動するとさりげなく肩を密着させる。
「鏡さんといると、どうしてだか和むんですよね。だからつい‥‥」
「風、私にまで君のお得意の『歯の浮くような台詞』を使わなくても良いのよ」
 素っ気無くそう言って肩を押す鏡。
「相変わらず鏡さんはつれないなぁ」
「それから、貴方がいつ、どこで恥をかくか知れないから忠告してあげるけど、貴方のその吸い方、見る人が見れば肺に入ってないの分かるのよ」
「あれ、そうなんですか?」
「‥‥あのねぇ」
 鏡は盛大な溜息をつくと、小首を傾げた。
「そう言えば、その後はどうなの?」
「どうって、何のことです?」
「好きな子がいるんでしょう?このお店に。誰だかは知らないけれど‥‥お得意の台詞で落とせないのかしら?」
「嫌味ですか?皮肉ですか?」
「ただ、純粋に思ったままを言ったまでよ」
「言えるわけないじゃないですか。もし断られたらどうするんですか‥‥」
 先ほどまでの色男ぶりは何処へやら、風は唇を尖らせるとブツブツと何かを呟き、やがて盛大な溜息をつくと目を伏せた。
「どうせ俺、魅力もないし‥‥」
 こうなっては後は思考は泥沼に嵌るかのごとく悪化の一途を辿る。
(どうしてこうも好きな人に関してはネガティヴになるのかしら)
 普段の彼とのギャップに、鏡は思わず遠い目をするのだった。


≪映画『Liberte Vent』≫

 東京下町にあるバー『Liberte』で働く人達は心に何かを抱えている人が多く、今回の風もその1人です。

*風(ヴァン)
本名:風間 佳樹(かざま・よしき)
外見:知的な雰囲気の美男子
性格:好きな子の前では挙動不審になるが、それ以外の人の前では紳士的
口調:『俺』『貴方』『です、ます』
特徴
1、好きな子の前に出るとオロオロしだす


『キャスト』
*風
*リベルテの従業員
・リベルテを訪れる客
・リベルテ従業員の家族   など

*鏡はキャスティングの必要はありません

*舞台はバーですので、従業員・客は実年齢20歳以上の設定です
*外見年齢の幼い方は従業員・客としてのご参加は出来ません


『Liberte』

・リベルテ従業員は本名で呼び合うことはなく、本名から漢字を一字とり、それをフランス語読みにして呼び合います
→基本的に従業員は本名を名乗る事はありません(恋人同士になったなどの展開にならない限り)
・風以外のキャストでリベルテ従業員を選択する場合も上記のように名前をつけてください
・漢字1字の言葉で、フランス語にしても音の響きが不自然でないものを探すのは意外と大変でした(実体験)ので、以下にいくつか名前案をあげておきたいと思います
『雪(ネージュ)』『恋(アムール))』『月(リュンヌ)』『冬(イヴェール)』『炎(フラーム)』『空(スィエル)』『蝶(パピヨン)』『蓮(ロテュス)』『絆(リアン)』
・漢字1字のままでも名前として出しておかしくないかなと思うものを選びました
・上記で気に入ったものがない場合は独自で漢字1字を設定してOKです
→漢字は決めたけれど読みは任せた!でもOKですが、フランス語では見つからない言葉やフランス語にすると呼び名として微妙になってしまうものがありますので、あまりオススメは出来ません
 それでも自分で決めたい!と言う場合はいくつか漢字の候補を出していただけると有り難いです
・リベルテ従業員以外はお好きな名前をつけていただいて構いません


『ヴァン』

 基本的に舞台は夜のバーです
 『風を中心とするようなお話を作る』と言う以外の展開はお任せいたします
 お話の内容により、風を含め、鏡以外の生死もお任せいたします
*お話し合いの手引き
・主人公のどんな物語にするか(目的は1つか2つ)
・どのようなシーンを作るか(シーンは4か5程度)
・シーン毎の詳細&登場人物の整理
*NG事項
・鏡死亡やリベルテから去るなどの展開
・リベルテがなくなる
・風以外を主人公に据えてお話を作る


『テンプレート』

役柄:従業員・客・家族・その他
役名:
口調:
性格:
登場シーン:
登場シーン毎の行動:
登場シーン毎の台詞:

●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa0701 赤川・雷音(20歳・♂・獅子)
 fa2697 シルフィール(12歳・♂・狐)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa4264 月白・蒼葵(13歳・♀・猫)
 fa4265 月白・緋桜(13歳・♂・猫)
 fa4643 夕波綾佳(20歳・♀・犬)

