朝笑サプリ 乱葉編2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
宮下茜
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
02/17〜02/19
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●本文
『ここはとある高等学校。
少し面白い先生と生徒達が織り成す学園の1コマを、通勤・通学前の貴方に‥‥』
朝笑学園きっての美人教師、綾音 乱華(あやね・らんか)が自称美人教師、枯音 乱葉(かれね・らんよう)に攫われる事件発生!!
乱華クラスメンバーは乱葉の挑戦を受け、第2ステージへと足を踏み入れたのだが‥‥
とりあえず、前回脱落したメンバーは扉を開けたすぐのところに積み重なって置かれていた。
粗雑な扱いだが、まぁ、そこは目を瞑る事にして‥‥
目の前には、巨大なスクリーンがあり『乱葉のセクシーショット☆上映中』と右斜め上に書かれている。
その場に居た全員が凍りつく。
目をそらせたいのに、目をそらせない。
ある意味途轍もない拷問だった。
とりあえず、目がどうにかなってしまう前に違うところを見なくてはと、なんとか首を動かして部屋の内部を見渡す。
どうやら食堂のようだ。
家族会議には不向きな長いテーブルが中央に横たわっており、何の意味があるのか分からないが豪華な蝋燭立てが等間隔に並んでいる。
壁には悪趣味としか言いようの無い肖像画が飾られている。
全て乱葉が描かれており、微笑んだり、すましてみたり、ウィンクしてみたり、やりたい放題だ。
こんな中でとる食事はさぞや消化に悪いだろうと思いかけた時、突然扉が開いて黒服を着た男性が入って来た。その後に続いて、可愛らしいメイド服に身を包んだ女性がワゴンを押しながら入ってくる。
香ばしい匂いは食欲をそそる‥‥
「乱葉様より皆様にお食事をと」
毒でも入っているんじゃないか。
緊張するメンバーに、強面の男性がほんの少し口元に笑みを浮かべる。
「お食事自体にはなんの細工も御座いません。ただ、ルールが御座います」
「ルール、ですか?」
「はい。テーブルマナーをきちんと出来ていない人は失格、そして、この食事の主催者である乱葉様の気に食わない人も失格」
「気に食わない?」
「つまり、乱葉様を上手におだてられなかった人が失格になるんです」
かなの難題だ。
そう思った時、それまで沈黙していたスクリーンが突如輝き出した。
何を意識しているのかは分からないが、蛍光色の衣装を着た乱葉が画面に大きく映し出される。
目に痛い。と言うか、目に悪い。
こんな人のいったいどこを褒めれば良いと言うのだろうか。そもそも、どうしてそんな衣装を着ているのかさっぱり分からない。
『さぁ、皆さん!着席なさい!』
渋々と乱葉の言葉に座るメンバー。と、次の瞬間、突然腰元をベルトで縛られた!これでもう逃げられない‥‥
『皆さんグラスをお持ちになって』
乱葉の前にも食事が置かれているらしい。
赤ワインの入ったグラスを高々と上げる乱葉に、それぞれが渋々とグラスを持つ。
『乾杯ですわ!』
恐る恐る口をつけてみれば、未成年者にはグレープジュースが、二十歳を超えている人のグラスには赤ワインが、それぞれ注がれていた。
*ルール
・暴力はいけません
・ものを壊してはいけません→後から乱葉に請求されます
・誰かがボケた場合は必ず誰かがツッコんであげましょう
・ツッコミの人はボケに引きずられずにツッコミを貫きましょう
・笑いは爽やかにとりましょう
・制服はきちんと着ましょう
・クラスでの合言葉を忘れないようにしましょう→今回は合言葉を言ってはいけません
●リプレイ本文
目の前に出されたフランス料理は、美味しそうな匂いを漂わせていた。もしこれが空腹時のディナーとして出てきたならば垂涎ものだろうが、残念ながら現在は早朝だ。
「美味しそうです!」
見ているだけでも胸焼けをしそうな料理の数々を前に、宝野鈴生(fa3579)が目を輝かせながら胸の前で手を合わせる。夜行性の鈴生は、オールナイトでインターネットをした後でこれから寝ると言う。つまり、コレは夕食も同然なのだ。そんな不健康極まりない生活習慣の鈴生だったが、今日ばかりは乱華チームの強力な『胃袋』となっていた。