●リプレイ本文

○scene1
 由貴(月白・蒼葵(fa4264))と沙貴(月白・緋桜(fa4265))は頼まれていた胡蝶蘭の搬入のためにリベルテを訪れていた。開店前に搬入を終えようと思っていた2人だったが、花屋の方で少し用事をしていたために遅くなってしまい、リベルテは丁度数十分前に開店したばかりだった。
「ご注文のランをお持ちしました」
 凛と響いた沙貴の声に、店内を掃除していた波『ヴァーグ』(夕波綾佳(fa4643))が顔を上げ、置き場所を指定して行く。店内にはまばらに人が座っており、2人は心持ち焦りながら、それでもお客達の会話を妨げない程度に静かに指定された場所にランを置こうとして‥‥
「悪い、道をあけてくれ!」
 通路の真ん中でボケっと突っ立っていた風『ヴァン』(赤川・雷音(fa0701))に由貴が少し大きめの声をかけた。驚いたらしい風が半ば反射的に2人を避けようとして、運んでいたグラスの中身をぶちまけた。
「きゃっ!?」
 小さな悲鳴を上げて、ハルノ(春雨サラダ(fa3516))が口元に手を当てる。
「申し訳ありません!大丈夫ですか?」
 由貴が慌ててハルノに頭を下げ、沙貴が不安そうに視線を宙に彷徨わせる。
「申し訳ありません。お召し物を汚してしま‥‥」
 風がハルノの顔を見て硬直し、1歩後退ると椅子に躓いてひっくり返りそうになる。大きく響いた音に赤面しながらもテーブルの上に置いてあった布巾を掴み、ハルノに差し出す。
「あ、あの、本当に申し訳ありません‥‥」
「い、いい、いえ。あ‥‥ありがとう、ございます」
 消え入りそうな声でお礼を言って布巾を掴むハルノ。由貴と沙貴が止める間もなく、彼女は自分が持っているものが何であるのかも確認せずに、濡れた服を拭き始めた。


●scene2
 開店直後に起こった風の失態に、黄『ジョーヌ』(橘・朔月(fa0467))と香『パルファン』(ヴォルフェ(fa0612))は風と向き合っていた。勿論それは、彼の失態を咎めようとしての事ではなく、純粋な疑問からだった。疑問とは即ち、彼がどうしてあそこまで取り乱す必要があったのか、なのだが‥‥
 風が2人に一言断ってから煙草に手を伸ばし、先日鏡に言われた事を思い出すと、肺まで入れようと深く吸い込み、思い切りむせる。
「大丈夫ですか?」
 香が心配そうに眉を寄せ、風が大丈夫だと言う意味を込めて手に持った煙草を左右に振る。まだ長い煙草を灰皿に置き、自嘲気味な微笑を口元に浮かべる。
「好きなんです」
 突然言われた言葉に困惑する2人。煙草にむせた後なので、視線が細く煙をあげる灰皿の上のソレへと向けられるのは、ある意味では当然だった。
「ハルノさん、ご存知ですか?」
「ご存知も何も、風さんが飲み物をかけたあの方ですよね?」
「えぇ。‥‥俺、好きな人の前に出るとどうしても緊張してしまい、不自然な行動を取ってしまうんです」
 確かあの時、風はハルノに対して布巾を差し出したはずだ。花屋の双子の兄弟が不思議そうな顔で一部始終を目撃していたと聞く。
「‥‥だから今まで彼女の事を避けていたんですね?」
 風から数度彼女の接客を頼まれていたのを唐突に思い出し、苦笑する。頼まれた時は風が忙しいからとばかり思っていたのに、まさかこんな裏が有るとは思いもよらなかった。
「俺、こんなだし‥‥絶対変な奴だって思われてる‥‥」
「別に悪い方にばかり気にする必要はないと思いますけれど。何も、嫌われてはいないんでしょう?」
「でも、今日の事も‥‥はぁ‥‥」
 深い溜息をつきながら、ポツポツと愚痴を零し始めた風に、それまで口を閉ざしていた黄が渋い顔をしながら小さく舌打ちをすると真っ直ぐな視線を風に向けた。
「‥‥何時までグダグダ言い訳を言ってる」
「でも‥‥」
「風さんは今の状況をどうにかするつもりはないんですか?」
「え?」
「もしその気があるんでしたら、協力しても良いって言ってるんです」
 ニコリと微笑まれ、風は逡巡した。暫く目を伏せ、意を決したように視線を上げると口を開いた。
「有難う御座います。でも、彼女には俺の気持ちは‥‥」
「自分の気持ちは自分で伝えるものだ。‥‥仕方ない、協力するよ」
 黄が小さく溜息をつきながらヒラリと手を振ると、香が『協力』の具体的な内容を話し始めた。