今にもフォークを持って食べ出しそうな鈴生の隣では、天羽遥(fa5486)が真剣な表情で画面の向こうの乱葉を褒めまくる。
「こんな美味しい物も作れて、皆に食べさせてくれるなんて、乱葉様はとても優しくて良い人なんですね?その上美人なんて羨ましいです☆」
『美人で優しいのは当然ですわ!まぁ、コレを作ったのはシェフですけれども』
乱葉は料理ベタではないのだが、凶器なまでに長い爪で料理など出来るはずもない。
『さぁ、皆様召し上がれ』
硬直したままだったメンバーに声をかけ、乱葉が黙々と料理を食べ始める。鈴生が待ってましたとばかりに食べ始め、一瞬だけ訪れた沈黙にグリモア(fa4713)が必死に考えながらおだての言葉を紡ぐ。
「とても(蛍光色が)まぶしいお姿ですね」
心持目を細めながら(本気で目に痛い色彩なのだ)そう言って、柔らかく微笑む。乱華先生を助ける為に頑張らねばと、グリモアは心の声を押し隠しながら必死に言葉をかける。
「凄く美しい(料理)ですね。それに、とても優雅(な部屋(肖像画などを除く))ですね」
だんだん褒めるべき所がなくなってきた時、じーっと乱葉を凝視していたころん(fa5269)が感動したようにポロリと言葉を零した。
「‥‥すごい‥‥」
嘘偽りのない言葉で、薄っすらと微笑みながら‥‥
「‥‥キレイ‥‥」
乱葉を見上げ、キラキラとした瞳で呟く。
ちなみに『凄い』や『キレイ』のかかるべき言葉は『乱葉』ではない。ころんの美的感覚は狂ってはいない。それではその言葉はいったいどこへ向かって発せられているのか。蛍光色の眩しいグロテスクな色合いの服装にか?はたまた美とは程遠いであろう乱葉に対してか?それとも、魔の巣窟と言っても過言ではないような悪趣味な装飾品の飾られたこの室内にか?
答えは簡単。今現在この中で美しいものと言えば、乱葉を除いた出演者達と料理しかない。ころんの視線が料理に注がれていると言う時点で、キレイや凄いのかかる先はソレしかない。おめでたい思考回路を持つ乱葉は、その賛美の言葉が自分に向けられていると思い込んでいるが、あえて教えてあげる事はない。
ただ、万が一ころんの言葉の意味に気付いてしまっては厄介だ。朱里 臣(fa5307)が膝上のスカートの上に乗せていた手をギュっと握り締め、脳をフル回転させると無邪気な笑顔を浮かべる。
「乱葉先生のおかげでこんなお料理を食べる事が出来て幸せです。有難う御座います!」
『あら、お礼を言うなんて良く出来た娘さんね』
なにやら気に入られたらしい臣。これはチャンスとばかりに、世間話でも‥‥そう思い口を開こうとした臣の隣で、なにやらガチャガチャと音が響く。恐る恐る視線をそちらに向けてみれば、桃木舞子(fa5279)が食器を鳴らしながら良い食べっぷりを披露していた。スープをすすり、ソースを純白のテーブルクロスに飛ばし‥‥臣と乱葉の視線に気付いた舞子が顔を上げ、満面の笑みで乱葉を褒めちぎる。
「凄い、人間じゃないみたいですー!」
爽やかなおだてを成功させたと思い込んでいる舞子だったが、要約すると『人外ですね』と言ってしまったのと同じ様なものだ。乱葉が頬を引きつらせ、メイドが運んできた料理を見るなり舞子がぷぅっと頬を膨らませる。
「魚きらーい!!」
『失格!退場!!』
乱葉がヒステリックに叫び、黒服が舞子を羽交い絞めにすると部屋の隅へと引きずっていく。
「お行儀良く食べないと駄目なんだよっ?」
甲斐・大地(fa3635)が舞子に今更ながらのアドバイスを向ける。不機嫌モードになろうとしている乱葉に、臣が必死におだての言葉を用意しようと奮闘するのだが、なかなか言葉が上手い事浮かんでこない。無言で料理を口の中に入れながらも、何とか言葉をひねり出そうとして‥‥
「本当に‥‥すばらしい‥‥」
ころんがポツリと呟いた瞬間、乱葉の顔が綻ぶ。どうにか危機は脱出したようだと安堵した次の瞬間、彼女の心が本音を漏らした。
「‥‥美味しい‥‥」
今までの事は全て料理に向けられたものであって、乱葉を褒める言葉は何一つ含まれていなかった。それを察した乱葉の額にピキリと青筋が浮かび、黒服が黙々と食べ続けているころんを部屋の隅へと引っ張っていく。尚一層重たい雰囲気になった場をどうにかしようと意を決して顔をあげ、セクシーポーズの肖像画とバッチリ目が合ってしまい、俯く臣。