○scene3
 黄はハルノの前にカクテルを置くと、一言断ってから隣に腰を下ろした。近況やドラマの話しなど、思いつくままに話した後でふっと会話が途切れた。黄が意味ありげに視線をハルノへと持って行き、躊躇いがちに口を開く。
「ところで‥‥今、誰か好きな人っている?」
「す、好きな人‥‥えっと、風さんは、その、カッコイイと思いますっ」
 力を込めて言われた言葉に、黄がパチリと大きく瞬きをした。
「で、でも、風さんって綺麗でカッコ良いですし、私なんてとても無理で‥‥全然、ダメで‥‥」
 風と同じ様な事をいう人だと、苦笑しそうになるのをグっと堪えると伏目がちになったハルノの肩にそっと手をかけた。
「その気持ち、伝える気はないの?」
「‥‥え?気持ちを、伝える?む、無理、無理です」
 震えながら全否定をする彼女の肩から手を放すと、黄は溜息混じりに呟いた。
「気持ちは言葉にしないと伝わらないものなのに‥‥」


●scene4
 黄からハルノと話した事を聞き、風は顔を赤くしながら俯いた。
「でも、もしかしたらそれは社交辞令と言うか‥‥」
「考える前に、行動しろ。人の気持ちなんて、考えるだけ無駄だ」
 苦々しく黄がそう言った時、リベルテの扉が開いて由貴と沙貴が眉根を寄せながら入って来た。
「悪い、立ち聞きする気はなかったんだけど‥‥」
「すみません、悪気はなかったんだけど偶然聞こえちゃって‥‥」
 綺麗に合わさった声で頭を下げる双子。気にする事はないと、風がひらりと手を振る。沙貴が安心したように観葉植物の定期メンテナンスをとリベルテの中に入り‥‥
「風って、彼女の事が好きだったのか‥‥」
 背後から聞こえて来た由貴の声に振り返った時、何かを思いついたらしく、由貴がパっと顔を上げた。
「ちょっと待っていてくれ!」
 走り出した由貴の背中に「由貴ってば本当に仕方ないんだから‥‥」と溜息混じりに呟きながら、沙貴が黄に向き直ると柔らかい笑みを浮かべた。
「俺1人でも店内の植物の様子を見ておくね」
「あぁ、宜しく」
 沙貴が丁寧に植物の様子を観察し‥‥丁度パキラの葉を見ていた時、由貴が花束を持ってリベルテの扉を開いた。
「これ、この前の詫びだ。良かったら使ってくれよ」
「俺に、ですか?」
「マーガレットの花言葉は『真実の愛』って言うんだぜ♪」
 由貴の手から花束を受け取り、お礼を言おうとした時、不意に由貴の背後からハルノが入って来た。黄が風の背中をポンと押し、風がつんのめりながらハルノの前に花束を突き出す。
「こ、これを貴女に‥‥あの、ご、ご迷惑だったでしょうか」
 呆然と差し出された花束を見詰めて動かないハルノに、風が不安そうに様子を窺う。正面から初めて向き合った2人の視線が絡まり、顔を赤くする。
「あ、あの‥‥迷惑だなんて‥‥」
「ずっと、貴女を想っていました」
 キッパリとした言葉に、ハルノの瞳が潤む。人差し指で目元を拭った後で、恥ずかしそうに微笑み‥‥
「嬉しい、です」
 風の手から、花束を受け取った。


○scene5
「ほら‥‥言った通りになったでしょ?もっと、自信もちな」
 黄がハルノの肩に手をかけ、俯き加減の顔をそっとあげる。風がハルノの手を引き、カウンターに座らせると香にカクテルを2つ頼む。淡い色のカクテルをグラスに注ぎ、2人の前に差し出すと、そっとカウンターを後にする香。
「さて、この結果‥‥お互いに自分に自信をつけてくれればいいんだがな」
「それは大丈夫じゃない?」
 香の言葉に黄が素っ気無く返し‥‥すっと、長い人差し指を2人へと向ける。指先に見えるは、グラスを合わせて微笑みあう風とハルノ。そんな2人の間で、マーガレットの花束が蛍光灯の光を受けて静かに咲き誇っていた。



「うん、なかなか良かったな。シーン4をマーガレットを貰うまで、シーン5をハルノが来店してからにした方がよりスマートな話しの流れになっただろうけれど、さほど不自然ではないからな」
 野々宮は大きく伸びをすると、リベルテメンバーにねぎらいの言葉をかけてから『リベルテ』へと入った。後からついてくるメンバーを呼び寄せ‥‥
「もし良かったら飲むか?未成年者はジュースを用意しよう」
 お酒の瓶を振りながら、無邪気な笑顔でカウンターに座る。メンバーが思い思いの場所に座り、手元にグラスが行き渡ったのを見届けた後で、野々宮はグラスを高くあげた。
「リベルテの成功を祝って」
 チリンと、グラス同士がぶつかる乾いた音が響く。次の撮影まで無人となる『リベルテ』の中で、メンバー達は盛大に映画の完成を祝ったのだった。