「それにしても、本当に綺麗な肖像画で、羨ましいです」
場に救いの手を差し出したのは遥だった。天然ボケなのか、それとも価値観がおかしいのか、彼女は心底乱葉の事を綺麗だと思っているらしい。‥‥どこか遠い目をしながら遥から視線をそらすメンバー達に、何か変な事でも言ってしまっただろうかと首を傾げる遥。乱葉が彼女の言葉に気を良くして、高らかに笑いながら何か言葉をかけようとして、ふと持ち上げたグラスを置くと首を傾げる。
『あら、貴方もう食べないのかしら?』
「お腹がいっぱいで‥‥こんな美味しい物がもう食べられないなんて、申し訳ないです。‥‥キレイな乱葉様、すみません」
シュンと肩を落とした遥が、黒服達によって隅っこに連れて行かれる。舞子やころんよりも随分と丁重な扱いなのは、乱葉の指示によるものなのだろう。
次から次へと出てくる料理を食べながらグリモアと臣が必死におだて、大地が乱葉の性格面を褒めちぎる。日本語はこんなにも難しいものなのかと頭を悩ませる3人の隣では鈴生が黙々と食べ続け‥‥コトリと、大地がフォークを置く。もうこれ以上食べられないと言う彼女が部屋の隅へと連行され、残りは3人になってしまった。お腹の限界を感じている臣のペースが落ち、おだてはあまり得意ではないと言う鈴生が口を閉ざす。乱葉が余所見をしている時に臣の料理を横から食べて支援していたグリモアだったが、あまり空気は良くなかった。
乱葉の表情がだんだんとかたくなっていくのを感じ、ここで一つ気分転換でもしようと、グラスを持ち上げるグリモア。
「もう1度乾杯をしましょう」
明るいグリモアの声にそれぞれが自分のグラスを持ち、乾杯の合図を待つ。乱葉の瞳を真っ直ぐに見詰めたグリモアが、柔らかい微笑を浮かべ‥‥
「君の瞳に映る俺に乾杯!」
『‥‥‥‥‥‥』
「(グリモアさん!心の声が!←小声)」
「(口に出してたか!?←小声)」
ピキリと青筋をたてた乱葉がキっとグリモアを睨みつけると黒服に指示を飛ばす。
『このナルシストをどうにかしなさーーーいっ!!!』
ナルシストはお前だ。そう言いたいのをぐっと堪えながら、グリモアは部屋の隅へと連行されていき、残ったのは臣と鈴生だけになってしまった。
後は残す所デザートだけとなった鈴生と、もう満腹状態で倒れそうになっている臣。2人はチラリと目配せをすると、頷いた。
どうやら乱葉に気に入られたらしい臣が彼(彼女)の気をひきつけ、その間に鈴生がデザートを食べてしまおうと言う作戦だ。おだてベタな鈴生だけが残ってしまっては失格になる事は目に見えているし、臣だってこれ以上食べたら本当に倒れてしまうかも知れない。
「それにしても、本当に綺麗ですねー僕の部屋にも飾りたいです、先生の写真〜」
鈴生がそれだけ早口に言うと、臣に視線を向け、黙々とデザートを口に入れ始める。
(朝からよく食べられるなぁ。あ、夕食みたいなものだって言ってたっけ)
パクパクと食べ続ける鈴生に不思議そうな瞳を向けた後で、臣が満面の笑みで乱葉に向き直ると世間話を始める。
「先生のつけていらっしゃるネックレス、とても高そうですね」
『これはおフランスで買ってまいりましたのよ』
「先生のために作られたみたいに、良く似合ってらっしゃいます」
『おーっほっほ!まぁ、当然ですわね。‥‥それより貴方、手が止まってらしてよ?』
「実はもうお腹いっぱいで‥‥」
カチャリとナイフとフォークを置いた臣の傍に黒服達が近付いて来て、その拘束を解いた次の瞬間、鈴生が笑顔で合掌した。
「ごちそうさまでしたー!」
何とか1人だけ残った安堵感に、ほっと溜息をつく隅っこメンバー。乱葉が苦々しい顔をしながらワインを一口飲み‥‥
『クリア、ですわね。皆様言葉遣いもまぁまぁでしたし、マナーの方も‥‥』
ずるずると言う音が響き、隅っこに視線が集中する。何時の間にテーブルの上から持って来たのか、フィンガーボウルを両手にがぶ飲みしている舞子。
「なんだか喉が渇いちゃって‥‥」
「それはそうやって使うものじゃ‥‥」
大地が慌ててフィンガーボウルを取り上げようとした時、乱葉のヒステリックな声が響いた。
『どうして貴方だけそんなにマナーがなってないのーーーっ!!』